【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】 作: 燃える空の色
雄英高校入学、四日目。
ヒーロー科A組の授業の助っ人として、ひかるは未来、翔子と共に授業に参加することとなる。
訓練所までバス移動し、着いた先で13号先生からのありがたい話を聞いた矢先。
突如、広場へと現れた、黒い霧。
そしてモヤから溢れ出す、無数の人影。
―――黒井たちは今、敵の襲撃を受けていた。
「ひかる、俺の後ろにいて。絶対に離れないで」
「え、いや、…なにがおきて…」
自体を呑み込めず、困惑するひかるの視界に映るのは、黒いモヤから現れた無数の人影。
特に、靄そのもののような敵に、全身に人の手を装着した不気味な男。
そして、脳を露出させた黒い肌の巨漢。
異様、あまりに異様。
そういうものに触れた経験がほとんどないひかるでも、わかる。
あの三人は、一際危険だ。
僅かにひかるの手が震え、その体が輝きを帯びる。
「大丈夫だよ、ひかる」
黒井がその手を握って、声をかけてくる。
こんな非常事態だと言うのに、いつも通りの明るい声。けれど、どこか…焦点が合わないような。
何も映していない、まるでブラックホールそのもののような。いつかの、前世での死因を聞いた時と同じような、そんな目をしていた。
「――ひかるは、俺が守るから」
「黒井…?」
どこか様子のおかしい黒井を傍に、ようやく状況を掴んできた他の生徒たちが声を荒らげて騒ぎ出す。
「
「先生、侵入者用のセンサーは!」
『もちろんありますが…』
生徒の一部が13号に尋ねるが、返されたその言葉とは裏腹に、突如現れた敵たちに対しセンサーが反応する様子は一切ない。
「現れたのはここだけか、学校全体か…何にせよセンサーが発動しねぇなら、向こうにそう言うことできる"
慌てふためく他の生徒たちとは反し、半身を氷で覆った少年…轟が、冷静に状況を推理し始める。
「校舎と離れた隔離空間。そこに
轟の口から語られる推測、それは決して場を有利にするものではなく、むしろ恐怖の意識を強めるだけに終わる。
ひかるもまた、同じく。
「関係ないよ」
「…おい黒井。お前さっきから変だぞ、大丈夫か」
轟の言葉を遮って、黒井が問題を否定する。
先程から、黒井の様子がおかしい。ひかるが心配して声をかけるが、それに対しても空返事だ。そして―――、
「俺が、全部吸い込むから――!!!」
突如、黒井が片手を翳すと同時に、敵の上空にブラックホールが生み出される。時間と共に次第に拡大していくソレは、あっという間に広場の上空を埋め尽くす。
対象を敵として、サイズが増すと共に吸引力も更に強く、より広範囲にへと変化していく。
「なんだこりゃ!?」
―――そして、侵入者達は空へと堕ちる。
「黒霧ィッ!」
「全く、侵入して早々これとは!!!」
哀れな敵達がブラックホールに呑み込まれ、この世界から消失しようとした瞬間。
再び靄が広がり、宙を舞う敵を包み込む。
「無駄だよ―――、」
「やめろ、黒井!殺す気か!!」
敵が発する黒い霧ごと呑み込んでしまおうと、吸引する力を強めたその時。
その言葉に、黒井の方が跳ねる。
「でも!」
「いいからお前も逃げろ!!」
黒井と光を下がらせ、生徒達を後ろに庇い、相澤がゴーグルを装着し前へ出る。
「13号、避難開始!学校に連絡試せ!センサーの対策も頭にある敵だ、電波系の"個性”が妨害している可能性もある。上鳴、お前も"個性”で試せ」
「っス!」
迅速な判断、相澤は即座に生徒達を避難を促し、ゴーグルを装着する。
一人戦おうとする背に、緑谷が叫ぶ。
「先生は!?一人で戦うんですか!?あの数じゃ、いくら個性を消すって言っても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ、正面からの戦闘は…」
「一芸だけじゃ、ヒーローは務まらん。…それに、黒井のブラックホールであいつらは今混乱している。13号!任せたぞ」
それだけ言い残し、相澤は広場へと飛び込んだ。
相澤の"個性”、『抹消』―――発動型の"個性”を打ち消すその力、そして相澤自身の技術により、一人、また一人と敵を鎮圧していく。
『皆さん、早く避難を!』
「マサ、ぴかるん!早く!!」
13号が生徒を引連れ、避難を開始する。
ひかる達もまた、その後ろについて行く。
「―――させませんよ」
しかしその矢先、先程の靄
「先程は失礼しました。我々は敵連合、僭越ながら…この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせていただいたのは――――『平和の象徴』オールマイトに…息絶えて貰いたいと思ってのことでして」
「!?」
黒い靄から語られた目的は、信じ難いものだった。
『平和の象徴』の抹殺。今までに何百もの敵が目標として掲げ、そして為す術なく鎮圧されてきた不可能。
今日日、オールマイトを本当に殺そうとするものなど、ほとんど居ない。
オールマイトとは、それだけの存在。敵にとってどうしようもないほどの脅威。
そんな誰も達成できなかったその快挙を本気で成し遂げようと、この敵達は現れたのだ。
「本来ならば、ここにオールマイトがいらっしゃるハズ…ですが、なにか変更があったのでしょうか。まぁ、それもは関係なく…」
「私の役目は、これ」
靄が広がり、生徒達を包み込もうと拡散する。
同時に13号が指先の蓋を外し、敵へと矛先を向ける。
「"
しかし、二人の攻防が始まる前に。黒井がブラックホールを放とうとし、同時に爆豪と切島が攻撃を仕掛けた。
「――その前に、俺達にやられることは考えてなかったか!?」
「危ない危ない…そう、生徒といえど優秀な金の卵」
二人の直接攻撃を受けてなお、靄敵は無傷で立ち続ける。
「そちらの方、先程我々を空へと吸い込んだ強力な"個性”の持ち主とお見えします。確かそう…黒井正義、でしたか」
突如、靄敵の口から飛び出た黒井の名前に、黒井本人も、それ以外の生徒達も驚愕を顕にする。
「そして、見里未来に、平翔子。えぇ、"彼ら”から頂いた資料にありましたとも…後ろで守られている少年―――多々光。あなたもです」
「!?」
黒井だけでは無い。
見里も、平も。そして、ひかるの名も。
どういうわけか、闇川を除いたこの場にいる「前」の世界からの転生者についてを、敵は把握していた。
困惑するひかる達を横目に、黒霧は淡々と言う。
「今、生徒達の中で最も厄介なのは黒井正義、貴方です。故に…その心を折る!!」
『ダメだ、君たちどきなさい!!』
靄敵の前に佇む爆豪と切島に向けて、13号が叫ぶ。
しかし、遅い。靄が広がり、13号では最早吸い込みきれない。
黒い靄はあっという間に拡散し、生徒達を包み込む。
一部の生徒がその靄から逃れ、その中にひかる達の姿もあった。
けれど────
「えぇ、私の役目はそう――散らして、嬲り殺す」
「―――ひかる!!!」「「ぴかるん!!」」「多々くん!!」
「…黒井、みんな……!!」
ひかるの背後に靄が現れ、落ちて行く。
黒井が吸う間もなく、見里が視る間もなく、平が移動する間もなく、闇川が起爆する間もなく。
瞬く間に、世界は靄に包み込まれる。
みんなが、黒井が、ひかるに手を伸ばす。
ひかるも、その手を掴もうとして―――
視界が、暗転した。