最近巷で話題のランサムウェアとPHP脆弱性が全て直撃しましたのでもう駄目です。
カスはその日、珍しく朝から執務室のデスクについてパソコンを触っていた。
傍らにはコーヒーカップ、煙草、灰皿。
時折コーヒーを傾けつつ、キーボードを叩く指は止まらない。
「んー……16から25までは重複、30番台は再現性に難あり……」
ブツブツと呟きながら、モニターに表示されているシステムファイルに番号を振り、一定の規則に則って区分けしていく。
「…………50……悪くねえな」
手が止まる。
煙草を咥えて火をつけると、カスは椅子の背もたれに身を預けた。
「ああ、暴力が振るいてぇ……無作為に、後腐れないやつ……」
それを聞いた中将が、正面のデスクで顔を上げた。
特に部下もおらず、部隊も管轄していない彼等の執務室は共同だった。
「唐突に怖いこと言わないでください」
中将の言葉に、カスはため息をついた。
「俺はいつからこんなになっちまったんだ? 昔はもっとビンビンだった。目に映るもの全てを傷つける遊びに夢中だったのに」
「もしかしてサザンクロスとかにいました? それかカサンドラ」
「中ちん……少将って街中で銃ぶっ放したら何発まで免責されるの?」
いよいよヤバいことを言い始めたカスに、中将は頭を抱えた。
「やめてくださいお願いします。そんな免責がある階級など存在しないんですよオランチョ少将、何発とかじゃないんですよオランチョ少将」
「そっかぁ……あ、そうだ、東アジアに配備予定の先行量産型のダガーあるじゃん?」
唐突に話が変わる。
もはやこんな変調は慣れたものの中将は、頷いた。
「ええ、この前の会議で決まったやつですね。お二人がモニターの真ん前で煙草吸ってたせいで目をつけられて、何故か私が手配することになった」
コネ昇進の中将は、他の将官から一等低く見られており、そうした貧乏くじを引かされがちだった。
「そうそう、それさ、武装指定が無かったじゃん?」
「まあ、ストライカーパックもまだ調整中ですからね。恐らく規定のライフルになるんでしょうが」
地球連合が開発に成功した初の量産型MS、105ダガー。
量産型と言いつつストライカーパックの採用や高機能センサー搭載等、金満な造りとなっている。
「その、武装バリエーションでさ、ちょっと思いついたことあって。試しに設計案書いて開発部に回しといたんだよね」
もうやだ、この先聞きたくない。
窓の外を見た中将は、そのまま空に飛び出しそうになった。
「初耳ですが……」
「今言ったからな」
「いつ、渡したんです?」
得意気なカスは意気揚々と続ける。
本日3本目の煙草に火をつけながら、揚々と語り出した。
「3日前。出来合いのパーツ組み合わせるだけだから、次の日には試作品が出来て、試射は俺がやって、さっき完成したって連絡来たのよ」
「ダガー3機、全機分ですか?」
東アジアには都合3機のダガーが納品予定だった。
先行量産型の為、多少の不具合は出るかもしれないが、配備から先は向こうの責任だ。
これから先の大量配備に先駆けた、効果測定の意味もかねていた。
「まさか、試作っつったろ? 気に入ったなら後は自分達で量産してねってさ。いや、少将ってすげえな。言った要求が全部通るぜこれ」
この世で最も権力を持たせてはいけない男が、その使い方を覚えつつある現実から目を背けつつ、中将は納品予定リストを開く。
「………………モノの詳細データを頂いても?」
「あいよ。ついでに、稼働中の映像あるから、今チャットに貼るね」
「あまり好き勝手やっては…………は?」
そこには、試作型と思しき緑色のダガーが手にした無骨な短銃身の武器を構えていた。グレネードランチャーだろうか。
発射された弾は試射の的に当たり、爆発の後、大炎上を発生させた。
「どうした、中ちん?」
「これは……?」
「多目的爆破、焼却用72mmグレネードランチャー、マンイーター。サーモバリック爆薬弾頭を使用してる。装弾数は12発。弾頭は既存の72ミリ弾を流用可能で生産コストも最低限。無力なゴミ共を焼豚にジョブチェンジさせるスペシャルアイテムさ」
中将は聞いたカタログを頭に浮かべながら、動画を見返した。
「まさか本気ですか? 火炙りが近代兵器相手にどこまで有用だと?」
短銃身なら射程は短いし、高温で炙り続ければいくらMSとは言えただでは済まないだろう。しかし、いかにサーモバリック爆薬とは言え、72ミリ弾頭では精々が手榴弾4-5発程度の爆発が関の山だ。
直ちにMSを行動不能にするものではない。
実用性を疑う中将に、カスは不思議そうな顔で言った。
「近代兵器相手? 何を言ってるんだ? こいつは街を清掃する為のお掃除キットだよ。バリケードや立て籠もったビルを吹き飛ばし、2,000℃以上の炎で速やかにゴミを排除するのさ。こういうの、あったら便利だよねぇ」
何不思議そうな顔してんだよぶっ殺すぞ、と中将は思った。
「その、ゴミとは?」
「軍に楯突く民間人とか?」
今聞きたくないセリフランキングTOP3に入るだろう言葉だった。
「倫理とか人道という言葉をご存じですか?」
知ってたらこれは出てこねえよ。と思いつつも、駄目元で尋ねてみると、カスは意外にも頷いて見せた。
「顔見知りだよ。良い奴らだ。留守が多いのが玉に瑕だが」
留守というか、最初から存在していない可能性の方が高いのではないだろうか。幼年学校とかで習うはずなんだけどな。悪意が隣人だったせいで殺されちゃったのかな。
「その顔見知りさん達は、これについてなんて?」
「こう言ってたよ。『ヘイ、正気かいブラザー!
違えわ、住んだ場所の文化に汚染されてねじ曲がっただけだわこれ。
「シャブやってるパリピじゃないですか。完璧にラリ散らかしてますね……はい、ええ、駄目ですこれ。却下です」
中将はそっと動画を閉じた。
「中ちぃん」
カスは呆れたように呻いた。
「駄目です。メイドイン軍の正規工場でこんなの造ったなんて知れたら大問題になりますよ」
「ちぇー……俺も将官として、軍の歴史に爪跡を残したかったんだけどなぁ」
残念そうなカスの言葉に、中将はため息で返した。
「後の世の歴史書で名前を黒塗りにされていいなら止めませんがね……」
いや、もう結構今の時点で黒塗りなんじゃないのか。中将は訝しんだ。
「つか、俺はいつまでもここにいればいいの? 前線に戻す為の手続きあるって、ムルちぃもどっか行っちゃうしさ」
カスがロサンゼルスに来て、はや5日が経とうとしていた。
その間、世間はアラスカで起きた悲劇に恐怖し、軍の発表した『ザフトによる大型破壊兵器の使用』という原因を鵜呑みにしてコーディネイターへの敵意を募らせていた。
軍としても、余りに多くの被害が出たせいで戦死者情報の整理すら終わっていない有様で、公式発表が待たれる状況だった。
「……理事は最終的にご自身の自由になる戦力を持ちたいご様子ですが、名目上は軍に所属していないと不穏分子と見做されてしまいます」
中将は、多分こいつならその辺の事情は分かってるんだろうな、と続けた。
謂わばこの、狭間のような時間を利用して、アズラエルは大いにその強権を行使した。カスを昇進させ、自身の部隊へ物資を優先配備して…………やり過ぎた。
「なので、今回貴方を昇進させることで、艦隊及び前線指揮官を兼任する将官として考えていました……まあ、これも無理筋な理屈なんですが……あくまでも正規軍人の麾下にある部隊だというお題目の為に」
「うんうん、そうだね」
「問題は、それすらも危険視した一部の反ブルーコスモス派閥の介入により、ろくに戦闘経験もない、嫁の七光りで出世しただけのお飾り中将の下に、貴方が配属されたことです」
ブルーコスモス派閥は確かに今、軍の主流と成りつつあるが、それに反対する勢力も少なくない数が存在している。
特に第8艦隊のデュエイン・ハルバートン等はその筆頭だ。
その上、戦果においてはカスが他の追随を許さない。
MSが戦争に投入されて1年足らずなのに、共同する艦隊の撃墜補佐40機近くと言うのは、本当に教本に名が載るレベルなのだ。
「つまり?」
「理事の部隊とやらは、まだ試験運用期間です。立ち上げまではそれで通りますが、戦力の規模によっては最低でも艦隊指揮官の経験がある人間の下に入る必要があります」
「多分特殊仕様のMSと改造人間パイロット使うから、専用艦で運用することになるだろうな。用意するみたいなこと言ってたし。艦数までは知らんが」
アークエンジェルの同型艦だったか。
それなら当然、MSの運用が前提だろうし、パイロットは件の生体CPUとやらなのだろう、とカスは半ば確信していた。
「はい。ですので、指揮官をどこかから引っ張ってくる必要があります。ちなみに、ハルバートン提督を推す声もあります。その場合は第8艦隊と共同する形になりますね」
予想外の名前に、カスの口から屁の様な呻きが漏れる。
「はぁぁぁあ? クソヒゲがなんで!?」
「あの……貴方を制御出来る軍人がこの世に何人いると思うんです? ブルーコスモス派閥からも『やむ無しか』みたいな意見出てますからね? 理事も引いてましたよ?」
え、皆さんいいんですか? 常日頃から『死ねハルバートン!』『カス毒で死ね!』とか言ってたじゃないですか、と。
「俺がクソヒゲに制御されてる……? 中ちん、それ言った奴誰かな。何もしないから教えてもらえる?」
秘密は守るよ。物理的に知ってる奴がいなくなることで。
「これ程信用出来ない言葉もないんですよね」
「ムルちぃはぁ、ブルコスの盟主なんだろぉ? 指鳴らすだけで好きな美女が抱けて、手を振るだけで邪魔者を始末するスーパーリッチメーンなんだろぉ?」
ここにはいないアズラエルにあること無いこと着せていく。
中将はため息をつきつつ、かなり情けないブルーコスモスの内情を話すことにした。
「否定はしませんが、どこかの誰かがやり過ぎたお陰で、ブルーコスモス自体の勢力はやや下火なんですよね。私も極秘ファイルは見ましたけど、何ですかあの低軌道の戦果は。あんなことやれる人がブルーコスモス嫌いって、そりゃ離れてく者も出ますよ。英雄に嫌われたくないですし」
「いやそんな英雄だなんて……俺にはヒーローデクの名前は荷が重いぜ」
どっちかって言うと、死ねって感じのカスですね、とは口にしない中将であった。
「心配しなくても、それは理事がなんとか止めましたよ。一先ず貴方を前線指揮官に据えて、艦隊指揮権は私が。但し経験がありませんので、アドバイザーとして別の少将を大西洋連邦から派遣して貰う方向で調整中です」
「ケッ、流石にクソヒゲに貸しを作るのはやめたか。賢明な判断だな」
「そんなこんなで、アラスカの事後処理でごたついている間に、貴方の昇進処理を遡って改ざんする事になりました」
結構グレーなことを淡々と話す中将は、ある意味でその道のプロであるように見えた。
「あー、ムルちぃがここ発つ前に言ってたわ」
カスは4本目の煙草に火をつけた。
どうでもいいが、吸うなら換気はしろと思う中将だった。
「まず、貴方はアラスカで戦死したことになります」
「はぁい」
ぷかー、と輪っかにした煙を吐き出す。
「そして当時の階級である中尉から、2階級特進で少佐とします」
死人は先を促す。
自身の進退が奇妙な変遷を辿っているのはどうでもいいらしい。
「じゃ、今回俺が少将になった分の手柄は?」
「貴方のいくつかある問題行動と軍規違反と非人道的な行為と足し引きした結果、ギリプラス位に落ち着きましたので、それをナタル・バジルール中尉に振り替えます。彼女もこれで少佐です」
そもそもカスが少将になれたのは、アズラエルがマイナス査定の評価を全部度外視するよう強く要請したからだ。
大西洋連邦の上層部はブルーコスモス派閥であり、当然軍需企業の代表でもあるアズラエルとはズブズブなので通っている。
「ナタルちゃんも少佐かー……ドギツい蛍光パープルのビキニでもプレゼントしようかな」
「アラスカの方もようやく外部に公表出来る位に整理されてきました。まあ、軍上層部やここの基地の人間、ハルバートン提督なんかは貴方が生きていることを知っていますが、口止めは済んでいますので」
そういう裏方の調整と根回しについては、軍で誰よりも多くの時間を椅子の上で過ごして来た中将の右に出るものはいなかった。
「なので、貴方が少将でいられるのも後2日程です。お願いですから大人しくしていてくださいよ。本当に」
「アイアーイ」
カスの返事を聞きながら、中将はようやく肩の荷が1つ下りたように感じていた。何せこのカス、目を離せば問題を起こし、目を背けても問題を持ってくるのだ。
さっきのMS用グレネードランチャー等は本当に酷い。よくよく見たら特に都市部や閉鎖空間……例えば
カスはそれを『あったら便利そう』位のノリで造っている。
実際便利だろう。誰も言わないが、戦後MSの役割に自国民に対する取り締まりが入って来るのは確実なのだ。
脅威が目に見えてわかりやすく、戦闘車両と違い1人で操縦出来る。
便利なツールなのだ。
恐らくは、思考や判断に善悪を一切考慮しない人間なのだろう、と中将は考えていた。付き合いは短いが、それ位はわかった。
だが優秀だ。
だからあれだけの戦果を出せているし、あれだけの悪行を重ねても殺されていないのだろう。
殺そうとはしたようだが、それを跳ね除けるくらい、生身でも優秀であるのだ。
「まったく、私からしたら貴方の様な人が何故軍にいるのか、不思議でなりませんよ……望むがままに、生きていけるでしょうに」
中将の、溢れるように呟かれた言葉は、
「よく言われる。生憎と、望むがままに生きた今さ」
カスの答えによってわからぬままに終息した。
こうしてカスの少将としてのキャリアはたった7日間で幕を閉じた。
この7日間でカスが行ったことが、巡り巡って後の世に影響を及ぼす事など誰も知らず。
アズラエルの罪は重い。
すみません、少し前にカスを少将にしたのはどうしても書きたい話があってのことです。
それが次回になります。ナタルさん回です。
ガルパンの映画を観てきました。
武部母がやばいですね。
僕の脳内のガルパン学会あんこうチーム部門ではかねてより『あの面倒見の良さと家事スキルが恋愛脳と同居している娘』を育てた母親について、その存在の脅威度が研究されていました。
アレですよ。さおりんの存在とは、例えるなら放出系の念能力者が具現化系の発を完璧に使いこなすが如き、狂気じみた修練の果ての姿な訳ですよ。
そんなのが彼氏が出来ないとボヤく……正直、あの世界の男は見る目ねえなと思ってました。
でも違ったんですね。
彼氏連れ込んだらあの母親が待ってる家でラブラブ作戦は無理があるでしょ。
娘のさおりんを全ての面で上回るであろう母性、スタイル、経験値は作中母親キャラの中でもトップですよ。
マジでシュブ=ニグラスと黒い仔山羊なんですよね。
さおりんを好きになると言うことは、少なからずあのおかん気質に惹かれる要素があるからなので、ある程度身近(おなクラか幼馴染、ご近所)にいる必要があり、必然、完全上位互換の武部母とも接触が発生することが、逆説的にさおりんが未だに彼氏がいない一因とも言えるのではないでしょうか。
今後、さおりんが彼氏を家に連れてくるたびに母親の方に転ぶ所から始まる薄い本の増産が見込まれますよ。僕は詳しいからわかるんです。
まあ、別に映画ではひと言も喋ってないんですけどね、武部母。出番も1秒ちょっとでしたし。
勿論、ふしだらという点で西住流家元を超える存在がいないことは周知の事実ですが、リアルな生活感の感じられる退廃的な魅力は武部母が圧倒してますね。
その他にも例えば、ゆかりんの母親は令和の『ベスト・オブ・旦那が抱えた借金のカタニスト』だったり、Sを装う誘いドMの島田流家元だったり、あの世界の母親はディテールといいキャラデザといい狂ってますよ。
え、華さん? 華さんとこの母親はだってもう……堅物が着物着て歩いてるとかそれだけでエッチじゃないですか何言ってんすか。
なお僕は冷泉家を卑猥な目的で妄想することを宗教上の禁忌としていますので割愛します。
それはさておき劇場版ですよ。
終盤ブイブイ言わせてるペコや、いつも通りキャンキャンうるっせえルクリリとヒップが最高でしたね。ルクリリってテケリ・リと似てますよね。
特に今回はステージギミックの枠を超えるような破壊的なシーンに賛否の声が出ていますが、僕はガルパン自体、DLコンテンツとしてならスパロボ参戦すら可能なポテンシャルがあると思っていますので何の問題も感じませんでした。
参戦したら、八九式で暗黒大将軍撃破チャレンジをやりたいと思います。あいつらは多分、アムロのフィン・ファンネルも避ける。
はい、そうです。僕はアヒルさんチーム推しです。
学校としては全部好きです。
最終章完結後はガールズ&パンツァー2で世代交代した各学校が優勝するまでのロードを全60話位でお願いします。
ガルおじは好きなチームと学校と個人がそれぞれありますからね。
ただ、シリーズを見返す度にそれが変動しますので結局は全部ちゅき、という結論に落ち着くんですよね。
それでは次回『ガキの頃のダー様から逆算する、ダー母は肝っ玉母ちゃん説』でお会いしましょう。
ガルパンはいいぞ(挨拶)