【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】   作: 燃える空の色

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10.ひかるとマサ、青春してるやつ

 

 

 暖かな夕陽に照らされて、黒井正義の意識は現実へと浮上する。

 目を見開けばそこに映るのは知らない天井だ。

 

「知らない天井だ……」

「何言ってんの?お前」

 

 チャンスと思い、人生で一度は言ってみたかった言葉を口にする。

 すると、ガラガラと扉が開く音と共に、聞き馴染みのあるツッコミが聞こえてきた。

 

「あれ、ひかる!?」

 

 上半身を僅かに起こし、声のした方に向き直ると、そこには呆れた様子の少年にして黒井の『友達』――多々光がいた。

 ひかるは「はぁ」とため息をついてから、黒井の横たわるベットの隣に座り、敷地内にある店で買ってきたであろう果物の皮を剥き始める。

 

「ひかる、俺、なんでここにいるの?授業は?戦闘訓練は?」

 

 そう聞くと、ひかるは更に呆れたような顔をして、「黒井、お前覚えてねぇの?」と言って、

 

「お前個性暴走させて、グラウンドβ丸ごと飲み込んじまったんだよ。幸い、直ぐに納まったから大事には至らなかったけど…」

 

 淡々と、黒井の身に何が起きたのかを説明する。

 ひかるの脳裏に浮かぶのは、街ひとつが闇に覆われたその景色。

 遠くで光りが一瞬の内に消えるのが見えて、同じように様子を確認した未来と平と3人して授業を抜け出して急いで来てみれば、そこに広がるのは異様な光景―――に支配された街。

 

 ひかる達が到着した頃には、オールマイトが黒井の元へ向かおうとしていたが、しかし何も出来ずに立ち往生していた。

 無理もない。黒井の放つブラックホールに飲み込まれてしまえば、ほとんどの人間は碌に意識を保つどころか、一度入れば抜け出すことすらできないのだから。

 

「あ…そうだった……俺、爆豪にひかるを馬鹿にされて、それで……」

 

 次第に、黒井の記憶も蘇ってくる。

 爆豪の煽りを受け、黒井は怒りに飲まれて無差別にブラックホールを展開し…文字通り、全てを呑み込もうとした。

 

 困惑した様子の黒井を見て、ひかるは眉を下げる。

 

「…あのな黒井。オールマイトから、爆豪がなんて言ったか大体聞いた…けど、別にいいだろ。事実なんだし。それよりも、俺のせいでお前が苦しんだり、怒られたり。そうなる方が、俺はずっと…」

「…っでも!!」

「でもじゃない。もし、もしだけど。あのまま暴走して、雄英退学にでもなったらどうするつもりだったんだよ」

 

 ひかるがそう言い放つと、黒井は何か言おうと口を開き…しかし、声を発することなく押し黙る。

 

「……ごめん、ごめんひかる。俺、ひかるにも、みんなにも、迷惑かけちゃって」

 

 顔を俯き、らしくない弱音を口にする黒井を見て、ひかるは困ったように頬をかく。

 

「……まぁ、俺の為に怒ってくれたのは、嬉しかったから、その…ありがと」

 

 そう言って、ひかるは照れくさそうに小さく微笑む。

 

「――うん!!」

 

 黒井もまた、満面の笑みでそれに応えた。

 

 

「なんか、こう…照れくさいな」

「えへへ…」

 

 お互いが笑顔を向けあって、2人はどこか照れくさくなり、同時に顔を背ける。そして、顔を背けた先に、二つの人影があることに気づく。

 

 

「青春さね…」

「青い、あまりに青い…!そして、素敵!!」

 

 キャ〜ッ!と黄色い悲鳴をあげて、タイツで全身を覆ったような、年齢制限ギリギリの衣服に身を包んだ女性…ミッドナイトは自身の体を掴み、捻じるようにクネクネと不規則に動く。

 

「え、いや、いつから…!?てか、なんで」

「ミッドナイト先生に、リカバリーガールまで!?なんでここに!?て、ていうか、もしかして全部聞いて───!?」

 

 思わず頬を赤らめ、黒井とひかるは慌てるように叫ぶ。

 そんな二人を見て、大人の女性2人はさらに笑みを深めた。

 

「もちろん、最初からよ!」

「そこの普通科の子がここに来る前から、アタシはずっとここにいたさね」

 

 ───マジで最初からじゃねぇか

 

 突如押し寄せる羞恥心の嵐。ひかるは、今にも死んでしまいたい気持ちでいっぱいだった。

 

「そ、それで!!?ミッドナイト先生は、なんでここに…!?」

「ああそうそう。急な青臭さに襲われたせいで、完全に忘れてたわ。……ひかるくん、ちょっといいかしら」

「あ、はい」

 

 ミッドナイトに呼ばれ、ひかるは保健室の外へと連れ出される。

 必然的に、保健室にはリカバリーガールと黒井の二人きり。

 迷惑をかけてしまったみたいだし、感謝のひとつでも伝えた方がいいだろうかと黒井が悩んでいると、先にリカバリーガールが口を開く。

 

 

「あんた、名前は?」

「えと、俺、黒井正義です!みんなからは、マサって呼ばれてます!!」

 

 黒井が元気よく自己紹介すると、「そうかい」と一言放ち、リカバリーガールはどっさりと椅子に座る。

 

「あんた、よっぽどあの子のことが好きなんだね」

「…え、え!?」

「別に、変に詮索しようってわけじゃないさね…戦闘訓練、あの子のこと言われて暴走しちまったんだろ?」

「――……はい」

 

 そう言われ、黒井が思い出すのは爆豪とのあのやり取り。

 具体的に、ひかるがどうと言われた訳では無かった。

 ひかると爆豪が話しているところさえ見たことない以上、恐らく、二人はなんの関わりもないのだろう。

 爆豪は、ひかるについて何も知らない。

 

 けれど……

 

「…許せなかったんです、ひかるを、馬鹿にされたことが」

「……そうかい」

 

 黒井がそう言い切る。

 ふと、沈黙が流れた。

 

「黒井ー?…って、なにこの空気」

「あ、ひかる!!」

 

 少し気まずそうにしながら、ひかるが再び保健室に足を踏み入れる。

 

「それじゃ、邪魔者は退散するさね」

 

 差し伸べられた救いの手に飛びつく黒井を他所に、リカバリーガールは早々と退席して行った。

 去りゆく背中を見送って、ひかるは困惑した表情を浮かべたまま、再び黒井の傍に座る。

 

「なんなんだよ…」

「ねぇひかる、ミッドナイトはなんて?」

「あ、あぁ…なんか、お前のお母さんが迎えに来るから、それまで待ってろって」

 

 入学して二日目で個性を暴走させてしまった上、気絶までしていたのだ。当然、黒井の母に連絡が行ったらしく、迎えが来るらしい。

 ミッドナイトに呼び出され、ひかるはそう告げられた。

 

 

 ───それに、あの子、色々不安定そうだから。ちゃんと見てあげてね。

 

 

「………」

「どうしたの、ひかる?」

「…いや、なんでもない。それじゃ俺もそろそろ……」

 

 そう言って立ち上がり、その場を後にしようとするひかるの裾を、黒井が掴む。

 

「…やだ。ひかるも傍にいて!」

「お前なぁ……」

 

 これまた大きなため息をついて、ひかるが困ったように頭を搔く。

 

「……まぁ、別に今日は用事もないし、いいけど」

「本当!?」

 

 こうして黒井がワガママを言うのは、今に始まったことでは無い。

 ひかるが了承すれば、黒井の笑顔がパッと咲き、まるで犬のしっぽと耳がついているような幻覚さえ見えてくる。

 

「ありがと、ひかる!!」

「はいはい…」

 

 黒井の髪をワシャワシャと掻いて、更にわがままを重ねようとする黒いの口に、皮を剥き切りそろえた果物を放り込む。

 

「少しは大人しくしてろ」

 

 見たところ五体満足の健康体ではあるが、あれだけ能力を使ったのは、ひかるが知る限りだと今世において初だったはずだ。

 もしかしたら、周りから見える以上に、本人が思っている以上に、疲れがあるかもしれない。

 少なくとも、今の黒井には療養も必要だと、ひかるはそう思う。

 

「…まぁ、たまには、こいうのもいいか」

 

 「超常」の日常…と言うには、少し忙しすぎる非日常。

 それはきっと、これからも続くものなのだろう。

 

 そして、黒井と一緒なら。どんな非日常も、笑って過ごせるだろう。

 ひかるは、ただそう思った。

 

 

 

 




会話のシーンもっと書きたいなってのと、流石にぶっ飛ばしすぎたかな感があるので、一旦日常シーン挟みます。
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