【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】 作: 燃える空の色
無事にひかると黒井のデコ写真を手に入れることが出来ましたが、代わりに平が2凸しました。
誤字報告ありがとうございます。
PM 0:50 途方もない悪意
「今日のヒーロー基礎学だが……」
雄英高校、入学四日目。
既に生徒の大半が新しい生活に慣れ始め、授業も本格的なスタートを迎え終わった頃。
ここヒーロー科では、新たな授業が始まろうとしていた。
「……災害水難なんでもござれ、救助訓練だ!!」
「おぉー!!これぞヒーローの本文ー!!!」
戦闘訓練とはまた違う、ヒーロー科ならではの授業。
救助を得意とする個性をもつ者や、そういったヒーローに憧れる者が大きくざわめく。
「おい、まだ途中!!」
相澤が一喝すれば、瞬く間に生徒達が大人しくなる。
全員が静かになったのを確認すると、相澤が扉の外に向けて手招きする。
「そして、今回の授業では特別に、教師とは別で助っ人が来てくれている…入ってきてくれ」
「……えっと、多々光です」
「見里未来と〜」「平翔子でーす」
相澤が招き入れ、教室に入ってきたのは三人の人物…至って普通の少年と、二人のギャルだった。
「え、ひかるくんだ〜!!」「なんでいるの!?」「ギャルが、ギャルが二人……!!」「誰?あの人達……」「けッ!」
────帰りたい……
唐突に現れた他の科の生徒。
良くも悪くも、クラス全体の注目がひかるとギャルズに集中する。
急にスポットライトを当てられたようなそんな感覚に、ひかるは居心地悪げに身をすくめた。
「ひかる〜!」
ひかるが一人陰鬱な気分に浸っている中で、黒井はいつも通りの明るい表情と声とともに激しく両手を振るう。
それを見て、少し楽になったような、もしくはお前のせいだからなと責めたくなるような。なんとも言えない感情がふつふつと湧き上がってきた。
「何度も言わせるな」
騒ぎ立つ教室に向けて相澤が再びギロリと睨めば、まるで先程までが嘘だったかのように口を閉じる。
「今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。訓練所は少し離れた場所にあるから、バスに乗って行く。以上、準備開始」
その言葉と共に、生徒達が立ち上がり、各々の準備に移り出す。
ヒーロー科のその様子を眺めていれば、相澤が、三人に声をかけてくる。
「見里、平、多々。お前らも体操服に着替えてバスの方向かっといてくれ」
「おけまる水産〜」「了解道中膝栗毛〜」
「…はい」
◇
各々が戦闘服、あるいは体操服に着替えバスへと乗り込む最中。
コスチュームに着替えた黒井に、ひかる達が声をかける。
「黒井、それコスチュームって言うか、ただの制服じゃね」
「うける」「マジじゃん」
「いーの!だってほら、懐かしいでしょ?」
「前」にひかるたちが通っていた私立パラの丸高校の制服に、黒井がいつも来ていた赤いパーカー。
馴染み深いし、今でも黒井のイメージとして染み付いてはいるが、
こうして実際にみるのは久しぶりだった。
「まぁ、それは確かに…」
「それにりこてゃもあんまりヒーローっぽくないし、そんなもんなんじゃない?」
そう言ってチラリと闇川を見れば、所謂地雷系と言うやつだろうか。
ピンクと黒を基調としたフリルの多い服に、厚底の靴を履いているその装いは、確かにヒーローらしいとは言い難いそれだ。
「あー…相変わらず地雷系なんだな、闇川の服装」
「かわいい〜」
「、、、ありがと」
話が聞こえたらしい闇川が、ひかる達の元へ近寄ってくる。
連日昼飯時に会ってこそいるものの、こうしてちゃんと向かい合ったのは久しぶりかもしれない。
「……」
「あの、多々くん。」
「な、なに…?」
気まずい空気を打ち破って、闇川が意を決したように口を開く。
「一昨日は、ありがと。結局、お礼言いそびれちゃってたから、、、」
「あーいや、別に…」
そもそもが黒井を助けるために、というのが行動原理だったのだから、それで闇川に感謝されるのも、少し違う気がする。
けれど、感謝を断るのは、もっと失礼だろう。
二人の間に、なんとも言えない緊張が走った。
「おい、お前ら。早くバスに乗れ、時間は有限だ」
「あ、はい!!」
そんな空気を知ってか知らずか、相澤先生に先導され、急いでバスへと乗り込む。事前に飯田が番号順で並ぼう、などと段取りを組んでいたが、形式が違うためなんの意味もなかった。
黒井と共に少し前の方の席につくと、相澤先生がひかるに話しかけてくる。
「悪いな多々。一応俺が常にそばにいるが、万が一に備えて、暫くは付き添ってもらう予定だ。その分の授業の補填はこっちで考えてある」
「まぁ、別にいいですよ。黒井になんかあったらあれなんで」
そう言って、ひかるはチラリと黒井を見る。
ヒーロー科の友人と談話し、満面の笑みを浮かべるその姿からは、能力を暴走させていた時のような様子が一切感じ取れない。
恐らくではあるが、もうあんな風に考え無しに暴走することは無いと思う。
確証はない。けれど、ひかるはどこかそう確信していた。
「”極小超重力天体"二重展開……見てひかる!!ブラックホールお手玉!!」
「「すげー!!!」」
「……何やってんだ、お前ら」
やっぱり、何かやらかしかねないかもしれない。
ひかるは一人、気を引き締めた。
◇◆
「やば、USJじゃん」「ウケる」
「すげぇな。もう、色々」
バスに揺られて、暫く。
A組とひかる達が到着したのは、一見するとテーマパークのようにも思える巨大な演習場。
どこか見覚えのあるようなその光景に、生徒達もどこか楽しげな雰囲気に包まれていく。
『水難事故、土砂災害、火事、etc…あらゆる事故や災害を想定し、僕がつくった演習場です。その名も……
「いや、ほんとにUSJなのかよ。いいのそれ?著作権的に」
突如現れた宇宙服に身を包んだ、性別不詳の人物……スペースヒーロー「13号」が、この場所の名を語る。
色々とアウトなそのネーミングに、ひかるは思わずツッコミを入れてしまった。
「13号、オールマイトは?ここで待ちあわせるはずだが」
『先輩…それが、運動時に制限ギリギリまで活動してしまったみたいで……今、仮眠室で休んでいます』
「不合理の極みだなオイ。仕方ない、始めるか」
僅かだが、相澤と13号の会話の内容が聞こえてくる。
……オールマイト、また無理したのだろうか。
彼の体が、既に限界近いことは知っている。
そこまで深い仲という訳でもないが、ひかるはオールマイトの秘密を知ってしまっている。
それで何も気にしないでいられるほど、ひかるは薄情ではなかった。
そんな様子を知ってか知らずか、13号は全員の前に立ち、指を1本ずつ折り始める。
『えー、始める前に小言を一つ二つ…三つ……四つ…』
「増えてんな…」
「増えてるねー」
次第に数を増やしていく折れた指に、ひかると黒井が困惑する横で、話す内容を数え終えた13号が再び生徒達に向き直り、本題へと入る。
『皆さんご存知だとは思いますが、僕の"個性”は"ブラックホール”、どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます。そこの黒井くんと、似たような個性ですね』
「その"個性”でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」
そう言って、緑谷が麗日と共に13号に語りかける。
全身で憧憬を露わにする二人に対し、13号は頷きながら言う。
『えぇ…しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう"個性”がいるでしょう』
『超人社会は"個性”の使用を資格制にし、厳しく管理することで一件成り立っているようには見えますが、しかし一歩間違えれば容易に人を殺せる"いきすぎた個性”を個々が持っていることを忘れないでください』
『相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘で、それを人に向ける危うさを体感したかと思います』
そう言われ、生徒たちの脳裏に浮かぶのは四つの光景。
緑谷の身を滅ぼすほどの超パワー。
爆豪による爆破の一点放射。
轟による圧倒的な氷結。
そして、黒井のブラックホール
そのどれもが、まかり間違えば人を殺しかねないほどの
『この授業では…心機一転!人命のために"個性”をどう活用するかを学んでいきましょう』
『───君たちの力は人を傷つける為にあるのではない、救けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな』
『以上!ご清聴ありがとうございました』
そう締めくくると、13号は頭を下げて、綺麗なお辞儀を披露した。
「わぁ〜かっこいい〜!!!!」
「ステキー!」「ブラボー!ブラーボー!!」
13号からの叱咤激励の言葉に、生徒たちから歓声の声が上がり……ひかるは、ゆっくりと黒井を見た。
呑気に「アンコール!」なんて叫んで手を叩く姿に、「そういうもんじゃないだろ」とツッコむ。
「そんじゃあ、まずは…」
その様子を見届けて、相澤が手摺にもたれかかったまま授業を進めようとしたその時。
ふと、違和感に気づく。
その背の向こう、広場に、何かが──
「──やば、みんな下がって」「──ひかる、後ろに」
黒井と未来がそう言い放つと共に、その場にいる全員が、USJの広場に発生した違和感の正体に気づく。
黒い、黒い渦。
黒井のブラックホールのような、しかし、決定的にどこか違う何か。
最初は小さかったそれは、次第にその規模を増し、気づけば人が幾人も通れるほどの大きさへと変わっていた。
そしてそこから、一人の男が姿を現す。
────ギョロりと、その瞳が、視線が、生徒たちを捉えた。
「ッ……ひとかたまりになって動くな!!」
「え、いや、え?」
「ひかる!俺から離れないで」
一体何が起きたというのか、現状を受け止めきれず狼狽えるひかるの前に手を翳して、黒井が庇うように前に出る。
「13号!!生徒を守れ…!」
相澤が13号に向けて叫ぶ。
「これ、ちょっとマジでやばいかも」
「見えちゃったか、未来」
見里未来が、僅かに眉を顰めた。その目に映る未来を見据えて。
僅かに強ばるその手を、隣に立つ平がそっと握りしめる。
「いや、ほんとに何が……って、なんだ、あれ。黒い…靄?」
目を細めて広場を覗けば、そこには巨大な靄と、靄から現れる何人もの姿が見えた。
気のせいでなければ、その誰もが雄英高校の関係者とは思えない格好や立ち振る舞いをしているように映る。
「なんだアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
「ちげーし」「ううん、それよりも、もっと…」
惚けたように言った切島の言葉を、侵入者にいち早く気づいていた二人が即座に否定する。
あれは演習、ましてやあんなに脆く弱いロボットとは程遠く、桁違いに厄介な存在。
「動くな、あれは─────敵だ!!!」
相澤がゴーグルを装着し、呑気に話す生徒たちを制す。
広場に現れた、多数の人影。
それらはみな――敵であると。
「13号に…イレイザーヘッドですか……先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがこちらにいるはずなのですが……」
人型の黒い靄が蠢き。
「どこだよ…せっかくこんなに、大衆引き連れてきたのにさ…オールマイト…『平和の象徴』…いないなんて…」
仰け反るようにして、その男は。
全身を人の手で覆った男の視線が、天を衝く。
「… 子供を殺せば来るのかなぁ?」
そこに宿るのは、途方もない悪意。
突如現れた敵を見て、ひかるを後ろ手に庇いながら、黒井の身体からは僅かにブラックホールが溢れ出る。
「やらせるかよ…今度こそ、絶対にひかるを―――、」
ひかると黒井の元に、再び。
どうしようもない『超常』の『非日常』が、襲いかかろうとしていた。