剣×ドラ   作:思いつキング

1 / 1
―序― 死闘。そして即レイプ

ブオォォォ……ブオォォォ……

 

「ぜはぁ……ぜはぁ……」

 

 地響きの様に唸る風鳴りの中、ロクアは焼け付くような痛みと共に血の味のする吐息を必死に搾り出していた。

 漆黒に染まった闇夜よりも更に澱み鬱屈とした地下洞窟の中、打ち上げられた海生生物の様に喘ぐロクアの周りには無数の斬殺死体がロクアの肺腑か漏れ出る呼気よりも更に色濃い血糊の臭いを立ち上らせている。

 散乱した骸の中心にありながら息のあるロクアの右手には片刃の剣が一振り。その刀身を濡らすドロドロの体液が、この猟奇的な惨劇の実行者が他ならぬこの虫の息の青年であることを表していた。

 

「ぜ……げほっげほっ……」

 

自身を包み込む濃密な鮮血の臭いにむせたのか、身を縮みこまらせてゲホゲホと咳込むロクア。すると、それまで耳に痛い程に吹き荒れていたはずの風鳴りがピタリと止み、代わりに巨大な灰色の生き物(・・・・・・・・・)がのたうつ様にその太く長い鎌首をもたげたのだった。

 それは極めて大きなトカゲやヘビを思わせる頭部だった。鈍く艶のある灰色の分厚い鱗に覆われたそれをくねらせて、息も絶え絶えに喘ぐロクアに鼻先をピタリと合わせると、そのトカゲ頭は無機質な血色の眼球でロクアを睨みつけながら、クチャリ……と音を立てて厳かにその大きな口蓋を開いた。

 

「マサカ、人ノ子ゴトキニコノ様ナ結末トナルトハナ……」

 

それは先の大地を震わす風鳴りと同質の重低音で、傲岸を通り越して厳粛にすら思える口振りで告げられたのは若干の驚嘆が滲む不格好な称賛とも取れる言葉だった。

 

「悔イモ憂イモ無限ニアルガ、掟ハ掟ダ。敗者ノ維持トシテ、受ケ入レネバナルマイ……」

 

(……?)

 

そして続けられた言葉に、ロクアは内心で首を傾げる。確かに今の今までロクアは目の前のトカゲ頭(・・・・)と斬り合いを、生存闘争を行っていたばかりだが、その勝敗に何かしらの条件は持ち込んではいなかった。ごく純粋なただの殺し合いでしかない行為の末に、()などという言葉を用いるのはどういうことか。内心の疑問符に薄っすらと片目の瞼を持ち上げたロクアの右目に映ったのは、熟れすぎて腐り落ちる果実かの様に、ボトリと体液を滴らせながら零れるトカゲ頭の頭部そのものだった。

 ドボンという粘性の水音と共に、鮮血の汚濁に彩られた水面へと没入する化物の頭部。しかし、その崩壊はそれに留まることなく、肉片の一つが、鱗の一枚が次々と崩れ落ちて、五月雨の様に血溜まりの海に波紋を作っていく。そして、

 

「ふむ、こんなところか」

 

大トカゲ(・・・・)の崩壊の末に姿を現したのは、長い長い灰色の長髪を携えた妙齢の美女だった。

 

「ふん、初めてなって(・・・)みたが、随分とせせこましい身体だな。矮小で不格好な上に、無駄に頭部だけが肥大してバランスまで悪いときている。この様な生物が我が物顔で地上を闊歩し覇権だの何だのと口にしているとは、最早滑稽を通り越して哀れですらあるな」

 

その美女はうっすらと肋の浮いた自身の身体と、そこからすらりと伸びる四本の手足を矯めつ眇めつしてはブツブツと悪態をつく。そんな美女の出現に呆気にとられていたロクアは、やがて全身を改め終えた美女と目が合うと、思わず「え、まさか女性だったの?」と呟いていた。

 

「そんな訳あるか」

 

思わず漏れたロクアの呟きを耳聡く捉えた美女はフンと鼻を鳴らすと石膏の様な純白の裸体を惜しげもなく晒しながら、細腰に両拳をあてて、しっとりと果実の実った胸元を反らす。

 

「貴様ら人間共にどう伝わってるかは知らんが、オレ達ドラゴンは両性具有だ。世が滅びれば己が(はら)に自ら種を注ぎ、新たな同胞(からはら)を産み落としては次代を紡ぐ」

 

「は、はあ……それじゃあ、なぜそんな」

 

「オレ達ドラゴンは己独りで命を紡げるが、それはあくまでやむにやまれぬ事情があった場合の最後の手段だ。平時のドラゴンは掟として、己の爪牙と息吹のみを頼りに決闘によって優劣を決め、勝ったものが雄として相手を犯し、敗れたものが雌として卵を温めるのだ」

 

「なるほど……」

 

「そして、貴様は単身でオレに挑みかかり勝利をおさめた。つまり、当然オレを孕ませる義務がある」

 

「な、なるほど?」

 

思わず呟いたものの、ロクアは目の前の美女が語った事情を一割も飲み込めていなかった。

 

「えっと、つまり?」

 

「フン、惚けているつもりか。それとも、オレの口からわざわざ言わせたいのか……まあいい。これも敗者の定めか」

 

我ながら間抜けな事に、思わず問いになっていない問いを呟いたロクアに、美女(化物)は不機嫌そうに鼻を鳴らすとコホンと軽く咳払いをしてから抱擁を求めるかの様にロクアへと彫刻を思わせる両腕を広げる。

 

「このオレに初めて卵を抱かせるのが人間というのは業腹だが、その人間に敗れたのがオレ自身である以上仕方あるまい。おい、貴様」

 

「は、はい」

 

「まぐわうぞ」

 

「いや待って待って待って待って!?」

 

突然の性交宣言に、アクロが思わず悲鳴を上げた。

 ほんの少し前まで虫の息だったのが嘘のように跳ね起きて、ワタワタと掌を向けて自身を制してこようとするアクロの姿に、美女は不機嫌そうに「なんだ」と桜色の唇を尖らせた。が、すぐに何かに気がついたように「あぁ……」と頷くと納得した様にポンと手を打った。

 

「この身体が好みではなかったか。では、これでどうだ?」

 

「んぶっ!?」

 

「貴様ら人の子は乳のデカい雌を好むと聞く。なら、これくらい乳のデカいイイ雌ならば興奮せずにはいられまい?」

 

「た、助け……」

 

自身を押し潰す巨大な肉塊に、ロクアはパタパタと地面を打ちながらか細い悲鳴を搾り出した。

 何かしら一人合点をした直後、ボンッと炸裂する様に肥大した乳房。それは一玉で人一人を容易く飲み込めそうなほどに巨大で、膨張した軟肉の下敷きにされたロクアはとてもではないが情欲を抱く余裕もなかった。

 

「ここまでやっても嫌がるとは……貴様、まさか不能か?」

 

「なんてことを!?」

 

一向に靡かないロクアに、しゅるるると自身の乳房を元に戻した美女は「じゃあ、こっちの方が好みか?」と小首を傾げる。すると、並のサイズから更に収縮した乳房は完全に無になり、全身が角張って、代わりにその股間には赤黒く充血した巨大な男根が隆々とそそり()ち先端から透明な粘液をポタポタと滴らせていた。つまり「男色趣味か?」ということなのだが、当の美青年となった美女に悪気は無いらしく「少々特異だが、気持ちは分からんでもない」と腕を組んでさもありなんと頷いている。

 

「雄を組み敷くことで、己の強さを誇示するというのはままあることだからな。まあ、卵を作る以上、挿入()れるのはほと(女陰)で我慢してもらわねばならんがな」

 

「いやいやいや!? ぼくは不能でもなければ男色でもないからね!?」

 

「ならば、尚の事問題はないな」

 

しまったという顔をするロクアに、灰色髪の美女はギラリと風貌に似合わない獰猛な笑みを浮かべて踊りかかった。そうして幾度かドタバタという争う音が続くと、最後に「アーッ!?」という悲鳴が暗い洞窟に反響したのだった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。