【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】   作: 燃える空の色

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17.ひかると黒井、朝からバタバタするやつ

 

 

 黒く染まった夜空を押し退けるように、東の空が赤く滲む。暗闇を払うような朝焼けの光に照らされ、ひかるはゆっくりと布団から身を起こした。

 しょぼしょぼと目を窄め、ちかちかと緩慢に明滅しながら、ベット上のどこかに置かれているはずのスマホを手探りで探す。

 枕の下に潜んでいたスマホを手に取って見てみれば、そこには無数の通知と着信履歴が見て取れた。

 

「……」

 

 少し躊躇った後、ひかるは折り返しの発信ボタンを押す。数回のコールを経て、耳を劈くような声が飛び込んできた。

 

『おっはよー!!!!ひかる!!!!!!』

「うるさっ……」

 

 思わず耳を塞ぎ、布団に潜り込みたくなる。

 早朝とは思えない大音量に劈かれ、ひかるは咄嗟に耳を塞いで文句を垂れるが、声の主――黒井は気にする様子もなく続ける。

 

「こんな朝からなんなの?暇なの?」

『いやいやいや!え!?ひかる、今日が何の日か覚えてないの!?』

「別に覚えてるけど…」

 

 視線を横にずらし、壁に掛かったカレンダーを見る。そこに赤いマーカーで大きく書かれた文字を、ひかるは小さく読み上げた。

 

「『────雄英体育祭!!!』…だろ?」

『そう!うわ〜!!なんか、今から緊張してきた!!』

「忙しなさ過ぎだろ…てかもしかして、それが理由で電話かけてきたの?」

『あ、バレた? ……その、もしかしてさ〜?ひかるも楽しみすぎて眠れなかったりしたんじゃないかなーって』

「遠足前の小学生かよ。って、も?…まさか」

『……えへへ』

「……嘘だろ」

 

 呆れたように息を吐くと、今度は『ごめんひかる…迷惑だった?』と情けない声が聞こえる。

 対し再び息をついて、実直な言葉をかける。

 

「別に怒ってるわけじゃ…ていうか、お前の方こそ、準備とか色々大丈夫なの?」

『あ、うん!もう支度は終わって、今、ひかるの家の前で待ってるよ!!』

「…ハァ!?」

 

 咄嗟にカーテンを開け、窓の下を覗くと、確かに家の前に黒井がいた。

 こちらの視線に気づくと、ニコニコと満面の笑みを浮かべて手を振る黒井に、頭痛がある訳でもないのに頭を抱えてしまう。

 

「あーもう、ちょっと待ってろ!」

『わかった!』

 

 プツリと電話が切れる音がして、誰の声も聞こえなくなった部屋の中、ひかるは思わず項垂れた。

 とりあえず、急ぎで身支度を整えなければ。

 ベットから降り、のそりのそりと服を着替え、ひかるは支度を開始した。

 

 

 

 

 ひかるが凡その支度を終え、靴を履きながら玄関に向かう。

 しかし、背後から声がかかった。

 

「光、もう行くの?」

「姉ちゃん…」

 

 振り返れば、腰に手を当てた女性が立っている。ひかるによく似た顔立ちの姉――多々美春だ

 

「なんか、黒井がもう来てるらしくて…」

「ふーん。相変わらず仲良いんだねー、あんたら」

 

 半ば呆れたようにそう言う姉の姿に、ひかるは誤魔化すよう顔を逸らす。

 そんなひかるに、美春は僅かに口端を緩め、その背中を押すように優しく手を振った。

 

「まぁ…それじゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃい。雄英体育祭、テレビで見てるから」

 

 その背を見送り、バタン、と扉が閉じる。

 誰もいなくなった玄関で、美春は「んーっ!」と伸びをして、暫くゆっくりしようとソファへと歩き出したその時。

 

「あれ…こんな時間に電話?ひかるが忘れ物でもしたのかな?にしては早い気も…」

 

 ポケットにしまってあるスマホが聞き馴染みのある音を鳴らし、誰かが自身を呼ぶ声の代わりとなって響き渡る。

 誰だろうか、軽い気持ちで取り出した画面に表示された名前に、美春の足が止まる。

 

「…お父さん…?」

 

 驚きに眉を寄せ、通話ボタンを押す。すぐに、懐かしい声が耳を打った。

 

『―――もしもし。久しぶりだな、美春』

 

 長らく音沙汰のなかった父の声が、朝の静けさを切り裂いた。

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