転移後世界の仕様が変更されました   作:リセット

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レベル36 黄金希望お披露目会①

 ラナーとパンドラの共同開発品。以前モモンガが見た蒸気機関とやらの他にも、色々とプロトタイプが出来たらしいので、一度見に来て欲しいと連絡があった。

 

 とくに今回は多数に見て貰い寸評して欲しいとの事なので、メンバーをいつもより増やしている。

 

「こ、ここがエ・ランテルですか。ナザリックほどの荘厳さは感じませんが、活気は凄まじいですね」

「……ユリ姉緊張してる?」

「少しだけね。貴女はどう? モモンガ様に少し頭を操作されたけれど」

「問題ない。記憶の方も、問題なく改竄されてる」

 

 連れて来たのは、プレアデスのユリとシズだ。ナザリックに属する僕の中で、最初からカルマ値が善に傾いている二人は、比較的外に連れ出しやすいタイプ。

 

 今まではレベルの問題からナザリック内に引き籠らせていたが、蠱毒によるブーストで一応100レベルまで引き上げ済みだ。もっとも二人のレベルは蠱毒による上昇なので、それほどクラスや種族が厳選されておらず、マスターソースを確認したモモンガが──

 

「うわ、何これ」

 

 と思わず口を手で覆うぐらい酷い有様だ。持ち合わせている装備品の質とあわせて評価するなら、プレイヤー基準で良くて下の中。二人がかりでも元から100レベルだった守護者と戦えば、一方的に転がされるぐらいの乱雑ビルドだった。

 

(もう少し厳選させてあげれば良かったか? でもなぁ……リビルド無しで厳選なんてまず無理。結局現地式かナザリック式のどっちかを行わないと、基本的に本当の意味で強くなれない。現地式……現地式か)

 

 現地式はモモンガ視点でまぁまぁ狂い気味な方法で、なおかつ時間がかかるデメリットがあるものの、ナザリック式にはないメリットもある。完成させるためにそこそこの死闘を潜り抜けないといけない分、プレイスキルが向上する。それに死闘に慣れる事で、闘いにおける覚悟なども備わっていく。

 

(実際に命を賭けた決闘か……俺は<星に願いを>がロストする危険性があるから出来れば避けたいが、一度くらいはやっておくべき案件ではあるな)

 

 超位魔法<星に願いを>。魔法詠唱者レベルを95以上にしないと取得できないこの魔法を、モモンガはユグドラシル時代95になった瞬間に習得している。クラス変更で紐づいていた魔法が使えなくなった以上、魔力系レベルが95を下回ったらこの超位魔法も使えなくなるだろう。

 

(信仰系の死霊ビルド向けクラスも獲得したかったが、この縛りがある以上俺のビルドは装備関連を除いたとしても、魔力系から必要以上に動かせない。本当は信仰系死霊型まほせんみたいな、ネタに見えるガチビルドにしたかったが、<星に願いを>がロストする危険性を抱えている……やりたかったな、死霊系パラディン)

 

 多数のアンデッドを召喚し、パッシブスキルで常に負のエネルギーを全体放出させながら、味方は回復、敵にはスリップダメージを強いたりなど面白ビルド例をいくつかモモンガは閃いていたが、それを試すには現状では危険すぎる。命をBETしなくとも良くなったのだから、今はこれで満足するべきだなと改めて思い直しつつ、モモンガは今回連れて来たプレアデス二名との会話も少し思い出す。

 

 

 

 

 

「デミウルゴスから聞いてはいるが、二人ともリビルドには抵抗がないそうだな」

 

 ナザリックの誰をリビルドさせるか。これの第一候補はセバスだが、第二候補、第三候補はこの二人だ。モモンガの望む共存の道を選べて、なおかつ当人らが再構築させることに抵抗がない僕。

 

 推薦したのはモモンガの命でリストアップしたデミウルゴスだ。共存の部分にはデミウルゴスはまだまだ懐疑的だが、この二人ならばモモンガも面接を通してくれるだろうと予測しての選出である。

 

「はい! 現在の私たちでは、戦闘メイド(プレアデス)としての責務を全う出来ません。私の意志で自らを強化する機会を頂けるのであれば、賜りたくお願い申し上げます」

「私も、モモンガ様の傍に立つ以上は、お役に立ちたいと心から申し上げます」

「ふぅむ、その行為はお前達の主、やまいこさんとガーネットさんへの背信行為にあたらないか?」

「なります。その時には、やまいこ様から御叱りを受けるつもりです。ですが、どんな御叱りを受けるにしても、今はモモンガ様の御役に立てなければ、やまいこ様の御前に跪く資格すら持てません……まずはやってみてからです!!」

 

 ユリはごちゃごちゃと考えるよりも、まずはリビルドをしてから考えれば良いのですと脳筋だった。うーんこのやまいこさんイズムとモモンガは呟いたとかなんとか。考えるより先にまずは殴れがやまいこ思考で、その要素を受けつぐユリもまた脳筋戦士。

 

「私も問題ありません。自動人形(オートマトン)は常にアップデートされますから」

「アップデートパッチ扱いなのか?」

 

 シズの方は更新データのようなものだから問題ではないらしい。ナザリック内のギミックデータを全て記録するシズを外にそのまま出すのは問題なので、記憶の方を処理したが、それも最新更新として自分の中で処理するから問題なかったらしい。

 

 

 

 

 

(思い返してみれば、僕ごとに傾向の違いが見えて面白いな)

 

 などとのんきな思考のモモンガがいたが、これは今はおいておこう。ともかく面接はあるものの、これでリビルド要員が三人は確保できた。全員がリビルドを完成させるとなると、半年は必要なのでこれはこれで気の長い話ではあるが……

 

「二人ともどうだ? ナザリックから初めて出ただろうが、中々良い都市だろここは」

「はい。ゴミなども落ちておらず、通りは清潔。建物の窓ガラスは透き通っていて、かなりの技術力があると感じ取れます」

「悪くありません。モフモフの可愛い物も多いので……」

 

 ナザリックでの回想を終えたモモンガに話しかけられて、二人は反応する。シズの視線は、時折ショーウインドに飾られた人形やらに注がれていた。彼女は可愛い物好きで、その御眼鏡に叶う代物がエ・ランテルには多かった。ユリはメイドとして汚い部分は見過ごせないようだが、清掃用ゴーレムなどが通りを掃除するエ・ランテルでは、目に見えるゴミなどは落ちていない。随分良い顔をしながら、二人は初めての外出をそれなりに楽しんでいた。

 

「そうか。それは良い事だ……もう少しお前達には観光をさせてやりたいが、そろそろ時間だ。パンドラのところに向かおうか」

 

 いつもの四人に加えて、プレアデスの2名を加えて六名。全員でラナーの研究施設にお邪魔する。

 

「ようこそおいで下さいました! モモンガ! さまぁ!! ようやく……ようやく、世紀の大発明のお披露目会で御座います!!!」

「うわぁ……凄くうるさい」

「こら! モモンガ様の僕に対して、なんてことを言うの。申し訳ございませんモモンガ様! シズにはあとできちんと──」

「いや、それはいい。私もシズの意見に賛成だ。あいつは……うん。あいつはうるさい」

 

 テンション爆上げ埴輪太郎なパンドラの声にしかめっ面をするシズに、モモンガは分かるよーと同意する。許されるなら、この場で全設定を書き換えたいのだから……

 

「お久しぶりですラナーさん。今日はお招き頂きありがとうございます」

「こちらこそ、来ていただいてありがとうございます。そちらの方々が、今日の為の特別ゲストの方々ですね。初めまして、ラナーと申します」

 

 ラナーの挨拶に、ユリとシズも深々と腰を折って挨拶を返す。お互いの挨拶が終われば──

 

「では早速ですが、まずは本日の目玉から紹介させて頂きます。こちらをどうぞ」

 

 そう言ってラナーが全員に見せたのは、小型の瓶の中でフヨフヨと浮く謎の光る玉だ。全員、これはなんだろうと首を傾げる。

 

「なにこれ? 飴玉?」

「飴玉ではありませんよ。これはですね……なんとプラズマです!」

「ぷら……プラズマ?」

 

 プラズマと聞いても、モモンガとマーレ以外はピンと来ていないのか内心首を傾げたままだ。モモンガにしても、どこかで聞いたことがあるなぐらいの薄い反応。しかし──

 

「え、えと。プラズマって、あのプラズマですか? SF小説に出てくる」

「そのプラズマで間違いありませんよ」

 

 マーレはよく小説を読み、SFも嗜んでいる。そのおかげでプラズマが何かを、ふんわりとだが理解している。理解しているからこそ、えっ!?とびっくりしていた。

 

「どうしたのマーレ? その、プラズマ? てのは、そんなにすごい物なの?」

「うぇ! え、えと、どういえばいいんだろ……」

「マーレ様がお困りのようなので、私の方から詳細を説明させて頂きます。プラズマは、言ってしまえば第四の状態です」

「第四? 第一から第三があるのか?」

「あります。気体・液体・固体……これとは別に、超高温により電離した気体の状態をプラズマと呼びます。通常、プラズマは高温状態でないと霧散してしまうのですが──」

「このように()()()()()させることで、超高温を維持したまま、プラズマとして固定させられました」

 

 モモンガが更に詳しい説明を求めてみたところ、ナザリックの図書知識からプラズマの知識を覚えたラナーが、プラズマの状態でゴーレムに出来ないかを検討したらしい。ゴーレムと言えば土など固体が一番多いが、水などを素材としたゴーレムもあるらしい。では気体のゴーレムもいるのかとなるが、これは実用性の乏しさや需要面の問題もあって研究者は殆どいない。

 

 しかし物体には第四の状態があって、それをゴーレムにして維持させられるなら──

 

「これは画期的な発明ですわ! 超高温を発生させる魔法に比べて、ずっと少ない魔力量で維持させられます!」

「そうなんですか?」

「あくまでも、ゴーレムとしての維持分だけで済みますから。ゴーレムは、基本的には何の物質を素体とし、どれぐらいの大きさにしたかによって難易度が変化します。このプラズマ・ゴーレムの元になったのはただの土です。土に熱を加えてプラズマ化させて、すぐにゴーレムにしました。この場合、消費する魔力は土をゴーレムに変えた時と同じ量だけ。直接超高温体を発生させて維持する魔法となると、第十位階以上……使い手が希少な第十一位階の魔法しか存在しません。それがお手軽に再現出来、なおかつその状態を維持させられる……とんでもないことですの!!」

「超高温なのに、瓶が溶けたりはしないんだ……」

「あの瓶には炎に対する完全耐性が付与されていますから、例え何千、何万、何億度であっても溶けたりはしませんよ」

 

 パンドラがアウラの疑問に答える。その傍らで、嬉しそうなラナーの言う第十一位階ってなんだよとモモンガが質問したところ、どうやら超位魔法の事らしい。たしかに超位魔法になら、超高温で敵を焼き尽くす魔法もある。

なので、そのゴーレムは兵器として運用するのかと聞いてみたが──

 

「兵器ではありませんよ。もっとすごい物です。構想はあるので、そちらが実現したら、またご紹介させてもらいます」

 

 とはぐらかされた。モモンガは一体何に使うんだろうなーと頭を巡らせる。

 

 常温下でも超高温なままのプラズマ。それを何に転用し、何に応用できるのか。それをモモンガが知るのは、もうちょっと後の事だった。




パンドラの箱は開かれた

プラズマ・ゴーレム:パンドラ&ラナーの合作。常温でも維持される超高温のプラズマ。パンドラはこれをワールドアイテムに匹敵する発明と絶賛したとかなんとか
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