【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】 作: 燃える空の色
どうか良いお年を。
そして来年もよろしくお願いします!!!
上を行くものは更なる受難を。
雄英に在籍している以上、何度でも聞かされるその言葉――これぞ"Plus ultra”と、ミッドナイトは声を上げる。
「予選通過一位の黒井正義と多々光くん!持ちP、合わせて一千万!!…代わりに、2人はそのペアで固定ね」
「いっ、一千万……」
「よぉーし、頑張ろ!ひかる!!」
同時に晒される周囲の視線に、ひかるは目眩を覚え、黒井は拳を握って好戦的な笑みを浮かべる。
「制限時間は15分。振り当てられたPの合計が騎馬のPとなり、騎手はそのP数が表示された"ハチマキ”を装着!終了までにハチマキを奪い合い、保持Pを競い合うのよ」
「取ったハチマキは首から上に巻くこと。とりまくればとりまくるほど、管理が大変になるわよ!そして重要なのは、ハチマキを取られても、また騎馬が崩れても、アウトにはならないってところ!」
「ってことは、最低でも13組以上の班が最後まで残るのか…」
「大変だね〜」
「そんな他人事な場合じゃないだろ」
「"個性”ありの残虐ファイト!でも、あくまで騎馬戦!悪質な崩し目的での攻撃はレッドカードよ!一発退場とします!」
「―――それじゃこれより15分、チーム決めの交渉タイムスタートよ!」
掛け声とともに、生徒たちが続々と動き出す。
仲間を求めて彷徨うもの、仲のいい人間や見知った顔に声をかけるもの、有望株に近づくものも多くいる。
「よし!一緒に頑張ろ、ひかる!」
「まぁ、俺らだけ最初からセットだしな」
とはいえ、ひかるは相変わらず黒井とのチームとなる以上、一人余って…ということがないのは一安心だろうか。
そもそもとして、ひかるだけではすぐに負けて終わりだろうから、そこを考えての措置でもあるのかも知れない。
そんな会場の中で、二人に声がかかる。
「マサー、ぴかるんー」
「あ、未来!」
「二人の騎馬にウチも入れてもろて〜」
「いいよ!あ、じゃあへーこも!?」
「それが〜、へーこ誘おうと思ったんけど、断られたんよ〜。なんかやりたいことがあるって。だからうちも二人のとこ入れてよ」
「いいよ!!」
「あざ〜」
「軽。別にいいけど。ていうか見里いれば未来見れるし余裕じゃん…―――」
□■
そこは、空間。
そこは、狭間。
そこは、世界。
この世界のどこからでも、この世界のどこへでも。 この世界のいつからでも、この世界のいつへでも。
世界を見守り、
世界を繋ぎ、
世界を保つために存在する、名もなき場所。
その空間に設置された巨大なモニターを、ただ一人、見つめる者がいた。
「……おやおや。本当に主人公みたいだね、多々光くん」
柔らかな声と共に、男はマグカップを傾ける。 湯気の立つコーヒーを一口含み、ゆっくりと喉を鳴らした。
「まさか本当に一位を取るなんて…それも、あんなに目立つ方法で」
呆れとも、感嘆とも取れる吐息。
画面いっぱいに映る青年の姿を眺めながら、男は目尻を細める。
けれどその視線はすぐに、次なる思案へと移った。
「そろそろ、覚醒の時も近いのかな?とはいえ、あまり喜ばしいことでもないか」
マウスを動かし、軽くクリックする。
画面が切り替わり、表示されたのは、つい数週間ほど前の多々光たちの姿。
そして、彼らを囲むようにある空間に――、
焦点の合わない、ぼやけた“なにか”が映し出された。
「……まさか、こんなにも早く接触してくるとはね」
男は小さく肩を竦める。
「世界全体を丸ごと
誰もいない空間に向けて、ため息が落ちる。
その言葉の意味を理解できる存在は、この世界でもほとんどいないだほう。
男はマグカップを机上に置き、再び画面を切り替えた。
「種はすでに撒かれている。 希望の花は世界中に芽吹き、咲き誇り――残るは、君たちだけだ」
淡々と、しかし確信をもって告げる。
「この世界はもう、本来の筋道から外れつつあるのだから」
モニターに映った四人の姿を、順に見つめながら、男は静かに言葉を紡ぐ。
「せめて願おう。
多々光くん、君の放つ"光”が。
黒井正義くん、君の纏う"闇”が。
見里未来くん、君の視る"未来”が。
平翔子くん、君の選ぶ"世界”が。
―――君たちの希望が、どうか、この世界を救うに足るものでありますように」
それは祈りか。この世界の住人としての言葉か。
それは呪いか。彼らを誰よりも知り誰よりも期待しているものとしての言葉か。
それは祝福か。観測者としての誰よりも曖昧な存在からの言葉か。
「……さて、読者諸君」
一箔置き、男が振り返る。
「君たちも是非、この物語に最後まで付き合ってくれ。この世界は、君たちが望む事でより続くのだから」
明確な矛先のいた今までの言葉とは違う。
それこそまさに、虚空へと向ける言葉。
けれど確かに、男は何かを捉えて言葉を紡ぐ。
「謎に満ちたこの世界と、多々光くん達の世界の顛末。そして黒装束達の正体と真実――、」
「それもいずれ、来る時が来れば明かされるだろう。―――まぁ、メタい話、本来の
肩を竦めて、男は続ける。
「それでも、この物語の織り手は多々光くんたちだ」
「この物語が悲劇となるか、あるいはハッピーエンドを迎えるか。それらは全て、彼ら次第」
何処か確信めいた言葉と共に、男は話を終える。
――不意に、誰も居ないはずの空間が音もなく裂け、そこから声が響く。
『なにをしているんですか?』
響くようなその声に、男は悪びれもせず答える。
「ん?なんでもないよ。ただ、展開が間延び過ぎて飽きられたりしたら嫌だろう?ちょっとしたテコ入れってやつだ」
『そうですか。それよりも――"彼ら”が動き出しましたよ』
「…まさか、雄英体育祭に直接殴り込みにいくつもりかい?」
こめかみを押さえ、男は深くため息を吐いた。
「……はぁ〜、仕方がない。僕らも動くとしよう。まだこれ以上、彼らの邪魔をさせる訳には行かないからね」
『そうですね。まだ時期尚早…それに、教師として、学校行事を邪魔させるのは気乗りしません』
「それじゃあ、君のところの生徒を借りられるかい?」
『仕方がないですね。代わりに、今年の農神祭はあなた達も参加してください。生徒たちが喜びます』
「助かるよ。そうだね、ひかるくんたちも誘って参加させてもらおうかな…」
男は最後に、もう一度モニターへ視線を向ける。
「――それじゃあ、多々光くん」
穏やかで、どこか本心の見えない笑みを浮かべ。
「体育祭、存分に頑張って、そして楽しんでくれ。
僕たちも、陰ながら応援しているからさ」
それだけ言い残し、男は裂け目へと身を投じた。