caffe "S.C.H.A.L.E" オープン計画!!   作:眞空

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注意:連邦生徒会とシャーレの建物とかについて独自設定あります


第一幕 雑アイディアって案外良かったりするもんじゃんね★

シャーレの先生は今日も大忙しだ。今日は5月13日、まだ春らしい、人間に対する優しさのある日差しを浴びながら、シャーレの先生は各種書類の処理に追われていた。

 

 先生が日々チェックする書類の内容は多岐に渡り、キヴォトス内での銃撃戦や大決戦による公共施設への被害がどうのこうのという書類や、はたまた各学園で行われるイベントへの出席依頼、果ては恋愛相談の体裁をした事実上のラブレターなどになったりする。先生はこうした書類についてもとても丁寧に扱い、事務職員にも第一段階の書類審査の段階で無碍にしないようにと言い含めている。

 

 そんな書類の山をまあまあ崩したところで、大変な知的作業に我慢の限界がきた先生は多少わざとらしく空を仰ぎ見る。キヴォトスに来てからもうすぐ1年。ホシノの件やエデン条約、シロコの件もそうだ、本当にいろんなことがあった。「あれらに比べたらこの仕事なんて軽いもんだよ」と自分を奮起させる努力をしたものの、先生の手はモニターの横に鎮座する可変式戦闘機の玩具に手が伸びてしまい、遂には完全お仕事放棄モードに突入してしまった。

 

 さっきまでにらめっこしていたモニターから目を離すと(公的書類はほぼ電子化されて先生のもとに届く)、そういえばこの部屋ガラス越しに空がほんとに綺麗に見えるなと、”ほんの少しだけ”見慣れた景色に改めて感動してみる。デスク正面のガラス壁はある程度の光をカットしてくれるから、日焼けもしないし、目も痛くならない。

 

 「今からでもこの飛行機に乗ってこのキヴォトスの空を自由に飛び回れたらなああ・・・今度真剣にエンジニア部のみんなに話してみようかな・・・(心の声)」などど頭の中で呟いていると、今日珍しく当番に来てくれていたナギサと目があった。

 

「先生?ずいぶんとお疲れの様子ですが・・・ん~・・・そうですね、ちょうど午後3時になったところですし、休憩のお時間に致しませんか?今日は新しいお茶菓子もお持ち致しましたし、私も少々疲れてきましたので、ご一緒にお茶でもいかがです?先生?」

 

 わざわざ「私と」とつけているところに一抹の緊張感を感じつつ、さらにいつの間にか至近距離まで接近していたナギサに少々驚きつつ、いつものごとくナギサの「厚意」に甘えることとした。あらかじめお湯で温めているティーポットの湯気のせいだろうか、部屋の湿度が季節・天気のわりに妙に高くなっていることをデスク上の多機能置時計が静かに主張していた。が、先生がそれに気が付くことはついぞなかった。

 

「ありがとう!いただくよ。今日はどんなお菓子を持ってきてくれたのかな?」

 

 先生はただ純粋にナギサのいう新しい茶菓子に興味深々で、仕事モードの時とは大きく変わり、「大人らしい」言葉づかいの割に、誕生日ケーキの箱を前にした少年のような声でナギサに問いかける。

 

「聞いて驚かないでくださいね・・・今日のお茶菓子ですが・・・」

 

 応えるナギサの声も、ミカやセイアとティーパーティーの業務とは一切関係ない、有名店のお菓子やファッション、アクセサリーなんかの話をしているときのような、一段と明るいものだった。

 

・・・こんな穏やかなひと時は、先生にとって、とてもとても貴重なものであり、某鉄道のごとく早く過ぎ去るものだ。

 

 ナギサとの幸せな時間を終え、先生は再び書類との格闘を再開する。今度は紙ベースの書類の処理に手を付けた。すると、再開早々シャーレ事務局の検印が押されていない、ゲヘナスタイルのデザイン・封がなされた装飾華美なグレーの封筒を発見した。

 

・・・原則として先生のもとに届けられる書類はあらかじめシャーレ事務局により、ざっくりとした内容のチェックもとい検閲がなされている。そして、事務局員の手で『シャーレ事務局確認済み』という意味の電子専用印が押されている。この過程で他の部署、例えばアオイやリンのもとに届けられる書類も分別されている。噂によれば、事務局員たちは日々増え続ける先生への相談の体をした実質的なラブレターにいろんな意味で心を痛めているとか・・・。これらを検閲対象に認定するための会議が発議される日もそう遠くはないのかもしれない。まあ、つまり、要するに検印のない封筒は職員以外の別の誰かが先生のもとに置いていったものということになる。

 

 実は、先生はこの封筒を残していった生徒に心当たりがありすぎて、その封筒の視認と共にほぼノータイムでデスク正面のホワイトボードに目をやった。ホワイトボードには2週間先までの当番生徒の一覧表や、先生のタイムスケジュール、膨大な数になる生徒との約束などが記されている。ついでに備品ラベルには『シャーレ執務室②』の文字が印字されている。

 

 「昨日の当番、マコトだったよなあ・・・」

 

 半ば呆れるような口調で先生が意味深に呟くと、別の書類束のまとめをしていたナギサがこちらに目を向け、先生の持っている封筒を一瞥する。その視線の先に件の封筒が交差したとき、その端々まで美しさを感じさせる淑女らしい所作が一時中断され、ナギサは分かりやすく目を丸くする。

 

 「先生・・・その封筒は、パンデモニウムソサイエティーが公文書という名目の迷惑メールの送信に使っている封筒ではありませんか?」

「ティーパーティーの補佐を行ってくれている当校生徒も、その封筒、マコトの横暴には散々迷惑をかけられてきたのですが、今度は一体何をするつもりでしょうか・・・。大体、封筒を直截渡さずに手紙を残すだなんて、もうほんと確信犯ではありませんか・・・今度お茶会にでも誘ってみましょうかね・・・」

 

 ナギサは封筒そのものを知っていたようで、気の毒そうな視線を先生に向ける。 なお、後半のニヒルな笑いについては先生は目を瞑った。【自業自得だよマコト】

 

 愛する(生徒として!!)ヒナも散々手を焼かされているマコトのことだし、またまたなにか厄介なものを置いていったに違いない。先生は肩を落とす身振りをしながらも、逆にあのパンデモニウムソサイエティからの手紙だし、血沸き肉躍るような案件かもしれないという若干の期待もこめて、引き出しからハサミを取り出し封を破った。

 

  すると封筒の中からは、意外とかわいい動物のイラストがあしらわれた、封筒の仰々しさとは打って変わって可愛らしい便箋が現れた。【これはイブキからの手紙じゃないか頑張って先生に手紙を書いてくれたのかうれしいな///先生イブキDAISUKI♡(心の声)】などと間違ってもナギサに聞かれたくない発言を脳内にとどめ、内容に対する好奇心からかいつの間にか隣に移動式の椅子ごとやってきたナギサと一緒にその肝心な文面を読み始めた。

 

ー文面ー

「せんせいイブキだよ♡(ピンク色のシールのハート)イブキね、ぬいぐるみさんがいっぱいいてね、シャーレのゲームセンターよりももっともーっと楽しいゲームができるゆうえん地にあそびに行ってみたいの!!★(手書き)マコトお姉ちゃんと、イロハお姉ちゃんも一緒だよ!せんせいもいっしょに来るよね?やくそくだよ!」

 

 ここまでで終われば本当に話は早かった。・・・またホワイトボードにメモする予定が増えただけだったのだ。

 次の文を先生よりも文章を読むのが早いナギサが先に目で追ってぎょっとしているのを目の端で捉え、心の中で暗雲の蛇がとぐろを巻くような、不安で胸がいっぱいな気持ちを一旦精神力で振り切り今度は唐突に語彙力の上がった文章を目で追う。

 

「キヒヒヒ(なぜ手紙にまで書くのだろう・・・と先生とナギサは思った。気が合うね。)先生よ、我らが愛するイブキがこう宣っているのだ、無論このキヴォトスに未だないような、素晴らしいの娯楽施設を用意する責務があるとは思わないか?どのような偉業でさえも、イブキの笑顔の前には些末事に過ぎないことは自明。そこで提案なのだが、シャーレの屋上を取っ払うなりなんなりして、イブキ専用の大型娯楽施設を建設しようではないか!最高級品のぬいぐるみ、最先端のアーケードゲーム設備と一流のパティシエを完備するのだ!!先生だって欲しいだろう??これこそまさに!!!偉業を遥かに凌駕する、このマコト様と先生の偉烈となるであろう!!!!ククッ!無論先生の多忙具合も理解しているつもりだ・・・。パンデモニウムソサイエティとしても協力は惜しまない。では、とりあえずの初期計画のほうは優秀な先生に任せよう、あああと、シャーレの他の者の許可も取り付けてくるようにな!!!!!イブキのためだ、失敗は許されない、頼んだぞ!先生!!!!。」

 

ー文面終わり。そして最後は万魔殿の印で締めくくられていた。内容のまとめとしてはイブキのために超豪華な遊び場兼カフェを作れということだ。

 

 「うん・・・・・そりゃあ・・・・・・ヒナも苦労するよね・・・・・・・でも…(超小声)職員のみんなもこっちにもカフェが欲しいって言っるわけだし、上の階はサンクトゥムの方PCやら事務用品やら全部運びだしたら空くわけだし...これからこのシャーレを本格運用するから一般市民の方の利用も増えるし...そして生徒たちも大喜びするだろうなぁ(超小声おわり)」

 

ナギサは手紙の内容にあきれ果てていて、その隙に発せられた先生の独り言を聞き逃していた。

 

「ゲヘナの風紀委委員長の方ですよね、キヴォトス最強とも名高いですが、こればかりはもうどうしようもないのでしょうね・・・(溜息)」

 

・・・・・ナギサは先ほどの先生の発言に対する肯定の意を述べた。一方先生はというと、前向きを簡単に通り越して超前傾姿勢でマコト提案の計画を検討していた。

 

 実は、プレなパテス決戦後のシャーレへの連邦生徒会の一時的な機能移転や、シャーレ業務内容拡大に伴うあれこれなど、さまざまな事情が先生の検討を後押ししているのだが、要するに、戦後処理や度重なる化物の襲来、連邦生徒会の内乱、その他諸々の要因によって地獄のような業務に追われているシャーレ職員、手伝いや会議・相談に来る生徒のみんなに対する福利厚生が足りていなさすぎることに先生は心を痛めていた。それに連邦生徒会の一部業務を臨時でシャーレが担っている関係上、このオフィスにはオンラインでは難しいorできない事務手続きや各種相談のために一般市民も多く足を運ぶことになった。最近はシャーレ全体として対応する仕事が多すぎるせいで、そういった方々を大いに待たせてしまうことも多い。

 

 そういった事情もあり、”シャーレ本部”のように、建物内にカフェがあるとなにかと非常に便利であり、かつカフェという場所は職員生徒の憩い・交流の場として大事な役割も果たすのだ。それに先生には、いつか各校生徒が分け隔てなく利用できる公共の娯楽施設をD.U.に作りたいという夢があった。それは、先生の「先生」としての目標である、キヴォトス全体がともに手を取り合って、皆が笑いあえるような日々を作り上げるという夢物語の第一歩でもあった。

 

 そんな重たかったり軽かったり(単に先生も普段忙しすぎるのでシャーレ業務の休憩中に生徒とお茶したり遊びに興じる時間が切実に欲しい)する事情を数十秒で考慮し、怪訝な顔で先生を見上げるナギサに言葉を零す。

 

「先生、シャーレD.U支部にもカフェ作りたいなあ・・・どうせ作るならそれはもうすっごいのを・・・」

 

ーーーー次回に続くーーーー




ー次回予告ー第2話:新制シャーレと連邦生徒会・それぞれの夢の公倍数
 マコトの雑依頼に端を発して新しいそれはそれはすごいカフェを作りたいという思いつきを得た先生。あくまでも優秀な先生は各所から協力を取り付けようと奔走していくことになりますが、そこには不穏な雲行きが・・・。果たして先生の思い付きはどのような形で実を結ぶこととなっていくのでしょうか。また、「シャーレD.U.支部」についてなど、現在のシャーレ・連邦生徒会を取り巻く様々な事情も明らかになっていきます。特殊な事情を抱えるキヴォトス中心部ですが、今後どのようになっていくのでしょうか。

次回登場予定生徒:連邦生徒会の皆様、ユウカ、ノア、コタマ、その他お楽しみに!
 続きを読む→2025年5月12日公開
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