「うむ!五臓六腑に染みわたる。挽肉など肉質の悪さを誤魔化すために行うものと思っておったが、良質な肉だとこうも旨い飯となるのだな。以前出された〝はんばーぐ〟もよい味だったが〝めんちかつ〟も甲乙つけがたい。それに玉葱のスープも甘みがありながら干し肉の旨味が溶け出して心地よい。白いパンも柔らかく小麦の香りが鼻腔をくぐり抜けて素晴らしい!」
「1,2,3……17皿。リリアちゃん、食べ過ぎではありませんか?」
「何を言うか、わたしはアムの遠征に付き合って朝も昼も食べていないのじゃ。飢えて聖骸に戻ってしまう。もうあんなひもじい思いは懲り懲りじゃ。アム、おかわり!パンとスープも!」
「ウィリアム様も同じように朝から何も食べていないのですから……。」
「別には構わん。作りながら食べている。」
「な?アムは気にしていないようだぞ。」
「雇い主様に料理をさせて踏ん反りかえる使用人がどこにいますか!」
「気にしていない。金はいらないというのだから超過勤務手当と考えれば当然の権利だ。少なくとも貴女の給金よりはかなり安く済んでいるぞ。」
「そう言われてしまえばそれまでですが、雇い主としての威厳とか……いえ、決してウィリアム様に威厳が無い訳ではなく。」
「よいではないか、エプロン姿でせこせこと働くアムも可愛らしい。勿体ないのぉ、金が好きというならばわたしの娼夫となればよいのに。金に不自由はさせんぞ。……あっちゅ!」
「ああ。揚げたてだから素手で食べるなら気を付けろ。それと手についた油で机や椅子を汚すなよ。」
「明らかに揚げ物の熱さではなかったぞ!?さては何か細工したな!?」
「知らないな。もういらないのなら片づけるぞ。」
「いやいや、冗談が過ぎるぞアム♪まだまだ食べる♪」
(女の子扱いされて不機嫌になったのでしょうか?わたしも最初は女の子だと思っていたことを話した時も年相応に――正確な年齢はわからないので見た目年齢ですが――膨れておりましたね。年相応に悪戯をされるウィリアム様、【商品】を前にした厭世的で冷徹なウィリアム様、どちらが本当のお顔なのでしょう。)
「ふぅ、食べた食べた。しばらく動けん。」
「ケーキを焼いたが新人はいらないらしい。2人で食べようか。」
「食べるぞ!甘いものとは別の臓腑に入るものじゃ!」
「今日は随分と豪勢ですね。遠征のお仕事そんなに儲かったのですか?」
「ああ、金貨2370枚の大仕事だ。少し危ない橋も渡ったがそれだけの価値がある。」
「なんじゃ、祝いの席ならば酒を用意したというのに。」
「何度も言うように貴女は戸籍上12歳であり飲酒は……」
「わかったわかった。めでたい席で小言など聞きとうない。それにしても甘味まで作れるのじゃな。」
「バルロドス王朝時代では丸いケーキは太陽を
「アッハッハッハ!可愛いエプロン姿で砂糖を秤にかけている姿を想像すれば〝邪術師の嗜みだ〟などと精悍な顔つきで言われても可笑しいだけじゃ!」
「新人は甘味が嫌いらしい。やはり2人で食べよう。」
「いやぁアムのバルロドス王朝ならず古今東西の呪法の造詣には驚愕するばかりじゃ!」
(全く、リリアちゃんのウィリアム様をおちょくる癖は治らないのでしょうか。ウィリアム様もウィリアム様で、もっとガツンと言ってやればいいと思うのですが。)
「新人には黒魔術より先に節度と常識を学ばせたほうがいいな。もっとも1400年前からやってきた元王族という異世界人だ、相当難儀するだろうがな。」
「お腹いっぱい食べて寝てしまうなんて、本当見た目通りの子供のようです。わたしが部屋まで運びますね。」
「貴女は休暇中だろう。わたしの傀儡が運ぼう。休暇は満喫できたかな?」
「はい!幻想文学とは面白いものです。ページを捲る手が止まりませんでした。」
「それは何よりだ。明日から仕事に復帰してもらう。休みボケで手を抜かないように。」
(ふぅ、久々の洗体業務です。ずっとリリアちゃんに奪われっぱなしでしたからね。それにしてもこの撥水性のある洗体着は何の素材で出来ているのでしょう?少し胸の谷間が見えて恥ずかしいです。)
「では洗っていきます。痛かったら首を横に振ってください。」
(〝媒体〟……ですか。リリアちゃんは美味しそうに飲んでおりましたし、ウィリアム様〝飲んだ経験〟を否定なさらなかった。今後ウィリアム様から黒魔術を指南されるのでしたらわたしも……)
「では下も洗っていきます。痛かったら首を横に振ってください。」
「あひぃ。」
「……。」
「ひ、ひゃああ。」
「……………。」
「あひゃ、あひいいいい!」
「っ!!」
(流石に直接口にする勇気はでませんでした。顔にかかってしまいましたね。幻想小説でも普通に飲んでいる描写はありましたし、わたしが知らないだけで常識的なことなのでしょうか。ゆ、勇気を出して一口……)
「うっえ!けほけほ!」
(苦いです!それにえぐみが凄い。何でリリアちゃんはあんな美味しそうに飲んでいるのでしょう。)
「あー!ウィーサ!わたしが居ないと思って好き勝手
「リリアちゃん!見ていたのですか!?」
「アハハ!ウィーサも堅物を気取っておきながら中々の悪よのぉ。しかし無表情で擦ればいいというものではないのじゃぞ♡中にはそんな戯れを好む変態もおるがな♡どれ、娼夫を10数人抱えていたわたしが手練手管を教えてやろう。でなければアムに報告するぞ。」
「ちょっとリリアちゃん、せめて洗体着に着替えてください!」
「よいではないか。今回の
「むぐぅううう!ふううううう!」
「ウィーサ、右の胸を舐めてやれ、わたしは左を指でカリカリと刺激しておく。ほ~れカリカリ♡どうしたのじゃ♡オスの分際でこんなところが心地よいのか?それとも耳元で囁かれるのがたまらぬのか?とんだ変態じゃのぉ♡ククク。」
(……【商品】は涎を流して恍惚の表情を浮かべております。わたしが胸を舐めるとそのたび電流を受けたかのように痙攣し、膝をガクガクと震えさせています。嬲るという字は男二人に女一人ですが、これではアベコベではありませんか。)
「程よく蕩けておるの、ではいただくとしようか♪はむ♡」
(リリアちゃん、全く躊躇がありませんね。わたくしには真似できそうにないです。【商品】はあっという間にリリアちゃんに媒体を吐き出してしまったようですが、ムセる様子もなくごくごくと嚥下していきます。高位の術師になると味が変わるのでしょうか?謎です。)
「なんだ?そんな重要な【商品】でもないはずだが、二人も必要だったのか?」
「うわぁ!アム!」
(洗体場の扉の陰にウィリアム様のお姿が映りました。しかし扉は開いていないようです。もっとも……何をしているのかは想像がついているのでしょうが。)
「全く……先輩が新人から悪い〝遊び〟を教わってどうする。時間がかかりすぎだ、あと30秒もすれば扉を開いて中を確認しないといけなくなるな。」
「アハハ!アムよ、わたしはウィーサの手伝いをしにきたのじゃ!ほれ、ウィーサ!とっとと終わらせるぞ!」
「はいはい、本当……巻き込まれたわたしもどうかしていました。」
(ウィリアム様ならばもっと怒ると思ったのですが……。あの方の逆鱗はよくわかりません。)