【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】   作: 燃える空の色

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03.ひかるとマサ、入試に挑むやつ

 

 

 雄英高校、入試当日。

 朝早くから起きて準備を済まし、黒井とひかるは共に電車に揺られ、今現在、雄英高校の門前に立ち尽くしていた。

 

 

「わあぁぁぁぁぁ……!!!見てみて!!すごい!すごいよひかる!!!」

「すごいな、雄英…」

 

 周囲では数百人以上の受験生がこの巨大な門を潜り抜け、夢へ向かって歩き出している。

 一高校としてはあまりに壮大すぎるその光景に、流石のひかるも感嘆と息を吐く。

 

「えぇっと、ヒーロー科ヒーロー科〜」

 

 ここでいつまでも立ち止まったいる訳には行かない、スマホを開き、雄英高校の全体マップを確認すると、普通科とヒーロー科で試験会場は真反対にあるようだ。

 

「それじゃあ、俺こっちだから。ひかるも頑張ってね。緊張して変なミスとかすんなよ〜」

「そっちこそ、実技は良くても筆記で落ちるとかやめろよ」

「うわー、やめてよ〜そういう怖いこと言うの。…それじゃ、行ってくる!!」

 

 緊張感のないまま会場へと走って行った黒井を見届けて、ひかるもまた普通科の会場へと歩き出す。

 黒井にああは言ったが、ひかる自身に不安がない、と言えば嘘になる。

 けれど、だからと言って、臆するつもりもない。

 最低限、胸を張って歩いて―――、

 

 

「あれ、ぴかるんじゃん」「おひさー」

「――見里と、平!?」

 

 

 ―――行った先、普通科の試験会場にて、そんな覚悟を上回る者がいた。

 まるで数日ぶりの再会とでも言うように気軽に手を振ってくる二人の少女。しかし、今世においてひかるは彼女らとは初対面だ。

 けれども、ひかるの記憶には、その2人の声も、姿も、全て焼き付いている。

 

 

「いや、なんでいんの……?」

 

 「前」の世界において、ひかるが黒井の次に関係を持っていた生徒の中でも、最も個性が強い人物…しれっとすごいギャルズとの再会を、まるでなんてことのないように終えてしまったことへの衝撃。

 思わず、感動や感激よりも先に困惑が勝ってしまった。

 

 

「えーなにそれ酷」「それな〜?えてか何年ぶり?15、6年振り?」「えぐ。生まれたての赤ちゃんが高校受験するまでくらい経ってんじゃん」

「実際そうだろ。てか、そうじゃなくて……」

「いやさ、みんながここ受験する未来が見えて」「見えちゃったんだよね、未来」「それにうちらもどこ行くか迷ってたからちょうどいいかなーって」「新大久保行くついでに来たんよ」「これ終わったら行くんよ。ぴかるんも来る?」

 

 一度隙を与えれば、二人の口撃が堰を切るように畳み掛けてくる。

 押し寄せる言葉の濁流、情報量の暴力に流されそうになりつつもそれらを一旦押しのけ、

 

「いや、情報量情報量…いいよ、俺は。てか、みんなってことは、他の奴らも?」

「あーそうそう。マホとかスミスミもいるよ」「てか、ぴかるんがいるってことは、マサも来てるってことっしょ。どこにいるん?」

 

 会話を逸らし、先程湧いた疑問を伝えると、その答えはすんなり帰ってきた。

 マホは確かクラスメイトの一人で、スミスミは毒島のことだろうか。

 聞いた名前と記憶の中の人物を脳内で照らし合わせている横で、平が手で笠を作り周囲を見渡す。

 その視線は黒井の居場所を探しているようだが、この場に黒井が居ない以上、その役目が果たされることは無い。

 

 

「なんで俺がいるからって黒井がいることになるんだよ…いるけど」

「いるんじゃん。え、でも普通科志望の子達もうみんな集まってるじゃんね。てことは?」

 

 察したような声と共に、答えを求める視線が向けられる。 

 ―――そこまでわかってんならいいだろ……

 喉まででかかった不満を呑み込み、素直に、

 

「黒井はヒーロー科の受験。まぁ、個性も戦闘向きだし、そっちの方が向いてるでしょ」

「確かに」「それなー」

 

 何が面白いのか、二人は楽しそうに笑顔を浮かべている。

 ――本当に久々に会った2人との会話は、思った何倍も普通で、あの頃と一ミリも変わらないそれであった。

 どこか懐かしいその感じに、ひかるの頬が思わず綻ぶ。

 

「なに笑ってんの」「うける」

「二人も笑ってんじゃん……てかやば、そろそろ時間だ」

 

 会場に設置されていた時計を見遣れば、試験開始まで残り10分を切ったころだった。急いで話を切りあげ、参考書を開き、限界まで知識を詰め込もうと奮闘する。

 

 

「えー」「悪あがきじゃん」

「うるせぇ」

 

 黒井や2人どころか、他の奴までいるということを知ってしまった以上、ここで手を抜くという選択肢は無い。もしこれで自分だけ受からなかったら、恥どころの話ではないのだから。ひかるは必死だった。

 

 

「うわー!すごーい!!!これ、ほんとに敷地の中にあるの!?」

 

 ひかるが見里たちとの再会を果たし、試験に臨んだその頃。

 黒井は試験の説明を受けた後に、バスに乗って本会場へと連れてこられていた。

 黒井が連れられた場所は、どうやら敷地内に作られた街を模した構造の建造物群のようであり、プレゼントマイクの説明通りならば、ここに現れる仮装敵を倒すことがこの試験の本題らしい。

 

「よーし!頑張るぞー!!」

 

 えいえいと声を出してやる気に溢れる黒井。場にそぐわない陽気さに、周囲の受験生たちが遠巻きにしていると、一人の女子が黒井に向かって歩いてくる。

 

 

「、、、もしかして、黒井くん?」

「ん?誰…って――」

 

 突然名前を呼ばれ、黒井は小首を傾げて少女へ振り向く。

 少女はピンク色のフリルのついたジャージを身にまとい、それなりに長い髪をツインテールでまとめ、所謂萌え袖の状態で口元を隠した、所謂地雷系と呼ばれるような風体をしていた。

 少女は驚いた様子で黒井を見つめていて、その姿にはどこか、既視感、が―――、

 

 

「―――えぇ!?りこてゃ!?りこてゃもこっちに来てたの!?」

 

 既視感の正体―――それは、少女がかつての同級生だったからにほかならない。

 けれども、それは少女と黒井が昔同じところに住んでいたとか、少女がどこかへ転校しただとか、そんなものではない。

 ―――少女は、「前」の世界における黒井とひかるの同級生。

 ギャル二人を除けば、特に関わりの多い女子生徒だった。

 

 完全なる予想外。驚きのままに黒井が大声で叫ぶと、周囲の生徒たちが二人から更に遠のく。

 そんな周囲の反応を気にもとめず、二人は再会を喜び合い、

 

 

「うん、、、気付いたら、この世界に」

「そうなんだ…」

 

 少女の言葉に、黒井はどこか納得したような表情を見せた。

 たしかに、自分達がこの世界に生まれ変わった以上、同様の死因を経た「前」の世界の住人、それも死ぬ間際に近くにいた者がこの世界に生まれ変わっていてもおかしくは無い。

 そうでなくとも、少女は彼女達や自分――ひかるとも仲が良かったのだ。

 また出会うことになっても、何らおかしくはない。

 

 

「それで、中学とか小学校とかで他の子達にもあって、、、ヒーローになって活動して有名になれば、まだ会ってないみんなとも会えるかなって思って、みんなでここ受けにきたの。早川くんとかも、他の会場にいるはずだよ」

「早川まで!?…知らなかった、俺、今までひかる以外のやつと会えてなかったから…」

 

 少女との再会という驚きの頂点に達した後の、さらに驚き。

 黒井の知らぬ間にどうやら、「前」の世界からの転生者は多くいるらしく、彼らは彼らなりの繋がりやコミュニティを築いているらしかった。

 

 空いた口も塞がらないと言った様子の黒井に少女は続けて、

 

 

「そうだ、黒井くんがいるってことは、多々くんも雄英?」

「うん。ひかるは普通科!」

「へぇ、、、じゃあ、今度会う時は雄英でかな」

「だね。お互い頑張ろ!!!」

 

 互いの健闘を祈り、そして気軽にハイタッチ。

 勿論、そこには久方ぶりの再開への喜びも含まれているが、何よりも互いへの信頼がそこには合った。

 相手は必ず合格するのだろう、そして自分も落ちる気などさらさらない。

 相手の実力への信頼、そして自分自身の力への信頼。

 その両方を兼ね備えたからこそのハイタッチ。

 

 けれども、それを眺めていた周囲の受験生たちは、

 

「……俺たち、これから実技試験、なんだよな」

「あぁ、そのはず、なんだけど…」

 

 緊張感の欠けらも無い、それでいて内容もよく分からない会話の応酬が続き、思わずたじろぐ。

 そうして変な空気が広がる中―――突如、マイクから甲高い音が鳴り響く。

 なんだなんだと、受験生たちがが耳を傾けると同時に――、

 

 

『──ハイスタートー!』

「ん?」

 

 

 咄嗟に聞こえた言葉に、ほとんどの生徒が気のせいかと耳を疑う。

 

 

『どうしたあ!?実戦じゃカウントなんざされねぇんだよ!!走れ走れぇ!!』

 

『───賽は投げられてんぞ!!?』

 

 

 投げ渡されるスタートの合図、黒井は即座に闇川に向けて言う。

 

 

「あ、ごめん、りこてゃ。先いくね!!」

「大丈夫、、、わたしも直ぐに追いつくから」

 

 それだけ言い残すと、次の瞬間、黒井の体が闇に包まれ―――ビル群の隙間を、縫うように高速で飛翔していった。

 

「わたしも、負けてられない、、、!」

 

 まだ呆けている他の受験者から少し離れて、意を決したようにそう呟く―――瞬間、闇川の肉体が爆ぜる。

 爆ぜる、爆ぜる、爆ぜる。

 規模の小さい起爆を繰り返し、その勢いを利用して前進する。

 

 

『標的発見!!ブッ殺―――』

「あんまり汚い言葉、使っちゃダメ」

 

 次いで、今までよりも大きな爆発。

 圧倒的なその破壊力を前にして、あらゆる障害は意味をなさず、彼女の目の前に現れる全ての敵は爆砕し、人の居ない道路の上に、残骸の雨が降り注ぐ。

 

「、、、、、、もう30pくらい稼いだら、一旦終わりにしよう。多分?疲れて危険になる子達もいるかもだし、ちょっと助けに行こうかな」

 

 

【――人物名:闇川りこ

   個性:地雷

   解説:本人の意思、あるいは家族(と本人が認識した存在)以外の人間が彼女に触れ、離れた瞬間に起爆する。威力は調節可能。】

 

 

 

 

 闇川が他の受験者の手助けをし始めるのとほとんど同じ頃。

 黒井は会場で最も高い建物の屋上から会場全体を見渡していた。

 眼下では無数のロボと人が蠢き、絵面だけ見れば人に反旗を翻したロボットとの戦争のようにも見える。

 そんな混沌とした光景と遠くから響く爆音を感じて、黒井は楽しげに笑みを深めて――、

 

「りこてゃもがんばってるみたい!よぉし、俺も負けてられないぞ〜!!対象:仮装敵!

 

―――――"超重力天体(ブラックホール)”展開!!!」

 

 

 

 刹那の間、世界は暗黒に包まれる。

 

 

 

 ▽▼▽▼▽▼

 

 

 

 時刻が正午を回り、太陽が頂点を過ぎる頃。

 雄英入試も終わり、ひかるはのんびりと帰路についていた。

 

 

「ひかる〜〜〜〜!」

「うわ、黒井?」

 

 スマホ片手に下を向きながら歩いていたひかるの背に、追って駆け寄ってきた黒井が飛びかかるように抱きついてくる。

 突如背中に伝わる衝撃、ひかるは首だけ振り向いて、

 

「今どきいねーよ、名前だけ叫びながら駆けてくる男子高校生なんて」

 

 肩を組んでくる腕を退かし、信じられないとばかりに文句を着く。対し、それを言われた張本人は不思議そうに小首を傾げていた。

 

「何言ってんのひかる?俺たちまだ高校生じゃないよ?」

「あー、そうだった。前の癖が抜けてなかったわ……てか、前もやったな、このくだり」

 

 若干の既視感、その答えを告げられ、ひかるはそういえばと過去を振り返る。

 あれはたしか、高校三年生に進級した頃のことだったか。

 

(…あれ、でも俺たちが死んだのって……)

「あ、そうだ!俺、試験会場でりこてゃに会ったんだよね!」

 

 ひかるがなにかに気づきかけ、頭を悩ませている傍ら、黒井が爆弾を…地雷を投下してくる。

 

「闇川もいたんだ。こっちは見里と平と…あと毒島さんとかもいるって」

「え、本当!?…それじゃあ、みんなで雄英行けるのか〜!楽しみ!」

「…お前なぁ」

 

 どうやら黒井の中では、既に雄英に入学したも同然らしい。

 入試で落ちたかもしれない、という考えが全く湧かないのは、流石と言うべきだろうか。

 

 

「それじゃあそれじゃあ、今度みんなでどっか遊びに行こ!ひかる、どこがいい?」

「いや、どこでもいいけど…」

 

 

 思えば、こいつはいつもそうだった。

 いつでも前向きで、明るくて。

 弱々しくて、ひかるにとってさえ、なんの価値もなかったひかるの個性を褒めたたえてくれた。世辞でも、なんでもなく。

 本心から、ひかるの能力()を褒めてくれた。

 ひかるの在り方を、認めてくれた。

 だから、ひかるは―――

 

 

「―――忘れられないものを思い出と呼んで、それはどこか物悲しくて、恋しい」

 

 突如、黒井の口からどこかで聞いたことのあるようなポエムが発せられる。

 

 

「……ブラックホール使った?」

 

「使った!」

 

「もしかしなくても、一瞬会場が真っ暗になったの、お前のせいだよな?」

 

「本当はロボットだけ吸うつもりだったんだけど…加減ミスっちゃって、日光とかも全部吸っちゃったみたい!」

 

 黒井はえへ、と舌を出して可愛らしいポーズをとるが、全く可愛くないし、微塵も冗談になってない。

 

「相変わらずでけぇよ、規模が。お前、もうちょっと自分の能力の強さを自覚しろよ…」

 

「えへへ〜」

 

「……何喜んでんだ」

 

 そんなことを思っての言葉も、黒井の耳には届かないようで、ニヤニヤと気味の悪い笑顔を浮かべている。

 

「いや〜、ひかるが、俺の事心配してくれてるんだなぁって」

 

「え…キモ」

 

「キモくない!」

 

「キモいわ」

 

「えぇ〜ひどい〜」

 

「はいはい…」

 

 落胆したように肩を落とした黒井の髪を、ワシャワシャと押さえ付けて、「まぁ、否定はしないけど…」と言えば、黒井は再び「ひかる〜」と嬉しそうに名前を呼んでくる。

 

 仕方がないな、とひかるもまた頬を弛めた。

 

 しばらくそうしていると、ぎゅるぎゅると、ひかるの腹から可愛らしい音が響く。

 

「…腹減ったし、飯でも行くか」

 

「あ、じゃあラーメン食いたい!!ひかる、いつものとこ行こ!!」

 

「え、ちょ…!?」

 

 ばっ、と顔を上げて、黒井が目を輝かせながら、ひかるの手を引いて走り出す。

 もつれる足を無理やり動かし、転ばぬように必死に走るひかるに反し、黒井は意気揚々と笑顔で駆ける。

 

「……まぁ、いいか」

 

 これもまた、いつかの日常だろうから。

 そう考え、ひかるもまた、暖かな笑みを浮かべた。

 




マサの対象:〜みたいなのは独自です。何を狙ってるか分かりやすくするためにつけました。
誤字報告ありがとうございます。見里の漢字を普通に勘違いしていました。
作者は高校受験というのにあまり詳しくないので、変なところがあったらすみません。
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