【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】   作: 燃える空の色

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ひかるくんの影が薄い!ひかるくんなのに!!


PM 1:20 撃退するやつ

 

 

 黒い靄敵による各地への分断、ワープ先に配置した敵達による生徒の各個撃破。そして邪魔者を消し去ったところで、本命によるオールマイトの殺害。

 それこそが、今回の雄英襲撃の主立ったプランだった。

 しかし、これには二つ、かけちがった前提があった。

 一つ目は、オールマイトの不在。

 活動限界により、現在オールマイトは身を休め、現れるのは授業の最後10分程度のみ。

 

 そして、二つ目は―――、

 

 

 

 

「―――ごめんねおじさんたち。ウチら今急いでるんよ。だから…遊んでる暇、ないんだ」

「クソッ…ただの餓鬼じゃ、なかったのかよ……!」

 

 

 USJ、火災ゾーン。

 人工的に用意された火災によって侵された街を舞台とし、訓練を行うはずだった場所。しかし、今では火への強い耐性や操作などといった"個性”を持ち合わせる敵が集められ、ここに来た生徒をなぶり殺しにする絶好のスポットとなっていた。

 敵達には、未来ある若者たちが燃え滓となり、為す術なく焼けて死に行く未来が見えていた。

 そうなるはず、だったのだ。

 

 しかし現実は、彼らが夢見た景色とは全く異なるものだった。

 

 

「───ッ、ぴかるん」

「多々くん、、、!」

 

 ワープによって飛ばされてきたのは、二人の少女だった。

 所謂地雷系と呼ばれるような可愛らしい服装に身を包んだ愛らしい少女と、体操服を着た見目麗しい少女。

 これを殺すのはさぞ楽しいだろうと、敵達が個性を発動させようとしたその瞬間。

 

「邪魔ッ…!!」

 

 ───変動率+7%、青年向けバトル漫画(同人ゲーム原作)だった世界線

 

 長い黒髪の少女が手をかざすと、空間がまるで波紋のように揺らぎ、そこから現れるは無数の武装。

 瞬間、勢いよく射出される暴力の権化に、敵達は防ぐことすらままならない。

 

 繰り広げられる弾丸や武器の嵐。

 倒壊する建物、消し去られる炎の群れ。

 

 敵達の発する"個性”は、目の前の少女が放つ無数の手数によって打ち砕かれ、近距離戦闘を得意とする異形型の突撃も、もう一人の少女による爆撃の前に倒れた。

 逃げる場所も、抵抗する術さえも奪われ、完全なる封殺。

 優勢であったはずの敵達は為す術なく地面に伏し、瞬く間に鎮圧された。

 しかして、敵達は後悔する。

 自分たちは、決して敵に回しては行けない者を相手してしまったのだと。

 

「へ子ちゃん、相変わらず強いね、、、わたし、全然役に立てなかった」

 

 眼前に伏す敵達を横目に、闇川が平の元へ駆け寄る。

 

「んなことないっしょ、りこてゃも結構倒してたし。火力の調整、「前」よりも上手くなってんね」

 

 ウチは逆にちょっと下手になったかも、と平が続けるが、闇川にはそうは見えなかった。

 相手に火を操る個性を持つ者がいた為、面倒だからと建物ごと炎を消してしまったが、それでも少し離れた方の建物はまだ残っており、傷一つとしてつけていない。

 敵だってそうだ。あれだけの火力を振るいながら、誰一人として重傷者をだしていないし、必要以上の怪我を負わせていない。

 目の前の友人は、怒りに満ちてなお優しい女の子なのだと。前世から何も変わっていないのだと、闇川は笑みを浮かべた。

 

 その後ろで、気を伺う者がいた。

 

「クソがァ!!」「死ねぇ!!」

 

 土を舐めていた敵が、呑気に話す二人に向けて飛びかかる。

 数は二人、どちらとも異形の"個性”を持つものたち。

 

───クソガキの個性は恐らく武器の召喚と自身の起爆!!予備動作があるし、傍にいる仲間を巻き込めない!!

 

 今なら確実に殺せる、そう確信したが故の油断。

 

「させないよ!!」

「アギャッ!?」

 

 敵の上から、丸太のように太い尾を振るい、少年…尾白猿尾が現れ、敵の片割れを吹き飛ばした。

 

「クソっ、まだ隠れてやがったのか!!なら俺が───」

「えいっ」

 

 一人残った敵が、それでも尚女子二人に襲いかかろうと拳を振り上げる。その隙に、闇川が顎に回し蹴りを叩き込んだ。

 

「ハガッ…!!?」

「この靴、鉄板とか、重りみたいなの仕込んでて、、、私、仲間が近くにいると、何も出来なくなっちゃうから」

「りこてゃ、やる〜」

 

 最後の抵抗も虚しく、生徒たちに傷一つ負わせることすらできないままあえなく撃沈。これにより、火災ゾーン、完全制圧である。

 

 

 倒れている敵全員が意識を失っていることを確認して、尾白がどこか申し訳なさそうに頭を掻きながら、二人に歩み寄ってくる。

 

「ごめん平さん。ヒーロー科生徒なのに、むしろ助けられちゃって」

「えぇよえぇよ、困った時は助け合いっしょ。尾っぽくんこそ、最後助けてくれてありがと」

 

 ここに飛ばされてきた時、尾白は他二人とは少し離れた場所にいて、敵も少数しかいなかった。

 その為一人一人ヒットアンドアウェイの要領で倒していたのだが、建物が倒壊する様子が見え、急いで走ってきたら、そこに居たのは敵を蹂躙する平の姿。

 

「それにしても強いね。俺なんて、数人倒しとてやっとだったって言うのに…本当に普通科?」

「あざ〜。まぁ、今回はウチがちょっと相性良かっただけだし、それよりも──」

 

 そう言って、平の視線が広場へと向けられる。

 相澤と、多数の敵達が交戦している場所。

 何よりも、あの黒い靄敵と、手だらけの敵―――そして、脳味噌剥き出しの黒巨漢。こんなチンピラの寄せ集めは、所詮生徒たち足止めのコマ、あの三名が本命だろう。

 

 自分たちを飛ばす前の黒靄の言葉。

 平たちのこと、そしてひかるのことを、資料で拝見したと言っていた。……何者かが、自分たちを嗅ぎ回っている。

 無論、翔子はそれを知っていたし、未来も気づいていただろう。

 黒井は、どうだろうか。目敏いところはあるが、ひかるに気を向けすぎて他が雑になっている節がある。

 

 誰が、何の目的でとまでは分からない。

 見里や平がそれぞれで全力を尽くして捜索しても、その足取りを掴むのがやっと。あっという間に煙に巻かれ、これ以上詮索しては命に及ぶと、個性を使わずともわかるほどの何か。

 

「それに多分…アイツも来てるよね…」

 

 しかし、今はそんなことはどうでもいい。

 今、何よりも優先すべきは―――、

 

「―――ぴかるんが危ない。りこてゃ、尾っぽくん、助けに行こ」

「そうだね、急がなきゃ」

 

 最優先事項は、ピンチの仲間を助けること。

 三人は、広場へ向けて走り出した。

 

 

 同時刻、水難ゾーン。

 ひかるたちは未だ船上に押し留められ、下には無数の敵達が今か今かと待ち構え、完全に囲まれてしまっている。

 どうしようも無い現状、その上、緑谷が放った不可解な言葉に峰田が怒りをぶつける。

 

「何が戦うだよバカかよぉ!?オールマイトぶっ倒せるかもしれねー奴らなんだろ!?」

 

 「矛盾が生じてんぞ緑谷!!」と叫ぶ峰田を横目に、緑谷が水中に潜む敵達に視線を向ける。

 

「下の連中…明らかに水中戦を想定してるよね」

「…このUSJの設計を把握した上で人員を集めたっていうこと?」

「そう!そこまでして情報を仕入れておいて、周到に準備してくる連中にしちゃおかしな点がある。この水難ゾーンに、蛙すっ…つっ梅雨ちゃんが移動させられてるって点!!」

 

 「蛙」の個性を持つあ蛙吹が水難ゾーンに送られているということ、それから導き出される答えは一つ。

 

 敵は、恐らくこちら(生徒)の個性を把握しきれていない。

 生徒達の個性がわからないからこそ、生徒達を分散し、各地に配置した大勢の敵たちによる数の暴力で攻め落とす作戦を選んだのだ。

 

「数も経験も劣る以上、勝利の鍵は一つ!生徒(僕ら)の個性が未知数であること!!敵は船に上がろうとしてこない!これが仮説を裏づけている!」

 

 しかし、それは同時に、向こうが生徒達を舐めていないということを意味する。

 こちら側のアドバンテージを上手く使うこと叶わなければ、おそらく、その先に待つのは死だけだろう。

 

「私の個性は…」

 

 だからこそ、緑谷はその脳をフル回転させる。

 何年にも渡って、憧れを止められずに、ヒーローを志してきた自分の足跡。ヒーローノートに書き込まれてきた、無数のアイデアや技術達。

 自身の知識と脳を全力で回し、この場にいる全員の"個性”を有効活用しなければ、窮地を脱すには至らない。

 

「多々くんの個性、最大でどのくらい光れるかって分かる?」

「あー…やったことないからわかんないけど、多分、直視できない程度なら……」

 

 蛙吹梅雨の「蛙」、峰田実の「モギモギ」、多々光の「発光」。

 そして、自身の持つ「超パワー(ワン・フォー・オール)

 OFAは勿論として、どれも凄い個性だ。

 この状況を打開することも、きっと可能な程に。

 

 全員の"個性”の詳細を聞いて、緑谷が策を考案している最中。

 突如、ズドン、と音が鳴り響き、緑谷達の視界が下へ下へと落ちて行く。否、この船そのものが沈んでいるのだ

 

「……ッ!?」

「じれったいだけだ、さっさと終わらせようぜ」

 

 緑谷達が作戦を考えている傍で、敵達が痺れを切らし、船への直接攻撃を仕掛けてきた。

 たった一撃で船が割れ、次第に水中へと沈没して行く。

 

「うわぁぁ!!」

「ちょ、峰田…!?」

 

 恐怖に顔を歪ませて、峰田は頭のモギモギを敵達に向けて投げ込む。

 投げ落とされたモギモギはぷかぷかと水上を漂い、敵達はそれを遠巻きに見つめていた。

 

「ヤケはダメだ!ああなんてことを…敵に"個性”が!!」

 

 そう言って緑谷が下を見る。しかし、敵は峰田のモギモギを警戒し、常に一定の間合いを保つように観察していた。

 

「……!」

 

 緑谷が何かを思いつき、言葉に表そうとしたその時。峰田が敵の発言を受け、恐怖に泣き喚く。

 

「峰田ちゃん、本当にヒーロー志望で雄英来たの?まだ普通科の多々ちゃんの方が冷静よ」

「うっせー!!怖くない方がおかしいだろーがよ!ついこないだまで中学生だったんだぞ!?入学してすぐ殺されそうになるなんて誰が思うかよ!!!」

 

 惨めに、滑稽に、そしてとても現実的に。

 峰田は現状を嘆き、叫ぶ。

 当然だ、おかしな話ではない。

 今、緑谷達に降り掛かっているのは、正しく理不尽だ。許されざる悪で、憎むべき敵。それが、なんの罪もない緑谷達を、私利私欲のために襲っているに過ぎない。

 峰田実には、特別な力などない。

 蛙水のような冷静さも、緑谷のような超パワーも、爆豪や轟…黒井のような圧倒的な力も、頭脳も、ルックスも、何も。

 諦めて、自暴自棄になるのも当然だ。

 

 その姿を見て、緑谷もまた、決意を固める。

 助からなければならない、助けなければならない。

 

 勝算は決して高くない、失敗すればチャンスを失う。

 けれど

 

「『敵が勝利を確信した時が大きなチャンス』……昔、情熱大陸でオールマイトが言ってたよ」

「何を…」

 

 ちらりと、後ろを振り返る。

 僅かに光り輝きながら、呆然と自分たちを見つめている少年。

 友人とも言えるような、秘密の共有者。二人の関係はなんとも言えない、微妙な距離感の上成り立っているものだ。

 しかし、それを差し置いても。彼はこの場において、ただ巻き込まれただけの一般人だ。

 ヒーローを志すものでも、ヒーローに憧れたものでもない。

 

 彼だけは、黒井くんや闇川さんの為にも…絶対に、守り通す。

 だからこそ、緑谷は戦う。

 

「───勝つには、これしかない!!」

 

 

 

 

「あんなぴーぴー喚いて、所詮はガキだな」

「おい、油断だけはするなと死柄木さんが言ってただろ。歳で判断するんじゃない、"個性”を見ろ。常識だろうが」

 

 この場に集められた男達は、社会におけるゴミと称されるような者たちだ。いわゆる日陰者。対した力も、経歴も、知性も。何も兼ね備えていない、ただ普通に生きることを放棄しただけの塵芥屑たち。

 ブローカーの紹介、偶然彼の目に止まったから、彼の「先生」に目をつけられたから。

 理由は様々だが、ここにいるもの達は、それぞれの意思でここにいる。それぞれの意思で、ヒーロー志望の子供たちを殺そうとしている。

 彼らは塵芥で、屑だが、けして唯の案山子ではない。

 一人一人が、"個性"という一騎当千の力を持ち合わせ、死柄木という統率者の元、適切な場所でヒーロー志望を討ち取ろうとしている。

 誰しもが犯罪行為をした過去があり、戦闘経験だって持ち合わせている。

 対し、相手はつい数ヶ月前まで義務教育を受けていた餓鬼が数人。

 恐るるに足らずと、大半の者は楽な仕事を終えようとしていたその時。

 

「──あああ!!」

「ん?」

 

 突如、船の上から少年の声が響く。

 

「死ぃねぇぇぇ!!!」

「!?」

 

 物騒な言葉を叫びながら、少年は船から飛び降り、敵が待機する水面へと堕ちてくる。

 

「やっぱガキだ…おい、さっさと殺ろうぜ」

「おうよ」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべながら、男達は少年に向けて個性を発動させようと手を伸ばす。

 もう少し、もう少しで、目の前の命が無へと還る。その瞬間を想像して、男達はさらに笑みを深めて──

 

「ひかるくん!!!」

 

 少年がその名を叫ぶと同時に、船の上に人影が現れ……その体から、まるで太陽のごとき光を放った。

 

「くそっ、なんだこれ……!!」

「見えねぇ……!!!」

 

 眩い光に照らされ、男たちは一瞬、少年の姿を見失う。

 けれど水中に潜っていた敵への効果は薄く、直視した敵も直に視界を取り戻すだろう。

 だとしても、少し。少しの時間があれば、十分だった。

 

 

「DELAWAREーーーSMASH!!!」

 

 ──少年、緑谷が指先を弾き、風圧と共に水面に強い衝撃が放たれる。

 

「うぉぉぉぉぉ!?」

 

 風圧の放たれた水面を中心として、大きな渦が生まれる。

 渦に引き込まれるようにして、敵達は抵抗する間もなく一箇所へと集中する。

 

「っそっ……!梅雨ちゃん、峰田くん、多々くん!!!」

 

 折れた指先を押えて、緑谷は宙へと跳んだ仲間たちに叫ぶ。

 ひかるは咄嗟に、峰田の方を見た。

 震えている。

 当然だ。峰田だけではない。先程飛び込んで行った緑谷も、そして、ひかるも。

 ―――自分と同じだと、一瞬思う。

 

「〜〜〜〜〜!!!オイラだってぇぇぇぇぇ!!」

 

 叫びを上げながら、峰田は頭のモギモギを掴んで、投げて投げて投げ続ける。

 なんの余裕もない、必死で滅茶苦茶に、敵に全くとして当たらないそれら。

 ただ浮かぶだけのそれが、今の状況においては、しかし。

 ―――確実に敵を捕らえる術となる。

 

「んなあああ!!?」

「水面に強い衝撃を与えたら……広がって、また中心に収束するから!」

 

 自由落下する緑谷を、蛙水の舌が掴み、その場から一足先に跳躍する。

 その眼下で、渦によって吸い込まれ、モギモギにより身動きの取れなくなった的が集まり…ザパーンと、大きな音を立てて吹き飛んだ。

 

「―――一網打尽。とりあえず、第一関門突破って感じね。すごいわ、みんな」

 

 

 

 

 

 

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