転移後世界の仕様が変更されました   作:リセット

29 / 39
レベル29 連合国最強の王者

 コキュートスが思わず反応してしまう、魅力的な小鳥の美音──モモンガには煩わしい蝉の鳴き声──を振り切り、ようやく宮殿に辿り着いた一行。大した距離は歩いておらず、この程度で疲れる事はない。その筈なのに、モモンガとアウラはぐったりしていた。

 

「……この街……あたし苦手かも」

「奇遇だな。私もだよ……別に実害とかはないのに、どうにも精神的に疲れるな。精神鎮静も働かない程度のあれだから、そこまでストレスでもないが」

 

 実害はない。戦らないかがかなり多いが、彼らは直接決闘を申し込むようなことはしなかった。よう兄ちゃんちょい面かせやみたいなイベントも特になかった。なので、本当に実害はないのだ……戦的アピールが真意を知った後だとモモンガ的に鬱陶しいだけで。

 

 そのアピールを聞いてもセバスはそれほど反応しなかったが、コキュートスは違った。時折モモンガの方を向いては、無言で何かを訴えていた……そちらをモモンガは努めて見ないよう頑張った。反応したが最後、男の世界とやらを見せられそうだったから……

 

「気を取り直そう、アウラ。ここまで来たんだ。流石に、領主になるほどの人物がアピールをするとは思えん。だから、ここはきっと安全……かもしれん」

「モモンガ様でも、あまり自信が持てないんですね」

「……すまない」

 

 頼むからまともな人物であってくれと、モモンガは心から祈る。これであって開口一番、剣を鳴らす人物だったらどうしようとモモンガは頭を抱えたくなる。逆にコキュートスは、セバス相手に一本は取れる強者がいる街でなお最強と呼ばれる戦士に今から会えるのだと、若干息が荒くなっていた。

 

 宮殿の門には警備兵がいたが、ランポッサから貰っていた手紙を見せたらすんなり通して貰えた。そこから侍女の案内で応接間に連れて行って貰い、椅子に座って待つこと15分。

 

「遅れてすまない。少しばかり仕事が長引いてしまってな……私がリ・エスティーゼを預かるランポッサだ」

 

 くだんの人物が現れた。その人物を見て、たしかに筋骨隆々だとモモンガは感じた。ユグドラシルにいた、仁王像とやらがモチーフになったと言うモンスター。そんな筋肉モンスター達に見劣りしない立派な体格で、椅子から立上り礼をするモモンガよりも大きい。

 

(でかいな。俺より頭1個分は大きい。見た目だけならかなり強そうだが……分からん。ここでも魔法は使えないから、俺だと初見の戦力評価が難しいな。それと、あとから入って来た小さな少女は誰だ? 見た目だけならアウラと変わらないぐらいの年齢だが)

 

 モモンガが誰だろうと疑問を持った相手はキーノだ。プレイヤーがランポッサを訪ねてくると知った彼女は、相席を申し出た。どんな人物なのかを見ておきたいと。

 

「ランポッサ殿。こうして謁見の場を設けて頂いてありがとうございます。そちらの少女はどなた様でしょうか?」

「こちらは私の師にあたる人物で、キーノ様と申します。モモンガ殿の話をしたら、異邦から来た人物と私もあってみたいと申されまして」

「キーノだ。よろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願い致します」

 

 コキュートス、セバス、アウラと挨拶をすませてから──

 

「私どもの元で、そちらにいるコキュートス殿が武技を習いたいと言うお話でしたか」

「急な話で申し訳ありません。ランポッサ殿が、連邦でも最上位の戦士と伺い、良ければ師事できないかとラナーさんやラキュースさんに紹介して頂いたのですが……御迷惑でしたか?」

「そんなことはないとも。むしろ、娘がモモンガ殿に何か迷惑をかけていないだろうか? あの子は時折突飛なことをするので、私も困惑することがありますから」

「ご迷惑だなんて! 私の方も仲間であるパンドラが、迷惑をおかけしていないか心配ですよ」

 

 モモンガはランポッサとやり取りをしながら──

 

(す、すげえ! めちゃくちゃ普通の人だ!! 家族絡みで心配とかするすごく普通の父親だ! 剣をチャキチャキしたりとかもしない、穏やかそうな良い人! ちょっと見た目が厳ついぐらいで……)

 

 その厳つさも、ナザリックで多数の異形種に囲まれているモモンガにとっては大した問題ではない。そもそも亜人や異形はこのリ・エスティーゼにもいるのだ。それらと比べたら、ごつい老人の一人や二人なんだと言うのか──

 

「──コキュートス殿がガゼフから武技を教わる。娘や娘婿が世話になっているようですし、私は構わんよ……しかし、一つこちらからもお願いがある」

「お願い? ですか……」

「私には二人の直弟子がおり、一人は訓練教導官をしているガゼフ。そして、もう一人がブレインと言うのだが……ガゼフではなく、ブレインの方から教わっては貰えないだろうか」

「教えて頂けるのであれば、それだけで私どもとしては助かるので大丈夫ですが……ガゼフ殿では何かまずいのでしょうか?」

 

 モモンガがそう問うと、ランポッサは顎髭を撫でながら──

 

「ブレインも以前は教導官をしていたのですが、ガゼフと比べるといかんせん教え方が雑な物でして。前にも新兵の訓練を任せてはみたものの、どうにも上手くはいかない。そこでコキュートス殿にお願いしたいのは、貴方と言う弟子を通じてブレインを成長させて欲しいのだ」

「弟子で成長?」

「弟子を取ると言うのは、師にとっても学ぶことが多い。私が見たところ、コキュートス殿はそこそこの腕があると見受けられる。実力が近い者を弟子とすれば、ブレインもまた一つ上のステージに行けるやもしれません」

「……ソノ、ブレインナル人物ハドノヨウナ武人ナノデアロウカ? モモンガ様ノ命デアレバ相手ガ誰デアレ師事ヲ仰ギマスガ……」

「その口ぶり……自分より弱い相手の弟子になるのはどうにも、と言うところですかな。その点は安心なされよ。私から見ればまだまだ未熟な弟子ではありますが、あれでも我が『両翼』とまで見做されるようになった武芸者。コキュートス殿も納得されるかと」

 

 『両翼』と聞いて、そう言えばとモモンガは思い出す。ランポッサがいなければ、『両翼』なる者らが連邦でも強者として名が挙がっていた戦士の筈だと。

 

 コキュートスも最初はガゼフなる人物と伺っていたところに、ブレインならどうだろうかと持ち掛けられたせいか怪訝そうな反応をしていたが、ランポッサ──連合国でも頂点に立つ者が太鼓判を押したことに納得したのかハイと答えて──

 

「デハ、ブレイン殿ニ教エヲ乞ウトシテ……ソノ前ニ、ランポッサ殿ト一度ダケ、試合ヲサセテ頂キタイト願イマス」

「……コキュートス。ランポッサ殿は、領主の仕事がある故時間が取れないから、最初はガゼフ殿に弟子入りする予定だった。そんな忙しい御仁の時間を頂戴しているのだ。これ以上の要求はするべきではないぞ」

 

 コキュートスがランポッサと戦いたいと申し出たのを、モモンガは上司として止めようとする。当初の予定とはかなり違うが、それでも武技を学ぶ場を手に入れられたのはランポッサの厚意によるところが大きい。そんな恩人とでも呼ぶべき人物に対して試合をして欲しいなど──

 

「モモンガ殿、コキュートス殿を叱らないでやって欲しい。リ・エスティーゼに来て、修行をしたいと言う者らから挑戦を受ける事は珍しくはありませんから……して、コキュートス殿。なぜ、そなたは私とやり合いたい?」

「人伝デハアリマスガ、ランポッサ殿ガ最モ最強ニ近イト聞キ及ンデオリマス。4年ニ一度開催サレル、武神祭デ優勝シ続ケル王者ダトモ。私モ武人トシテ腕ヲ磨キ、彼方ヘト至リタイト願ッテオリマス。故ニ、数多ノ猛者ガイルコノ都市デ、ナオ王者トシテ君臨スル最強ニ挑ミタイ」

「……うむ。よい返答だ。武人だ武者だとどれだけ言おうとも、私たちは──」

 

 ランポッサは自分の太い二の腕を叩く。

 

「これの強さを磨くことに意義を見出しておる。自分が一番強いのだと証明したい。私の娘を筆頭に文化人が文明を発展させようとも、原始的な強さに飢えていて、その渇きを満たしたい。だからこそ強い者がおれば挑みたくなる……そうであろう?」

「ソウダ!」

「良き哉。ではついてまいれ。訓練場で一汗かこうではないか」

 

 ランポッサが立上り、先に部屋を出て行った。その後をコキュートスがついていく。それらをポカンとモモンガは見ていた……彼だけでなくアウラも話についていけてないのか唖然としている。セバスですら若干困惑している。キーノはあの馬鹿小僧と眉間を抑えていた。

 

「ええと……キーノ殿……ランポッサ殿は、いつもあのような感じなのでしょうか?」

「殿はいらん、キーノで良い……昔はそうでもなかったのだが、子供ができてからは他者が育つのを見るのが楽しいらしくてな。超えるべき壁として挑まれるのは、大変名誉だとか言ってたことがあるな。いつか私を倒せる戦士が出て来てほしいとか、なんとか……私たちも訓練場に行こうか」

 

 キーノが椅子から立ち上がり、こっちだとモモンガらを案内してくれる。その間に──

 

「アウラ。ランポッサさんだが……コキュートスに勝ち目はあると思うか?」

「現状では、一対一でやるなら勝ち筋なんてないと思います。あたしがみたところ、あのお爺さんのレベルは100です。でも……ううん。確実に実力はコキュートス以上。とてもじゃないけれど、肌に感じる圧だけでも背筋が凍るかと思いました」

「そうか……セバスも同じ意見か?」

「はい。戦気とでも言いましょうか。私が感じる事の出来る気の流れですが、ランポッサ様のそれは次元が違います。恐らくにはなりますが……『神殺し』を装着されたンフィーレア様。ステータスだけであれば、あの方に匹敵します」

「あれか……あのレベルか……ンフィーレア君は戦士ではないから、スペック頼みの力押しだった。対してランポッサさんは闘い方も熟知している筈。あの馬鹿みたいなステータスに技量も伴っているのだとしたら……コキュートスでは勝てないな」

 

 モモンガはあのパワードスーツ時のステータスを、HPとMPの量から大体140から160だと推測している。高レベルトロールを一撃で叩き潰していたことから、物理攻撃力などもその辺だろうとも。

 

(仮に物理攻撃が160だとするなら、コキュートスより60は高い。ちょうど俺とコキュートスの物攻差がそれぐらいだ。つまりランポッサさんとコキュートスが戦うのは、俺が<完璧なる戦士>抜きでコキュートスと近接戦をするようなもの。とてもじゃないが闘いなんて成立しない。レベル30台の戦士職が100レベルの戦士職と近接戦なんてすれば、一方的に嬲り殺しにされるだけ……しかし160か。俺の計算が合っているなら、ランポッサさんはリビルドを行っている。それも理想型になるまで)

 

 自殺リビルドによるリセマラ作業。そんな気の遠くなるような行為を、セバスらの目算が正しければランポッサは行った事になるとモモンガは勘付いた。

 

 ……ユグドラシルとこの世界で獲得する職業(クラス)。クラスレベルが上がるたびに肉体のスペック──ステータスが向上していく。ステータスが高い方が強いは強いのだが、ユグドラシルでは基本的に、ステータスの高さよりもスキルの強さの方が重視されていた。ステータスを上げるよりも、多数のスキルを揃えて対応可能な状況を増やしたり、スキル効果の重ね掛けでステータスを一時的に強化する方が強かったからだ。

 

 それにステータス特化で育成しても、特化型でない者とそこまで差が広がらない。例えば異形種は人間種よりもステータスは伸びやすいが、ガチ方向で作成されたマーレとシャルティアに絶望的な差はない。マーレよりシャルティアの方が強いが、戦い方と装備を工夫すればマーレでもシャルティアには勝てる。ステータスの差などその程度だ……しかし──

 

(それはユグドラシルでの話。この世界でのクラス獲得のルールを利用して、最上位だけでビルドを構築したなら話は違う。ステータスの差だけで、同じレベル100同士でも大人と子供の戦力差になる)

 

 下位・上位・最上位のクラスで上がるステータス補正値は、ポイントにしたなら1・2・3となる。仮に下位のクラスだけで100レベルを作成したなら、補正値ポイントは100だ。

 

 こんな非効率なビルドをする輩は、ユグドラシルにはいない。実際には下位45レベル、上位35レベル、最上位20レベルと言った構成になるだろう。仮にこの例と同じでキャラを作成したら、総補正値ポイントは175。

 

 では最上位のみビルドならどうなるかと言えば、補正値は300。ユグドラシルのビルドと比較するなら、1.7倍もの補正値になってくる

 

(勿論常に1.7倍じゃない。異形や亜人なら種族レベルも入ってくるから、計算はもっと複雑になる。獲得しているパッシブタイプのバフスキル次第ではさらに変動するだろうから……1.5から1.6倍。それぐらいに収束する……たぶん)

 

 ただこの計算は、セバスらが感じ取ったランポッサの能力値。それを参考にするなら、間違ってはいないとモモンガは確信している。戦士職ならばHPと物攻は100手前まで伸びる。これに1.5か1.6を乗算したら150前後になる。それならンフィーレアのHPとほぼ同等なのだから──

 

(仮にステータスが150としよう。大体レベル換算で120レベルから140レベル相当になるから、真ん中をとってレベル130ぐらいの強さがランポッサさんだ。ぷにっと萌えさんが、100レベルが一人増える度にチームとしての強さは5レベル加算したらいいよと言ってたから、130ならちょうど100レベル六人の1チームぐらい。つまりランポッサさんは、俺6人分相当の戦力だ……コキュートス。お願いだから死なないでくれよ)

 

 装備品やその他諸々の相性なりでこの推測も大幅に変わりはするが、それでもアウラやセバスがコキュートスでは無理だと判断したのだ。ならば、どちらにしろ戦力には酷い差があるとしか言えない。

 

「そう心配するな。やつは弟子には厳しいが、当人が望まない限りは不用意に殺したりはしない。それでも不安なら、小僧が調子に乗る前に私が止めてやる」

 

 モモンガが不安がっているのを察したのか、キーノが軽い調子で言葉を投げてくる。その様子に、えらく簡単に言うものだとモモンガは思いながら──

 

「キーノさんならば、ランポッサ殿を止められるので?」

「可能だ。流石に本気の殺し合いとなると勝敗は分からんが、冷や水をぶっかけるぐらいなら訳もない」

「モモンガ様。キーノ様ですが、この方からもンフィーレア様によく似た気配を感じます」

 

 セバスの言葉に、内心デスリビルドの実例三人目が出ちゃったよとモモンガは嘆く。なぜ良識型中二暗黒騎士と言い、太陽王と言い、目の前の幼女と言い、どいつもこいつもそんな簡単に狂ったリビルドを実行してしまうのか……

 

 いやだいやだと首を振りながらも全員で訓練場に辿り着くと、コキュートスとランポッサは向かい合って武器を手に握っていた。

 

 コキュートスは四本の腕全てに武器を握った本気状態。彼が持つ中でも最強の装備である、神器級武器──『斬神刀皇』まで持ち出している。

 

 対するランポッサが持つのは刃渡り1mはありそうな柄のない直刀。見た目だけであれば何の変哲もないが──

 

「ソノ直刀……一体ドコデソレホドノ業物ヲ」

「これは元々ある竜王が持っていた代物で、彼の死後キーノ様を通じて我が元に来たものだ。コキュートス殿が持つ刀、それもまた最上位の業物。それほどの刀を持ち出すのであれば、こちらもまた一番の名刀を抜かねば無作法という物」

 

 ランポッサの直刀は、始原の魔法(ワイルド・マジック)による生成物。決して神器級装備に見劣りはしない。

 

「ソウカ。装備ノ質モコチラニアワセテクレルナラバ有難イ」

「良き目をする武芸者に、手加減などするべきではないからの……行くぞ」

 

 先に仕掛けたのはランポッサだった。戦士ではないモモンガには動きが追えなかった。セバスとアウラですら、何かが動いたとしか言えない。同じく戦士ではないので、ランポッサと同格のキーノもあまり良くみえていない。

 

「ヲォォォォ!!」

 

 コキュートスもセバスらと同じく、動きなど見えていない。それでも勘に任せて四つの武器を交差させて前に突き出す。衝撃──

 

 蒼い巨体が宙に浮き、訓練場の壁に激突──する前に、後ろに回り込んでいたランポッサが受け止める。

 

「いかんいかん。また壁が壊れるところじゃったわ」

 

 ランポッサは受け止めたコキュートスを地面に降ろし、背中を無防備に見せながら元の位置に戻ろうとする。その背をコキュートスは攻撃しない……出来ない。

 

 なぜなら蒼い戦士の四本腕が小刻みに震えているから……先の先制をなんとか防御したが、たった一撃受けただけで酷く痺れているのだ。

 

「……ナント……ナントイウ」

 

 最強とは聞いていた。それでも多少は善戦できると……違った。狂気の果ての産物は、同じ100レベル同士でも絶望的な差を生じさせていて──

 

「クッ! マダダ!! フロスト・エンチャント! 千手観音(サハスラブジャ)!!」

「ほう? 冷気を武器に纏わせたか」

 

 コキュートスが持つ装備全てに、冷気の霜が宿る。冷気攻撃がどこまで有効かは不明だが、純粋に武器攻撃力がスキル効果で上昇する。繰り出されるのはスキルによる連続攻撃。四方向から斬撃・打撃・刺突、複数の凶器がランポッサを削り殺さんと迫りくる。

 

 それら全てが──届かない。武技もスキルも使わず、ただ直刀を振り回して鉄の雨をランポッサは振り払う。サハスラブジャの効果時間が終了した時には……無傷でコキュートスの前に立っていた。

 

「ふぅむ……並の者なら、今ので挽肉に代わっておるな」

「これが、これがこの世界の最強か……ふはは……おっかね」

 

 呑気に挽肉などと言うランポッサに、観戦していたモモンガは本音を零した。少なくとも、ランポッサが言うように今の直撃を貰っていたら、100レベルでも大ダメージは普通免れない。仮にノー防御でモモンガが喰らっていたら、刺突と斬撃は耐性でなんとかなるが、打撃が混ざっているので今のでHPの半分以上が削れている。それらを全て当然のように対処する生き物など、おっかねえ以外でモモンガには表現出来なかった。

 

「今のサハスラブジャとやらが、お主のスキルか?」

「ソウダ……」

「今のが、コキュートス殿の本気で良いのだろうか?」

「……ソウダ」

 

 本気と聞いて、ランポッサは暫し考える。今のやりとりで、コキュートスが一体全体、どんな存在なのかを見抜いていた。彼がどういう存在なのかを……

 

 ──これがヴァイシオン様の仰っていたNPC……なのだろうか。プレイヤーに付き従う、従属なる神。目的のためだけに造られた、ある種の魔法生物のようなものとは伺っていたが、なるほどその言葉は真実かもしれぬ。しかし……

 

 それだけでもなさそうだと心の中で締めながら、コキュートスがまだ()()()……それも一桁程度のと見抜いたランポッサは、この試合がコキュートスにとって良き物に少しでもなればと老婆心から──こちらも少しだけ()()を見せようと決めた。

 

「本気を出す若人相手に、手を抜くのは失礼。こちらも本気で応えてやらねばならん……力に力で応じてこそ、王者の故よ」

 

 <脳力全開放>

 

 ランポッサがポツリと呟いた瞬間──空気が軋んだ。戦士ではないモモンガは、魔法を使わないと相手の戦力が測りにくい。そんなモモンガですら、今のランポッサを前にすると思わず後ろに一歩下がってしまう。

 

「な、んだ? 精神作用は無効化されるはずなのに……ランポッサさんから感じる、この重圧は……」

 

 アウラ達なら何かわかるのだろうかとそちらを見たモモンガだが──

 

「うそ……なにあれ。あんなの人間じゃ……コキュートス! もういいでしょ!! 死ぬためにここに来たんじゃないんだから!! いますぐ降参しなさい!!!?」

「コキュートス様! ここまでです!! これ以上すれば、貴方様はお亡くなりになる!! モモンガ様の前で死ぬことなど許されません! すぐに試合を中断するべきです!!」

 

 二人には何が見えているのか、必死でコキュートスに試合を止めるように大声を出している。ただならぬ様子に、流石にモモンガも今のランポッサが尋常ではないと気づく。

 

「ああ、もう。あの馬鹿! この都市が手抜き厳禁とは言え、試合で<脳力全開放>まで使うやつがあるか!!」

 

 キーノがランポッサに呆れながら飛び出し、コキュートスの前に立つ。直刀を手に正眼に構えていたランポッサは、キーノが飛び込んで来た事に少し驚いていた。

 

「お前は! 紹介で来た相手を! 殺す! つもりか!!」

「も、勿論殺しなどしませんとも! ただ、若人にこんな領域もあるのだよと、魅せてあげたかっただけでして……」

「嘘をつけ!? どう見てもやる気の目をしていただろうが! はい、中止! ここまで! 小僧とコキュートスの試合は終わり! 両者ともそれで良いな!?」

 

 キーノがはい止め止めと手を振って、試合終了を告げる。その剣幕に押されたのかランポッサは小さな声ではい……と従った。コキュートスはと言うと──

 

「……………………」

 

 何かを考えながら、武器を握る自分の手を眺めていた。




100レベルが一人追加で5Lv分:くがね先生の作者雑感にある味方のレベルの1/20とかが加算?を採用

ランポッサ
Lv.100
職業:剣神5Lv 拳聖5Lv 他最上位戦士職5x18
HP:190
MP: 25
攻撃力:220
防御力:200
素早:180
魔法攻撃力:0
魔法防御力:115
総耐:120
特殊:110
総計:1160
後書きキャラ紹介第二弾。武技無しでWEB版たっちさんと同じ強さ(シャルティア5人分)。このぐらいまでは自殺リセマラをすれば誰でも成れる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。