機動戦士ガンダム ジークアクス  船乗りの道導   作:海空陸一体

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 地球の荒廃は、この一戦にあり。各員、奮闘、努力せよ。


第3話  ブリティッシュ作戦・後編

 宇宙世紀0079 1月6日

 

 サイド2・第8バンチコロニー『アイランド・イフィッシュ』が定位置から動き出し、地球に向かって慣性移動を始めてから二日。

 パトロール艦隊・コロニー駐留艦隊の残存戦力が、『アイランド・イフィッシュ』の移動を妨害をしようと攻撃するが、増援を受けたジオン護衛部隊の反撃に逢い失敗していた。

 

 連邦宇宙軍が敗北を重ねる中、一矢報いた形の第8警戒艦隊はティアンム中将率いる第二艦隊と合流。

 第二艦隊司令部はこれを歓迎した。戦力では圧倒的に優勢な筈なのに負け越している中、勝ち星を得た部隊の参入は、艦隊の士気を向上させていた。

 

 これに対し、トウゴウ大佐は危うい上がり方だと見た。参謀の1人がジオン恐れる足らず、と口にしたからだ。

 

 ティアンム中将へ、第8バンチに於いての戦闘報告書を手渡した場での発言に、トウゴウが危機感を抱くのも必然であった。

 

 報告書には、トウゴウが提議したミノフスキー粒子下における戦術教練は、主に3つ程に集約された。

 1:艦船の対空砲は撃墜よりも、敵の攻撃パターンを阻害又は制限するべし

 2:レーダーが使用不可であり、電波管制に依存した兵器は、熱探知や画像認識又は時限信管を用いるべし

 3:戦闘機は格闘戦を厳禁とし、一撃離脱及びサッチウィーブを徹底すべし

 

 これをティアンム中将は笑みを浮かべながら受領したが、もう間もなく起きるであろうコロニー破壊作戦に、どれ程の効果があるかトウゴウ大佐は確信を持てなかった。

 

 第8警戒艦隊の配置は、第二艦隊最後尾に割り当てられた。戦意旺盛とは言えサイド2での戦闘で、疲労が蓄積しているのは間違いなく、それを考慮された結果だ。

 そんな中トウゴウは、地球へ暗号回線を開いていた。

 

「例のデータを見てくれたか?オヤジ」

『…お前が緊急と銘打ってたからな。直ぐに開いて精査したぞ』

 

 画面に映るのは、トウゴウ・ヤイチロウ大佐の父親かつ、ニホン自治区出身の地球連邦議員トウゴウ・イチロウである。

 近頃、息子が結婚しねぇと秘書に愚痴を溢しているが、そんな事が吹き飛ぶ程のショックを受けていた。

 

『分かってて聞くが、これは現実に起こり得ることなんだな』

「そうだ。コロニー落としの阻止が失敗し、コロニーがジャブローではなく、シドニーに弾着した時の被害だ

 

 断言するように悲惨な未来を肯定する息子に、甚大過ぎる被害予想を細部まで確認する父親。似た者親子と揶揄される二人だが、画面越しに額をぶつけ合うように会話する内容は、頭を抱えたくなる気分にさせる。

 

『連邦軍は間に合わないのか?こっちが聞いてる限りだと、ティアンム中将の艦隊が動いてるらしいが?』

「今まさに合流した所だけど、ジオン軍を排除しながらコロニーを破壊するには数が足りてない。そもそも解体するならまだしも、破壊用のマニュアルなんかある訳ないだろう、オヤジ」

 

 入婿が故に、軍事には疎い父親の疑問を否定する息子。事態は、地球連邦政府が予想もしてなかった最悪の形で進んでいた。

 厳しい表情をする愛息の顔に、本当に間に合わない事を悟ったイチロウは、父親から連邦議員へ変貌する。

 

『で?俺にどうしろと?』

「…避難命令を今直ぐにでも出せるか」

 

 その言葉に思わず天井を見上げる。連邦議員としてのプライドと損得勘定、人としての義理人情を考え、慎重に言葉を選び出す。

 

『正直に言うと、このデータだけでは地球全体へ強制するのは無理だ。最悪、戦時下に於けるスパイ行為だと告発される。……ただ太平洋地域に限れば、警報は出せる』

「それだけでも良い、オヤジ。無いよりは…良い」

 

 頼み込む息子を宥めながら、イチロウは頭をフル回転させる。自分のコネ、紹介された他派閥の議員、昔から知り合い官僚の名前と連絡先。

 

『本当なら、お前に議員職を譲りたかったが…』

 

 今のニホン自治政府の代表は、イチロウと相反する派閥の者だ。次期連邦議員の席を狙っておりライバル関係にある。

 そいつを説得する材料として、自分の議席を譲る決意を固めたイチロウ。

 

「…ごめん、オヤジ」

『気にするな。思い返してみれば、お前は昔から一寸先が分かってるように動いてたからな』

 

 息子の謝罪を笑って流すと、連邦議員として父親として、連邦軍人たる息子に命令を下した。

 

『可能な限り多くの生命を救って帰ってこい。……無事に終わったら母ちゃんの墓参りに行くぞ』

「ヨーソロー」

 

 敬礼するヤイチロウの姿に目を細めながら通信を切る父親。画面からその姿が消えるまで、イチロウは敬礼を続けた。

 

 

 

 

 

 

 宇宙世紀0079 1月9日

 

 遠距離からの核ミサイル投射を含めた、度重なるコロニー阻止攻撃が失敗に終わった事に、業を煮やしたティアンム中将は第二艦隊の総力を以て、ジオン軍の護衛部隊の排除を決断した。

 地球へ接近し続ける『アイランド・イフィッシュ』に、焦りを感じたのも一因だった。

 

 護衛部隊の排除かコロニーの破壊。

 どちらを優先するか第二艦隊の中でも割れたが、コロニーへの攻撃が防がれ続けているのを鑑みて、ティアンム中将は敵部隊の撃破を優先させた。

 

 開戦の火蓋を切ったのは、レパント級ミサイルフリゲート艦群の統制雷撃であった。連邦艦隊の接近を確認していたジオン軍は、ミノフスキー粒子をコロニー進路上に散布。

 艦隊防空の柱であるレーダーを無力化し、MS隊を発艦させたジオン艦隊に飛んできたのは大量のSSM (艦対艦ミサイル)。事前に発艦させた偵察機から得たジオン軍の位置情報を下に、その複数の予測座標に向けてミサイルを発射した。髙濃度のミノフスキー粒子により、レーダー観測が不可能な状態だからこそ、通用する戦法である。

 

 想定外の一撃に混乱する艦隊を置いて、MS隊はブースターを噴かし連邦艦隊へ突貫する。陣形が乱れたまま砲撃戦に入るのは危険と、MS隊指揮官は判断した。

 

 

 

 

「沈めぇ!!」

 

 280mm対艦バズーカの連射を喰らったマゼラン級。破孔から爆煙が上がるが、戦闘能力は喪失しておらず対空砲が下手人を撃ち落とそうする。

 しかし横合いから別の小隊が攻撃を仕掛けると、ようやく艦の灯火が消え沈黙する。

 

「これで2隻目か…」

 

 開戦序盤のパトロール艦隊などとは違う、粘り強さを感じながら機体を反転させる。

 残弾を確認しながら周囲の状況を確認すると、コロニーに向かって砲撃するマゼラン級を守るレパント級の戦隊を見つけた。

 

 既に、多くの味方のザクが取り憑いている中、被弾し落伍した艦の隙は直ぐに別の艦がカバーしている。艦隊防空が困難な状況でも、僚艦防衛をすることで結果的に味方の損害を防いでいる連邦艦隊。

 

「連邦最強と吟われる第二艦隊…だが!」

 

 フットペダルを踏み込み機体を加速させる。強烈なGで後ろに引っ張れる身体を抑え込みながら、敵の内側に食らい付く。

 1隻のレパント級が近づけまいと砲火を向けるが、彼にとっては失笑の対象でしかなかった。

 

「遅い!!」

 

 狙い澄まし撃ち出された対艦バズーカは、レパント級の戦闘艦橋を粉砕、小柄なフリゲートの船体は誘爆に耐えきれなかった。

 爆煙を突き破った先には、マゼラン級が居る。青いマーキングをしたザクが来るのを見て、それまで僚艦を援護していた対空砲の筒先が、一斉に狙いを合わせた。

 

「このアナベル・ガトーを舐めるな!」

 

 後にソロモンの悪夢と恐れられるエースが駆る、紺藍色のザクはAMBACシステムにより四肢を自由自在に動かし、マゼラン級に肉薄する。

 

 地球連邦宇宙軍第二艦隊は、ミサイルの斉射を終えたレパント級を下がらせる。サラミス級で構成された前衛を展開し、レパント級は本隊へ合流するとマゼラン級の直掩に入った。

 ジオン軍MS隊の先陣を切ろうとしたのは、核弾頭を装備する中隊。ミノフスキー粒子により混乱する敵部隊に、最初の一撃を御見舞いする事で連携をズタズタに引き裂き、後続の本隊がこれを撃破する。

 モビルスーツの豊富な武器携帯能力と、従来兵器とは一線を画す機動性。これらによって得られる戦術の自由性は、本来は強者である筈の連邦軍を圧倒する要因となった。

 

 ジオン軍は開戦以来の必勝法である、核の初撃を放とうとした瞬間、中隊の真上から無数の連邦軍戦闘機が襲い掛かった。翼下のパイロンから、熱探知又は画像認識式のミサイルが発射された。

 放たれたミサイルは対航空機の為、ザク本体へのダメージは超硬スチール合金によって防がれた。しかし、航空隊が狙ったのは、ザクが装備している対艦バズーカの方であった。ザクには効果的ではないミサイルも、武器を破壊するには充分過ぎた。

 核弾頭仕様のバズーカ砲を破壊されたザクの中隊と護衛機には目もくれず、連邦軍戦闘機隊は旋回することなく離脱する。

 

 遠ざかる戦闘機へ怒りのままにマシンガンを連射するザクだが、横合いから飛来したメガ粒子砲に捉えられ四散した。

 

 前衛のサラミス級による統制射撃が、核を失い立ち往生する中隊を滅多打ちにする。砲火の中に包まれる中隊を見て、ジオン軍MS本隊は一気に速度を上げ、連邦軍第二艦隊へ突入した。

 

 MS本隊と交戦に入った第二艦隊は、連邦宇宙軍最精鋭の名に恥じぬ戦いぶりを見せた。戦前に築き上げた緻密な戦闘データリンクが、ミノフスキー粒子により無力化されたとは言えだ。

 第8警戒艦隊からの報告書は、第二艦隊司令部内で賛否両論ではあったが、これを参考に傘下の艦艇群に指示が出された。会敵まで時間が限られている中で、急造の戦闘マニュアルが作成され、ジオン軍へ対抗する事になった。

 

 セイバーフィッシュやトリアエーズなど戦闘機は一撃離脱戦法を徹底するか、2機1組で1機のザクを相手にする。

 レパント級フリゲートは、小回りの良さを活かして敵機の攻撃行動を妨害し、マゼランの直掩。

 サラミス級巡洋艦は、戦隊毎に行動し連携された弾幕を展開。

 旗艦『タイタン』を中核とするマゼラン級は、味方艦が囮として機能している間に、ジオン艦隊へ長距離砲撃を敢行。これを撤退に追い込むとコロニー落下阻止へ全力を注いだ。

 

 だが、そこまでであった。

 

 鉄壁の陣を敷いていた連邦軍第二艦隊は、精鋭に相応しい練度と不退転の覚悟からくる士気の下、全力を尽くしたが、モビルスーツの脅威は凄まじく、内側から崩されていった。

 

 ジオン側も、これまでとは違い余裕があるわけではなかった。

 第1撃の核攻撃が無力化され、連邦艦隊の陣形を崩せなかったこと。艦隊に攻撃を仕掛けようとすると、艦載機が妨害し攻撃タイミングをずらされること。艦隊の相互支援がミノフスキー粒子下にも関わらず機能している。

 

 これらの要因が重なりあい、ジオン側も少なくない被害を出していた。

 

「ようやく沈黙したか」

 

 護衛のレパント級が撃沈され、孤軍と化しながらも、最後までコロニーを砲撃し続けたマゼラン級。船体の至るところから黒煙を噴き出し機関を停止した。

 

『こちら第4小隊、我残弾無し』

『第3中隊は被撃墜が発生。対空砲にやられた』

『各機、推進材の残量チェック。母艦からかなり離れてるぞ』

 

「私も他も同様な状態か」

 

 コックピットにアラート音が鳴り響く。赤く点滅するのは燃料系統であり、帰投するならまだしもこれ以上の戦闘機動は不可能な事を知らせている。

 

「む…?」

 

 次々と転進してゆく連邦艦隊を避けている中、連邦軍の最後尾に布陣する1隻の艦が目に入った。IFFを受信すると艦名が分かった。

 

「マゼラン級『フソウ』!」

 

 ガトーが急遽、ブリティッシュ作戦の増援に派遣された原因。その名を確認した瞬間、反射的にスロットルを開こうとしたが、上官から制止が入った。

 

『貴様、燃料に余裕はあるのか?』

「ありません。ですが、少佐!今ここであの艦を沈めねば!!」

『ガトー、周りを良く見ろ。連邦軍は転進、いや撤退している、何故だ?』

「…コロニー阻止限界点を超えたからであります」

 

 『アイランド・イフィッシュ』はメガ粒子砲の砲撃による、多数の被弾痕があるもののその形を保っていた。

 限界点に達したコロニーを前に、ティアンム中将は撤退を決断。

 連邦宇宙軍第二艦隊は各戦隊毎に分散しながら、ジオン軍の追撃から逃れるように撤退を開始した。

 ジオン側もモビルスーツの唯一の欠点である戦闘可能時間を前に、踵を返して行く。

 

『この戦闘は終わった。これ以上の行為は命令違反と見られる』

「…了解致しました」

 

 ガトーの返答を聞いて上官は通信を閉じる。

 モニターの先には、その必要がないにも関わらずゆっくりと回転しながら、地球へ向かうコロニーがある。

 そして、撤退する地球連邦艦隊の中で、未だに転進する素振りを見せない、『フソウ』率いる戦隊。

 その姿を目に焼き付けつつ機体を動かす。

 

 

 

 

 

「ジオンの人型兵器、転進してます!」

 

 ブリッジに観測員の安堵にも似た声が響く。それを聞いた艦橋要員たちも、一斉に肩の力を抜いた。

 それを尻目に、トウゴウは手元の通話機を操作する。

 

『こちら『カコ』、何でしょうか』

「ジオン艦隊の位置はそちらで把握出来ているか?」

『お待ちを……方位330に複数のマズル光を確認出来ます。距離は不明なれど戦闘圏外だと思われます』

 

 サラミス級巡洋艦『カコ』は『フソウ』より、上方に位置しており、遠方を確認出来るポジションに居た。

 クルー達はジオンのMS隊が引き上げてゆくのを見ていたが、トウゴウはその姿よりも、艦隊の横を通り過ぎてゆく『アイランド・イフィッシュ』を見つめていた。

 

 最早、誰にも止めることが出来ないコロニー落とし。

 

 それを諦観の目で見ていたトウゴウに、アンダーセン艦長が話し掛ける。

 

「敵の母艦群が追撃してくる可能性がありますが、本艦も撤退に移りますか?」

 

 それは艦の最上位責任者として、当たり前の問いかけであった。既にティアンム中将直卒の部隊は離脱し、他の味方も戦域から離れつつあった。

 第8警戒艦隊だけが、戦場に留まり続けている格好になっていた。

 

 だからこそ、トウゴウ大佐が発した号令に驚愕した。

 

「全艦に告げる。船外救助活動、用意」

「大佐……?」

「陸戦隊及び修理工作班はCSAR(戦闘捜索救難)を準備」

「大佐!」

「ランチは脱出用も全て駆り出せ、医療班は緊急オペを」

「トウゴウ大佐!撤退しないのか!?」

 

 ウィルソン・アンダーセン大佐の怒号めいた声が、ブリッジに響き渡る。それに対してトウゴウは、感情を消した表情を向けながら答える。

 

「我々はチャンスを見逃した」

「…チャンス?」

「サイド2で核パルスエンジンを、破壊出来るチャンスを見逃した。『アイランド・イフィッシュ』は地球へ弾着し、最低でも50億が死に絶えるだろう」

「トウゴウ大佐、何を言って…」

「もし、私がそのチャンスを知りながら見ている事しか、出来なかったと言えば?」

 

 詭弁だ。胸の内でアンダーセン艦長はそう吐いた。誰も人が住み着き産まれてくる、人工天体を大量虐殺を行う質量兵器に転用するなど、考える筈もなかった。

 

「私は知っていた責任を取る資格など持っていない。臆病な自分が造り上げた、殻の中に籠ることしか出来ない。……そんな俺でも、目の前の命を救うことを頼める。命令出来る力と地位を持っている」

 

 これではまるで、物語の悲惨な最後を知って、親に泣き喚く。

 

「結末は変えられないけれど、顔も名前も知らない人たちを助ける……それしか出来ないんだ……」

 

 幼き子供、そのままではないか? 

 

 その瞳の奥に、隠しきれない後悔の念を浮かべるトウゴウに、アンダーセン艦長はそう感じ取った。

 

 

 

 

 

 

 第8警戒艦隊旗艦『フソウ』から発せられた号令に、指揮下の艦艇は一斉に動き出した。各艦から救難活動を意味する、信号弾が一定の時間で打ち上げられ、撃破された艦艇から出た黒煙が漂う宙域を照らした。

 

『工作班第2小隊は第5エアブロックに集合せよ。繰り返す、工作班第2小隊は第5エアブロックに……』

「陸戦隊は下部ハンガーに走れ!!ノーマルスーツを忘れるな!?」

「スーツは二人一組でチェックを行え!普段の訓練を思い出せば大丈夫だ!!」

 

 旧歴時の空挺兵が降下前にしていた、バディを組んだ戦友と必ずおこなう相互確認。その行為は、高い確実性から、新歴である宇宙世紀においても、厳格なルールとして成り立っていた。

 

「ヘルメット、ヨシ。スーツ両椀部、ヨシ。腹部、ヨシ…」

「酸素タンク、ヨシ。ヘルメット傷なし、ヨシ。スーツ破れなし、ヨシ…」

 

 艦外は酸素など存在しない真空空間。少しのミスが命取りになるのは分かってる為、チェックは正確かつ念入りにする。

 

「総員!点検及び点呼確認、ヨシ!これより減圧開始!!」

 

 嚮導役も兼任する班長が、エアブロックの壁面にあるレバーを下ろすと、換気孔が勢いよく空気を吸い出す。

 空気を抜いて気圧を、宇宙空間と同レベルまで、合わせておかないと、如何に宇宙服を着ているとは言え、無事では済まない可能性がある。危険性を少しでも減らす為には、必須な手順なのだ。

 

「気圧計、ヨシ!ロック解除、開くぞ!」

 

 天井のランプが赤く点滅すると、目の前のエアロックが次々と外れ、ゆっくりと扉が開いていく。ブロックの床を蹴ると、無重力の影響でそのまま宇宙に滑るように身体が進んでゆく。

 

『各員、これ以降は隊内無線を活用しろ!ミノフスキー粒子の影響で繋がらない場合は、発煙筒で位置を報せるように!!』

 

 この距離なら、まだ無線は聞こえているが、先に救助活動中の味方が、あちこちで発煙筒を焚いているのが見えるら。

 無線のチャンネルを操作すると、ヘルメット内蔵の通信機から、撃破された艦の乗組員たちが助けを求める声と、それに応えようとする救難部隊のやり取りが耳に入ってくる。

 

『作業用酸素タンクとバーナーはあるか!エアロックを切断するぞ!』

『中の連中は、必ずノーマルスーツを着用しろ。気圧差で破裂するのは御免だ』

『こちらサラミス級巡洋艦『ロンドン』、艦内電源を損失している。一刻も早い救助を』

『輸血パックを搔き集めろ!?負傷者が多すぎる!』

 

 被弾し撃破された艦艇群に工作班が取りつき火花が散り、陸戦隊が操縦するスペースランチが負傷者を母艦へと運び届けている。

 

『負傷者はトリアージを徹底しろ。重傷者は『フソウ』に、それ以外はサラミスに運べ』

 

 現場に同行している軍医が、陸戦隊指揮官に指示を出す。通信機片手に、艦に居残っている同僚たちに状況を逐一知らせている。

 

『負傷者は多いが、仏さんは少なねぇなぁ』

『殆どの乗組員は、装甲化された戦闘ブロック内に居たんだ。誘爆による被害は極限減らされたらしいぞ』

『その分、切った挟まれたが多過ぎるわ』

 

 指揮官から、より広範囲での捜索を命令された陸戦隊隊員が駆る1機のランチ。コックピットに二人しか居ない中、ランチ下部にあるサーチライトを照らしながら、残骸を避けながら進んでゆく。

 

『レパント級が、かなりヤられたみたいだな』

『あぁ、サラミス級なら2、3発堪えられたらしいか、フリゲートクラスには流石に無理だったろうな』

 

 事実、二人の前で大破漂流している連邦軍艦艇の多くは、レパント級フリゲートが占めていた。

 マゼラン級やサラミス級の姿もあるが、やはり小型な分、被弾に耐えられず戦闘不能となっていた。

 

『ん?1時方向に何かあるぞ』

『何かあるって、あれマゼランだろ』

 

 スラスターを損傷した影響か、右舷側に大きく傾いて沈黙している1隻のマゼラン級。ランチの操縦に神経を使っている陸戦隊員は、マゼラン級の船体側面に何かが擱坐していることに気がついた。 

 ランチをそちら側に寄せてゆく。段々と近づいてくるソレの輪郭が見えてくる。

 

 隣に座っている仲間が、震えた手でライトの角度を操作する。

 

『これが…‥ジオンの新兵器』

 

 マゼラン級の船体に、背中からのめり込み形で鎮座している緑の巨人。頭部のモノアイからは光が消えており、関節や動力パイプが破損しているのが分かる。

 胴体部分のコックピットがあると思われる箇所には、不発弾と化した対空砲弾が尻を見せていた。

 

『信号弾だ…‥』

『え?』

『信号弾を上げるんだ!こいつは大物だぞ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 サイド2・第8バンチコロニー『アイランド・イフィッシュ』を改造し、地球連邦軍本部ジャブローの破壊を目論んだブリティッシュ作戦。作戦は、コロニー落下阻止の失敗とオーストラリア・シドニーの消滅で、結果を迎えた。

 

 ティアンム中将の第ニ艦隊は戦力の3割を損失したが、主力であるサラミスやマゼラン級の被害は少なく、早期の戦線復帰が可能であった。

 

 第8警戒艦隊は、第二艦隊とジオン軍護衛部隊が離脱した戦域で救助活動を実施。

 その際、ジオンの新型機動兵器ザクを、コックピットを除けば小破した状態で鹵獲。

 ルナツーへ帰還した。

 

 

 

 

 

 




 次話ですが、ルウム会戦とブリティッシュ作戦時の地球の間話を、同時並行で書いていますので、2~3週間ほど投稿が空きますので、ご承知下さい。

 
 GQuuuuuuX本編、第2話にて出てきた連邦軍鹵獲ザクを、自分なりの解釈にて本話で登場させました。


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