【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】 作: 燃える空の色
夏編、妄想も予想も公式様が全て乗り越えて来たくださったおかげで、無事尊死してました。
それと、今更ですが、不定期で過去に投稿した話を改修したりすることがあります。たまに見返すことがあると内容が若干変わってたりするかもしれませんが、ご容赦ください。
「───体育祭だ〜!!!!」
「朝からテンション高すぎるだろ…気持ちは分かるけどさ」
雄英高校の門前にて、二人の少年──ひかると黒井は、並び立つ屋台や殺到する人々に目を輝かせていた。
雄英の敷地内に入るための門前からは、敷地内に無数の屋台が敷かれているのが見える。
既に開かれたそれらが大きく栄えている様を見て、興奮したように目を輝かせる黒井を横目に、ひかるもまたソワソワと忙しなく首を回していた。
客も学校もマスコミも、どこもかしこも日本一の特大イベントに備えて大忙し。
そして今から自分たちはその特大イベントの主役の一人になるというのだから、二人の興奮のしようも仕方がないと言えよう。
二人がキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていると、前方から「おーい」と声をかけてくる二つの影があった。
「よ、多々。事件とか色々あったみたいだけど、なんか元気そうだな!」
「重症だって聞いてたが……体育祭、出れそうなのか」
「あ、先輩たち…まぁ、色々あって、体育祭には出れそうです」
そのように声をかけてきたのは、二人にとっては先輩にあたる人物…「ラッキースケベ」の能力を持つ結城新仁と、「霊写」の能力を持つ、柳零也の二人だった。
「どうしたんですか?」
上級生であり、自分たちとは会場が違うはずの二人が現れたことに、黒井が小首を傾げる。
対し、新仁はあっけらかんと答える。
「いやぁ〜、別に特別用があるってわけじゃないんだけど…」
「折角だから、始まる前に応援でもと思ってな。ほら、体育祭は学年によってステージ違うだろ」
「レベルの高い三年生とか注目の集まってる一年と違って、俺ら二年は地味だからなー。観客も身内と他のチケット取れなかった連中だけでプレッシャーとか一切ないし、気楽なもんだよ」
「まぁ…俺達は去年も即敗退だし、今年もすぐ負けるだろうからあんまり関係ないけどな」
「そうそう、だから、せめて頑張る後輩を応援しようって感じで」
「流石に体育祭中にそっちには行けないからな」
「へ〜!」
どうやら、目の前の先輩たちは事前に自分たちを応援するために来たらしい。
既に敗退することを前提とした様子に少し情けないようにも思うが、ある意味では二人らしいとひかるが呆れを含んだ笑みを浮かべる。
「それと…部長」
「ん?」
ごにょごにょと零也が新二の耳元で何かを囁く。直後、ぽんと音を立て、新二が何かを思い出したように手を叩いた。
「あーそうそう、忘れてた。あともうひとつ、言いたいことがあってさ…多々、お前ん所にも来るって」
「来るって、誰がですか」
「誰って、そりゃあ…」
ひかるの疑問に答えようと、新二が口を開く。それと同時に、やけに騒がしいアナウンスが響いた。
『ヘイリスナー共!!もうすぐ体育祭が始まる時間だぜェッ〜!?まだ持ち場についてねぇリスナーは急げ急げェ!!!』
「あ、やべ、もうそんな時間?じゃあな二人とも!!頑張れよ!!」
「応援してる」
「あ、はい。お二人も頑張って」
「頑張ってください!!」
急ぎ足で去っていく二人を見届けて、黒井とひかるもまた会場へと急いだ。
◇
クラスごとに分けられた生徒用の控え室。その内、一年A組の控え室では、22名の生徒が各々緊張半分に、体育祭本番へ向けて思い思いに過ごしていた。
「〜♪」
「、、、黒井くん嬉しそうだね。体育祭、そんなに楽しみだったの?」
そんな生徒の中の一人、黒井正義もまた、他の生徒たちと話しながら待機時間を謳歌しており、鼻歌混じりに機嫌良く笑っている黒井に、闇川が話しかけてくる。
「うん!ひかると一緒に頑張ろって約束したんだー!!」
「多々くんと、、、それじゃあ、わたしも負けてられないね」
「ふふん、負けないよ!!」
二人が負けじと対抗する中で、ふと、ポケットの中に入れられたスマホが振動を伝える。
「あれ、誰からだろう?」
「わたしもだ……」
通知に気づき、二人がスマホを覗けば、「前」からの知り合い共通のチャットグループで誰かがやり取りをしているようだった。
画面にはピカピカと輝く人型の光のようなものの写真と共に、以下のやりとりが繰り広げられている。
〈え待って、ぴかるんめっちゃ光ってる笑〉
〈ウケる。めっちゃ緊張してんじゃん笑〉
〈うるせー〉
どうやら、この写真はひかるを撮したものらしい。
「え、これひかる!?眩し〜」
「緊張しちゃってるみたいだね、、、大丈夫かな」
写真のひかるは輪郭以外のほぼ全ての情報を遮断する程の光を放っており、そうとう張り詰めているようだった。
「なになに〜?二人ともなんの話ししてんのー?」
黒井と闇川がスマホ片手に笑っている後ろから、芦戸が意気揚々と話しかけてくる。
「一緒にひかる見てんの!」
「これ、、、」
画面の中のひかるを指さすと、芦戸が「えっ!?」と目を見開く。
「これ多々くん!?」
「うわ、ほんとだ、滅茶苦茶光ってる!」
スマホを覗く芦戸の後ろから更に瀬呂や切島がスマホを覗き、そして更にその横からと他の生徒が続々と集まってくる。
気づけばクラスの大半が二人の周りに集合し、ひかるの写真へと群がっていた。
「ひかるくん、人気だね、、、」
「流石ひかる!!」
何故か誇らしげに胸を張る黒井をどこか生暖かい目で見つめつつ、闇川はわいのわいのと騒ぎ立てている生徒達を横目で見る。
本当に、あの関わった短い時間で、多々光は随分とこのクラスに馴染んだらしい。
「、、、凄いね」
「ね〜」
多々光の、どこか人を…人以外でさえも惹き付けるような不思議なそれは、今も変わらず続いているようだった。
クラスの半数がそうやって騒いでいると、ばん、と大きな音を立てて、控え室の扉が開く。
「皆、準備は出来てるか!?
もうじき入場だ!!」
その声の主は、室内の生徒に向けて大きな声で呼びかける。
どうやら、ロボットのようにカクカクと動く青年…クラス委員長、飯田天哉が戻ってきたようだった。
「あ、、、黒井くん、もうすぐ時間みたい」
「だね!うわぁりこてゃ、俺、なんかドキドキしてきた!!」
「わたしも、、、でも、緊張ってよりかは、、、」
「ワクワクするね!!」
「頑張ろ、、、」
二人が意気揚々と奮起し、他のクラスメイトも巻き込んでえいえいと燃え上がる。
「うぉぉぉぉ!!!」
「──緑谷」
その暑苦しい空間に突如、先程までその様子を静観していた轟の声が響く。
「轟くん……何?」
話しかけられた本人、緑谷は、困惑交じりに疑問を返す。
「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」
「へ!?うっ、うん…」
轟から突如放たれた、挑発とも捉えられる台詞。唐突のことに若干驚きつつ、しかし間違いではないため、緑谷はそれに頷く。
「おまえ、オールマイトに目ぇかけられてるよな」
「!!」
「別にそこ詮索するつもりはねぇが…」
「───お前には勝つぞ」
そう言い切り、轟の鋭い目が緑谷へと向けられる。
「クラストップが宣戦布告!?」
「え、なになに!?どうしたの?喧嘩?」
「おいおいおい、急に喧嘩腰でどうした!?直前にやめろって…」
即座に切島が宥めようと間に入るが、方にかけられた手を、轟は払い除ける。
あまりにも直球にして大胆不敵な宣戦布告。
それも、轟と同様に戦闘能力においてトップクラスとされる爆豪や黒井ではなく、所々で光るところがあるものの、今のところ大きく目立つとは言い難い緑谷に対して。
良くも悪くも、室内の全員の視線が、緑谷と轟に降り注ぐ。
「そりゃ、君の方が上だよ…」
轟に好き勝手言われても、特に言い返せずに押し黙っていた緑谷が、俯きつつも拳を強く握る。
「実力なんて、大半の人に叶わないと思う…客観的に見ても…」
「緑谷も、そーゆーネガティブな事言わねぇ方が……」
悲観するような物言いに、切島が気遣いげに言葉をかける。
しかし──、
「でも…!!皆…他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって、遅れをとるわけにはいかないんだ」
「……」
脳裏に浮かぶは、自身の理想。
それを実現するための一歩を踏み出さんとし、目指す果て。
かつて、あの海浜公園で誓った、『最高にヒーローに』という夢。
抱き、諦めかけたそれを叶えるチャンスを、憧れの人から授かり、そして支えられてきたのだ。
だからこそ。たとえ、真に乗り気でいなかったとしても、今、ここで、奮い立てなければならない。
でなければ、
彼らに、胸を張って、金のメダルを見せつけるために。
世間に、己が来たと知らしめるために──、
「───僕も本気で、獲りに行く!」
緑谷出久の宣言を、その場にいるヒーロー科A組の全員が、聞き届けた。
黒井正義も、また─────