【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】 作: 燃える空の色
15.ひかるとマサ、休み明けに登校するやつ
USJ襲撃事件から、凡そ2日。
事件の翌日は臨時休業となったため、生徒達は二日ぶりの再開となった。
命の危機を乗り越えた反動か、教室は思った以上に賑やかで、事件前とそう変わらない光景が広がっている。
しかし―――、
「マサくん、来ないねー」
「、、、うん」
たったひとつだけ。
ポツンと、誰も座っていないその席が。人に満ちた教室内で、異様な程に目立っていた。
◆◇
「…」
時刻は昼前、太陽が未だ登りきらぬ頃。
雄英高校の門前に停まった一台の車から、二人の少年が降りてくる。
車から降りた二人のうち、ギプスをつけた少年―――多々光は、自身の何倍もの大きさを誇る巨大なその門と、その先に聳え立つ校舎を、じっと見つめていた。
「ひかる、どうしたの?気分悪い?やっぱりまだ怪我が…」
「いや、それはもう大丈夫だけど…」
そんなひかるに、後ろから声をかけてくる者がいた。
続いて車から降りてきた少年――黒井正義に、ひかるはなんでもないと応える。
二人が門前に立ち塞がっていると、片手を上げながら気怠げに歩いてくる男の姿に気づく。
「昨日ぶりだな、二人とも」
「あ、醍醐先生!こんにちは!」
草臥れた様子のその男に気軽に声をかけられ、黒井が満面の笑みで挨拶を返す。
社交辞令のようなそれを済ました後に、男、醍醐は腕に着けた時計を見る。
「予定の時間より少し遅れたな。どうした」
「あー…すいません。片手が使えないってのが、思ったより不便で。黒井に色々と手伝ってもらったんですけど」
僅かに目を逸らし、ひかるはそう言う。
想定よりずっと軽傷になっていたひかるではあったが、原因が分からない以上、もう暫く病院で様子を見ようと言われていた。
けれど、あまり黒井や家族にあまり心配をかけたくなかったため、無理を言って今日の朝、もう一度軽く検査した後に退院することとなった。
とはい、身支度をしようとしたのはいいものの、片腕が使えないのではそれも難しい。
そんなことは元から分かってはいたので、ひかるは事前に黒井に手伝いをして欲しいと頼んでいた。
…黒井に心配かけたくなかったから退院したのに、迷惑をかけてどうすんだと感じなくもないが、これは前に黒井から言われていたことだった。
「ひかるが退院して学校に行く時は呼んでね!手伝うから!!」
とのこと。これを破れば、後々黒井に何を言われるかなどわかったものではない。
その連絡を受け、黒井はひかるの手伝いや付き添いとして学校側に連絡した上で、ひかるの着替えや荷物を持って病院まで訪れた。
けれど、ここから先が問題だった。
黒井に身支度を手伝って貰ったのはいいものの、心配性がすぎる黒井はひかるに傷をつけまいと限界まで丁寧にした結果、想定よりもずっと時間がかかってしまったのだ。
それを聞いて、醍醐はなんとも言えない顔をした後、ぽりぽりと頭をかきながら言う。
「…そうか。まぁ、多々が無事そうならよかったよ。それより、念の為にリカバリー婆さんのとこ寄ってけって話だ。黒井も、心配だろうからついてこい」
「はーい!」
そう言って背を向ける醍醐先生の後を追う形で、二人は校舎へと入り、保健室に向けて歩いて行く。
まだ授業中ということもあってか、人の居ない廊下は三人の足音がよく響いた。
「……」
この学校に通い始めてから、ひかるはまだ一週間も経っていない。それどころか、最後に来たのはたった二日前だ。
だと言うのに、このだだっ広い廊下が、なんだか少し懐かしい気さえしてくる。
ひかるが呆然と周囲を眺めながら歩いていると、ピタリ、前を歩く醍醐先生の足が止まる。
顔を上げれば、保健室と書かれた室内札が目に入った。
「失礼します」
がらがらと音を立て無造作に開けられた扉の向こうには、眉間の皺をより深くした老体が鋭い目つきで醍醐を睨んでいた。
「アンタね、毎度毎度そんな乱暴に扉開けんじゃないよ。ここには怪我人が運び込まれるだけじゃなくて、稀ではあるが心に傷を負った子もくるんだ。あんたも教師なら、少しは考えな!」
「はいはい、ごめんよ婆さん…それより、ほら」
逃げるようにそう言いながら、後ろにいたひかるをリカバリーガールの前に押し出す。
そんな醍醐に対し呆れたように溜息をついて、リカバリーガールは二人を手招きする。
「全く、相変わらずだね…ほら、いつまでも突っ立ってないでお入り。多々光に黒井正義、アンタらも昨日の今日で散々だったね」
「あ、すみません…」
「失礼しまーす!」
リカバリーガールに促されるまま、二人は保健室へと足を踏み入れる。
薬品の匂いが染み付いたこの空間も、ひかるにとっては数日ぶりだが、昨日まで病院に入院していた為かあまりそうは感じなかった。
そのままリカバリーガールの指示に従い、診断を受ける。
問診や触診、病院からの資料や医者から聞いた話などを踏まえて色々診察された後、リカバリーガールはどかりと椅子に座り込む。
「ふむ…資料に書かれてること以上に、特に異常は見当たらないね。多少の不便はあるだろうが、問題なく生活は送れるだろうさ。でも、暫くは安静にするんだよ。黒井正義、アンタも、この子をしっかりサポートしてやんな」
「ありがとうございます」
「分かりました!!」
黒井が元気よく返事をすると、「なら、さっさと教室へお行き。授業はとっくに終わっちまってるよ」と言われ、保健室を追い出されてしまう。
いててと杖で叩かれた箇所を叩きながら、醍醐はひかるの教室とは真逆の位置に向き直る。
「そんじゃ、俺は仕事があるから、こっからは自分でな。黒井も、一旦教室に戻っとけ」
「すいません、仕事の邪魔しちゃって」
「はーい!」
大きく手を振る黒井に後ろ手で振り返しながら、醍醐先生は背を向け去っていった。
その背を見送ってしばらく。
二人はヒーロー科と普通科、それぞれの教室への別れ道に差し迫っていた。
「こっからは一人でいいから。お前も、さっさと教室行かないとまずいだろ」
そう言いながら立ち止まり、黒井が持っていた荷物を無事な右手で受け取る。
荷物を受け渡しする際、黒井は少し不安そうに眉を上げて、ひかるの手を掴んだ。
「ひかる、ホントに大丈夫?やっぱり俺も着いてったほうが…」
そう言う黒井の視線は、ギプスで固定された左腕に向けられる。
確かに、見るも無惨にへし折れていた当初と比べれば充分軽傷になっていることは分かる。
けれど、それでもやはり、黒井はその姿にどこか痛々しさを感じてしまう。
痛々しさ、だけではない。
僅かな無力感と、不甲斐なさ。
黒井が感じてるのは、まさにそれらだ。
黒井もあまりはっきりと覚えている訳では無いが、あの時。
USJ襲撃事件の時に、ひかるを守るために敵に立ち向かった時。
脳無とか言う敵に為す術なく倒されてしまい、ひかるを守れないと諦めてしまったその時。
ひかるを助ける為に"彼女”が―――、
「……黒井?」
USJ事件当時の記憶を思い出そうとする黒井の顔を不思議そうに眺めながら、ひかるは自身の手を掴む黒井の手を優しく解く。
「異常はないって、リカバリーガールも言ってたろ。黒井お前、ちょっと心配しすぎなんだよ…ほら、また後でな」
「…うん、また後で!」
大きく手を振りながら、黒井は反対側の通路へと歩いていった。醍醐に続き、黒井もいなくなって、ひかるは一人教室へと向かう。
なんだか少し寂しいような、気まずいような、言葉にし難い感覚が襲ってくる。
それでも歩き続けて、ひかるは気づけば教室の前に立っていた。
教室の中では生徒達が和気藹々と談合を続けていて、それもまた、ひかるの足を止める要因となる。
一度、大きく深呼吸。
次いで、吸った息を吐き切る。
それを何度も繰り返し、ひかるは決意を固め、一歩、教室の中へと踏み出す。
「あー、その……おはよう、ございます」
扉から少し顔を出して、ひかるが小さな声で呟く。
「え」「うそ」
突如現れたひかるの姿に、先程まで騒然としていたはずの教室があっという間に静まり返った。
「「―――ぴかるん!!?」」「「「「―――多々!?」」」」
見里と平が口を揃えてひかるの名を叫べば、遅れて他の生徒も驚いたように声を荒らげる。
「うるっさ」と咄嗟に耳を塞ぐが、それでも貫通してくる大音量が脳に響く。
「え、ぴかるん大丈夫なん?怪我は?」
「ていうか、流石に退院早すぎん?」
「いや、それが…大きな傷とかは、なんか知んないけど大体治ってて。一応、検査とか受けてもなんもなかったし、保健室でリカバリーガールにも診て貰ってきて大丈夫って…」
即座に二人に詰め寄られ、ひかるはたどたどしくそう述べる。
焦った様子の二人と同様に、ニュースや噂などからUSJ事件のことを知ったのであろう他の生徒たちがゾロゾロとひかるの周りに集まってくる。
「多々くん、もう大丈夫なの?」「怪我は?」「USJ事件災難だったね」「ヒーロー科も酷いよね。あっちの事情で巻き込まれて…」「こら。マサのこと知らないの?」「あ、そっか。ごめん」
「いや情報量情報量。…いいよ、別に。ていうか、皆一斉に喋り過ぎだろ。聖徳太子じゃん」
一斉にそうまくし立てられ、ひかるは思わず一歩後ずさる。
ひかるが困り果てていると、パンパン、と手を叩、一人の女子が人の群れを割って現れた。
「はいはい、みんな集まりすぎ。興味があるのはわかるけど、多々くんが怪我人なこと忘れてない?」
「あ、そっか」「ごめんね」「また後で話し聞かせてねー」
その言葉を聞いて、ひかるの周りに集まっていた生徒たちが各々謝罪を述べて下がっていく。
さすがは委員長といったところだろうか。
そう思いながらも、ひかるはその女子へと目を向ける。
「前」の世界においても多少の交流があった、同じクラスの女子───ミナミが、いくつかのプリントを手に持ち、ひかるの元へと歩み寄ってきた。
「ごめんね多々。みんな心配はしてるんだろうけど……なにせ、テレビなんかはUSJの事件で持ち切りだから。あとこれ、今朝渡されたプリント。二週間後の体育祭のやつね」
「ありがと…まぁ、気持ちは分かるし、別にいいよ」
手渡されたプリントを受け取って、ひかるは僅かに会釈する。
プリントとに目をやれば、そこにはでかでかとこう書かれている。
雄英体育祭──毎年テレビでもやってる、「前」の世界においてのオリンピックにも匹敵するほど人気のある雄英の伝統行事。
もうそんな時期かとひかるはどこか朧気にそう考える。
今までのような観戦側ではなく、参加する側に回ったと言うのに、なんだかあまりしっくり来ないのは何故だろうか。
そもそも日本の一高校で行われる体育祭が世界的な大イベントと同等扱いということに僅かな疑問を覚える。
もしそれが本当なら、一体雄英はどれだけ規格外なのだろうか。
それとも、視聴者である民衆が、それほどまでにド派手な戦いを求めているのだろうか。
ヒーローがサイドキックに勧誘することもあるらしいから、それも理由なのかもしれない。
「まあ、私一応委員長だしね。前もそうだったから、イメージあるでしょ」
「あーそっか。ミナミ、「前」も委員長やってたっけ」
「そうそう。あ、それと…」
少し口を閉じて、ミナミの視線は、少し離れた席に座る紫髪の不健康そうな少年に向けられる。
「彼…心操くん。多々のこと結構心配してたみたいだから、ちゃんと無事を伝えてあげなよ」
それだけ言い残すと、ミナミは軽く手を振って他の生徒の元へと去っていった。
帰って行くミナミの背を見送って、ひかるはどうするべきかと少し迷う。
ひかるの周囲にはまだ興味津々に向けられる視線を感じるが、先程のこともあって誰も近寄っては来ない。それはもちろん、心操だってそうだ。
向こうから来ないのであれば、こちらから行くしかない。
意を決して、ひかるは心操の元へと近寄る。
「あー……えと、心操?」
「…なに」
声をかければ、心操は少し不機嫌そうに返事をする。
ギロリと睨みつけられ僅かに言葉が喉につっかえるが、それでもと口を開く。
「なんか、色々と心配させたみたいで…その、ごめん」
言い切ると共に、暫く沈黙が続き…重々しげに、心操がため息を着く。
「別に、心配してたわけじゃないけどさ…連絡くらい、返してくれてもいいだろ」
あっ、と驚くような言葉がひかるの口から漏れた。
そう言えばと、スマホに届いていた通知を思い出す。
検査や教師達の訪問と、色々と立て続いたので、既読が遅れてしまっていた。
そんなひかるの反応を見て、心操は再び溜息をつく。
ひかるの慌てた様子から、理由を察してしまったのだろうか。
呆れたような目線をひかるに向けて、心操は再び口を開く。
「そんなことだとは思ってたよ……まぁ、大変だったのはわかってるし、いいよ。それより、多々は大丈夫なのか、そのギプス」
「あー、これ、見た目ほど酷くは無いから。病院と、さっきリカバリーガールにも診てもらったけど、特に異常はないって」
「そ。ならいいけど…それより、もう次の授業始まるぞ」
ぶっきらぼうにそう言って、心操はぷいと前を向く。
短い付き合いだが、心操が心の底から心配してくれているのはよくわかった。
この程度の怪我でこれだけ心配してくれてるなら、実はかなりの重症だったが謎に治っただけ、なんて言ったら、一体どうなってしまうのであろう。
まぁ、そんな面倒を自分から作る気は無い。
心操の助けも借りつつ、急いで支度を終えて、ひかるは席に着く。
すぐに先生が教室に入ってきて授業が始まり、先程までの喧騒は何処へと消え去った。
◇
それから暫くして。
ひかるはほんの数時間だけ授業を受け、既に昼食時と相成った。
ほんの少しだけお得のような、少しだけ罪悪感が湧いてくるような、なんとも言い難い感覚に襲われながらも、ひかるは黒井と未来と翔子と共に食堂へ訪れていた。
「え、マサもぴかるんと一緒に学校来てたん?」
「遅刻じゃん。やばー」
「いや、俺も別に一人でいいとは言ったんだけど…」
「えー?でもひかる、俺が手伝っても準備にすごい時間かかってたんだよ?一人ならもっとかけてたんじゃ…」
四人は話しながら、注文した料理をランチラッシュから受け取り席に着く。
食堂は徐々に他の生徒たちで溢れ、次第に埋まっていく席を見て、ひかるはキョロキョロと辺りを見渡す。
「…」
「どうしたの、ひかる?」
まるで誰かを探すような仕草をするひかるに、黒井が不思議そうに首を傾げる。
「あーね」「ウケる」
対し、ギャル二人は何かを察したようにニヤニヤと薄ら笑みを浮かべる。
黒井だけが何も理解らず、頭にはてなを浮かべる横で、何かを探し続けるひかるの背中に声がかかる。
「、、、多々くん、、、!?」
ハッ、と後ろを振り向く。
ひかるの視線の先、そこには三人の女生徒がいた。
「え、うわほんとだ。なんで居んの?入院してんじゃなかったっけ」
「すごい重症だったって聞いてたよ!!流石に無理しすぎじゃない!?」
地雷系、毒、吸血鬼。
まるでハロウィンの仮想のように特徴的な三名の生徒が、ひかるの顔を見て目を丸くしていた。
「あ、闇川…」
自身を見つめる地雷系の少女…闇川の姿を見て、ひかるはほっと息をつく。
黒井や先生たちから自分以外の生徒の無事を聞いてはいたが、改めて五体満足なその姿を見て、安心したように肩をなで下ろした。
「私のことより、多々くんは大丈夫なの!?無理しちゃだめ、、、!!」
「それな」「言われてんじゃん」
「うるせー…いやあの、別にそんな酷い怪我じゃないって言うか…」
「でも頭から血流してたし、腕も、、、」
そう言って、闇川の視線はギプスをつけた左腕へと向けられる。
「それが、なんか知らないけどある程度治ってて…これも、一応小さなヒビなんかは残ってるからってつけてるだけだし」
「、、、そうなんだ」
説明してもなお闇川は心配そうに眉をひそめたが、ひかるが無事であるということは聞けたため、渋々と引き下がる。
「無事ならいいけど、あんまり無理しちゃだめだよ。痛いのとか、苦しいのとか、多々くんは我慢しなくてもいいんだからね」
「それな?ぴかるん無理すんなし」「わかる。ぴかるんちょっと頑張りすぎ〜」
「ほら、みんなもこういってる!!俺の心配のしすぎじゃなくて、ひかるが自分を雑に扱いすぎなの!!」
ひかるに迫り、力強くそう言う黒井に対し、しかしひかるは目線を逸らして口を濁した。
「いや、でも…」
「でもじゃない!!ひかるはもっと自分のことを大事にして!じゃなきゃ、俺…!」
そう言う黒井の声は次第に震え、目尻に雫を浮かべる。
「マサ泣いちゃったじゃん」「ぴかるんひど〜」
「いや、小学生かよ…黒井、その…悪かったって。だからそんな泣かなくても…」
まさか、泣くほどとは思わなかった。
必死に涙を拭う黒井に、ひかるがなんと声をかけるべきかと慌てる。
「、、、ひかるくん、これに関しては、黒井くんが正しいと思うよ」
「マサも言ってたけど、心配してたのはマサだけじゃなくて、うちらもだし」
「それな。ぴかるんがあんな大怪我負って、すごい心配してたんよ」
「……あー…なんか、ごめん」
ひかるが特に迷惑をかけた四人にそこまで言われてしまっては、言い返すこともできず。
素直にそう謝れば、四人は不満気な顔を僅かに弛め、優しく笑みを浮かべた。
「まぁ、わかってくれたならいいけど…でも、ぴかるん、もっと自分を大事にしてよ」
「何度も言うけど、心配してんのはマサだけじゃないんよ?ウチらもそうだけど、クラスのみんなとかすごい心配してたの、知ってるっしょ」
「そうだよひかる!A組のみんなだって、めちゃくちゃ心配してたんだからね!!!」
「……はい…」
すっかり反省した様子のひかるを見て、四人は満足気に頷いた。
そんな五人の元に、傍で終始話を聞いていた毒島が気まずそうに声をかける。
「あの、盛り上がってるとこ悪いんだけどさ…もう時間だよ」
「ご馳走様ー!!あー!!!美味しかったーー!!」
二人は早々に食べ終え、「先行ってるね!」「仲良いのはいいけど、もう少し周り見ろよゴハッ!!」と席を立ち、颯爽と教室に帰っていった。
ひかるが咄嗟に時計を見れば、残された時間はあと10分程度。
「え!?あ、ほんとだ!!?やばいやばい、怒られるー!!!!」
急いで料理を食べ始める黒井を横目に、ひかるは少し諦めつつ食事に手をつける。
少し騒がしい気もするが、改めて、日常が戻ってきたことを実感できた。
慌てて料理をブラックホールで呑み込もうとする黒井を止めながらも、ひかるは安心したように息をついた。