【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】   作: 燃える空の色

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12.ひかるとマサ、逆らえないやつ

 

 

 時計の針が頂点を指し示し、昼休憩の時間となった頃。

 黒井とひかる、そしてギャル二人と闇川達が集まって昼食を取るのが常習化し、各々の近況報告…主に黒井や闇川、華月などのヒーロー科組の話と、普通科組の日常会話を交わすことになっていた。

 

「それでさ、うちのクラスの委員長が緑谷と八百万って子になったんだけど…」

「、、、モモちゃんに投票したのに、ジャンケンで負けちゃったんだ」

「えーうける」「やばー」

「どこにウケてんの?」

「ていうか、りこてゃは自分に投票しなかったんだね!!」

「確かに」

 

 八人が和気藹々と団欒していると、ふと、ひかるたちの傍で立ち止まる人影があった。

 

「あれ、マサとりこてゃに、多々くんまで!…ていうか、えぇと、何このメンツ。ヒーロー科、じゃないよね。三人の友達?」

 

 その人物…ピンク色の肌と、白目と黒目が反転したような瞳をした少女は、少し困惑した様子で黒井と闇川に話しかけてきた。

 

「うわほんとだ。めっちゃ大勢で食ってる」

「はぁ、はぁ、ギャルが2人に、地雷女子に、吸血鬼っ娘…!!おいおい、なんだよ黒井、ハーレムじゃねぇかよぉ……!!」

 

 黒井と闇川にとって見覚えのある顔ぶれ達…雄英高校ヒーロー科A組に属する生徒達であった。

 

「おい黒井、誰だよこいつら。ていうかそこの葡萄頭、名前も知らない奴ら見て興奮してんなよ失礼だろうが。ていうか私だけ呼ばないの、別にいいけど本人の前でやるのヤバすぎるだろゴハッ」

 

 そう言って毒島が口から吐いた毒が宙を舞い、峰田の頭上に着弾、頭のモギモギが僅かに溶ける。

 

「女子の体液がオイラの頭皮に!!!」

 

 即座に興奮する峰田、周囲からの冷たい視線が降り注ぐが、一切気にしていない様子。

 

「わっ!スミちゃんの毒、盛大に葡萄頭くんにかかったね!!」

「毒!?毒っつったか!?言ったよなぁ!?おおお、オイラを殺す気かよぉ!!?」

 

 出会ってそうそうガヤガヤと騒ぐ峰田を横目に、残った二人の人物について知っているひかると黒井が疑問に答えようとする。

 

「あー…毒島さん、この人たちは……」

「俺と同じクラスの芦戸さんと、瀬呂くんと、峰田!!」

「なんでオイラだけ呼び捨てなんだよ!?」

 

 ブドウのような頭をした、峰田と呼ばれた少年が、憤慨したとばかりに叫ぶ。

 

「へー、マサくんのお友達なんだ!!それじゃ、私とも友達だね!!私、ヒーロー科B組の華月祈侑!!キューちゃんって呼んでね!!!」

「ヒーロー科なんだ!私はA組の芦戸三奈!よろしくね、キューちゃん!!」

「お、おう。よろしく…なんか、梅雨ちゃんみたいな子だな」

 

 太陽のような笑顔と共に差し伸べられた華月の手を芦戸が握り返し、それを後ろから見ていた瀬呂が似たような雰囲気の同級生を思い浮かべていた。

 

 

「ウチ見里未来」「平翔子でーす。よろしく〜」

「よろしく!!ねぇねぇ、二人はどんな……」

 

 "個性”なの、と芦戸が聞こうとした時。

 ふと、見里が表情を変える。

 

 

「あー、やばいわこれ」

「どしたん未来」

「なんかこの後マスコミが雄英侵入してきて警報なるみたい。セキュリティ3が突破だって」

「あー、見えちゃったか未来。それじゃ、パラレル行っとく?」

「説ある」

 

 そう言い残すと、二人は影も形も残さず、文字通りこの世界から消え去った。

 後に残されたのは、声をかけたら急に姿が消えてしまった芦戸のみである。

 

【――人物名:見里未来

   個性(能力): 未来視(ヴィジョン)

   解説:未来が分かる】

 

【――人物名:平翔子

   個性(能力): 平行世界移動(バタフライエフェクター)

   解説:平行世界に移動できる】

 

 

「え…え!?何今の!?どういうこと!?」

「あー…二人の個性、未来視と平行世界移動で…」

 

 移動してしまった二人の代わりにひかるが疑問に答えると、今度は更に驚いた顔で、

 

 

「えぇ!?なんだよそれチートじゃねぇか!?」

「なんでそんなのが普通科に居んだよぉ!?」

「いや、それはほんとにそう」

 

 あの二人の能力なら、トップヒーローだって夢ではないだろう。

 ルックスもいいほうだし。

 

 

「ていうか、サラッとやばいこと言ってなかったか?」

「なんか、マスコミがどうとかって…」

 

 そう言えば、と二人が消える前の台詞を思い出す。

 

 

「確か、セキュリティ3とか…」

「―――それはだな」

 

 ふと、これまた聞き馴染みのある声が聞こえてくる。

 ひかる達がそちらへ振り向けば、そこいたのは二人の男子生徒…ネクタイの色からして、2年生だろうか。

 方やカメラを構え、目が覆われる程度に前髪を伸ばした陰気な青年に、対するように快活な印象を覚える青年。

 ひかる、そして黒井には、見覚えのある人物だった。

 

 

「よう多々、元気だったか?」

「……久しぶりだな、多々」

「その声…新仁部長に、零也副部長まで」

 

 片手をあげ、親しげに声をかけてきたのは、「前」にひかるの所属していた部活の先輩達。

 元新聞部部長の結城新仁と、元新聞部副部長の柳零也の二人だった。

 

「二人もこっち来てたんですね」

 

 驚愕半分でひかるがそう言えば、零也が頷く。

 

「あぁ、お前らより一年早く生まれてる」

「先生たちも俺らより早く生まれてたりしてるからなー。あと、誠も俺らより年下だし」

「誠くんまで…やっぱり、みんなこっち来てるんだ…」

 

 今まで、ひかるたちは同学年の奴らか家族くらいとしか出会えていなかったが、どうやら先輩たちは違ったらしい。

 おそらく、様々な年代の「前」の世界の住人が、この世界には居るということなのだろう。

 

「えっと、なんの話…?ていうか、結局セキュリティ3ってのはなんなんですか?」

 

 ひかる達とは違い、話の概要を一切理解できなかった芦戸達が話をもどし、最初の疑問を投げかける。

 それを聞かれ、そうだったと新仁部長が得意げに口を開き、

 

「セキュリティ3ってのは、何者かが校舎内に侵入してきて、避難しろってやつだな」

「…多分、もう始まる」

「え」

 

 なにが、と聞こうとした時にはもう遅かった。

 突如、けたたましく警報が鳴り響き、セキュリティ3が突破されたと避難勧告の放送が流れる。

 

「うわっ!」

 

 放送が学校全体に響くと同時に、先程まで昼飯を食べていた生徒たちが立ち上がり、慌てたように外へ向けて走り出す。

 ぴかぴかと光を放ちながら、ひかるは再び、その人の波に飲まれていた。

 

 

「ほら…雄英の生徒は優秀で判断が早いからな」

「ま、セキュリティ3が実際に突破されるなんて、俺たちとしても初めてのことだけど…って痛──!」

「──すみませ…って、どこ触ってんのよ!ハレンチ!!」

 

 少し遠くで響く乾いた音を聞き流し、ひかるはどうにかしてこの流れから逃れなければと抵抗するが、あっという間に押し流される。

 

 

「なんで一日に何度もこうなるんだよ…!」

「わぁ〜!?ひかる、ひかるー!!」

 

 同様に他の奴らも身動きが取れないらしく、ひかるを探して黒井が名を呼んでいるが、それに応えることすらままならない。

 

 

「どどどどうしよ!!?ひかる、ひかるが!」

「まぁまぁ落ち着いて。こんな時は…」

「こんな時は!?」

「諦めも肝心」

「ええぇ!!?」

 

 頬に赤い手のひらの跡を残した新仁がサムズアップでそう答える。

 この先輩はどうにも役に立ちそうにない、そう即座に判断し、黒井は即座に他の手段を模索する。

 どうしようどうしようと慌てふためく黒井を、新仁…そして零也が、ジッと見つめていた。

 

 

 

 

 

「酷い目にあった……」

「ねー、まさかあの後、新仁先輩が三年の絢爛崎先輩とあんなことになるなんて…」

「いや、それもすごかったけどさ。なんかスポットライト的なことさせられたし。そうじゃなくて、マスコミだよ、マスコミ」

「あー、たしかに。雄英バリア?だっけ。それを破ってまで入ってくるってすごいよねー」

「……普通に犯罪だよな、あれ」

 

 あの後、黒井がブラックホールで全部吸ってしまおうとしたり、ひかるが光ったり、部長がラッキースケベを起こしたりして、次第に収集がつかなくなっていったりして大変だった。

 思い出すだけでげんなりしているひかるを他所に、黒井が、

 

 

「けど、飯田のアレ、凄かったね!!」

「あー、あの非常口のやつ…たしかに凄かったな」

 

 非常口というワードから、少しばかり記憶を掘り起こす。

 あの混乱が起こってから暫くして、ヒーロー科A組の飯田天哉が突如宙を舞い、大胆に叫んだのだ。

 

『大丈ー夫!!!!!』

 

 飯田はまるで非常口のような体制のまま、出口の上に張り付き、皆に落ち着くように促していた。

 

 

「それでそれで、実は緑谷が飯田を委員長に推薦して、委員長が飯田になったんだよね」

「まぁ、いいんじゃね。緑谷も別に向いてないわけじゃないと思うけど、飯田の方がぽいだろ。知らないけど」

 

 少なくとも、どちらの方が向いているかどうかを語れるほど、ひかるは飯田について、そして緑谷について知らない。

 無責任な言葉を吐いて、ひかるは適当な返事をする。

 

「えぇ、そうかなぁ。…あ、ねぇねぇ、ひかるのクラスは誰が委員長になったの?」

「あー…誰だったけ。女子はミナミがなってたと思うけど……」

 

 

「へぇー、こっちでも委員長やってるんだねミナミ。相変わらず真面目だなー」

「それな」

 

 

「そういえばさー、今度ヒーロー科で救助訓練するらしいんだけどさー」

「おう」

 

 

「それでさー、救助される役と、また俺が暴走したりしたら、その時に相澤先生とかだけじゃ厳しいかもなーってなってさー」

「……おう」

 

 

「だから、ひかるたちにも手伝ってもらうんだって」

「おう……え?」

 

 

「よろしくね、ひかる!!」

「……えぇ……」

 

 

 どうやら、この「非日常」はまだ続くらしい。

 ひかるは、そっとため息をついた。

 




□どこかの先輩たち

霊「…多々は、相変わらずでしたね」
新「だなー」
霊「……それ、大丈夫ですか、部長」
新「あー大丈夫大丈夫。黒井くんに近づいた時に、なんかやられたっぽいんだけど…多分、ラッキースケベで処理されたわ」
霊「…やっぱり正義くんに憑いてたあれは…」
新「ま、害がないならいいだろ。それよりも、今朝の取材の取材にいこーぜ」
霊「はい」
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