転移後世界の仕様が変更されました   作:リセット

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レベル37 黄金希望お披露目会②

 プラズマ・ゴーレムの紹介が終わる。ラナー自身はプラズマ・ゴーレムが一番の目玉として発表をしたのだが、特段好反応が無かったことにちょっとだけ落胆した。とは言えこれの真価を魅せるには、ラナーが以前から構想していたとある物品に応用してこそなので、すぐに気を取り直す。

 

「お次はこれです」

 

 今回助手を務めてくれたパンドラの紹介で、新たな次の開発品が一同の前に置かれる。

 

「……眼鏡ですか?」

 

 ユリが真っ先に反応する。彼女が言うように、それは眼鏡だった。眼鏡と言っても、ユリがつけている黒縁眼鏡のようなタイプではなく、保護メガネのようにレンズ部分が大きく作られた物だ。

 

「そちらはパンドラさんから伺った、眼鏡型のウェアラブルデバイスを基に作成してみたものです」

「ウェアラブルデバイスとはなんですか?」

「装着型のコンピュータです。最初はコンピュータと聞いても良く分からなかったのですが、詳しく聞いてみれば、あっ、なるほど……と思うもので。まずはつけて頂ければ分かりやすいかと思います」

「コンピュータ……良く分からないが、つけると分かるのか」

「はい。プロトモデルを13台用意していますから、全員装着してみてください」

 

 今回集まったのは、ナザリック組も併せて11名。ラナーが言うように全員分あるので、モモンガらは手渡された眼鏡をかけてみた。

 

 するとレンズ部分にSystemstart, alles grün。Smart Glasses online……fertigと文字が浮かび上がり、装着者の視界が広がる。モモンガの視界には多くの文字が浮かんでいる。横にいたアウラを見れば、彼女の頭上に赤バーと青バーが浮かんでおり、その横には体力・魔力の文字がある。

 

「これは……エネミーステータス画面か?」

 

 モモンガには非常に見覚えのある景色だった。ユグドラシル時代に散々見た画面。敵のHPやMPを調べておけば表示され、そのほかにもステータス調査の魔法などを駆使すれば、以降は敵対プレイヤーやモンスターのステータスをリアルタイムで把握できた。

 

「その通りですモモンガ様! こちらは至高の御方が残されたスマートグラスなるアイテムを参考とし、敵性生物の脅威判定に難度判定、魔力量や筋力、耐久力の判定などを視覚情報として表示など、様々な機能を持たせた眼鏡となります」

「ほう……」

 

 ユグドラシル時代であれば、ゲームUIが自動で表示してくれていた様々な項目。それらはこの世界に来て使えなくなった機能の一つだ。結構あれは便利だったんだよなと思っていたモモンガは、それがこの世界で再現されたのだと理解した。

 

「<生命の精髄>や<魔力の精髄>を始めとした、ステータスを調べる魔法は数多くあります。他にも、レンジャーの方などであれば、敵対者の筋力や魔法詠唱者の魔法破壊力を目視したりなど……従来であれば、必ず一緒に行動する者の中に、それら技能や魔法を修めた熟練者が必要でした」

「しかし、これがあればその必要もなくなります。大まかな難度の測定も可能ですので、未熟な傭兵などが敵対者の脅威を見誤って命を落とす可能性も低くなるでしょう」

 

 難度測定の方は、HPやMP量にステータスなどから大体こんなものだろうと測定してくれるのだと、モモンガは教えて貰う。試しにシャルティアをレンズをかけたまま目視したら、HP・MP以外に筋力・耐久力などの数値と共に、難度305と表示された。

 

 その他も目視してみれば、この部屋に集まった者らは大抵難度280以上だった。低いのはヴァーチぐらい。しかし──

 

「あ、あれ? モモンガ様だけ、情報が全く表示されませんよ?」

 

 マーレがモモンガを見て、あれれ? と疑問を呈す。たしかに全員モモンガを見てみるが、スマートグラスには何も表示されない。その理由に思い至ったラナーがああと呟き──

 

「モモンガさんは、情報偽装のマジックアイテムを身に着けておられますか? このスマートグラスに使用しているのは低位階の魔法ですので、高度な偽装情報が仕込まれていると、正しく計測できませんの」

「情報偽装……ああ、これか」

 

 モモンガが自分の指を見る。ユグドラシルでは、情報の有無がPVPにおいて戦況を分ける。そのため、プレイヤーはステータス偽装や隠ぺい・攪乱のデータクリスタルを仕込んだ装備やアクセサリー類を身につけるのがマスト。モモンガも例に漏れず、情報偽装や探知無効化の神器指輪を装備している。

 

「これは要改良ポイントですね。情報偽装を見破れる高位階魔法を軸に構築できれば良いのですが、現状の素材では、制約なしでは低位階の魔法しか仕込めません。単機能に絞れば……それだと、どうしても利便性に欠けますわね」

 

 どうやらラナーが望む機能を満たそうとすると、現状連合国に出回っている素材では不十分らしい。巻物(スクロール)もそうだが、より高位階の魔法を使って魔化するのであれば高品質な素材が必要になる。本当に単一で汎用性のない機能だけに限定するなら現素材でも可能だが、複数の機能を持たせるとなると……なのだとか。

 

(高級素材か……スマートグラスのフレーム金属を七色鋼に変えれば、もっと多機能でグレードが高くできるのか? ナザリックであれば七色鉱はあるが、あれにも数の限度がある。<星に願いを>で鉄を七色鉱に変化させられるが、それだって大量に変化はさせられない。流通に乗せるのであれば、安定供給が無ければ話にならない)

 

 技術レベルに対して素材のレベルが追いついていない。この世界の技術が陥っている一番の問題がこれだ。神殺しのような制約による縛り製品は、誰もが使うような一般製品には向いていない。どうしたって専用品になる。しかしどの技術者も必ず夢見るのだ。大量生産品でありながら、高品質で安定した量産品と言う夢を。専用品が高品質なのは当たり前、量産品にどれだけ己の技術を搭載できるのかが肝心なのだ。

 

「この問題を解決するためにも、早急にプラズマ・ゴーレムで()()を実現するべきね」

 

 ラナーがぼそっと呟いた言葉に、何のことだろうと耳の良いアウラが疑問を持つ。『あれ』と聞いても良く分からないが、話の流れ的に現状の素材関連では解決できない問題を解決する手段としか推測できない。

 

 その時が来れば分かるかと軽くアウラは流す。スマートグラスの効果を確かめた一同の前に、今度はこれですと手のひらサイズの板が置かれる。

 

「以前モモンガさんが仰られた、手のひらに乗る程度に小型化された携帯デバイス。あれを連邦の技術力で再現してみました」

「ふーむ。初めてみるが、これがスマホか」

 

 モモンガは興味深げに、手にスマホを取って観察する。四角い金属フレームで出来ており、裏側も金属で覆われている。表側には額縁型タブレットにも使われている透明なガラスが嵌っており、そこにいくつかの文字が浮かんでいた。

 

(スマホか。リアルでも昔は使われてたらしいけど、2050年代に脳内ナノデバイスが台頭して駆逐されたらしいんだよな)

 

 モモンガも初めて触るスマホにちょっと興味が引かれている。それは他の者らも同じなのか、興味深げに眺めていた。

 

「文字が表示されていんすが、どうやって使うでありんしょうか?」

「こちらは額縁と同じで、精神系魔法を使い脳の表層意識を読み取ります。パンドラさんの話によれば、アプリなる魔法で多機能に使用できるらしいのですが、今回はチャットなる魔法しか再現できていませんのであしからず」

「チャットか……どれどれ」

 

 ユグドラシルにもチャットはあったので、一番馴染み深いモモンガがいの一番にスマホに向かって念じてみる。すると文字列が高速で動き、白い背景とアイコンが表示された。

 

「この白背景がチャットの再現ですか?」

「はい。今回作成したプロトタイプ13台を、チャットアプリに登録してあります。このスマホ間のみとなりますが、遠距離でも文字限定でやり取りが可能になりました! 個体識別による文字情報の遠距離通信です!」

 

 モモンガと作成に携わったパンドラ以外はアプリと言われても、やはり良く分かっていないが、遠距離かつ文字のみだが特定の人物と連絡を取れることだけは理解した。<伝言>の魔法をベースに識別可能とし、登録した相手とのみやり取りをすることで誤発信などを防ぐ機構を持たせたのだと。

 

「今回皆さまに来て頂いたのは、これが上手く機能するかどうかのテストも兼ねているからなんです。早速ですが違う部屋に散らばり、このチャットでやり取りをしてみませんか?」

 

 

 

 

 

 ラナーのテストに付き合う事にした一同は、研究所内の部屋に散らばり待機。スマホを片手にモモンガは椅子に座っていた。

 

黄金:あーあーテステス。書き込みテスト中、書き込みテスト中。アイコン良し、名前……あら? 識別名が少しおかしいですわね?

マーレ:そうなんですか?

黄金:表層意識を読み取るので、使用者が自分を識別するのにもっともふさわしい名前になるので、私であればラナーになる筈なのですが……

アインズ:そうなのか……ちょっとまて。こっちも何かおかしいな。なぜ俺の名前がギルド名になってるんだ?

黄金:思念を読み取っているので、モモンガさんの意志表層部の自認名がアインズ……なのでしょうか?

アインズ:ギルド名に思い入れはあるが、自分の名前にするほど自惚れては……まぁいいか。とりあえず、俺はモモンガだ

☩ダーク=ナイト☩:私はダーク=ナイトだ

クライム:名乗りがなくとも、ラキュースは分かりやすい……私のはなんでしょうかこれ? ヴァーチでもイノセンスでもなく、クライム?

アインズ:クライムがヴァーチ君か。俺のアインズと言い、良く分からんバグが発生しているな

セバス:私は……普通ですね

アインズ:とりあえず、全員書き込んでみてくれ。誰が誰なのか、今のうちに把握しておきたい

しゃるてぃあ:シャルティアでありんす!

アウラ:アウラです

僕っ子眼鏡:ユリ……僕の表示もなんかおかしいなぁ!

CZ2128・Δ:ユリ姉も大変だね

セバス:シズは正式名称表記なのですね

びっくりボックス:パンドラズ・アクターで……びっくりボックス?

アインズ:む? パンドラはその名前が出たか

びっくりボックス:のようですね。しかしびっくりボックス? これはなんなのでしょうかね?

アインズ:それは本来であれば、お前に付けられるはずだった名前だ

びっくりボックス:え?

アインズ:俺がその名前にしようとしたら、当時ギルメンの皆から大反対されてな。モモンガさんのネーミングセンスはありえんと。あまりにも可哀そうだと。多数決の結果俺のびっくりボックスは却下されて、ウルベルトさんを筆頭とした面々がパンドラズ・アクターと名付けたんだ……しかしあれだな。こうやって見ると、びっくりボックスも良い名前だと思うんだがなぁ……

黄金:その名前を個体名には……

クライム:ラキュースの暗黒なんちゃらの方がマシかもしれませんね……

アインズ:え?

 

 自分のネーミングセンスを自画自賛したら、ラナーとクライムに全否定された。しかも暗黒波動なナイトの方がマシとか言う暴言付きで。

 

アインズ:待ってくれ! 俺のネーミングセンスの何が駄目なんだ!

☩ダーク=ナイト☩:良いか悪いかは個人の主観によるかもしれないが、ギルメン……たしかモモンガさんの古い御友達は、みんなその名前はないなと否定したのだろ? ならば、客観的にもセンスに駄目だしされて──

アインズ:正論で殴るのやめて! あのるし☆ふぁーさんにすら、モモンガさんだっせぇネーミングぅ!! て煽られたの今でも覚えてんだから!! そ、それにこの世界だって、ンフィーレアくんとか、ユグドラシル基準だと、んーと思う名前もあるし──

☩ダーク=ナイト☩:ンフィーレアの御両親が考えた名前に、陰口のような形で駄目だしするのは良くないぞ

アインズ:グッ、たしかにその通りだ。すまないンフィーレアくん、君の名を貶めるような真似をして……

びっくりボックス:ご安心くださいモモンガ様! 私はどのような名前であれ、御身の御考えを尊重させて頂きます!!

アインズ:そ、そうか? ……うん! そうだな……ちょっとまて。どのような名前であれ? お前、それ言外にびっくりボックスを変な名前と思ってないか?

びっくりボックス:……………………

アインズ:なんか言えよ

マーレ:ぼ、僕はいい名前だと思いますよ

アインズ:マーレ……お前は優しいな

アウラ:そ、そうですよ! モモンガ様のネーミングは最高! だよね! シャルティア!!

しゃるてぃあ:最高なのはペロロンチーノ様でありんす!!

セバス:この流れで梯子を外すとな!!

CZ2128・Δ:空気詠み人しらず

黄金:おハーブ生えますわ!

クライム:ラナーが壊れた!!

黄金:あ、あら? おかしいですわね……今の流れがちょっとクスっと来たので、面白いわねと書き込もうとしたのだけれども……初めて作ったから、どうも挙動が……

アインズ:おハーブ生えますわ……か。ナザリックお嬢様部を思い出すな

マーレ:え? そ、それなんですか?

アインズ:ペロロンチーノさんやウルベルトさんとしたごっこ遊び……かな? 全員でお嬢様の恰好をしながら、お嬢様言葉だけでダンジョンを探索するんだ

マーレ:そ、それって、つまり女装……ですか?

アインズ:女装と言われたらそうかもしれんが……まぁ、ちょっとした戯れだよ。ちょっとしたな

マーレ;そ、そうなんだ……

アインズ:それよりも……喝采せよ! 我が異名を前に喝采せよ!!!

しゃるてぃあ:今度はモモンガ様が壊れた!!

アインズ:なんだこのバグ!? 改めて俺のネーミングセンスはおかしくないと言う書き込みをしようとしたのに、なぜこんな変換されてるんだ!

???:ちくわ大明神

☩ダーク=ナイト☩:今の誰だ!

びっくりボックス:研究所の外にいる誰かの思念を読み取ってしまったのでしょうか?

僕っ子眼鏡:まだプロトモデルだからかな?……ところで、ちくわ大明神って何?

CZ2128・Δ:さぁ?

黄金:ところで、先ほどパンドラさんは元はびっくりボックスなる名前になる筈だったと。薄々そうではないのかと考えていましたが、パンドラさんはモモンガさんが作成された魔法生物なのでしょうか?

アインズ:そうだ。今更隠すようなことでもないので明かすが、パンドラは私製作のゴーレムみたいなものだ

クライム:魔法生物! そうだったんですね……ラナーの発明に付き合えるほど高度なゴーレムとなると、製作は並大抵の労力では無かった筈です。恐ろしく高度な魔法技術が無いと、不可能。凄いんですね、モモンガさんは

黄金:パンドラさんがモモンガさん作と言う事は……パンドラさんがモモンガさんの子供と言う事ですね

アインズ:子供?

黄金:モモンガさんは違うのですか? 私は自分の発明品を、我が子のように思っていますよ

モモンガの息子:私が……モモンガ様の愛息!

アインズ:おいこら、何スムーズに名前を変えてやがる! お前の表層意識はチョロインか何かか!

 

 そこからもプロトモデルのチャットを使ってやり取りをした一同だが、最終的にちくわ大明神以外にも変な思考を外から読み込んでしまったり、ラナーの言動がえらく邪悪になったりと妙なバグを起こした為テストは途中で中止に。

 

「スマホは改良するまでお蔵入りにしますわ」

 

 にこやか笑顔なラナーの手で、鍵付きの箱にスマホは封印された。




スマートグラス:多機能UI眼鏡。まだまだ発展余地があり、改良には高品質金属が必要

スマホ:ラナーはスマートグラスと一体化させたかったようだが、それには素材の質が足りずに断念。まだ言語切替機能付チャットアプリしかなく、そのチャットもバグ多数。魔法でスマホ完全再現の夢は遠い

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