【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】 作: 燃える空の色
黒霧が消え去り、死柄木がどこかへと向かったのを見て、黒井は二人へと「黒」を差し向ける。
手の様な形を象り、「黒」が死柄木に迫り…それより早く、黒井の身体が僅かに揺らぐ。
「『邪⬛︎⬛︎』」
隙をさらした黒井に向けて、脳無が拳を放った。
「黒」に呑み込まれた拳は崩壊するが、即座に再生し無理にでもダメージを与える。
続けて、脳無がもう片方の腕を振り上げた。
先程の繰り返し、もう一度同じ手を食らう選択肢などない。
黒井が片手を振り上げると共に、ブラックホールが、その軌道上に出現する。
「『⬛︎えなさ⬛︎』」
拳がブラックホールに呑み込まれる直前。振り下ろされる腕が軌道を変え、握られた拳が薙ぎ払うように振るわれる。
周囲に風が吹き荒れ、黒井の体勢が続けて揺らぐ。
瞬間、脳無が拳をふりかぶる。
その矛先は―――「黒」に覆われた黒井の腕の中に沈む、ひかるへと向けられていた。
「『ッ⬛︎⬛︎、⬛︎ せない!』」
脳無の拳がひかるに触れる寸前、黒井を覆い隠す「黒」が即座に膨張し、まるで波打つように荒ぶり始める。
「『あな ⬛︎、絶対に ⬛︎ さない。ひかる ⬛︎⬛︎ に手を ⬛︎⬛︎⬛︎ こと、絶対に ⬛︎⬛︎ させてあげる……!!』」
「黒」が変貌した無数の触腕が、人の手を離れて放水を続けるホースのように無造作に振り回された。
「『―――⬛︎ になさい 』」
まるで触手のように形を成し、無作為に、のたうち回るが如く暴れる「黒」が、瞬く内に脳無へと…脳無だけではない、周囲に残ったあらゆる生命に、矛先を向ける。
「うわぁッ!!?」「クソッ!なんなんだよ、こいつ!!」
「―――」
僅かに残っていた敵は抵抗すら許されないまま叩き潰され、己へと向けられるそれらを脳無が殴り、叩き、蹴り、捻る。
殴って殴って殴って殴って。
圧倒的な物量に、圧倒的な手数で対抗する。
けれど、たとえ『怪人』と言えども。
その再生には、限度がある。
「『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』」
「黒」を殴った拳がひしゃげた。指先が崩れた。腕がへし折れた。
再生出来ない、しきれない。
それよりも早く、脳無の身体はボロボロになって行く。
一瞬、揺らぎができた。
脳無の両手が潰れ、ほんの一瞬隙を晒す。
「『⬛︎よなら』」
黒井の纏う「黒」が、再び形を変える。
まるで大きな鳥の様に、「黒」がパクリと口を開けて―――脳無を飲み込もうと飛び込み、その胸から下を呑み込んだ。
「────」
「『⬛︎⬛︎⬛︎』」
がら空きの上半身を残し、宙を舞う脳無に向けて触腕が振るわれる。
無抵抗に攻撃を受けた脳無は鈍い音を立てて吹き飛ばされ、追撃を仕掛けようと黒井が踏み出した瞬間。
ちくりと、僅かな痛みを感じる。
「……『⬛︎ れ?』」
次の瞬間。ふらり、黒井の世界が回転する。
少し遅れて、気付く。自分は、倒れたのだ。
視界が明滅し、指先さえ満足に動かない。
どうやら、少し無理をしすぎたらしい。
「あ『◾︎』…ひか、る『⬛︎⬛︎』…」
周囲を侵し、黒井を包む「黒」が消えて、同時にその中に居たひかるも現れる。
今にも気絶しそうな意識を無理やり起こして、黒井は目の前のひかるを抱き留める。
「よかっ『⬛︎』…ひかる『⬛︎⬛︎』が無事で…」
ひかるの身体は全身ボロボロで満身創痍ではあるが、恐らく命に別状はない。
少し辛そうにしながらも、安定した呼吸を続けるひかるの顔を、黒井は愛しげに見つめる。
最後の最後、力を振り絞って、自らの『█い』でひかるの折れた腕と、血の滴る頭部を覆う。
そして――、
「「マサ / 黒井くん!! ぴかるん / 多々くん!!」」
「… やっぱり、来た『⬛︎』」
黒井とひかるの元へと、歩み寄ってくる者達がいた。見里未来に、闇川りこ。
黒井とひかる、二人をよく知る者たちが、その名を呼びながら駆け寄ってくる。
「……来『ちゃ ⬛︎』メ」
二人に向けて静止の声を投げかけるが、その言葉は届かない。
震える手を、二人へと伸ばす。
黒井とひかるの名を呼び、必死に駆け寄ってくる二人の後ろから―――数本の刃が飛翔してくるのが見えた。
「くそ◾︎……!!」
既に限界近い中で、黒井は無理矢理身体を起こして"能力”を発動し、放たれた刃を吸い込む。
しかし数本を取り逃し、それらが見里達の足元に突き刺さる。
「だれ、、、!?」
背後を振り返り、投げ飛ばされた元を辿れば、そこにはいつの間にか人がいた。
怪しげな黒装束に身を包んだ人間が、一人、二人、三人…目視では確認し切れない程の人数が続々と現れてくる。
いつから居たのか、どこに隠れていたのか。
未来を見る見里にさえ全く感知されずに、それらはそこに現れた。
「…ウソ……」
「お前たちは……!!」
「、、、もしかして」
黒井達は、目の前にいる黒装束達を知っている。
忘れられる、はずもない。
フラッシュバックのように蘇るかつての記憶。
「前」の世界を侵し、壊した、災厄とも言っていいナニカ。
三人にとって、悪夢に等しい存在が。
かつての怨敵が、殺意を込めて、目の前に現れた。
「……いや…誰…だよ……」
そんな中、ひとり目を覚ましたひかるだけが、この急展開に取り残されていた。
◇
「一体何がどうなってる…!」
死柄木と対峙していた緑谷達の元に、突如、脳無が飛来し、死柄木のすぐ側に落ちてきた。
下半身はまるでそこだけ食いちぎられたかのような跡を残して消失し、両手もボロボロ。
その姿を見て、死柄木はポリポリと苛立たしそうに身体を掻き毟る。
「……けど、あのバグが追ってきてないってことは…"アイツら”が上手くやったって事かな…?」
恐らく、あの「黒」によって脳無が吹き飛ばされると同時に、"アイツら”がその隙をついて仕掛けているのだろう。
となれば、あの「黒」は"アイツら”が対処してくれると考えて良い。つまり―――、
「起きろ脳無―――こっからは、ワンサイドゲームの始まりだ」
肉剥き出しの腰元から、這い出でるように肉が生え、足を象る。
あっという間に五体満足の姿を取り戻して、むくりと、脳無が起き上がる。
「おいおいおい!なんだコイツ!?下半身抉れてたよな!?再生速度やべぇ!!」
「うるっせェ!!良いから―――」
集中しろと叫ぶ爆豪の眼前に。
突如、覆い隠すような闇が広がる。
一面に広がる黒。その意味を理解する前に、爆豪は―――、
「勝っちゃん!!!」
「爆豪!!!」
―――死
その場にいる全員の脳裏に浮かぶ、最悪の結末。
爆豪の命の灯火が、一つの悪意の前に消え去ろうとした、その時。
バアン、と大きな音を立てて。
USJの入口の扉が破られる。
砂煙と共に現れた、その男は。
「もう大丈夫―――私が来た」
笑顔を浮かべぬ、オールマイトが。
怒りに沈む『
「あ──…コンティニューだ」