男の娘は奴隷商人です。   作:セパさん

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新人に手を焼くようです。

「ウィリアム様、リリアちゃんは【商品】で遊びすぎだと思うのです。この前も洗体業務でその……とんでもないことをしていましたし!」

 

「別に【商品】を直接傷つけている訳ではない。売値に影響を及ぼすようならば相応の叱責をしなければならないが、〝業務上における不慮の事故〟の範疇だ。まぁ遊びが過ぎるようなら〝相応の処罰〟はするさ。……ふむ、蝗害(こうがい)の呪薬に少し劣化がみられるな。作り直しだ。」

 

「以前ご自身で〝自分は薬師ではない〟と仰っておりましたが、伯爵家でもこれほど広大な薬品庫は見たことがございません。これらの薬品はすべてウィリアム様がお作りになられたのですか?」

 

「ああ、黒魔術士の嗜みに過ぎん。わたしの本業は奴隷商人、趣味でしかないよ。」

 

「趣味というには余りにも……。これらを売ってお金にしようとは思わないのですか?」

 

「どれも強力な邪術の類だ。売り物にならん、首が胴から離れてしまう。呪い殺したい人間や滅ぼしたい村や町があるのならば特別に売ってやってもいい。どれも使ったことが当局に発覚したならば死罪は免れないだろうがな。」

 

「いえいえ!とんでもございません!」

 

「おお!アム、探したぞ!こんなところにいたのか。それにしても凄い量の呪薬じゃな、わたしが前にいた組織の連中ならば有り金をはたいてでも欲しがるじゃろう。」

 

「頭のおかしい爆弾魔に売る薬はない。ところで何の用事だ?見ての通りわたしは今、薬品庫の整理に忙しい。」

 

「ウィーサがわたしの楽しみ……じゃなかった仕事を奪おうとするのじゃ!奴隷(ヘム)の洗体業務を今日もわたしが担当しようと言っているのに邪魔するのだぞ!」

 

「ああ、話は聞いている。仕事熱心なのは結構なことだが、貴女は〝遊び〟が過ぎる。何より今保管している【商品】は魔導適正もあり魔力も芳醇だ。その媒体はそのまま売値になる。〝不慮の事故〟なら仕方がないが、意図的に媒体を己のものとしようならそれは〝業務上横領〟だ。雇い主として〝相応の処罰〟をしなくてはならない。」

 

「そ……〝相応の処罰〟とは何なのじゃ?」

 

「3か月の減給処分といったところか。」

 

「なんじゃ、金ならば困っておらぬ。その程度……」

 

「貴女の場合では3か月こちらで飯を出さないといったところか。移動商店を呼ぶことももちろんしない。」

 

「アム!わたしは心を入れ替えたぞ!〝遊ぶ〟真似なんて元々していないが、今後一層身の振り方には気を付けよう!」

 

「ならばいい。本当に先輩の言っている通り遊んでいないか、今日の洗体業務にはわたしが同行しよう。」

 

「うむ!アムならばわかってくれるはずじゃ!」

 

 

「それにしてもアムよ、この洗体着とは窮屈じゃの。どうせ奴隷(ヘム)を洗い終えたら自分の身も清めるのだから最初から裸でよいではないか。」

 

「ここは歓楽街ではないのだ。【商品】を綺麗に保存するのは大事な仕事だが、最低限衣服くらい身にまとえ。」

 

「わたしとしてはその透けて見えるような白いローブのほうが余程扇情的に思えるのじゃがな。」

 

「ふぅうううう!ふぅうううう!」

 

「アハハ!昨晩生殺しにされてさぞ辛かったのじゃろうな。獣の目になっておるわ。それでどちらに劣情を抱いておるのだ?わたしか、アムか?もしアムだとすれば貴様はとんでもない変態じゃな♡アムはこんな可愛らしい見た目でも男なのじゃぞ♡」

 

「無駄口叩いている暇があったら仕事をしろ。二人がかりだからといって手抜きは許さん。」

 

「わかったわかった。ほれ、奴隷(ヘム)、昨日の続きじゃ、ぬるぬる~~♡アハハ!腹の指で全身を撫でられるのは心地よいか?」

 

「不要に【商品】に話しかけるな。黙々と集中して行え。」

 

「はひぃ、ひぁあああ。」

 

「ああ!ズルいぞ、下半身はわたしが担当したかったのに!」

 

「どちらがやっても同じだろう。兎に角集中して……っ!」

 

「あ~あ、アムの手で媒体を吐き出してしまったの。顔についておるぞ勿体ない。」

 

「人の顔を舐めようとするな気持ち悪い。」

 

「では指で掬うとしよう。あ~む♡うむ、芳醇な媒体じゃ。〝しっかり掃除〟をしろと習ったぞ。奥に残った媒体も掃除せねばな。はむ♡」

 

「あひぃ!あひぃいいいい!」

 

「む~♡むは!まだまだ全然足りないといった顔じゃな♡これでは掃除中に〝不慮の事故〟が起こるかもわからん。〝掃除〟にはしばらく時間がかかるかもしれんな♡アム、これは流石に〝ぎょーむじょーおーりょー〟ではあるまい?」

 

「まぁそうだな。掃除の方法を業務規則に明文化していなかったこちらに非がある。もう自分にも貴女にも呆れる他ないが、遡及(そきゅう)法を適応するほど愚かではない。傷だけはつけるなよ。」

 

「媒体の吸収は慣れておるから安心するがよい。ふむ、久々の魔力に満ち満ちた芳醇な良い媒体じゃ♡アムも一口いるか?」

 

「結構。【商品】から媒体という報酬を二重取りするのはわたしの主義に反する。」

 

「ぷは♡なんじゃ、アムは別の方法で吸収しておるのか。その時はわたしも呼んでくれ!」

 

「今は太古の呪術を扱う媒体も薬で応用できる時代だ。必要ならばコトボから専門の薬を取り寄せている。」

 

「しかし大本は変わらないのじゃろう?ならば原液を摂取したほうが効率的ではないか。」

 

「気持ちの問題だ。黙って〝掃除〟を終わらせろ。」

 

「あひぃ、あひ、あぁぁ」

 

「はいはい。っっぷ!……んっくん。アハハ!掃除だと言っているじゃろう♡これでは永遠に終わらぬぞ♡ほ~れ、我慢じゃ♡我慢♡」

 

 

 

「ふぅ、久々にくたびれたな。」

 

「ウィリアム様お疲れ様です。リリアちゃんはどうでしたか?」

 

「〝遊びすぎ〟という貴女の意見は理解した。だが明確に就業規則に違反しているとも言い難い。今後目に余るようなら〝戒告処分〟それでも治らなければ〝減給処分〟……しばらく飯無しだ。」

 

「ああ……やっぱり〝遊んで〟いましたか。」

 

「業務規則を改定させるか迷うところだな。彼女は普通の人間ではない、遥か1400年前からやってきた〝異世界人〟だ。なのでそんな頭のぶっ飛んだ異世界人を従業員にした以上、こちらもある程度譲歩すべきかと悩んでいるよ。」

 

「ウィリアム様がどのような決定をされてもわたしは従う次第です。」

 

「まぁ貴女には関係のない規則だがな。」

 

「おお!アム、湯浴みを終えて奴隷(ヘム)を房室にぶち込んできたぞ!仕事をしたら腹が減った!飯はなんじゃ?」

 

「コメが安く手に入ったのでオムライスにする予定だ。コメとはパラパラしていてナイフと手だけで食するには難儀するぞ。匙を使うか?」

 

「何を言うか!命を糧とする以上、その手で直に口に運ばなければ(にえ)に失礼というもの。王族としてその掟を破るやけにはいかん!」

 

「だろうな、聞いてみただけだ。なるべくテーブルと床を汚すなよ。汚したら自分で掃除しろ。」

 

「ああ、わかった。〝おむらいす〟とやらがどんな料理かわからんが、楽しみじゃ♪」

 

(リリアちゃんが異世界人ですか……確かにそう捉えたほうがしっくりきますね。本人には失礼ですが。)

 

 

「では【商品】には金貨115枚の値を付けると。」

 

「はい、年齢、健康状態、魔導適正・薬学への知識を総合的に判断すればニフリート製薬としても安い買い物であると報告ができます。」

 

「ふむ、金貨は確認した。ではこちらの書類に捺印を頼む。」

 

(なんじゃ勿体ないのぉ。あれだけの逸材であればわたしが10倍の値段で奴隷(ヘム)に飼ってやるというのに。)

 

(【商品】に過剰な思い入れをしてはいけませんよ。ウィリアム様の教えです。)

 

(アムに逆らう気があるわけではない。金が好きと豪語するならばわたしに売ればいいのにと思ったまでじゃ。)

 

(【商品】を自分のものにするなど……わたしには思いも拠らない考えです。)

 

(ウィーサは無欲じゃの、奴隷(ヘム)のある生活とはよいものじゃぞ。)

 

「【商品】の売買はこれで完了だ。二人とも休みに入ってくれ。結局7連勤させてしまったな。代理休暇にするか、超過勤務手当にするか決めたか?」

 

「あ、はい。折角なのでお休みを頂こうかと。本来借金がある身ですからお金がいいのでしょうけれど、この屋敷に来てから読書に目覚めてしまいまして。まだ山積みにしている物語がいっぱいあるんですよ。」

 

「わかった代理休暇として受理しておく、賃金は発生するから安心しろ。……ではしばらく新人と二人で業務を回さなければならないな。」

 

「おう!アム、任せておけ!」

 

「……就業規則をどうするかはこの1,2週間で決めるとしよう。」

 

 

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