エンデュミオンのカスの方の英雄   作:パパパパンパース

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ごめんなさい、僕ちょっとAI舐めてたかもしれん……


第71話 ララパルーザ

 

アラスカ地球連合軍統合最高司令部、通称JOSH-Aには各地から選りすぐりのエリートが配属される。

勿論一兵卒に至るまで、とはいかないが、一定以上の水準をクリアした者のみしか配属を許されないし、内勤の部署等には随所に激戦区上がりや外で功績を打ち立てた者などを見ることが出来る。

 

つまりブレインは優秀な者達によって構成されており、1艦隊レベルの連帯感等とは文字通り次元の違う組織として成立していた。

 

アラスカのエリート達は無駄を嫌う。

被害者団体など無用の長物、と。被害者に寄り添うことは必要だ。しかし寄り添うだけではただ嵐が過ぎ去るのを待つ蝶のようにか弱い存在に成り下がってしまう。

 

アラスカのエリート達は無軌道な暴力を嫌う。

銘々に大義を打ち立てて徒党を組み集団で襲い掛かる如き蛮行を、断じて良しとはしない。

やるならタイマンで、心ゆくまで、他の者はそれを温かく見守り背中を押す……そうした文化的な野蛮さを好んだ。

 

その為、これまでカスによって殲滅されてきた反オランチョ過激派とは違い、アラスカではカス害の深刻さによって序列が与えられ、上位の者に優先的な復讐権が得られるシステムを採用している。

 

復讐するなら1対1、他者を巻き込まず、禍根を残さず、決着はどちらかの敗北を以て決まる。

カスが敗北した場合は殺害までは許容される。

 

後にアラスカルールと呼ばれる、各地の反オランチョ過激派達のベストプラクティスとなっていくものの内容だった。

 

そもそも教義の中に『タイマン』なんて言葉が入って来ている時点で、じゃあアラスカのエリートは理知的で落ち着いた連中なのかといえば、疑問は残るのだが。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

その巨躯は、飾りではない。

 

短く刈り上げられた黒髪の下に、本来は優しげだったであろう面影の男の顔があった。

しかし、もはや顔幅よりも太い首と、そこから古木の枝のように皮膚の下を這う筋肉が、男の顔を憤怒の形相に歪めていた。

 

首だけではない。

腕も、胸板も、腹も、足も、全てが太い。

ただそれを見た者が抱くのは安心感ではなく、嵐を目の前にした小鹿の如き畏れであった。

 

突如、場に男の声が響き渡る。

巨躯のものではない。スピーカーを通されハウリングを交えた、何処か道化を思わせる声だ。

 

『ジャスティスコーナー! 189センチ、115キロ! 諜報課が誇る破城槌! 高速で動き、剛腕で砕く筋肉の要塞! 愛息子を襲ったカスへの復讐の為、リングに降り立った最強のデスクワーカー! ペンは剣より強く拳より弱し! 序列1位! 紅の暴風域、アントン・ライオネル!!』

 

 

――ワー! ワー!

 

 

巨躯の男……アントンは歓声に応えるように手を挙げた。

アントンが立つのはリングの上だった。

 

アラスカ基地の格納庫に急遽設置された、ボクシングのリングの上だった。

 

スピーカーからの声は続く。

 

『イビルコーナー! 時代が生んだ歪み! 悲しみを喰って育つ蟲! 理由のない悪意! 立てばドブカス座ればドクズ、歩く姿はシン・ジョーカー! もはや死ぬしかない!! カァスゥゥゥゥゥゥ!!!』

 

アントンの対角線上に、もう1人の男がいた。

金髪で飄々とした笑みを浮かべた、優男だ。

晒された裸の上体は、彫刻の如き筋肉に形作られ、決して見せかけではない脅威を揺蕩えていた。

 

「メチャ毒吐くやん……うおっ」

 

男がボヤく声を掻き消すように、周囲のギャラリーから大きな声援が響き渡った。

 

 

――死ねええええ!!! 死ねええええええ、死、ねええええええええええええ!!!!!!

 

 

「おーおー、有象無象の説明イラストに使えそうな奴らだな」

 

まあ、カスなので声援とは即ちこれである。

 

『ルールはボクシング! 但しウェイト差を考慮し、アントン選手にはカスがダウンしたらマウントでボコっても30秒は反則に取られない特別ルールを適用します!』

 

 

――なんて公平なんだー!

 

――ヒャッハー! 対等な勝負だぜー!

 

 

「ウェイト差とは……おい、俺も人の事言えねえけどお前等もまあまあカスだぞ」

 

『誰がカスだゴラァ!!! テメエだけはその言葉を言うんじゃねえ!! 俺は完全にキレちまったぜ!! アントン選手に追加ルール!!』

 

実況は親を目の前で殺された後、死体でジグソーパズルをしていた殺人犯を見たような声で叫んだ。

 

同時に、リング上に2人の男達が上がってきて、アントンの両脇に立った。そして、手に持った金属製の何かをアントンのグローブを覆うように装着する。

 

『アントン選手は接触型スタンガンを仕込んだ装甲グローブの使用を義務付けることとします!!』

 

 

――素晴らしい配慮だー!

 

――これで勝負はわからなくなったぜー!!

 

 

「あのグローブいいな……今度使わせてもらおう」

 

『テメエの命も今日までだ! 全人類がお前の惨めな死を望んでいるーーー!!!』

 

………

……

 

「こんな連中相手に、俺等は戦争してたのか」

 

呆然とした様子のディアッカが呟いた。

 

「うーん、これはかなり特殊なケースだと思いますけどねぇ」

 

苦笑いしたニコルもまた、同様だ。

2人は今、『賭け受付中』と書かれた旗とチケット発券機を持ってギャラリーの中を彷徨いていた。

 

どういう訳か、当たり前というべきか、馬鹿みたいに売れ行きは良かった。

 

「おい兄ちゃん、と、()()()()、賭けはまだ受け付けてるかい?」

 

今もこうして、酒瓶片手のモヒカン頭がチケットを買いに来た。

 

「あ、はーい。オッズは21対2でオランチョ優勢っすね」

 

ディアッカが事務的に対応する。

つか、この空気でなんでカスの方が人気なんだよ。あのアントンとかいうの、完全に大穴扱いじゃん、怖っ。と思いながら。

 

「だよねー、じゃオランチョに300ドル」

 

モヒカンはさも当然というように頷くと、金を渡しつつ酒を煽った。

 

「はいどーもー、これチケットなんで、失くさないでくださいよ」

 

「おう! 仲良くなご両人!」

 

モヒカンは去って……は行かず、ちょっと距離を離したところに立ってリングを見始めた。

最前列はどこも人で溢れているので、もはや何処にいても変わらないからだろう。

 

「…………なあニコルよ」

 

それはさておき、金を整理しながらディアッカは問い掛けた。

 

「何も言わなくていいですよ」

 

ニコルは俯いてそれに返す。

 

「お前その、それ、何?」

 

「いいですって」

 

ニコルは恥ずかしそうに身を捩った。

 

「いや、何でバニーガール?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

ニコルは涙目になりながらスカートの裾を抑えた。

 

「ミリアリアさんにはちょっと大き過ぎてフレイさんには小さ過ぎるからですよ……ミリアリアさんには言わないで下さいね、僕死にたくないんで」

 

「だとしてもお前が着る意味は?」

 

「僕に拒否権があるとでも?……あ、また涙が」

 

ニコルはそっと涙を拭った。

なんなん? 信じて作戦に参加した俺の同期がカスに捕まって再会したら豹変してたんですけど?

 

「おいおい痴話喧嘩かぁ? 仲良くしろよガキンチョ共!」

 

モヒカンがこっちを見てニヤニヤしながら言ってきた。

 

「違えわ! 誰がガキンチョだ、俺等はこう見えても――」

 

まだプライドと、いずれは元の生活に戻れるという無駄な希望が捨て切れていない未熟なディアッカは、思わず言い返す。が、それをニコルが慌てて止めた。

 

「駄目ですよディアッカ!」

 

「こんなとこで僕らの正体がバレたら吊るし上げられますよ」

 

「ぐぅ、わりい」

 

モヒカンはそんな2人を、荒んだ様相からは不釣り合いな冷静さで分析する様に眺めた。

 

「んぅ? つかお前等、どこの所属だぁ? アークエンジェルは第8艦隊所属だよな? あそこは少年兵なんざ採ってねえだろ……しかも妙にツラが良い」

 

「う……」

 

「おい…………おいおいおい! お前等まさか!」

 

モヒカンの顔に驚きが乗る。

 

 

「コーディネイターかおい!」

 

 

その声が届いた周囲のギャラリー達も、釣られたようにニコル達を見た。

スキンヘッド、顔面タトゥー(KILL KASU)、ナイフペロペロ男、顔面十字傷、デブと、見てくれはバラバラだ。ただただ治安が終わっている。

 

「何、コーディだぁ?」

 

「ヘリオポリスの生き残りかぁ?」

 

「にしちゃ妙に肝が据わったツラしたガキだぜぇ?」

 

「案外カスが捕虜にしたザフト兵だったりしてな」

 

口々に推察を述べて行く中、顔面十字傷の放った『ザフト』という言葉に、周囲に緊張が走った。

 

「何ぃ!? それじゃこのガキ共は……無料のサンドバッグ君……ってコト!?」

 

デブ。

違った、この汚えちいかわ共の治安が終わってるだけだった。

 

「粉々になるまで銃で撃ってもええんか!?」

 

「撃って良し!」

 

「バニーちゃんはくじ引きにするかぁ?」

 

「ヒャッハー! たまんねえぜぇ!」

 

暴徒じゃん、と焦りながらディアッカは引き攣った笑いをこぼす。

 

「モラルが、モラルがねえ……」

 

このままではアカン事になる、特に自分、と思ったニコルは意を決して前に出た。

 

「あ、あの、僕たちはオランチョ中尉の小隊で、下働きをしてまして……」

 

その瞬間、まるで北斗神拳奥義・有情破顔拳を受けたようにモヒカン達の動きが止まり、優しい笑みを浮かべた。

 

「…………よく、頑張ったな」

 

「遠路はるばるお疲れ様でした。クッキー食べますか?」

 

「誰か、この英雄達に椅子をお持ちして」

 

「どうぞ、おかけください。今コーヒーをお持ちします」

 

「アラスカのコーヒーは産地直送だ、期待してくれ」

 

「もう少しの辛抱ですよ」

 

「我々が君達を解放してみせますからね」

 

トキみたいな目になったモヒカン達。

 

「振れ幅が北極から南極ですね」

 

「つまりこれが素でさっきまでがカスの影響によるもんだったってことかよ……」

 

ニコル達はひとまず危機が去ったと安堵した。

 

「いつからカスの下に?」

 

「ええと、もうかれこれ3ヶ月以上は……」

 

「やば」「金玉がヒュンてしちゃった」「吐きそう」「これ何カスバイトだよ」「測定不能だろこんなん」「序列交代あるぞこれ」

 

※カスバイト:アラスカ本部の造語。カス害が人体に及ぼす影響を数値化した際の単位。基本的には1キロカスバイトから影響が出始めて、10を超えると重篤な症状が出るとされている。数値は被害が出た際の査問委員会で決定される。

 

過去最大値は椅子に縛り付けられ、目の前で息子のこめかみに銃口を突き付けられて自白を強要され、愛する息子が托卵児であることをカミングアウトさせられたアントンで、800ペタカスバイトとされている。

 

そうこうしている内に、リングの方からコングの音が鳴り響いた。

 

「「「「「ヒャッハー! やっちまえアントン!!」」」」」

 

「振れ幅」

 

「野蛮通り越して獣じゃん」

 

ニコル達もリングへと目を向ける。

何にせよ、ここでカスが負けるような事があれば何をされるか分かったものでは……寧ろ被害者ムーブで通せそうか、と思い直し、何なら数発は殴られちまえとディアッカは思った。

 

 

さてリング上だ。

 

「貴様は殺す! 今日、ここで!!」

 

アントンの気迫と共に吐き出された殺意ある言葉は、カスにとっては生温いエアコンに劣る無価値な風だった。

 

「みんなそう言うんだ。不思議だよな、締めの言葉まで一緒なのさ……『助けてください』だ」

 

舌を出し、挑発を重ねるカス。

やったことを思えば無条件で殺されていてもおかしくないのだが、別に同僚の嫁を寝取ってはいけないなんて軍規は無いし、()()()()()()()()()()()()()()()()()は事後で失意の中、アントンが同意書にサインしてしまっている。

 

アラスカルールに則り、正々堂々と殺すしかないのだ。

 

「うおおおおおっ!!!」

 

アントンは一気にステップインすると、剛腕を畳みワンツーを繰り出した。

 

ロングレンジで見ていたニコル達には、避けようのないコンビネーションに思えた。

ああ、カスともここでお別れか。そんな風にも思った。

 

次の瞬間、アントンの顎が跳ね上がる。

 

横でモヒカンが顔を覆ったのが見えた。

 

「あああぁ、それを喰らったらおしまいなんだよ!」

 

意味を問う間もなく、カスの身体が舞う様にアントンの真横に滑った。

 

「アーマー乗りの動体視力舐めてんのか!」

 

「これだから事務方はよぉ!」

 

「もういいアントン! 自爆しろ!」

 

どうやら周囲の連中には見えたらしい。

ニコルは隣の友人に声をかけた。

 

「……ディアッカ、見えました?」

 

「やー、カウンターっぽかったけど、一部だけだな……ナチュラルの動きじゃねえぞアレ」

 

ディアッカは唖然として返した。

カスの手が閃光の様にかき消えた、と思った時にはアントンの顎が上がっていたのだ。

初っ端のジャブに合わせられたらしい。

 

「見ますか?」

 

そう言いながら、デブがタブレットを差し出してきた。

そこには試合のリプレイ映像がスローで映し出されている。

 

「カスの勝負内容は全て映像に残しているんですよ。イカサマ防止と、今後の対策研究の為にね」

 

「うわ……何で後出しのアッパーがジャブより速いんだよ」

 

ディアッカの言葉通り、アントンのジャブがカスに届く前に、スマッシュ気味に放たれたカスの左アッパーがアントンの顎に当たっていた。

 

しかもアントンの拳はしっかりダッキングで躱しきっている。人間の動きではなかった。

 

「宇宙軍のアーマー乗りは動体視力と空間把握能力が高い傾向にありますが、奴は別格なんですよ。おまけにあの反射速度。かつてこの基地にいた空手家は一歩も前に出られずに気絶するまで殴られ続けましたからね。逆ネテロなんて渾名を付けられていました」

 

「可哀想に……」

 

「つかあの隊長、ナニモンなんだよ。これコーディネイターでもそれ用にコーディネートされた相当な上澄みじゃねえと無理だろ」

 

「ナチュラルだそうですよ……僕も時々疑いたくなりますが」

 

ワッ、と会場が湧いた。

 

タブレットからリングに目を移せば、そこにはコーナーに追い詰められ、両腕が力なく垂れ下がった状態で顔面を滅多打ちにされるアントンがいた。

 

『何という非道! 無抵抗のアントンをさらに殴る殴る殴るーーー!!……いや、やめてあげない? そろそろ』

 

「まっくのうち、まっくのうち」

 

ノリノリでセルフコールをしながら殴り続けるカスに、実況からも慈悲を求める声が掛かった。

リング上に設置された高性能マイクは、歓声の中でも正確にカス達の声を拾っていたが、『もうやめて、たすけて、ぶたないで』というアントンの声もきちんと聞こえた。

 

「……けっ」

 

カスが手を止めてステップバックすると、アントンは顔面から地面に倒れ伏した。カスはすかさずコーナーポストに駆け上がり両手を突き上げる。

 

「敗北を知りてええええてえ!!!」

 

 

――うおおおっ! 死ねえええええ!!

 

――何で生きてんだカスウゥウウウーーー!!

 

 

みんな何だかんだ楽しそうだ。

もはや一種の祭り位の扱いなのかもしれない、とニコル達は思った。

 

「やはり格闘技でヤツを降すのは、相当な達人でも連れてこないと無理ですね。ギャンブルか、専門知識勝負か……」

 

「あの、アントンという方、腕相撲とかなら勝てたと思うんですけど」

 

ニコルが尋ねると、デブは首を振った。

 

「私達はカスを苦しめいたぶり絶望させた上で葬り去りたいのであって、ただ勝ちたいのではないのです。もはや流血のない決着はあり得ないんですよ」

 

「回答内容が全部マフィア」

 

宇宙猫の顔になるニコル。

そこへモヒカンがチケットを差し出して来た。

 

「まあ下馬評通りだったなー。取り敢えず酒代にはなったけど」

 

「あ、はい、ディアッカ」

 

「うぃーす、じゃ、配当付いて……どぞ」

 

ディアッカがチケットを読み込ませて、表示された金額を支払う。

 

「さて、今日はここまでですね……恐らく皆さんの滞在中、こうした騒ぎは度々起こるでしょう。何か困ったことがあればこの番号に……アラスカのカス専用ヘルプデスクです」

 

「へるぷですく」

 

デブが差し出して来た連絡先を登録しながら、ニコルは色々ついていけないなぁと思った。

 

「当てりゃ勝てる勝負にしても駄目かぁ」

 

「アントンは序列こそ高いですが実戦経験は少なかった……3位のヤングスターであれば、あるいは」

 

「あいつのキックじゃカスは無理くね?」

 

「現在、人間サイズのフェイズシフト搭載型パワードスーツを開発中とのことなので、可能性はあるかと」

 

話しながら去って行く2人の会話を聞きながら、どうもアラスカに着いたら『めでたしめでたし、ちゃんちゃん』とはならないことを悟るニコル達であった。

 

――――――――――――――――――――――――

 

「あれがセイル・オランチョですか……確かに、スペシャルだ」

 

遠くからリングの状況を眺めていたスーツの男が、そう呟いた。

 

「良いですねぇ、人類の可能性ってやつ。期待以上です」

 

金髪を撫でつけた下に、何処か狡猾な笑みを浮かべた男は満足そうに頷く。

そこへ、傍らの女が声を掛ける。

 

「理事、そろそろお時間です」

 

「ええ、良いですよ。もう帰ろうかと思ってましたが、いいものが見れました。どうせなら彼とも話してみたいですねぇ」

 

「調整いたしますか?」

 

女の言葉に、男は顎に手を当てて考える。

 

「いえ……向こうの予定だけ調べておいて下さい。空いてる時に、僕から伺います」

 

「承知致しました」

 

「では行きますか。退屈な会議も、目的があれば悪くないものですからね」

 

終始笑っていた男はリングに背を向けた。

 

 

アークエンジェルの長い旅は終わった。

しかし、新たな何かの始まりは、もうそこまで来ているようだった。





ガンダムSEED、ニコル・アマルフィ等の言葉を一切使わずに出力しました。初手でいきなり寄せてきたので本当にビックリしました。


■人物紹介
アントン・ライオネル
諜報課出身。優秀な諜報員だったが、仕事が忙しく家に帰れない間に妻が浮気相手の子を身籠ったことから、それまでの己の行いを深く悔い、妻を許し生まれてくる子を我が子として愛し育てた聖人。

子供が8歳になった時、職場にカスが放流された。

法に触れる手を躊躇いなく行使し、時には人の命すら使い捨てにする手法で多くの手柄を挙げる傍ら、止めようとした同僚が次々と病院送りにされる状況に強い忌避感を抱き、カスと正面から衝突。

邪魔臭く思ったカスにより地獄の職場見学が開催される運びとなった。

そこで人生2度目にして最も致命的な傷を心に負い、生まれて初めて心の底から強い殺意を抱いた。元々は線が細くインドア派の男だったが、心機一転しつつカスへの復讐を誓い格闘技を始める。

しかし鍛える程にカスの身体的なスペックに圧倒されることとなり、遂に未認可の薬物にまで手を出して力を求めるようになった。

2ヶ月で体重は40キロ程増え、容貌も変わり、恐れた妻は息子を連れて家を出ていき、ついうっかりで受話器を握り潰す程の力を手に入れた。

息子は職場見学以来、すっかり表情を失くしていたが、ある日アントンを訪ねてきた時は笑顔を見せるようになっていた。

喜んでいたのも束の間、偶然出会したカスに口説かれた妻が、カスと関係を持った事。行為は車の中で行われた事。
事後、『金払ってたらチェンジレベル』と嘲笑されて路上に捨てられた事を()()()()()()()()()()息子から聞かされた。

『いい加減あの女のとこに僕を置いておくのはやめてよパパ』と、笑顔のままの息子に言われ、アントンは再び息子と暮らし始めた。
妻とはそれ以来一度も会っていない。

余りの出来事に呆然としている間にカスは転属していき、復讐心も鎮火しつつあったが、アークエンジェルがアラスカに到着予定で、そこにカスがいることを知った息子から『僕は将来、僕の人生を光で照らしてくれたセイルさんみたくなりたいんだ』と言われた事で燻っていた火が再点火。

天空まで届く炎の竜巻となってカス抹殺の決意を固めた。



カスはアントンで軽く遊ぶつもりが思ったよりも家庭の闇が深かったので、アフターフォローのつもりで子供と連絡先を交換していた。

そしたら子供から『心の底から母親が嫌いで気持ち悪いが、大好きな父親が悲しむから付き合ってやってる』と聞き、珍しく善意でひと肌脱いでやった。

悪魔の善行なんてそんなもん。
冬木の聖杯みてえな男、カス。
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