【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】   作: 燃える空の色

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13.嵐の余韻

 

 

 

「なんてこった…」

「これだけ派手に侵入されて逃げられちゃうなんてね…」

 

 ミッドナイトはそう呟き、視線の先に広がる凄惨な光景を見渡した。

 広場は、まるで巨大な怪物が暴れ回った後のように抉れ、ひび割れ、瓦礫が散乱している。

 そのほとんどが、先ほどまで続いていた敵との激しい交戦の痕跡だ。

 

「完全に虚をつかれたね…それより今は、生徒らの安否さ」

 

 教師の一人の肩に乗っていた、子供ほどの大きさの鼠――雄英高校校長・根津が、軽やかに地面へと降り立つ。

 

「先に向かった醍湖くんはさておき……他の生徒の救援に向かわなければ」

「それと……」

 

 生徒たちの救助。残存敵の捕縛。被害状況の確認。

 やるべきことは山ほどある。

 教師たちは短く視線を交わし、それぞれの役目を果たすため散っていった。

 

 

 

 

「どうやら、気絶してるだけみたいだな…とはいえ、そもそもが結構な重症だ。なるだけ早く医者に診せた方がいいな」

 

 そう言って、醍湖は黒井からひかるを受け取り、慎重に抱き上げる。

 形の歪んだ左腕に、血に染った頭部。

 “前”の世界でも、“今”の世界でも変わらない。

 守るべき生徒の無惨な姿に、醍湖は僅かに眉を顰めた。

 

「ぴかるんもそうだけど…こいつらもどうにかせんとあかんしょ」

「でもどうするん?マサのブラックホールで吸い込んじゃう?」

「黒井くんに負担をかけすぎちゃうのも、、、」

 

 醍湖の“能力”によって拘束され、意識を失っている黒装束たち。

 その処遇について見里たちが議論を交わしている、その時――。

 

『「────」』

「っ、待て!!」

 

 黒装束たちのいる空間が、ふっと歪み、渦を巻くように収束していく。

 次の瞬間。

 まるで最初から存在していなかったかのように。

 黒装束たちは、その場から完全に消え去っていた。

 

 

「…やっぱ見えんかった〜」

「めんどー」

「対策、しなきゃだね」

 

 いつの間にか現れ、いつの間にか消える。

 悪夢のような連中。

 目的不明。

 正体不明。

 倒すだけでは意味がない。捕らえるだけでも足りない。

 今の自分たちでは、また翻弄されて終わるだけだ。

 

「……そうだね」

 

 黒井は短く頷きながらも、視線を逸らさなかった。

 醍湖に抱えられ、運ばれていくひかるの姿を、ただじっと見つめていた。

 

 

 

 

「ってぇ…」

 

 街中にいくらでもある、裏路地にひっそりと立つバーの中。

 黒い靄が虚空から漏れ出るように渦巻き、そこから一人の男が顔を見せる。

 その両手足からはドクドクと血が溢れ、そのま床へと倒れ伏す。

 

「完敗だ…脳無もやられた。手下共は瞬殺だ…子供たちも強かった…」

 

「『平和の象徴』は健在だった…!話が違うぞ先生……」

『違わないよ』

 

 死柄木を除けば、誰もいないはずの店内に、低く、それでいて甘い声が響く。

 死柄木が顔を上げれば、何も映すことなく、それでいて光を放つモニターが目に入る。

 

『ただ見通しが甘かったね』

『うむ…舐めすぎたな。敵連合なんちうチープな団体名で良かったわい。ところで、ワシと先生の共作"脳無”は?回収してないのかい?』

 

 モニターの向こうから、もう一人、掠れた声が聞こえてくる。

 どちらも、死柄木にとっては聞きなれた声だ。

 その声に対し、黒い靄からもう一人…全身を黒い靄に覆われた怪物、黒霧が答える。

 

「吹き飛ばされました。正確な位置情報を把握出来なければ、いくらワープとて探せないのです。そのような時間は取れなかった」

『せっかくオールマイト並のパワーにしたのに…まァ……仕方ないか…残念』

 

 落胆したようにそう言う。

 オールマイト並のパワーにした。この声の主は簡単にそう言うが、実際行っていることはあまりに規格外であり、倫理からもとことん外れている。

 そして、そう、パワーだ。

 その言葉を聞いて、死柄木の脳裏に過ぎるのは、一人の少年の姿。

 

「一人…オールマイト並みの速さを持つ子供がいたな…。それに、あともう二人……ブラックホールと、馬鹿みたいに光る奴がいた……資料にあった通りだったよ……けど、それだけじゃなかった…強かった…脳無がやられかけた…」

『…………へぇ』

 

 何かを察したように、そしてとても興味深そうに、甘く浸透する声の主はそう呟く。

 

「あの邪魔がなければオールマイトを殺せたかもしれない…ガキがっ…ガキ…!」

 

 死柄木の憎悪に満ちた声を聞いて、画面の向こうにいる男は僅かに黙り込み、言う。

 

『───悔やんでも仕方ない!今回だって、決して無駄ではなかったハズだ。精鋭を集めよう!じっくり時間をかけて!

 我々は自由に動けない!だから君のような"シンボル”が必要なんだ。死柄木弔!!次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』

 

 声高々に、声の主は───かつて闇を支配した"魔王”は高らかにそう謳う。

 死柄木は、そのモニターを。そして、瞼の裏に焼き付く『平和の象徴』の姿を、ジッと睨み付けていた。

 

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