【私立パラの丸高校 ヒーローアカデミア編】   作: 燃える空の色

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前回のあらすじ:

ひかると黒井、雄英に合格する


05.ひかるとマサ、雄英に入学するやつ

 

 

 

 雄英高校ヒーロー科。

 数ある者がその門を叩き、しかし入る資格を得りるのは極わずか。

 そんな門をくぐる資格を得ることができなかったものが流れ着く場所(及第点)…それこそが、普通科。

 例えヒーローになれずとも、優秀な人材に変わりなく。将来を約束されたも同然の立ち位置であるが、それでもやはりヒーロー科に対し日陰に位置する存在なことに変わりはない。

 そんな雄英高校普通科C組に、少年…多々光はいた。

 

 

「……」

「俺の"個性”は―――」

 

 入学初日ということもあってか、時間よりも20分以上前には既にクラスの全員が登校しており、クラスでは軽い自己紹介が始まっていた。

 席順で行われるそれをボーッと眺めていると、少し離れた席で、見覚えのある二人が同時に立ち上がった。

 

「見里未来でーす。"個性”は未来視(ヴィジョン)。よろ〜」

「うちは平翔子。"個性”は平行世界移動(バタフライエフェクター)って言いまーす。一年間しくよろ〜」

 

 ――…相変わらずしれっとすごいなー、いろいろ…

 

「……すごいな、いろいろ」

「それな」

 

 世界が変わっても変わらない二人の自己紹介に内心で突っ込んでいると、隣に座っていた隈のすごい少年が同じようなことを呟いていて、思わず同意してしまう。

 ハッ、と口を手で覆い、ひかるは少年に向かって急いで弁解する。

 

 

「あ、ごめん。俺も同じこと思ってたから……」

「あぁいや、大丈夫。俺がおかしいんじゃないって分かって、むしろ安心したわ。」

 

 そう言って笑う少年を見て、ひかるもほっと息を吐く。

 前とは違い、今世では自分以外にもまともなツッコミ役がいるようだ。

 

 安心に胸を撫で下ろすひかるを横目に、少年は人差し指で自身を指さし、軽い自己紹介を始める。

 

 

「俺は心操。心操人使。好きなように呼んでくれ。君、名前は?」

「…多々光」

「多々ね。"個性”は…いや、いいや。そろそろ自己紹介の順番も回ってくるしね」

 

 どうやら話している間に順番が進んだらしく、心操が立ち上がる。

 

「俺の名前は心操人使……"個性”は、『洗脳』だ」

 

 

 口端を小さく歪め、心操人使はニヒルに笑った。

 

 

 

 

「えーっと、A組A組…広いなぁ、雄英」

 

 今日から雄英高校ヒーロー科、一年A組の生徒として所属することとなった少年──黒井正義は、広い敷地の中にある、これまた広い廊下の上を右往左往していた。

 ひかると一緒に登校してきたのはいいものの、クラスの位置が離れていて途中で別れてしまってから、自分のクラスに辿り着けず、既に10分近い時間を無駄に彷徨っている。

 

「どうしよ…って、あれ」

 

 誰かしら人を探して聞くしかないか、と辺りを見渡しながら歩き出すと、少しした所に大きな扉と、その前に佇む一人の少年を見つけた。

 

「あの子…確かひかると前話してた子だよね?何してるんだろ」

 

 過去に1度、2クラス合同の授業があった際、黒井が他の奴と組んでしまって孤立してたひかると、目の前の少年がペアを組んでいたことがあったのを思い出す。

 初対面にしては仲良さげに話していたので、多分知り合いなのだろう。

 爆豪とかいう子に虐められていたせいか、あの子が学校で話しているところなんて滅多に見なかったので、「やっぱりひかるはすごいな〜」なんて感心しながら見てたのを覚えてる。

 

 そんな彼が、扉の前で何度も深呼吸し、緊迫した面持ちをしていた。

 同じ学校の出身なんだし、折角だからこの機会に仲良くなっておきたい。そう考えて、黒井は少年の肩に手を伸ばした。

 

「なにしてんの?」

「ぉぎゃっふ!!?」

 

 びゃん、とまるで猫のように肩を跳ねさせて、少年はまるで幽霊にでも会ったかのような声を上げる。

 

 

「わっ、すごい声。ごめんね、驚かせちゃった?」

「い、いえいえ!こ、こちらこそ変に驚いちゃってごめんなさい!」

 

 

 思ったよりも驚かせてしまったみたいだ。 

 黒井が少年に対し謝罪をすれば、少年もまた頭を下げてくる。

 何度か上下に上半身を揺らした後、少年は黒井の顔をマジマジと見つめて、何かを思い出そうと頭を掻く。

 

 

「え……っと、同じ中学だった人、だよね。多々くんと、一緒にいた…」

「えー!!覚えてくれたんだ!!うれし〜!!!えっと、君は隣のクラスにいた緑谷!だよね?爆豪に虐められてた!!」

「う、うん。それ、ほんとに広がってるんだ…。あ、ごめん。改めて、僕、緑谷出久。君もA組だよね。これからよろしく」

「こちらこそ、よろしく!!」

 

 ―――よかった、かっちゃんしか知り合いが居なくてちょっと不安だったけど、これなら…

 

 緑谷の中学から雄英に入学した者は全部で四人。そのうち三人がヒーロー科に受かったということは聞いていたが、どうやら目の前の少年、黒井正義がその人らしい。

 中学では話す機会に恵まれなかったが、今話す限りでは良い人のように感じる。

 少なくとも、かっちゃんやあの眼鏡の人のような怖い人さえいなければなんとかなるだろう、と甘い考えを抱く。

 

 黒井もまた、クラスメイトとなる人物に同郷の出がいた事にほんの少し一安心。

 早速友達を一人作ったことだし、このままクラスメイト全員と仲良くなれたら嬉しいなどと楽観的な思考。

 

「それじゃ、行こっか!」

「あ、うん!」

 

 二人が大きな扉を開け、教室へと足を踏み入れようと中を見る。

 そこには―――、

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」

「思わねーよてめーどこ中だよ端役が!」

 

 教室に入ってすぐ、ロボットのような動きをする堅苦しい眼鏡の男子と、対照的につんつんとしたウニのような爆発的ボンバーヘッドに超がつくほど着崩された服を纏う少年の二人が、扉の目の前で論争を繰り広げていた。

 

「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」

「聡明〜〜〜!?クソエリートじゃねぇか、ぶっ殺し甲斐がありそうだな」

「君酷いな!?本当にヒーロー志望か!?」

 

 まるで敵のような顔と口調で啖呵を切る爆発的少年に対し、飯田と名乗った少年は困惑を露わにする。

 そんなコントを気にもせず、黒井は教室全体を見渡し、見知った顔の人物がいることに気づく。

 

「(あ、りこてゃだ。同じクラスだったんだ〜)」

 

 挨拶代わりに手を振れば、向こうも小さく振り返してくれる。

 流石の黒井も、知り合いが誰もいないというのは少し不安だったが、闇川がいるならば安心だと、僅かに胸を撫で下ろす。

 これで『クラスメイト全員友達大作戦』も二人分進んだことだし、なんなら今ここで喧嘩している二人を仲裁すれば更に二人分進められるのでは?などとズレた思考を重ねる。

 

 

「……ム!?」

 

 二人が入ってきても気づかずに暫くやり取りを続けていた飯田だったが、ふと、教室の入口から見つめている二人に気づき、手を差し伸べながら歩いてくる。

 

 

「俺は私立聡明中の…」

「聞いてたよ!あ……っと、僕緑谷。飯田くん、よろ――」

「俺、黒井正義!気軽にマサって呼んで!!」

 

 黒井は元気いっぱいの笑顔と声と共に飯田の手を握り、ブンブンと激しく上下に振るう。飯田もがっちりとその手を握り返した。

 

「あぁ、マサくん。よろしく頼むよ」

 

 お互いが手を離すと同時に、飯田が緑谷に向き直し、改めて手を伸ばす。

 

「緑谷くん…君は気づいていたのだな。あの実技試験の構造に。俺は全く気づけなかった……!!君を見誤っていたよ!!悔しいが君の方が上手だったようだ!」

 

 なんのことかは分からないが、少年はやけに感銘を受けた様子だった。

 何かすごいことでもしたのだろうか。入学早々すごいなー、などと小学生のような感想を浮かべつつも静観。

 

 

「デク…」

 

 チラリ、黒井は少年と握手する緑谷を睨んでいた少年に目を見遣る。

 爆発的少年こと爆豪勝己。彼は黒井とひかるの母校でもトップレベルに優出な生徒で、それでいてかなりの問題児だった。

 何せ先生が居ないとはいえ人前でも堂々と緑谷を苛め、その力を誇示し、他者を見下すものだから、周囲の取り巻きやクラスメイトを除けば彼にいい印象を持った生徒はほとんど居ないだろう。

 

 そうやって爆豪の様子を伺っていると、突如その視線が黒井の方へも向けられる。――あ、やばい。睨み返され視線が合う前に咄嗟に逸らし、扉の方を見る。すると、

 

「あ!そのもじゃもじゃ頭は!地味目の!」

 

 空いた扉から一人の少女が顔を覗かせ、元気な声で緑谷へと声を掛けてきた。

 

「プレゼントマイクの言った通り受かってたんだね!!そりゃそうだ!!パンチ凄かったもん!!」

 

 満面の笑顔を浮かべて元気に話しかけてくる少女を前にして、緑谷はクソナードを発揮。何とか互いに感謝を口にしていた。

 何かは分からないけどなにかすごいことをしたんだろうなと二度目の賞賛。

 黒井の中での緑谷への評価が弱気ないじめっ子から大きく跳ね上がる。

 

「今日って式とかガイダンスとかだけかな?先生ってどんな人だろうね。緊張するよね」

 

 楽しげに話す少女は、全身でやる気と元気を表現し、その場のなんとも言い難い空気も自然と調和される。

 

 

「―――友達ごっこがしたいなら他所へいけ」

 

 

 突如、楽しげに話す少女の背後から、くぐもった声が響いた。

 

「ここはヒーロー科だぞ」

「「「(なんか!いるぅぅ!!)」」」

 

 そこには、まるで地を這う芋虫をそのまま大きくしたかのようなナニカがいた。新しいクラスが始まって半日も経たないうちに、A組全員の意思が一致した瞬間である。

 

「静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

 

 寝袋に包まり、まるで芋虫のように地面に寝転がっていた男性…恐らく雄英の教師と思われる人物はのそのそと起き上がり、早々に苦言を呈してくる。

 

 

「ていうことは、この人もプロヒーローなの?」

「そのはずだけど…見たことないな」

 

 

 黒井が率直に疑問を口にするが、ヒーローオタクである緑谷でさえ知らないヒーローらしい。

 一体何者なのか、教室が僅かな騒がしさに包まれる。

 そんな周りの様子を無視して、目の前の男は寝袋から抜け出し、猫背のまま淡々と自己紹介を始める。

 

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

「えー!?担任の先生なの!?」

「そうだよ。…はい、早速だが、体操服(これ)着てグラウンドに出ろ」

 

 相澤と名乗ったその男は手持ちの寝袋を漁り、中から体操服を取り出して渡してくる。

 何か嫌、再び生徒たちの意見が統一された。

 

 

「わかりました!」

「え!?黒井くん!?」

 

 けれどもしかし、生徒たちが躊躇してる横で、黒井は早々に体操服を受け取って教室の外へと飛び出し――またすぐに戻ってきた。

 

 

「あ!!先生、更衣室ってどっちですか!!?」

「……教室出て右行ったらすぐだ。ほら、早く行け」

「はーい!!」

 

 質問と回答が行われた後、黒井は再び教室から飛び出し、一目散に更衣室へと向かっていく。

 その背を見届けつつ、飯田が困惑に眉を顰め、

 

 

「……なんなんだ、彼は」

「あはは…実は、僕もまだよく知らなくて」

 

 純粋な疑問と困惑に、緑谷も思わず苦笑い。

 "個性”も性格も、緑谷は黒井のことを何も知らない。

 そしてそれは、他の生徒たちも変わらず。

 黒井が去っていった扉を、この場の生徒全員が見つめていた。

 

 

「…何してる、お前らも早く行け」

「は、はい!」

 

 相澤に言われるがまま、生徒達は更衣室へと駆け出した。

 

 

 

 

「個性把握…テストォ!?」

 

 相澤の指示に従い、各々がグラウンドへ訪れると、そこでは全く予想外のことが告げられる。

 入学早々行うことがテストとは、もしや雄英はかなりのスパルタ校なのだろうか。黒井が一人自問する。

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

 麗日が皆の心の声を代弁、しかし相澤はその言葉に対し冷淡に首を振り、

 

「ヒーローになるには、そんな悠長な行事出る時間ないよ」

 

 と一蹴。続けて、

 

「雄英は"自由”な校風が売り文句、そしてそれは"先生側”もまた然り」

「ソフトボール投げ、立ち幅とび、50m走、持久走、握力、反復横とび、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ?“個性”禁止の体力テスト」

「国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている。合理的じゃない。まあ文部科学省の怠慢だよ」

 

 言いたいことを好き放題言った後に、小さくため息。

 そして黒井に振り向く。

 

「黒井、中学の時ソフトボール投げ何mだった」

「62mです!!」

「じゃあ"個性”を使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい。早よ」

 

 雑に投げ渡されたボールを受け取り、黒井が円の中に踏み込む。

 手に握り占める感触を確かめるように力を入れ、ほんの少しブラックホールを纏う。

 コンディションに問題なし。そう判断して、黒井は再度相澤に振り向き、

 

「先生、ほんとに何してもいいんですよね!」

「あぁ、思いっきりな」

 

 相澤からの了承を得て、黒井が「よーし!!」と意気込む。

 それと同時に、黒井が握るボールを中心とした風が吹いた。

 ―――否、それはただの風ではない。

 中心であるボールは黒い影のようなものに包まれ、世界は黒井の手の平を中心に歪み、引き寄せられる。

 

 

「ブラックホールワープの要領で───おりゃ!!」

 

 

 大きく振りかぶり、放つ。

 黒い軌跡を残し、軌道上にある全ての物質を吸引しながら、それは進み続ける。

 空気、光、更には重力でさえ、それが通過した後には何一つとして残らない。

 無限に続く果てなき飛翔、ブラックホールに包まれたそれはやがて大気圏さえも突き抜け、遠い宇宙の彼方にて輝くこととなるだろう。

 

 記録―――"測定不能”

 

「…まず自分の「最大限」を知る。それがヒーローの基礎を形成する合理的手段」

 

 

「なんこれ!!すっげぇおもしそう!!」

「うおぉぉぉぉぉ!!!早速測定不能!?すげぇ!!!」

「"個性”思いっきり使えるんだ!流石ヒーロー科!!」

「チッ!!!!」

 

 

 開始早々、黒井が叩き出した異常な記録。

 良くも悪くも、黒井に向けて注目と反応が集まる。

 勿論、それは緑谷も例外ではない。

 

「いきなり測定不能…!それにしても、今のは一体何をどうやったんだ?重力操作…にしては軌道が不自然だったし、速度が尋常じゃなかった。そういえば黒井くんが個性を発動したと同時に周りのものが黒井くんに引き寄せられてた気が…風を操る個性?でもそれだけじゃ説明がつかないし……そういえば投げる時にブラックホールワープがどうのって言ってた。それなら…もしかして、スペースヒーロー13号と同じタイプの個性?でも、それだと黒井の個性って…」

「あはは…凄いね。最初からあんなの見せられちゃったら、こっちも張り切っちゃうよ!」

 

 ブツブツと考察を続ける緑谷の横で、麗日が僅かに引きながらも黒井に対する賞賛を口にする。

 それに関しては素直に同意だ。緑谷は思考を一度止めて頷く。

 

「そうだね……(ってまずいまずいまずい!!黒井くんの成績の衝撃で忘れてたけど、8種目…いきなりこんな…)」

 

 そんな楽しげな生徒たちを前にして、相澤は実に面白くなさそうな顔をして、ボソボソと喋り出す。

 

「……面白そう…か。ヒーローになるための三年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?」

 

 何か、嫌な予感がする。

 黒井と闇川が、同時にそう感じたその時、相澤は初めて見せる笑顔を浮かべ、

 

「よし、トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し―――除籍処分としよう」

「「はああああ!?」」

 

 

 ―――信じられない受難を、生徒達に齎した。

 

 

 

「生徒の如何は先生(俺たち)の"自由"。ようこそ、これが──雄英高校ヒーロー科だ」

 

 




□入学式
光「早川たちいたな。めっちゃ手振ってる。……てか、あれ?黒井と闇川がいない…ていうか、A組まるごといなくね」
未来&翔子「それなー」「うけるー」
光「どこが?」
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