エンデュミオンのカスの方の英雄   作:パパパパンパース

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アニメ観てるとヘリオポリス崩壊時のポッド射出シーンが笑えない。
一匹でも生き残ればいいと思ってる魚類の産卵みたいだった。


第7話 カス「えい、えい」ヘリオポリス「ぐはぁ」①

ヴェサリウス艦内では、先のG強奪作戦の結果を受けてブリーフィングが行われていた。

 

「つまりミゲルとオロールのジンは、その起動したばかりの連合MSにやられたということだな?」

 

クルーゼの確認する様な問い掛けに、ミゲルは悔しげな表情で答えた。

 

「はい。ビーム兵器を搭載している点や、推力など、ジンを上回ると言わざるを得ない性能でしたが、最も厄介なのはあの装甲です」

 

「ふむ、アスラン達が持ち帰った方の解析はどうか?」

 

「はっ、連合のMSは、全機フェイズシフト装甲を標準搭載しています。これが起動している間は、既存のジンの装備では決定打になり得ないでしょう」

 

アスラン・ザラはモニターにデータを表示させつつ、内容を説明する。

 

「MSに搭載可能なフェイズシフト機能か。やはり嫌な勘は当たったな、アデス」

 

「は……しかし、ミゲル達が機体を失う程のものというのは、正直、現実を見ても信じられませんな」

 

「連合にも幾人かは使える人材がいたということだろう。極秘裏に開発した兵器だ。下手な人間に任すとも思えん」

 

それを聞いたアスランは、思い出したように言った。

 

「そう言えば、我々が奪い損ねた二機の内、ニコルが担当していた機体がもう一機に武器を向けた際、向けられた方が相手の名を呼んでいました」

 

「……なに?」

 

「確か、オランチョ大尉、とか」

 

その言葉を聞いたクルーゼは、考え込むように額に手を当てた。

 

「あー、そういや言ってた、よな? イザーク」

 

ディアッカもそれを聞いたのか、隣のイザークへ確認する。

 

「知らん、ナチュラルの言う事など、いちいち覚えていられるか」

 

イザークは不機嫌そうに顔を背けた。

 

「オランチョ……セイル・オランチョか」

 

重い何かを吐き出すように、クルーゼは言った。

 

「隊長は、奴をご存じなのですか?」

 

「クズだ」

 

「は?」

 

「……が、凄腕だ。エンデュミオンクレーターで、先行した攻撃部隊のジン3機が奴に落とされている」

 

ジンを3機撃墜、その言葉にアスランは驚愕する。

 

「3機って……連合のモビルアーマーでですか? 隊長が言っていた、エンデュミオンの鷹ではなく……?」

 

「違う。そして、真に恐るべきは……いや、些事だ。忘れてくれ」

 

クルーゼは言葉を畳んだ。危うく余計な事まで言いそうになったからだ。

 

エンデュミオンクレーターでの戦いは、最終的に軍事転用されたサイクロプスと呼ばれるマイクロ波発生装置によって連合、ザフト両軍が大きな損失を被ることで決着した。

クルーゼもその戦闘では、あわや巻き込まれそうになったものだ。

 

エンデュミオンの鷹、ムウ・ラ・フラガとの死闘を繰り広げていたクルーゼは、知らずの内にサイクロプスの効果範囲から外れていたのだ。

 

一方で、部隊指揮官でもあったクルーゼは周囲の戦闘状況も把握していた。

そこに、居たはずなのだ。あの戦いの僅かな生き残りから恐怖に震えた声で、『凶鳥』と呼ばれたパイロットが。

サイクロプスの範囲内に、7機のジンに追われながら、飛んでいたはずなのだ。

 

結局、戦闘後に確認すると7機のジンはいずれも未帰還となっており、追われていた奇っ怪なメビウスのパイロットも行方知れずとなっていた。

 

クルーゼがその名を知ったのは、連合に潜り込ませたスパイからの報告だった。

 

提出された書類には、セイル・オランチョ、エンデュミオンクレーターでの撃墜スコアは撃墜3、撃墜支援5(7)と記載されていた。

 

( )内については公的な記録では無かった。連合としてもそれを公には出来ないと判断したのだ。

セイル・オランチョは、自身もサイクロプス有効範囲内を時間ギリギリまで飛び続け、実に7機ものジンを巻き添えにしたのだ。しかも、自分は生き残っている。

 

狂気の沙汰、どころでは無い。

クルーゼはそれを知って身体の奥底が震えるのを感じた。

自分なら、この凶鳥を落とせるのかもしれない。しかし、自分がセイル・オランチョという男を理解することは永遠に出来ないだろうという確信……未知に対する恐怖だった。

 

ちなみに、何故7機ものジンがたかがメビウス1機を追い回していたかについては、彼らの母艦側に記録されていた通信内容を聞いて判明した。

それでクルーゼがたった1つだけ、セイルについて理解したことは、彼がド級のクズにしてカスであるということだけだった。

 

「『エンデュミオンの凶鳥』に新型MSか……鷹共々、厄介なことだよ。まったく」

 

クルーゼは思考を打ち切ると、残った連合のMS奪取作戦に向けて意識を集中させた。

クルー達、特に機体を失ったミゲルや、同期のラスティ、ニコルを失ったアスラン達は雪辱に燃えている。ここで手を引く、というのは、部隊のモチベーションを考えれば、指揮官としても受け入れ難かった。

 

「中立を謳いながらもあのようなものを作っていた以上、ヘリオポリスが地球連合に意図的に組していることは明白だ。これを見逃してはプラントにとって大きな災いを呼ぶことになりかねん」

 

クルーゼは壁のモニターへ、ヘリオポリス構造図を投影した。

 

「アスラン達の退避中にすれ違った戦艦は、コロニー内の宇宙港に向かっていた……工業ブロック近くの、ここだ。他に出口は無く、宇宙に出るには壁を吹き飛ばす必要があるが、今のところその様子もない。連中はコロニー内の工業ブロック周辺で立ち往生をしている可能性が高い」

 

モニターの図が、コロニー外殻の一部をフォーカスする。

 

「そこに、ジンをD装備で投入する。ミサイルで壁を破壊し突入、そのまま連中の足となる戦艦を破壊すれば我々の勝利は揺るがない。オロール、エミールがミサイルD装備、ミゲルは予備のジンに重粒子砲装備で出撃だ」

 

「コロニーへの被害についてはどうされますか? 曲がりなりにも中立です。あまり大きな被害を出しては、評議会で査問を受ける可能性が……」

 

アスランの質問に、イザークが鼻で笑うように食って掛かる。

 

「隊長の話を聞いてなかったのか? 連中の中立は欺瞞だった。俺たちの奪ったMSがその証拠さ。例え査問会が開かれたとて、隊長や俺たちが何の罪に問われるっていうんだ」

 

「それは俺だってわかっているさ。だが世間はそうは見ない。中立を謳うオーブのコロニーを、ザフトが襲ったんだ。大衆は自分が見たいようにしか見ない」

 

「はっ! 世論など。それもナチュラル主導で作られた世論なんぞに、俺たちがかかずらってやる必要がどこにある。好きに言わせておけばいいさ」

 

「親プラント派を標榜している国家にまで、疑いの目を生じさせることについて言っているんだ」 

 

「落ち着けよお前ら。そんなこと、末端の俺らが気にしてもしょうがないだろ」

 

ディアッカが二人の間に入る様に止めた。もっとも、その口調や表情はイザーク寄り……所詮はナチュラル、という嘲りがあるものだった。

 

「大体、隊長はそれでもやるって話をしてるんだ。それを世間の声が怖いからやっぱ止めますなんて、クルーゼ隊や赤服の名が泣くぜ」

 

クルーゼはとても軍人同士とは思えないアスラン達の会話に、溜息を一つ押し殺すと、柔らかな物言いで続けた。

 

「無論、アスランの懸念は尤もだ。我々はザフトという組織の手足であると同時に、人々は我々を通してザフトを見る。故に、行い全てに責任が伴うのも当然だ。しかしこの一件、手をこまねいていてはいずれ我らの血で贖う事になりかねん。ミゲル達には無理をしてもらうが、やってもらいたい」

 

「了解です!……心配すんなよアスラン、うまくやるさ」

 

ミゲルの励ますような言葉に、アスランも納得せざるを得ない。

 

「なら、せめて自分にも出撃許可をください! データの吸出しもOSの更新も終わっています。足手まといにはなりません」

 

せめてもと、食い下がるアスランに、クルーゼは考えるそぶりを見せた。

 

「ニコルも、もしかしたら生きているかもしれません。どうか……!」

 

「ふむ……向こうが持つ2機の内、片方だけでも抑えることが出来れば儲けものか。ミゲル、君はアスランと分担して敵MSの1機を担当してくれ。落とすにせよ、鹵獲するにせよ、第一目標は戦艦の破壊だ。手に負えない相手なら時間稼ぎに徹せよ」

 

「了解です。足を引っ張るなよ、アスラン」

 

「ありがとうございます、隊長。任せてくれミゲル」

 

「それではパイロットは自機の準備を開始。15分後に再出撃」

 

「「了解!」」

 

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「ランチャーパック?」

 

緑を基調としたバックパックと追加装備を装着したストライクを見上げながらセイルは聞き返した。

 

「ストライクは戦況に応じて遠近、機動力重視と装備を切り替えることが可能なんだとか。ランチャーパックは、320mm超高インパルス砲アグニを始めとした砲戦仕様ですよ」

 

セイルの質問に、整備主任のコジロー・マードックが答える。

 

「MS1機に大層な火力持たせたもんだな……あんなド太いビッグコックぶら下げちゃ、稼働時間が短いっつってるようなもんじゃん」

 

「一応、今回は艦上配置ってことなんで、通電ケーブルを引き込めば自機のエネルギーは消費せずに戦えるはずです」

 

ふんふん、と頷きつつ、セイルは隣に立つ自機、ブリッツへ視線を移す。

 

「で? ブリッツは? 超ウルトラデンジャラスオメガデラックスブリンブリンパックとか?」

 

「ブリッツはこれで完品っすよ……一応、注文通りにランサーダートは外しましたが、いいんですね?」

 

「デッドウェイト抱えて戦う趣味はねえわ。それと、推進剤の圧力は高めで頼む。多分飛び回ることになるから」

 

「了解。ああ、後ですがね」

 

「おん?」

 

「コックピットで煙草吸うなら、灰は落とさんでくださいよ」

 

「なら灰皿も追加しといてくれよ。フェイズシフト機能付きで」

 

「そりゃこの戦闘の後ですね。お願いしますよ、大尉」

 

「うぇい」

 

そんなやり取りの後、わずかな振動と共に艦体が浮遊する。

アークエンジェルがコロニー内の空に飛び立った。

 

『これより本艦はヘリオポリス上空にて敵機襲来に備える。各ブロックは第二種戦闘態勢、パイロットは機体に搭乗の上で待機するように』

 

副艦長兼CICとなったナタルのアナウンスが艦内に響く。

 

『――各位、アークエンジェル艦長の、マリュー・ラミアス大尉です。当艦は現在、ザフト軍の襲撃を受けており、この先も激しい戦闘、並びに追撃戦となることが予想されます。しかし、この艦と2機のGを地球の衛星軌道上で待つ第8艦隊に届けることが我々の最重要任務となります。その為にも、各員の協力をお願いします』

 

続いて、艦長となったマリューの声が艦内に響く。

 

『また、本艦は先の戦闘で避難民となった、ヘリオポリス市民を保護しています。彼らの身の安全を守る為にも、各員の奮闘を期待します』

 

「まー、お優しいこと。聞きまして奥様?」

 

「聞きましたよ奥様。そんじゃ、気合い入れていきましょうや」

 

マードックが手を振り作業へと戻っていく。

セイルはタラップに手を掛けてブリッツのコックピットへと乗り込んだ。

 

「えー、あーあー、こちらブリッツ、セイル・オランチョ大尉。聞こえるかキラ」

 

僚機であるストライクへ通信を繋げる。

 

『…………こちらストライク、キラ・ヤマトです。なんでしょうかオランチョ大尉』

 

不承不承といった返答が返される。

 

「お前は軍人じゃないから階級を付けて呼ぶ必要はねえ。セイルさんかアニキ、兄さん、大銀河超人セイル様、偉大なる北極星にして輝ける栄光のセイ――」

 

『セイルさん』

 

キラは早くも、この面倒な大人の扱いを覚え始めたようだった。

 

『僕は、まだ戦うこと自体に納得したわけではないです』

 

憂いを含んだ声だった。

 

『でも、それでもきっと、今この場所では中立だって、オーブ市民だからっていうことが、僕たちを守ってくれるわけじゃないことも理解してます』

 

「アーハン?」

 

セイルは笑いながら煙草に火をつけた。

次いで携帯灰皿を出そうとポケットを探るが、見つからなかった。

 

『戦います。みんなを守る為にはそれしかないから。でも、ひとつだけ教えて欲しいです』

 

「ああ」

 

『戦争をしている人達からしたら……僕たちは、中立国の住民は、滑稽ですか?』

 

「お、馬鹿にされてると思ったクチ?」

 

『だって、ずっと笑ってたじゃないですか、セイルさん』

 

慎重に灰を落とさないように半分以上吸った煙草を、そっとコックピットの外へ出し、捨てた。

下の方から「アッチィ!」という声が聞こえた。どうやら空調の調子が悪いらしい。

 

「お前らはプラント、ひいてはザフトってもんを誤解してるんだよ」

 

『誤解、ですか?』

 

「まあ、その辺は今度話してやるよ。俺は仮に、お前らが博愛主義者か無抵抗主義者かザフト信奉者だと言っても笑ったよ」

 

セイルの言葉を最後に、二人の間の会話は止まった。

 

やがて推進剤の補充も完了し、簡単なフォーメーションの話をブリッジも交えし終えたところに、満を持してヘリオポリスの空が爆炎と共に崩れ去った。

 

 





ストライク『こん中に一人だけ、要らない子がいまーすwwww』
エール『えーwwww』
ソード『お前じゃん?www』
ランチャー『ちょ、やめろよお前ら!』
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