「ウィリアム様、【実験室】の土に犬の首だけを出して地面に埋めました。エサもギリギリ届かない程度にしております。」
「ご苦労。あとは3日と待つだけだな。餓死する直前の焦燥に染まった頃合いに殺すのが難しい。」
「【犬神の術】だったでしょうか。飢え死にする直前に首を切り落とすのですよね。」
「ああ、本来犬神の術に使われた犬の首は福をもたらす縁起物となるが、禍福は糾える縄の如しという言葉があるように黒魔術にも転用できる。畜生の血が入った箱に犬の首を詰め血が乾ききる前に水子の五指を入れて箱を閉じれば厄災・祟りを呼ぶ箱の完成だ。」
「……ウィリアム様のお屋敷にはそんな祟りを呼ぶ特級呪物が大量にあるのですよね。いくら封じの
「別に。もし力が暴走することがあればそれはわたしの力不足だ、甘んじて厄災を受け入れよう。ああ、新人にこの術式の話はするなよ。古代バルロドス王朝において犬は神の使いである神聖な生き物とされていた。ギャーギャー喚かれるのはあまり好かん。」
「それで内側からも鍵をかけたのですね。」
「そういうことだ。用が済んだので昼飯にしよう。」
「はい、かしこまりました。」
(そうして呪術の手伝いを終えたわたしはウィリアム様と広間へ移動します。今日の昼餐は何でしょう。ウィリアム様の料理はどれも美味なので楽しみです。)
「おお!アム、今日の下着は何色じゃ♪……黒か、アムの身なりは赤か黒ばかりじゃな。髪の色は赤、ローブにスカートは黒。なんじゃ、他の色は嫌いなのか。」
「スカートを捲るな。あまりしつこいようなら手首から先を落とすぞ。」
「まぁ固いことを言うな。ウィーサ、今度賭けをせぬか?アムの下着が赤か黒か。わたしは黒に金貨10枚を賭けよう!」
「リリアちゃん、ルーレットじゃないんですから……。それに雇い主様で賭け事をするなんて畏れ多い真似はできません。」
「別に構わんぞ。他人に捲りあげられるのは不愉快だが、自分で教える分には特に不快感を覚えない。」
「ウィリアム様!?もう少し恥じらいを持ってください!」
「何故下着如きで恥じらいを覚える必要がある。もっとも、借金のある身分で賭け事などあまりオススメはしないので雇い主として忠告だけはしておこう。」
「それはそうですが……。」
(ウィリアム様無防備すぎます。自分が可愛らしい可憐な少女の見た目という自覚が無いのでしょうか。いやまぁ、性別的には少年ですし、恥じらいを持つべきというわたしが間違っているのでしょうか?)
「確かにウィーサの言う通りじゃな、もう少し恥じらいを持ってくれれば悪戯のしがいもあるというに。」
「リリアちゃん、あまりウィリアム様に無礼を働くと昼餐はなしになりますよ。」
「それは困る!なぁアム、もうしないので許してくれ。」
(絶対信用できない言葉世界一です。あまりオイタがすぎるとまた死ぬほどくすぐられる罰が待っているのに全く反省していないようですね。)
「ああそうだ、昼食の後、この商売の中でも一番使うことの多い呪術……淫紋の刻み方を二人に教えよう。」
「え、ですが淫紋は一度刻むと最低3年は効果が発動するのでは?」
「解呪する術者がいれば問題ない。もっとも刻むよりも消す方がよっぽど高度な技術なのでわたしがやろう。」
「おお!是非教わりたい、では昼餐は精の付くモノがよいな!」
「そうか……では、長芋と豚肉のニンニク炒めでも作ろうか。昼食には少し重いし、匂いは気になるが精を付けるには丁度いい。」
(そう言うとウィリアム様は厨房に入り赤いエプロン姿で豚肉の下拵えを始めました。厨房には
「ほぉ!火を通したニンニクとはこれほどの甘みと刺激を両立させるのだな!ホクホクとして手が止まらぬ。それに豚肉も元々の肉質の良さとアムの処理の仕方が良いのかナイフがスッっと入り口の中で良質な油を残し溶けていく。ううん、たまらん!」
(リリアちゃんはバルロドス王朝時代の食事作法……ナイフと素手――食事用のナイフではなく鋭利な刃の付いたナイフです――で美味しそうに食事を楽しんでいます。ウィリアム様も〝宗教上の理由ならば仕方がない。〟と油のついた手で椅子やテーブルを汚さないよう以外に何もいいません。わたしは普通にナイフとフォークを使い食事を終えました。相変わらずウィリアム様の食事は美味です。)
「さて、食べ終わったようなので約束の練習をしよう。……新人には黒魔術が効かないので実験体には丁度いいだろう。」
「わたしを実験体じゃと!?それこそ
「実際に淫紋とはどのようなものか体験するのも訓練のひとつだ。新人が先輩を実験体とするのに、その逆は断るというのでは不公平だろう。」
「うむぅ……仕方がないのぉ。痕を残すなよ?」
「誰に物を言っている。さぁ大広間に移るぞ。」
「これが基本となる【性的欲求を優位にする淫紋】【淫靡な気持ちを増大させる淫紋】【神経系の感度を増大させる淫紋】だ。」
(刺繡をするような淫紋ですがウィリアム様はまるでゆっくり線を描くかのようにあっという間に完成させてしまいました。まるで定規を使ったかのように線も真っ直ぐです。)
「なー、アムー。この布邪魔なのじゃが。」
「必要部分以外の裸を見られるのは困るだろう。羞恥心に対する配慮だ。」
「それにしてもやっぱりリリアちゃんには効かないのですね。」
「これも【聖骸の術】の後遺症か……。興味深いな。さて、では貴女も刻んでみろ。」
(わたしはウィリアム様の言うがまま淫紋を刻み始めました。しかし円も線も歪み、10回ほど消しては刻んでを繰り返したあたりで一応の合格サインがでます。)
「まぁ初日ならこんなものか。魔力の込め方にムラがあるし、円も線も美しくない。時間があれば木の板で練習しておくように。」
「はい、かしこまりました。」
「では新人。交代だ。」
「おう!待っていたぞ!この時代の呪術とは実に興味深い。」
(こうして今度はわたしが下半身を露出し、布で上半身を隠される番になりました。正直真っ暗闇の中何をされるかわからないというのは恐怖です。そして下腹部に違和感を覚えたあたりで……全身が熱くなってきました。両手両足は大の字に拘束されているためわたしは身体を身悶えさせます。)
「ウィリアム様♡ぬ、布が、胸にこすれて♡くすぐった……腰が……勝手に動いて……♡」
「とまぁ基本的な3つを刻めば大体こうなる。」
「なるほどのぉ……。ウィーサ、随分と苦しそうじゃな。わたしが楽にしてやろうか?」
「悪戯をするための時間ではない。では一度消すので次は自分で刻め。」
「おう!任せておけ!」
(そんな会話が聞こえたかと思うと身体の熱は一気に引いていきます。自分が自分で無くなったかのような感覚であり、本当に恐怖です。リリアちゃんが刻んでいるであろう淫紋ですが、わたしよりもスピーディーです。そして仕上げとして魔力が込められると……再びわたしの身体が熱を帯びました。)
「ほう、新人。筋が良いな。一目見ただけでこれほど立派な刻印を刻めるとは。もう少し練習すれば【商品】に使えるレベルだ。」
「ふふん!わたしを誰と思っておる。宮廷呪い師から教えることはもうないと言われたほどの呪術師であるぞ!」
(布で擦れた甘い刺激が腰を砕きます。全身がピリピリします。わたしははしたないと分かっていながらも声を抑えることが出来ませんでした。)
「なんじゃ~♡随分と甘い声が漏れておるな。普段はお堅いことばかり言っておきながらとんでもない淫乱ではないか♡ほれぬるぬるぬる~♡」
(リリアちゃんが指で悪戯をしてきます。その刺激は脳天を貫きわたしの腰を大きく浮かせ、大声を出させました。お願いだからやめてほしいのですが、身体が言うことを聞いてくれません。もっとリリアちゃんの悪戯をねだるかのように腰をだらしなく動かしてしまうのです。)
「そこまでだ。もういいだろう。では消すぞ。」
「なんじゃ、勿体ない。」
「新人の腕前は先輩で実験するには酷すぎる。それこそ二束三文の値が付いた【商品】を貸してやるからそれで練習しろ。」
「ほぅ……それは楽しみじゃ。」
(わたしは刻まれた淫紋を消され手足の拘束も外れました。本当に消えてなくなりたいくらい恥ずかしいです。まったく気にしていないこの二人はどうしてこんな精神状態でいられるのでしょう。……本当にわたくしに黒魔術の才能などあるのでしょうか?不安になってきました。)