【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】   作: 燃える空の色

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11.ひかるとマサ、委員長を決めるやつ

 

 

 雄英入学、三日目。

 黒井とひかるが共に登校しようと雄英に向かって歩いていると、雄英の門前に群がる沢山の人影が視界に映る。

 

 

「あれ…どうしたんだろ、あの人たち」

「…マスコミだよな、あれ」

 

 放送用のカメラやマイクを持ち、スーツに身を包んだ数多の大人達。

 所謂マスメディア、報道陣と言うやつだ。

 どうやら、雄英に入ろうとする生徒達に無理矢理取材しようとしているらしい。

 

 

「よし!行こっか、ひかる!!」

「えぇ…ダル」

 

 あの人の波を越えるのは至難の業だ、少なくとも、ひかるに越えれる気はしなかった。

 

 

「いいからいいから!」

「ちょ、待っ…!」

 

 気後れするひかるの手を掴み、黒井は人海へと突撃する。

 

「あ、そこの地味目の子!オールマイトについてコメントを!!」

「地味目て、失礼だな。…俺普通科なんで、知りませんよ……」

 

 勢いよく頬に押し付けられるマイクや人々を手で押し退け、ひかるは黒井を追って前進するが、人の波に押されなかなか前に進めない。

 

「も〜、ひかる、この人たちすごい邪魔!」

「だから言ったろ…!」

 

 あっという間に二人は波に飲まれ、身動きが取れなくなってしまった。

 未だ手は繋がれたままであるが、このままでは離れるのも時間の問題だろう。

 

「あ、そうだ!!ひかる、光って!!」

「え?」

「いいから、早く!」

 

 突如ハッとした様な顔をして、黒井は意味不明なことを口にする。

 「わかったよ」と口にすると同時に、ひかるの身体は光を発し、輝く。

 

「うわ眩し!」「え、なにこれ!?太陽!?」

 

 ぴかぴかと光り輝くひかるを遠巻きにし、僅かだが動揺し、報道陣が撤退しだす。

 

 

「ひかるナイス!」

「あぁもう…急ぐぞ、黒井!」

 

 今度はひかるが手を引いて、校内に向かって走り出す。

 もう一度捕まったら、今度こそ抜け出せる気がしない。

 ……ていうか"個性”使っちゃったし、後で怒られるかな、これ。

 

 

 

 

 

 

 ひかると黒井が別れ、それぞれの教室へと向かう。

 教室に入れば既に生徒のほとんどは揃っており、扉を開けて入ってきた黒井へと視線が集中する。

 黒井もまた、自身に集まる視線に気づく。そして―――

 

「昨日は本当にごめん!!みんなに迷惑かけちゃったし、授業も中断させちゃって…!」

 

 両手を合わせて頭を下げて、黒井は誠心誠意謝罪する。

 

「いいのよ黒井ちゃん。どっちにしても授業はもうすぐで終わりだったんだもの。巻き込まれた三人も、幸い怪我はなかったわけだしね。ケロ」

 

 そんな黒井の肩に手を置き、一人の女子生徒…蛙のような少女、蛙吹梅雨が声をかける。

 

「それに、すっげぇよお前の個性!!轟と爆豪どころか、グラウンドβ丸ごと一瞬の内に沈めちまったんだもんなぁ!!!」

「仲間ごとってのは、ちょっとあれだけどね」

 

 他のA組の生徒たちもまた、昨日のことを深く気にすることなく、寧ろ寛容に受け入れてくれる様子だ。

 しかし、

 

「けど、謝るなら私たちじゃなくて、直接巻き込まれた轟ちゃんと爆豪ちゃん、それとりこちゃんに謝った方がいいんじゃないかしら。特にりこちゃん、貴方のこととても心配してたもの」

 

 蛙吹がそう言って、教室の端へと顔を向ける。そこには一人俯く闇川が居た。

 

「…そうだよね、俺行ってくる!」

 

 そう言って、黒井は闇川の席に駆け寄り、頭を下げる。

 

「りこてゃ、昨日はごめん!!結局勝敗はつけられなかったし、りこてゃに迷惑かけちゃった…」

「、、、私は、大丈夫だよ、黒井くんが無事で良かった。、、、ひかるくんのために怒っちゃったんだよね。それなら、私は何も」

 

 それだけ言い残し、闇川は一人スマホを触り始める。

 あんまり邪魔するのもよくないと、黒井は足早に闇川の元から離れた。

 

 その後、爆豪と轟にも謝ろうとしたが、どちらも反応は芳しくなく。

 爆豪に至っては堂々と舌打ちだけして去っていってしまった。

 

「ご、ごめんね黒井くん、あんまり気にしないであげて。かっちゃん、昨日何も出来ずに呑み込まれちゃったこともあって、ちょっとイラついてるみたい」

 

 ということらしい。

 黒井にはよく分からないが、恐らくそういうものなのだろう。

 それに、どうやら緑谷も緑谷で昨日爆豪と何かあったらしく、少し気まずそうにしていた。

 

 

 黒井がクラスメイト全員に謝罪を済ました頃には、既にホームルームの時間直前となっていた。

 チャイムが鳴ると共に相澤が教室に現れ、先程まで騒がしくしていた全員が大人しく席に座る。

 入学してまだ三日目だと言うのに、完全に飼い慣らされている気がしてならない。

 全員が座っているのを確認して、相澤が教卓から声をかける。

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績、見せてもらった」

「!!」

 

 そう言われ、何人かがバツの悪そうな顔をする。そのうちの一人、爆豪に向けて、ギロリと相澤の視線が向けられる。

 

 

「爆豪、おまえもうガキみたいなマネするな。能力あるんだから」

「……わかってる」

 

 忌々しげに顔を歪めて、爆豪は悪態を着く。

 

 

「で、緑谷はまた腕ブッ壊して一件落着か」

 

 ビクッと肩を揺らし、緑谷は僅かに俯く。

 入学初日に言われたこと、そのまま何も改善せずに繰り返してしまった。そのことに対する負い目は、確かにあった。

 

 

「"個性”の制御、何時までも『出来ないから仕方ない』じゃ通させねぇぞ。俺は同じことを言うのが嫌いだ。それさえクリアすればやれることは多い……焦れよ、緑谷」

「っはい!」

 

 教師からの叱咤激励、緑谷は顔を上げ、確かな覚悟と共に返事をする。

 それを聞き、相澤は満足したかのように頷くと、今度はもう一人、黒井へと向き直る。

 

 

「そして、黒井。悪いのは完全に爆豪だが、さすがにやりすぎだ。友達思いなのはいいが、ことある事に暴走してたらキリがない。賢しい敵は言葉さえ活用してくる。自分の能力の危険性を、きちんと考慮しておけ」

「…はい」

 

 そう言われ、クラスの全員が昨日の光景を思い出す。

 街一つと言っても過言では無い空間を、一瞬の内に呑み込んだ黒井のブラックホール。

 あまりにも規格外、強すぎる個性の力。

 緑谷とはまた違う、制御が効いているが故の暴走状態。

 轟と爆豪、そして闇川が、僅かに顔を顰める。

 そんな反応を知ってか知らずか、相澤が再び口を開く。

 

 

「さてHRの本題だ…急で悪いが、君らに…学級委員を決めてもらう」

「「学校っぽいの来たー!!」」

 

 良い意味で予想外。緊迫感に包まれていたクラスの雰囲気が、一瞬の内に霧散し、今度は一変して楽しげなものに包まれる。

 

「委員長!ソレやりたいです俺!」「ウチも」「俺も」「僕も!」「はいはい!俺もやりたーい!」「、、、ワタシも」「俺も俺も!」

 

 次々と立候補が上がり、一部を除いてほとんどのものがその役職を志願する。

 例えば普通科であれば、雑務を押し付けられる役職としてあまり人気にはならないかもしれないが、ここヒーロー科においては違う。

 集団を導くというトップヒーローに必要な素質を鍛えることができる役。

 誰もが憧れるそれに近づくためのものとして、ほとんどの者が意気揚々と手を挙げていた。

 

 無論、黒井も例外ではない。

 天高く聳え立つように右手を上げて、まるで競売のようなお祭り騒ぎに準じていた。

 

「静粛にしたまえ!!"多”を牽引する責任重大な仕事だぞ…!「やりたい者」がやれるモノではないだろう!!周囲からの信頼あってこそ務まる聖務…!民主主義に則り真のリーダーを決めると言うのなら―――これは投票で決めるべき議案!!」

 

 長々と長文を述べ、飯田は投票による議決を行うべきだと提案する。

 しかし、その右手はぷるぷると震えながら、天を衝く塔の如く挙げられていた。

 

 

「そびえ立ってんじゃねーか!!何故提案した!!?」 

「日も浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」

「そんなん皆自分に入れらぁ!」

「だからこそ、ここで複数表を獲得した者こそが真に相応しい人間ということにならないか!!?」

 

 意外と口の悪い蛙吹やツッコミに回っていた切島が異議を呈すが、故にと飯田はそれを覆す。

 

「どうでしょうか先生!!」

「時間内に決めりゃなんでもいいよ」

 

 少し長丁場になりそうだと判断したのか、相澤は直ぐに寝袋に身を包み、惰眠を貪り始めていた。

 

 

 

 

「じゃあ女子の学級委員はミナミで決定だな。他、男子でやりたいヤツいるかー?」

 

 同時刻、普通科。

 ヒーロー科や他のクラスと同様に、普通科でも学級委員決めを行っていた。

 

「学級委員ええやん」「ぴかるんやればー?」

「え、やだよ。めんどくさいし」

 

 

 即断。理由:めんどくさいから。

 ひかるはそう言う子だった。

 

 

「え〜」「メンドイとか言うなし」

「いや、だって面倒臭いだろ。書類運んだり、クラス纏めたり、そんなの俺に出来るわけないし」

「諦めたら試合終了〜」「最後まで足掻けし」

「あー聞こえない聞こえない」

 

 耳を塞いでギャル達の言葉を遮り、聞こえないふりをする。

 大体、学級委員なんて目立つ職業、自分のようなやつには向いていないのだ。

 そういうのは、やりたいやつに任せるのが一番である。

 

 

 ひかるはそういう子だった。

 

 

 

 

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