【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】   作: 燃える空の色

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5月頃に書き始めたこの作品ですが、気づけばあっという間に今年も終わり。割とその場のノリで続いてるか作品ではありますが、ここまでお付き合い頂きありがとうございます。
どうか良いお年を。
そして来年もよろしくお願いします!!!


閑話 騎馬戦、前奏

 

 上を行くものは更なる受難を。

 雄英に在籍している以上、何度でも聞かされるその言葉――これぞ"Plus ultra”と、ミッドナイトは声を上げる。

 

「予選通過一位の黒井正義と多々光くん!持ちP、合わせて一千万!!…代わりに、2人はそのペアで固定ね」

「いっ、一千万……」

「よぉーし、頑張ろ!ひかる!!」

 

 同時に晒される周囲の視線に、ひかるは目眩を覚え、黒井は拳を握って好戦的な笑みを浮かべる。

 

「制限時間は15分。振り当てられたPの合計が騎馬のPとなり、騎手はそのP数が表示された"ハチマキ”を装着!終了までにハチマキを奪い合い、保持Pを競い合うのよ」

 

「取ったハチマキは首から上に巻くこと。とりまくればとりまくるほど、管理が大変になるわよ!そして重要なのは、ハチマキを取られても、また騎馬が崩れても、アウトにはならないってところ!」

 

「ってことは、最低でも13組以上の班が最後まで残るのか…」

「大変だね〜」

「そんな他人事な場合じゃないだろ」

 

「"個性”ありの残虐ファイト!でも、あくまで騎馬戦!悪質な崩し目的での攻撃はレッドカードよ!一発退場とします!」

「―――それじゃこれより15分、チーム決めの交渉タイムスタートよ!」

 

 掛け声とともに、生徒たちが続々と動き出す。

 仲間を求めて彷徨うもの、仲のいい人間や見知った顔に声をかけるもの、有望株に近づくものも多くいる。

 

「よし!一緒に頑張ろ、ひかる!」

「まぁ、俺らだけ最初からセットだしな」

 

 とはいえ、ひかるは相変わらず黒井とのチームとなる以上、一人余って…ということがないのは一安心だろうか。

 そもそもとして、ひかるだけではすぐに負けて終わりだろうから、そこを考えての措置でもあるのかも知れない。

 

 そんな会場の中で、二人に声がかかる。

 

「マサー、ぴかるんー」

「あ、未来!」

「二人の騎馬にウチも入れてもろて〜」

「いいよ!あ、じゃあへーこも!?」

「それが〜、へーこ誘おうと思ったんけど、断られたんよ〜。なんかやりたいことがあるって。だからうちも二人のとこ入れてよ」

「いいよ!!」

「あざ〜」

「軽。別にいいけど。ていうか見里いれば未来見れるし余裕じゃん…―――」

 

 

 

 

 

□■

 

 

 

 

 

 

 そこは、空間。


 そこは、狭間。


 そこは、世界。

 

 この世界のどこからでも、この世界のどこへでも。
 この世界のいつからでも、この世界のいつへでも。

 

 世界を見守り、


 世界を繋ぎ、


 世界を保つために存在する、名もなき場所。

 

 その空間に設置された巨大なモニターを、ただ一人、見つめる者がいた。

 

「……おやおや。本当に主人公みたいだね、多々光くん」

 

 柔らかな声と共に、男はマグカップを傾ける。
湯気の立つコーヒーを一口含み、ゆっくりと喉を鳴らした。

 

 

「まさか本当に一位を取るなんて…それも、あんなに目立つ方法で」

 

 呆れとも、感嘆とも取れる吐息。


 画面いっぱいに映る青年の姿を眺めながら、男は目尻を細める。


 けれどその視線はすぐに、次なる思案へと移った。

 

「そろそろ、覚醒の時も近いのかな?とはいえ、あまり喜ばしいことでもないか」

 

 マウスを動かし、軽くクリックする。


 画面が切り替わり、表示されたのは、つい数週間ほど前の多々光たちの姿。

 そして、彼らを囲むようにある空間に――、


 焦点の合わない、ぼやけた“なにか”が映し出された。

 

「……まさか、こんなにも早く接触してくるとはね」

 

 男は小さく肩を竦める。

 

「世界全体を丸ごと()()()()()というのに。
相変わらず、執拗な連中だ」

 

 誰もいない空間に向けて、ため息が落ちる。


 その言葉の意味を理解できる存在は、この世界でもほとんどいないだほう。

 男はマグカップを机上に置き、再び画面を切り替えた。

 

「種はすでに撒かれている。
希望の花は世界中に芽吹き、咲き誇り――残るは、君たちだけだ」

 

 淡々と、しかし確信をもって告げる。

 

「この世界はもう、本来の筋道から外れつつあるのだから」

 

 モニターに映った四人の姿を、順に見つめながら、男は静かに言葉を紡ぐ。

 

「せめて願おう。

多々光くん、君の放つ"光”が。

黒井正義くん、君の纏う"闇”が。

見里未来くん、君の視る"未来”が。

平翔子くん、君の選ぶ"世界”が。

―――君たちの希望が、どうか、この世界を救うに足るものでありますように」

 

 それは祈りか。この世界の住人としての言葉か。

 それは呪いか。彼らを誰よりも知り誰よりも期待しているものとしての言葉か。

 それは祝福か。観測者としての誰よりも曖昧な存在からの言葉か。

 

「……さて、読者諸君」

 

 一箔置き、男が振り返る。

 

「君たちも是非、この物語に最後まで付き合ってくれ。この世界は、君たちが望む事でより続くのだから」

 

 明確な矛先のいた今までの言葉とは違う。

 それこそまさに、虚空へと向ける言葉。

 けれど確かに、男は何かを捉えて言葉を紡ぐ。

 

「謎に満ちたこの世界と、多々光くん達の世界の顛末。そして黒装束達の正体と真実――、」

 

「それもいずれ、来る時が来れば明かされるだろう。―――まぁ、メタい話、本来の大元の世界線(公式)次第とも言えなくもないが」

 

 肩を竦めて、男は続ける。

 

「それでも、この物語の織り手は多々光くんたちだ」

 

「この物語が悲劇となるか、あるいはハッピーエンドを迎えるか。それらは全て、彼ら次第」

 

 何処か確信めいた言葉と共に、男は話を終える。

 ――不意に、誰も居ないはずの空間が音もなく裂け、そこから声が響く。

 

『なにをしているんですか?』

 

 響くようなその声に、男は悪びれもせず答える。

 

「ん?なんでもないよ。ただ、展開が間延び過ぎて飽きられたりしたら嫌だろう?ちょっとしたテコ入れってやつだ」

『そうですか。それよりも――"彼ら”が動き出しましたよ』

「…まさか、雄英体育祭に直接殴り込みにいくつもりかい?」

 

 こめかみを押さえ、男は深くため息を吐いた。

 

「……はぁ〜、仕方がない。僕らも動くとしよう。まだこれ以上、彼らの邪魔をさせる訳には行かないからね」

『そうですね。まだ時期尚早…それに、教師として、学校行事を邪魔させるのは気乗りしません』

「それじゃあ、君のところの生徒を借りられるかい?」

『仕方がないですね。代わりに、今年の農神祭はあなた達も参加してください。生徒たちが喜びます』

「助かるよ。そうだね、ひかるくんたちも誘って参加させてもらおうかな…」

 

 男は最後に、もう一度モニターへ視線を向ける。

 

「――それじゃあ、多々光くん」

 

 

 穏やかで、どこか本心の見えない笑みを浮かべ。

 

 

「体育祭、存分に頑張って、そして楽しんでくれ。


 僕たちも、陰ながら応援しているからさ」

 

 

 それだけ言い残し、男は裂け目へと身を投じた。

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