原作で死亡したキャラを書いてると自分の中で愛着が湧いてしまい、ついつい生存させてしまいがちなんですよね。ほら、根が優しい人間なもので。
アラスカ基地の方から、強い光と爆発が広がっていく。
全てを飲み込みながら、飲み込んだ者達をマイクロ波の牙にかけ、残った死体を破裂させて行く。
その中にはあの少将も、メカニックデブも、ニコルの教え子達もいた。皆覚悟の元迎えた結末に対し、一様に笑って消えていった。
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危機を脱したアークエンジェル一行は、オーブへと進路を取っていた。
爆心地となったアラスカの様子は知れないが、少なくとも生き残りがいないことだけは確かだった。
そんな中で、いくらなんでも近隣の連合基地に身を寄せる気にはなれず、キラ達オーブ国民が乗っていることも踏まえて門前払いにはならないのではないか、という思惑があった。
とは言え、受け入れてもらうに際して何かしらのメリットは提示したい。
プラントの最新鋭機であるフリーダムなど、まさにうってつけなのだが……
『あ、この機体の解析は絶対にさせませんよ? 強行するならモルゲンレーテを吹き飛ばしてでも』
周囲を警戒する為、まだ着艦はしていないキラはこう言っていたし、勿論無理強いさせる気はマリュー達にもない。
だから、次善の手を打つ必要があった。
今再び、マリューはカスソウルをインストールしその思考をシミュレートする。
「……プランDはどうかしら。勿論、内部からの破壊は無しで」
少しして、マリューは決意の籠もった目で言った。
……プランDとは、アルテミス入港時にカスが立てた作戦の1つだ。
艦の主要人物を重傷であると装い、ろくな判断も出来なさそうな若手や階級の低い者が命からがら逃げ込んで来た風に保護を求めるものである。
入港後、内部から爆破テロを起こして、ブリッツの暗躍と合わせてクルーゼ隊襲撃を援護する予定だった。
しかし、クルーゼ達の正確な襲撃タイミングが不明なのと、アルテミスの内と外にカスが1人ずつ必要になるレベルの非人道的かつ極めて暴力的な行為が必要となる為、実行に難ありと棄却された経緯がある。
「え、あれは流石に詐欺過ぎるんじゃ……」
チャンドラが引き攣った顔で言う。
「入国さえしてしまえばいいわ。こっちにはオーブ国民のクルーもいるし、バスターという新しいMSのデータも交渉に使える」
「相手が強硬手段に出て来たら?」
ノイマンの懸念に、マリューは首を振った。
「少し話した印象だけど、ウズミ様はそう言う事はしないように思えるのよね……」
それを聞いていた、オペレーター席に座る可憐で清楚で人々の苦しみと絶望をおやつに生きてきたような少女が口を開いた。
「プランDなら、多分カガリ様が率先して様子を見に来ると思うんで、人質に使えるんじゃないですかね?」
「…………」
「…………」
チャンドラとノイマンは何も言わなかった。
ただビックリした。悪魔が喋ってるのかと思っちゃった。
怖すぎて泣きそうだけど、泣いたら悪魔が来るという伝承もあるから頑張って堪えた。軍人の姿か……これが……
「え、どうしたんですか皆さん」
「ん、と……大変だわナタル、貴方どうしてこういう時にいないの」
有能なカスソムリエにしてカスマイスターがいない中、新たなるカスの因子が芽吹こうとしていた。
「え? あ、やだな艦長! 違いますよ! ただ、私達がカガリ様を囲んでにこやかにしていたら、手出しも出来ないかなって思っただけです!」
何か違った箇所ある? より詳細に地獄を強調されただけなんだわ。
「んー……発想がテロリストなのよね」
マリューがかなり気を使って吐いた言葉がこれなので、もはや処置無しであった。
「あ、なんでしたら私達が目に見えるところに手榴弾とかぶら下げてたら無言の圧になると思うんです! 勿論使いはしませんし、直接脅したりはしないですけど、向こうが勝手に勘違いして動いてくれそうじゃないですか?」
この場にナタルがいればこう言っただろう。
『そこまでやるなら、あの男は明確に脅すでしょうね。ですが、発想の方向性は非常に似ています』
極めてカスに近しい判定だった。
人によっては最高裁まで争う決意を固めるレベルである。
「………………………………よし、正直に話して受け入れてもらいましょう。身柄拘束されるかもしれないけど、その方がいいわ! やっぱりダメよね、オランチョ式は!」
清く正しい連合軍人魂を取り戻したマリューは、悪夢から覚めたように澄んだ瞳で宣言した。
「ですね」
「賛成です」
大人達の気持ちは今一つになったのだ。
「ともあれ、先ずは無事にオーブへ辿り着かなきゃね……」
マリューはブリッジの外、艦周囲を警戒の為に留まっている艦載機達へ目を向けた。
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『しっかしなぁ! まさかなぁ! 坊主が生きてるとはなぁ! ビックリだよなニコルゥ!!』
自棄っぱちなムウの当てつけ染みた呼び掛けに、ニコルは申し訳なさそうに答えた。
『勘弁して下さいよ、隊長の指示だったんですよ……その、ムウさんは隠し事が出来ない誠実な人だからって……』
嘘です、ムウさんはバカだからバカみたいな速度でバレてバカ丸出しのバカを晒すので黙ってろって言われました。
『すぐに連絡できなくてすみませんでした。あの後、僕を助けてくれた人に運ばれて、プラントにいたんですよ』
キラも自らフォローに入る。
何となく、カスが何と言って隠させたのか想像がつくからだ。
ムウはスカイグラスパーのコックピットで、拗ねたようにため息をつくと、久し振りの再会となったキラへ話し掛ける。
『なるほどねぇ。てことは、そのピカピカの新型はプラント製ってことか……すげえもん作ったよなぁ。あの一斉射撃をあの精度でやられたら、一溜まりもないぜ』
実際、何を相手にする事を想定した装備なんだそれは、というレベルの弾幕を1機で作り出し、挙句凄まじい命中精度で次々と行く手を阻むザフト機を撃ち抜いていった。
しかも、綺麗に戦闘能力だけを奪う様に、頭部や手足のみ。
1人も殺すことなくである。
『この機体は、託されたんです……』
キラは何やら重たい決意を秘めた声で呟いた。
それを聞いたムウは、折角カスから解放されたのになんで自分から背負いに行くかね、面倒事を、と思った。
『ふぅん……ま、細かいことはいいさ。本当に、生きてて良かったよ。お前さんだけでもさ』
トールは一応、生存してるかがグレーなのでニコルは何も言わなかい。
『ありがとうございます……ところで、そっちのバスターは誰が?』
そう言えばチンチンになった鉄火場に突っ込んでここまで来たので、キラはアークエンジェル側の詳しい状況をほとんど知らなかった。
と言うか、プラントから遥々借りパクフリーダムをすっ飛ばして助けに来たら、やれサイクロプスだやれ逃げろだのと、混沌としたシチュエーションが繰り広げられそれどころではなかったのだ。
『僕の同期です、キラさん。何度か交戦したパイロットですよ……あの時の戦いで捕虜になって、今はオランチョ小隊の新人になった、新たなる贄ですね』
『そっかぁ………………………………………………可哀想に』
ニコルの的確でピアニストらしいウィットに富んだ表現を聞いて、キラは明日死ぬことが確定している憐れな囚人を見るような目で言った。
『何好き勝手言ってくれてんだコラ! ディアッカ・エルスマンだ、舐めんなよ! ストライクのパイロット!』
しかしコズミック・イラが誇る
『舐めてなんかないよ、心の底から同情しただけで……キラ・ヤマトです。よろしくね』
精神的に不安定な若者と接するには一過言持つキラは、臆することなく介護と慈愛の心でもって挨拶をする。
『お前のせいで俺とイザーク……デュエルに乗ってる奴は本当に酷い目に遭ったんだからな! いつか詫び入れさせてやるぜ!』
『えっと、それは戦いでの話……?』
『ちげえわ! トチ狂ったアスランからお前との思い出話を毎日毎朝毎昼毎晩聞かされて、ノイローゼ寸前だったんだわ! 知らねえ奴がガキの頃、フルチンで花火やってる写真1枚で3時間も語られ続けんだぞ! こっちが発狂するかと思ったわ!』
割としょうもない話だったが、どうやら自分とアスランが関係しているらしい。
『あ、あの写真か……恥ずかしいな……』
記憶を辿れば、一時期トイレでズボンや下着の上げ下げをするのが面倒で、家ではフルチンだったことを思い出す。5歳くらいの時だ。
家の庭で花火をやる時、確かそのまま花火に火をつけてエラく怒られた記憶があった。
父親はゲラ笑いしていたがカメラでパシャパシャやっていた気がする。
『でも夏休みにアスランの分まで勝手に自由研究やって、残りの宿題全部押し付けたのはお前がどうかと思った』
溢れ出す存在する押し付けられた記憶に、ディアッカは追撃を仕掛けた。
『懐かしい……昔からアスランは親友だったんだ……』
『すごい良い思い出風に言うじゃん』
『最近会う度にちょっとずつ変になってて、怖かったな……』
本当にもう、低軌道会戦でカスがアスランを殺す寸前まで考えていたと聞いて、ちょっと迷ってしまう位には困った狂い方をしていた。
『いやー、アスランがそんなになるなんてビックリですね。ディアッカも大変でしたね』
ニコルが朗らかに笑う。
『お前のその、引いた線の向こう側から声掛けてくる感じ何? そろそろ本気で怒るからな!』
全方位に切れ散らかすディアッカはまだまだ元気そうだ。
彼はまだ、フレイが艦内にいない事を知らなかった。
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一方その頃、カスは何とかアズラエルが指定したポイントの先で、ロサンゼルスへと向かう艦艇へと滑り込むことに成功した。
「ふぃー、何とかなったな」
ほぼ空の推進剤とバッテリー計を見ながら、カスはしみじみと呟いた。
「お疲れ様でした、隊長。これからどうするんです?」
フレイが声を掛けると、
「んー、そうだなぁ……取り敢えずこの船が目的地に着いたら、また移動だわなぁ。ま、暫くは休暇だと思って過ごせよ」
珍しくカスが優しさを見せた。
「じゃあデートしましょうよデート!」
それを逃さずグイグイ攻めるフレイだが、カスの回答はあっさりとしたものだった。
「アホか。戦艦の中でセックス以外何すんだよ。それは無しっつったろ。俺は適当な女捕まえて抱いて時間潰してるから、お前は空いてる部屋に入れてもらって寝てろ」
あっさり風のカスだった。
「ちぇー」
フレイを誘導に出ていた乗組員へ預けると、カスは艦内を見て回ることにした。
力仕事のない部署になら、1人か2人は女もいるだろうと。
そしてついに、人知れず、誰にも認識されないまま。
セイル・オランチョは、ヘリオポリスから続く非常事態の連続から、解放されてしまったのである。
アズラエルの罪は重い。
だから殺すならやっぱ自分で作ったキャラなんすわ。罪悪感じぇろなんすわ。心が豊かになってくんすわ。
ちなみにカスがアークエンジェルにいた場合プランDは強行され、様子を見に来たカガリはカスに捕まり交渉の席でアークエンジェル側の席に座らされていました。
カスの第一声「で、何してくれるの?」