転移後世界の仕様が変更されました   作:リセット

20 / 39
レベル20 薬師のお手伝い

 パンドラがラナーのところで当分働くことになったが、それで彼にだけ仕事を任せて自分が休む気はモモンガにはない。別に仕事が好きと言う訳でもないが、部下に働かせてる間、自分は呑気に遊び惚けると言うのもサラリーなプライドが許さない。

 

(休むならちゃんと有休をとるか、休みの日に休むのが一番! 今はまだこの世界でのしっかりとした生活基盤が整ってないから無理だけど、ナザリックにも休暇制度を作っていかないと……)

 

 モモンガ様の為なら命を賭けて働くぞ! な気質があるナザリック内に、いかにして休暇制度を組み込むか画策しているモモンガは、とある店の前に来ていた。

 

「ここがバレアレ薬品店か」

 

 バレアレ。この名前にモモンガは覚えがあった。セバスが呑まされた度数999%超濃縮アルコール。あの毒物開発に協力したと言うのが、バレアレだった筈だと。

 

(普段なら一回聞いただけの名前なんて覚えていられないけど……あれはなぁ)

 

 自らの全身を灼熱に溶かし尽くした兵器開発者の名前となると、流石にモモンガだって覚えてしまう。

 

 ではそんな毒素兵器の開発者の元に、モモンガ一行が訪ねて来た訳。それはヴァーチからの依頼が理由だ。

 

「私は暫く間ここで研究をするから、ヴァーチはいつも通り客先回りでもしていらしたら?」

「そうします」

 

 発明所にはパンドラとラナーだけを残して来て、7人は外に出た。街中は安全なので、ラキュースと別れてヴァーチは挨拶がてら客先を回ると別れた。

 

 別れる直前、ヴァーチからモモンガはこう頼まれている。

 

「あ、そうです。私からモモンガさん達に、ラナーとは別で依頼を出しても良いですか?」

 

 ヴァーチの顧客にヤコフ・バレアレなる薬師がいる。彼からラキュース宛に、薬草摘みに行く息子の護衛任務が来ているらしく、この後ラキュースはバレアレ薬品店とやらに行くらしい。

 

 いつもならラキュースに加えて、あと数名傭兵ギルドで雇うのだが、それをモモンガ達に頼みたいと言う事だ。

 

 これを聞いて、モモンガは特に断る理由も無かったので承諾。ラキュースと共に薬品店まで来たのだ。

 

「遅れてすまない。ヤコフ殿はおられるか」

 

 薬品店の扉をさっそうと開き、ラキュースが店内に声をかける。彼女を見てカウンターにいた女性が「あら」と声を出した。

 

「ラキュースちゃん、来てくれたんだね」

「お久しぶりです、マリヤ嬢。ンフィーレアの護衛依頼で立ち寄らせて頂きました。彼はいますか?」

「いるよ。薬品工房の方で、うちの旦那様と新しいポーションの研究でもしてるんじゃないかな?」

 

 ラキュースと店員らしき女性──マリヤが話し始めたので、その間モモンガは薬品店の中を見渡してみる。いつか見よう見ようと思いつつも、今までこの世界のポーションを見る機会が今まで無かったので、これ幸いとばかりに店内を観察する。棚には様々なラベルが張られたポーションが並んでいて──

 

「赤だけじゃない?」

 

 青・緑・紫・黄・茶……様々なのはラベルだけではなく、色も非常にカラフルであった。ユグドラシルでは通常赤色のポーションしかないが、ここでは違うのかと興味深そうにモモンガは眼鏡をかけて棚を凝視する。

 

「い、色々と色がありますね。色の違いで効果が違ったりするんでしょうか?」

「どうやらそうみたいだな。ラベルには効能が書いてあるな……青色が体力回復や傷を癒す。緑は……これは武器に塗って使うようだな。レイスなどの非実体モンスター相手に、魔法武器じゃなくても効果的な攻撃を与えられるようになるみたいだ」

「この赤色はなんでありんしょう? ユグドラシルのポーションに似ていんすが、妙に粘り気がありやんす」

「これは……デスソース?」

(デス)……ぶつけた相手に、位階魔法の<死>を発動でもさせるのかな?」

「単純に死ぬほど辛いと書いてるな」

 

 よくよく見ていくと、戦闘や冒険に使えるようなポーション──肌が岩のように硬くなるや、暗視効果を得られるなどとは別に、振りかけたら肉がスパイシーで美味しくなるソースや、薬品を煮詰める要領を応用し、野菜を煮込み酢や香辛料で味を調えた調味料なども一緒に販売されている。

 

(これウスターソースや中濃ソースってやつかな? こっちは豆を発酵させて抽出した汁に塩で味を調えた……醤油? ナザリックにも置いてはいるが、この世界でもこの手の調味料があるんだな)

 

 エ・ランテルの食文化を支える一端を見た気がして、モモンガは若干気分が良くなる。ナザリックでの食事も良いが、やはり未知の食と言うのも悪くはない。999%アルコールみたいな例外もあるが……モモンガはそれを思い出して、このデスソースは本当に死ぬやつじゃないだろうなと疑ってかかる。

 

 デスソースに疑いの目を向けるモモンガ一行を見て、ラキュースと話していたマリヤは──

 

「そういやあっちの人……人だよね? 一人だけ骨の人が混ざってるけど……」

「む? ああ、紹介が遅れたな。あちらはモモンガ殿、シャルティア嬢、アウラ嬢、マーレ殿、セバス殿だ。護衛依頼で、今回同行する傭兵になる。モモンガ殿だけスケルトンに見えるが、セバス殿とシャルティア嬢も異形種だ。人間種なのはダークエルフのアウラ嬢とマーレ殿だけだな」

「へぇ、そうな……アウラ嬢? マーレ殿?」

 

 異形種には全く反応しなかったのに、男女逆の恰好をしている双子には過敏に反応するマリヤ。その反応にやっぱりそこが気になるのかと、モモンガは思う。

 

 ヴァーチとラナーはダーク=ナイトで変人に慣れていたのでスルーしてくれたが、見たところ普通の人っぽいマリアには女装・男装は奇妙に映ったのだろう。

 

「どうしたマリヤ嬢? あの二人の恰好が気になるのか?」

「え? あー、そうだね……まぁ……ラキュースちゃんみたいなものか」

 

 ダーク=ナイトと同じ個性みたいなものとしてくれたのか、マリヤは受け入れたようだ。モモンガはラキュースさんの個性強すぎん? と慄き──

 

「も、モモンガさん。僕の恰好って、その、変なんでしょうか?」

「……たしかに、あんまりいないと言えばいないな。私の生前の頃の話になるが、地球で男の子に女の子の恰好をさせていたら、場合によっては親が子を虐待していると言われることもあったらしいからな」

「で、でも、ならユグドラシルだとどうなんでしょうか?」

「その場合は……筋肉ムキムキハゲマッチョの厳つい人間種のおっさんが、ビキニアーマーやセーラー服を嬉しそうに着ていた例もあるから、なんとも言えんな……」

「は、ハゲマッチョがビキニアーマー! そ、そんな悍ましい絵面があったでありんすか……」

「ビキニアーマーてあれだよね。シャルティアがペロロンチーノ様から受け賜わった、かなりあれな装備……」

「そ、そんな。僕の洋服って、そのレベルなんですか! 嫌だ……ビキニアーマーを嬉々として着るおじさんと同レベルなんて……ぶくぶく茶釜様……どうして……」

「ほ、ほら! 落ち込まないの! あたしだって男の子の恰好してるんだから気にしない、気にしない!!」

「ほーら泣くんじゃないぞマーレ。マーレは似合ってるから大丈夫だぞー。茶釜さんに会えたら、とりあえず抗議しような……やっぱり欲望(リビドー)優先したら駄目ですって茶釜さん」

「……あれ何の話をしてるんだい?」

「分からん。だが、私の魂が囁いている。あれが彼らの日常なのだと……うん? そうだな。お前もそう思うか、キリネイラム」

「そう……」

 

 自らの剣に話しかけるラキュースちゃんは悪い子じゃないし、むしろ良い子なのにどうしてこんな……とマリアは懐疑的な目を向けるが、これも彼女の個性なのだと受け入れている。骨だの虎だのゴーストだのが歩くエ・ランテルで、多少の個性は気にしては駄目なのだ。

 

 マリヤは工房の方に行き、息子──ンフィーレアを呼びに行くと消えた。数分経ち──

 

「お久しぶりですラキュースさん!」

 

 綺麗な作業着を着た少年──長い金髪を後ろで括り、整った顔立ちをした男の子が姿を見せた。

 

 

 

 

 

 少年ンフィーレアと共に、ラキュースも含めたモモンガ一行は、とある村へと荷車を引いて街道を進んでいた。

 

「モモンガさん達は異邦から来た旅人になるんですね」

「その通りです。今は日雇い労働に勤しんでいて、今回縁があってラキュースさんと同行することになりました」

 

 一向は荷車の上に座って談笑している。普段であれば周囲を傭兵が警戒し、ラキュースは依頼主であるンフィーレアの傍に付きっきり。そう言う陣形を取るのが普通なのだが、現在は高レベル索敵持ちのアウラに加えて──

 

「モモンガさんの召喚したアンデッドのおかげで、かなり楽ですね」

 

 ンフィーレアは荷車を引く、モモンガが呼び出した魂喰らい(ソウルイーター)を見る。普段はンフィーレアが自分で荷車を引いているらしいが、今回はモモンガの創造アンデッドを活用していた。

 

 ちなみにモモンガが今回呼んだのは中位アンデッドのソウルイーターだけでなく、集眼の屍(アイボールコープス)と言う索敵・看破に特化した上位アンデッドも呼んでいる。アウラに加えて監視モンスターも配置したので、よほどのことが無い限り敵の接近に気づかないなんてことはない。

 

 なおソウルイーターもアイボールコープスも、ともに死体を使ったアンデッドであり、ナザリックから<転移門>で取り寄せたのだ。

 

「疲労無効のアンデッドは、この手の単純労働に向いていますからね。でも、このソウルイーターはまだしも、アイボールコープスは初めて見ますね。かなり珍しいアンデッドでしょうか?」

「この国では、アイボールコープスはあまり発生しないのですか?」

「見た事がないな。エ・ランテルの近くにカッツェ平野と言う、アンデッドが自然発生しやすい地域があるのだが、そこにもいないのではないだろうか」

「そうなると、モモンガさんはかなり高位の死霊術使いになりますね。連邦でも、自然発生しないようなアンデッドを使役するほどの使い手となると……かなり少ないかも」

「そうなのですか? 私が見たところ、連邦にいる魔法詠唱者(マジックキャスター)であれば、第九位階のアンデッド召喚などであれば使えるように思えるのですが……」

 

 厳密には上位アンデッド創造による産物なので魔法とは違うが、それでも第九、第十位階であればアイボールコープスは呼べるはず。なのに知らないと言うのがおかしく感じたので、モモンガは疑問を問うてみた。

 

「たしかに死霊術の使い手は、エ・ランテルでもカジットさんなどがいますが、それでも絶対数が少ないですからね……どうしても負のエネルギーを扱う関係上、自然発生するアンデッドの対処に苦労しますから」

「自然発生?」

「……ひょっとして、モモンガさんがいた場所では違うんですか? この辺りでは負のエネルギーが溜まると、アンデッドが自然発生するんです。分かりやすい場所であれば墓場ですね。定期的に湧くアンデッドを退治する仕事なんかもあるほどです」

「ンフィーレアの言葉に付け足すのであれば、アンデッドが大量に集まっても負のエネルギーは発生する。死霊術使いが術の扱いを間違えると、自らが産み出した負のエネルギーに取り殺される……何て言う話もあるくらいだ。それが理由で死霊術方面に進む者は少ない。単純労働方面であれば、土さえあれば作成可能なゴーレムや、自然物を媒介にすれば呼び出せる精霊の方が取扱の容易さなどで人気だ。それ以外にしても、あえて死霊術を選ぶとなると、モモンガ殿のように元々アンデッドなマジックキャスターか、よほどの理由があってそちらの道を進むと決めた者ぐらいだろう」

「……大丈夫か俺のアンデッド作成」

 

 負のエネルギーの危険性。それはゲームであるユグドラシルでは絶対にあり得ないが、実体として存在するこちらでは実在する脅威として認知されている。当然、それは死霊術を使うモモンガにも関わる問題で──

 

(アンデッドが多すぎると負のエネルギーが発生する。あくまでも多すぎたら……そもそも負のエネルギーってなんだよ! 墓地でも発生するなら条件はなんだ? 強いアンデッドが多すぎたらNGとか? アンデッド軍団を作るにしても、上位アンデッドの数は抑えた方が良いのか? ある程度数を揃えて検証しないと駄目だな、これは……)

 

 全てが手探りでの検証を要する事ばかりで、自分だけで攻略wikiを作成している気分になるモモンガ。とは言えその分未知のことが多く、楽しんでいる面もあるのでやる気が削がれるわけでもない。

 

 道中敵影もなく、やる事も無いのでソウルイーターがけん引する荷車の車輪が回転するのをモモンガは眺めながら、そういやどうして態々荷車で移動しているのだろうと疑問を持った。

 

「ンフィーレアさんは転移魔法を使わないのですか? 薬草採りの拠点に使う村が決まっているのであれば、転移での移動の方が早いのでは?」

「残念ながら、僕は転移系を習得していませんので……あれは習得するのに、かなり専門的な勉強がいりますから」

 

 モモンガが詳しく聞いてみると、この世界で魔法を習得するとなると筆記勉強などが必須になる。特に高位階の転移となると理論を学ぶだけでも一苦労で、第十位階転移魔法<転移門(ゲート)>など個人で習得するには習熟した専門家でも無ければ難しい。

 

(これもユグドラシルとの違いだな。ゲームではボタン一つで学べるが、こちらでは一個魔法を習得するだけでも大変。なら輸送業もギルド維持資金問題の解決になるか?)

 

「第十位階転移魔法以外で、大量の薬草を転移させるのは難しいですからね。<収納(ストレージ)>の魔法にしても容量に限界がありますし」

「そうか。<転移門>以外だと、大荷物を送るのも不可能だったな」

 

 言われてみればそうだとモモンガも思い至る。転移魔法は便利ではあるが、幾つかの制約がある。その一つが大量輸送には<転移門>以外質量制限・人数制限の観点から向かないと言う点だ。それに<転移門>にしても、やはり大量輸送には向かない。<転移門>を抜けられるサイズと言う制約があり、一つ一つ荷物や人が通るたびに魔力を消費するからだ。

 

「モモンガさんは、エ・ランテルなどにポータルが設置されている話は聞かれましたか? あれも基本は徒歩で移動する人向きで、商団などは重量制限があることから使用禁止なんです」

「ははぁ……それで転移魔法があっても、基本は都市の検問所で検査を受けるわけですか」

「はい。それに商団の皆さんは大抵力持ちですからね。荷車程度なら簡単に引けますから、転移魔法を態々習得するよりも、普通に移動した方がよほど効率的なんです」

 

 これもまた異世界特有の文化だなぁ……とモモンガは思った。リアルの地球だと人間の体力に限界があるから、昔は馬などを利用した輸送手段が発展し、最終的に輸送列車や大型貨物車などが主流となった。けれどこちらの世界では亜人や人間の体力構造も腕力も強靭なことから、輸送方法が昔ながらの手押し式のままなのだ。

 

(地球でも人間の腕力が、数十倍とかになったら色々文化も変わるのかな? うーむ……運輸方面で金儲けとかも考えたけど、あまり流行らないか? エ・ランテルに戻ったら、パンドラに相談してみるか)

 

「あ、あの一つ気になったんですけど、薬草の採取に行く必要があるんですか? その、森祭司(ドルイド)の方が街にいるのだから、薬草の栽培もありそうに思うんですが……」

「薬草栽培をされている方もおられますよ。けれど、どうしても農作物に比べると需要が低いので栽培してる方も少なく、薬師の間で取り合いになるせいか価格が少し高めで……それにトブの大森林の環境じゃないと育ちにくい品種などもあるので、採取した方がお得なんです」

「あ、そうなんですか。腑に落ちました」

「……ンフィーレアの場合、それに加えてカルネ村で恋人に遭いたいのも理由だろ」

「恋人?」

「ち、ちまいます! それは、理由……たしかに逢いたいけど、帳簿の問題もあって!」

 

 ラキュースが恋人と口にすると、ンフィーレアは分かりやすく動揺し始めた。恋人と聞いて興味が出て来たのか、シャルティアなど耳に手を添えてラキュースの言葉を聞こうとしている。

 

「今から数ヶ月前に、カルネ村にいる女性に告白してな。それ以来、頻繁に薬草採取の手伝いに、私は駆り出されているわけだ」

 

 ラキュース曰く、なんでもンフィーレアはとある村の女の子が好きだった。しかし結構な奥手なので告白も出来なかったが、うじうじした息子の態度にしびれを切らした両親がケツを叩き焚きつけた結果、ようやく想いを伝えられたのだとか。

 

「告白前のこいつは、それはそれは酷い身なりでな。髪の毛を適当に伸ばしていたせいで前髪で目が隠れ、服は臭い汁が付着してボロボロ。良い年頃なのだからと、マリア嬢とラナー嬢と私で、髪の毛の纏め方や服の洗い方を教え込んだものだ」

「そ、それは……うぅ……」

 

 何か言い返そうとしたンフィーレアだが、全部事実なので黙り込んでしまった。それを見て、どこの世界でも男性陣は女性陣に弱いのだなとモモンガは思った。アインズ・ウール・ゴウンでも、男性陣は良く女性陣にしばかれていたし……主にペロロンチーノとか。

 

「それで! それで告白はどうなったでありんすか!? 成功しせんか?」

「大成功だ。向こうもそこまで悪い感情は持っていなかったらしく、若い男女は晴れて恋仲になった」

「素晴らしいお話ですな。若人はいつだって邁進すべきです」

 

 パチパチ手を叩くセバスに、ンフィーレアは恥ずかしいのか顔を隠してしまった。その反応が面白かったので、モモンガも手を叩いておく。

 

 そんなこんなで荷車は進み、特に道中でモンスターに襲われる事もなかった。疲労しないソウルイーターに牽引役をさせたこともあり、日が暮れる前にカルネ村に到着。

 

 全員荷車から降りて、薬草を詰める樽や箱を降ろし始める。そこにのしのしと村の中心から、ソウルイーターより巨大な何かが近づいてきた。その何かを見て、モモンガはえぇ……と声を漏らした。

 

「おお、誰かと思えばンフィーレア殿ではござらんか! 今日は薬草集めの日で御座ったか?」

 

 その何かとは……デカいハムスターだった。馬より巨大なジャンガリアンで、御座る口調で喋っている。モモンガ以外は喋る魔獣かな? ぐらいの反応だが、彼は巨大ハムスターを見て、この世界の生態系どうなってんの? と驚きだ。

 

「薬草集めの日ですよ、マウスさん」

「……失礼、ンフィーレアさん。そちらの……魔獣? の方は?」

「こちらは昔からカルネ村に住んでいるマウスさんです」

「昔?」

「昔です。この村はトーマス・カルネと言う人が開いたのですが、当時大森林の近くを歩いていたのがマウスさんで……開拓に辺り魔獣が出没していると危険ですから、トーマスは彼女を森に追い返そうとしたらしいんです。でも彼女は言葉を喋り、行く宛も無い事をトーマスに伝えると、なら新しく開拓する村で守護者として働いてみないかと誘いました」

「……懐かしい話で御座るな。当時のそれがしは森での縄張り争いに敗れ、この辺りを彷徨っていたで御座る……お腹も空いていて、けれど帰る場所を失ってしまったそれがしは、もはや死ぬ場所を探すだけの身。しかしトーマス殿は、そんなそれがしを仲間として誘ってくれたで御座るよ! 今では三食しっかり食べて、この村を守るのがそれがしの役目でござろう!」

「な、なるほど……マウスと言うのは、この魔獣の名前で?」

「そうで御座るよ。村が開拓されて少し経った頃で御座るかな。ふらりと旅人が現れて、それがしの事をマウスと呼んだので御座る。恥ずかしながら、それがしは己が何の種族なのかもわからぬ身。村で生きる上では名前で識別される方が利便故、その旅人が呼んだマウスをそれがしの名としたで御座るよ」

 

(……旅人がマウス……もしかして俺と同じユグドラシルのプレイヤーか? それでこいつを見てマウス……ネズミ? いや、たしかにハムスターはネズミの仲間らしいけど、お前だからってマウスって……あの人が聞いたら怒りそうだな)

 

 アインズ・ウール・ゴウンに所属していた、ハムスターをペットとして飼っていた人が今の話を聞いたら、確実にそのプレイヤーに詰め寄るなとモモンガは考えた。考えたが、見たところこのジャンガリアンジャイアントハムスターは、マウスと言う名前を気に入ってるみたいなので、真相を教える必要はないだろうとモモンガは自らの内に色んな言葉を引っ込めた。

 

 ともかく守護魔獣と言うマウスに出迎えられた一行は、今日はもうすぐ日も暮れると言う事で、一度村に泊まる事になった。

 

 ンフィーレアは村長のところに挨拶に行くと言うので、モモンガ達もご同行することに。挨拶も終えたら、ンフィーレアが良く貸して貰っていると言う空き家に向こう事に。

 

 その途中、ンフィーレアの恋人と言う人物に出会い──

 

「あ、モモンガさん!」

「モモンガだ! カルネ村に用事?」

「エモットさんにネム! ンフィーレアさんの彼女って、エモットさんの事だったのか!?」

 

 エ・ランテルでヒントをくれた姉妹との再会だった。

 




マウス:原作名森の賢王(ハムスケ)。原作では強大な魔獣でドブの大森林の一角を支配していたが、こちらでは同レベルがそこそこいるので森から追い出された。ソロ活動って辛いね。マウスと呼んだ人物は良く喋る事からmouthと呼んだ模様

ヤコフ&マリヤ:原作では物語前に死亡しているンフィーレアの両親。名前は捏造
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。