【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】 作: 燃える空の色
『───群がれマスメディア!今年もおまえらが大好きな高校生たちの青春暴れ馬……
雄英体育祭が始まディエビバディアァユゥレディ!?』
やかましいアナウンスと共に、騒がしい喧騒が場を飲み込むように響いた。
燦燦と焼き付くような日差しと、耳が痛くなるほどの歓声に包まれ、ひかるは煩わしそうに目を細める。
歩きながら少し聞き耳を立てると、アナウンスであからさまにヒーロー科の引き立て役にされてる事への不満の声が上がっていた。
「……確かに露骨だよなぁ…」
その不満も、正直言えばわかる。
ひかるからして見ても、あまりに分かりやすすぎるヒーロー科贔屓。
無論、コスチュームの着用不可など、ルール的な面でいえば、確かに公平なのだが……
「そもそも、あっちは普段から戦闘訓練を受けてるのに、真正面からやれって時点で、公平とは言い難いよな」
隣で心操がぼやく。
「…まぁ、だからといって負けてやるつもりもないけど。多々も、今回はやる気なんだろ?」
「あ、うん。俺一人で、って訳じゃないけど…黒井と協力するつもり」
「へぇ、いいね。もしチーム戦でもすることになったら、俺も混ぜてよ」
そう言うと、心操はさっさと前へと進んでいってしまった。
「えーやば、これ生放送よね?ウチらテレビ出てんじゃん」
「エグ。てか、ウチら今日めちゃビジュいい感じじゃね?」
「えそれな?さっき投稿した写真もめっっっっちゃいいね来てるし最強じゃん。ぴかるんもそう思うっしょ?」
「……え、俺?」
すぐ後ろで繰り広げられるギャル会話に巻き込まれ、後ろを振り返る。
「あ、てかぴかるん、光るのはもう大丈夫なん?」
「またさっきみたいに前見えんくらい光ったりせんの?」
「あーうるさいうるさい」
即座に耳を塞ぎ聞こえないフリをして視線を逸らす。
少し横を向くと、その先には一年A組の列が……隣にいる闇川や他の生徒と楽しげに話す黒井の姿が見えた。
「あ、黒井…あと闇川も」
「ほんとだ。うぇーい」
「いえーい」
二人が手を振ると、こちらに気づいた黒井やA組の生徒が手を振り返してくる。
一部、若干呆れたような視線を向けてくるものや、敵対的なものもあるが…
「ひかる〜〜〜〜〜〜!!!」
「あ、未来ちゃんにへこちゃん、ちょっと遠くにすみも…おーい!!」
「黒井はまぁ、いつも通りだけど、闇川めちゃくちゃ手振ってる……地雷系なのに…」
両手を大きく振ってくる二人に、半ば呆れたような目線を向ける。
何を勘違いしたのか、更に勢いを良くした二人を気づかないふりをして前を向く。
気づけば、列は既に所定の位置へと辿り着いていた。
「──選手宣誓!」
空気が弾けるような、乾いた音が響く。
咄嗟に音の出処へと視線を向ければ、全身を際どいコスチュームに身を包んだ女性…ミッドナイトが、鞭を手に構えて台の上に立っていた。
あまりにもあまりにもな格好に、思わず一部から困惑と興奮の混じったような声が上がるが、そのしなる鞭によって強制的に口を閉ざされる。
「静かにしなさい!…今年は入試の関係性で、選手代表は二人だから、巻きでいくわ!
……選手代表!!
1-A黒井正義、爆豪勝己!!」
「はい!!!!」「…ちっ」
大きく快活な返事とともに、黒井が意気揚々と、列の中から歩き出てくる。
その姿を穴が空きそうなほど強く睨みつけながら、爆豪も後に続く形で歩き出す。
「え、マサ?」
「てかなんで二人?」
「あー…そう言えば、黒井のやつ入試で実技一位通過してたのに筆記やばかったみたいだから…」
黒井の思わぬ出番にひかるたちが驚いていると、台に立ち上がり、マイクの前に立った黒井が片手を大きくあげて宣誓する。
「宣誓!!えーと…僕たち、私たちは、正々堂々と……」
「小学生かよ」
そのまま長々と宣誓を続けようとする黒井に、生徒たちから次々に文句や苦情が出る。
ミッドナイトが再び鞭を振るってそれらを黙らせたあと、黒井に諭すように言う。
「静粛に!…黒井くん、別にそんな形式にのっとらなくてもいいのよ?言いたいことを言って、好きにやっていいわ。それに爆豪くんも、どうせだから一緒にやっちゃって」
「あ、わかりました!」「……」
笑顔で返事をする黒井と、対照的にあからさまに不機嫌ですと顔に貼り付けた爆豪が、二人でマイクの前に並び立ち───、
「えー、宣誓!!」「せんせー」
─── 俺とひかる / 俺が
「──優勝します!!」 「───一位になる」
「「 絶対やると思った 」!!」
切島とひかる、二人のそのツッコミをきっかけとして、堰を切ったように巻き起こるブーイングの嵐。
双方共にA組に属する生徒であるということもあってか、「調子に乗るな」と他クラスからの怒りの声や、「何故品位を貶めるようことをするんだ!!」とクラスメイトからの不安の声が上がってきている。
対し、黒井はどこか誇らしそうに胸を張って笑顔で応え、爆豪は親指で首を掻っ切るような仕草をして煽りを飛ばす。
それによってさらにますブーイングという名の喝采を受けて、しかし二人は臆することなく堂々と元の場所へと戻って行った。
「すげぇブーイング。てか、あいつ、しれっと俺を巻き込んでるし…」
「えぇやん、ぴかるんも行ってくれば?」
「てかマサ、めっちゃぴかるん見てんよ?」
そう言われて黒井の方を見ると、まるで「褒めて褒めて」とせがむ犬のように目を輝かせてていた。
「なんであんな誇らしげなの?」
「ええやん」「それな」
「そればっかだな」
二人の宣誓に周囲がざわつき、各々が反応を見せる中で、ミッドナイトが計何度目かのムチを振るい場を落ち着かせる。
「さーて、それじゃ早速、第一種目行きましょう!」
ポップな機械音とともに空中にスクリーンが浮かび上がり、画面上に表示されたダイスが回り出す。
「いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が
「言い回し独特…って痛!?」
無粋なツッコミに鞭が応える。
「さて、運命の第一種目!!
今年は……
「あー、障害物競走か」「見えちゃったか、未来」
「えー走んの?」「ダル〜」
あんた達、ちょっと静かになさい!
………コレ!」
その一言と共にダイスが止まり、スクリーンには大きくこう表示される。
─────"障害物競走”
「いや、なんかネタバレされてたし。てか、障害物競走?なんか普通じゃ…」
「お黙り!!」
「痛っ!?」
鋭い鞭が掠める。
「計11クラスでの総当りレースよ!コースはこのスタジアムの外周4km!」
ひかる達の前、スタジアム内のゲートが開き、生徒たちが動き出す。
この場にいる全ての生徒が、鎬を削るライバル。
それはもちろん、今後ろで喋っているギャル2人も、不敵な笑みを浮かべている心操も、闘気に満ち溢れている闇川も。
例え同じクラスの仲間であろうと、敵であることに変わりは無い。
けれど……
「我が校は自由が売り、ウフフフ…コースさえ守れば・何をしたって・構わないわ!」
───目指すは、No.1
「さあさあ位置に付きまくりなさい…」
ふと、黒井の方を見る。
向こうも同じことを考えていたようで、お互いの視線が交差した。
絶対に勝つ、という意志と自信。
それと何より、全力で楽しいと言う感情が滲み出てくるほどの眩い笑顔。
あまりに呑気で、そしていつも通りのそれに、ひかるもまた、返すようにして微笑んだ。
「……」
信号機の、最後の灯りが消える。
「スターーーーート!!」
雄英体育祭、第一種目。
障害物競走の始まりである。