男は黒かった
黒のロングコート、黒の髪、黒の瞳
まるで自分を追い詰めるように…………
男の背に長い長剣、この場合は物干し竿の方がしっくりくるだろう。男は物干し竿を鞘から抜き、構える。腰は低く、両手で獲物を持ち、降ろすように低く構える。
目標は目の前。片手剣を構え、怯えるように男から後ずさる。怯える者の頭上にはカラーアイコンがある。色はオレンジ、男の頭上にも同じようにオレンジのアイコンがあった
「……………、2年か…長いようで、短い2年だ。……どのみち俺には関係のないことだ」
男は誰に言うわけでもなく、まるで自分に言い聞かせるように呟く。
斬
男の獲物は怯える者を切った。何かを言っている。聴こえない。涙を流していた。見えない。いや、聴こえない訳でわない。見えない訳でわない。ただ無関心なだけだ。男の目の前の者は光となり空となる。男にとっては見慣れた光景だった
「ッ!遅かった。またやってるのか?もぉPKなんてやめろ!お前だってッ!お前だってこんなことやっても意味がない事は分かっているだろ?」
「………キリト、俺は空っぽなんだ。……いや、貴様にはわからんよ一生、な」
男は獲物を鞘に戻し、キリトと呼ばれる少年を通り過ぎる。キリトは男を止めることが出来なかった。悔しそうに、ただ下を向くしかなかった
「……………クソ、悪を断つことがお前の正義なのかよ。分かってる!分かってるよ!確かにこのSAOの中だと、お前はイレギュラーだよ!でも、違うだろ?なぁ、コウ?」
キリトは誰もいない背中に問いかける。誰も答える者は居ない
男に、いやコウ。それが男のプレイヤー名だ
この世界、ゲームSAO〈ソードアート・オンライン〉
この世界において、コウと言うプレイヤーは限りなく
イレギュラーである
「よし!βテスターの時は凄い楽しかった。この日を待っていたからね」
男の名は、大神 仁(オオガミ ジン)
今年、近所の二流大学に入ったばかりの大学生だ。雰囲気から察するに、爽やかさを醸し出しており、お人好しなんだなぁと思わせるオーラ。でも中身はゲームや漫画、そういったファンタジーに夢を見る青年である。若干まだ大人になりきれない一面がある
それが大神 仁のいいところである
そして今日、全国ではSAO〈ソードアート・オンライン〉と言うゲームの発売日
とうぜん仁も予約し、すでに手元ある
「またあの世界に行ける。さて始めるか」
リンクスタート
ズ、ズスッ、ピピ
ザーザーザーザー、エラーエラーエラーエラーエラー
エラーにより◯◯◯◯します
「帰ってきた。この世界に!さて適当にレベル上げますか」
大神 仁を改めプレイヤーコウとしてSAOの世界に来た。この世界での自分は主人公で正義の味方である。駆け出した足は慣れたリズムで一歩一歩速度をます。好奇心が抑えられなかった。探究心は絶えることはない。だが
「ん?あの子。初心者かな、NPCでもないみたいだし」
彼がお人好しなのは変わらない。困っている人は見捨てることが出来ない、βテスターとしての使命感もあるのか、ただ単に性格なのか、彼は教えることが好きなのだ
「えっと、君初心者だよね?俺これでもβテスターなんだ。今からレベル上げするんだけど、一人じゃぁ心細くて」
「私が初心者なのは事実、正直私も右も左もわからない状態だったから、ふふ、心細いんでしょ?私もだから一緒にやりましょ」
仕草や口調、アバターから見て本当に女性なのがわかる。別に女性だから話したのではない、心細かったのは事実だし、ほっとけない感じだったから話しかけた
彼女は本当に初心者だった。フレンド登録のやり方すらしらなかった。
「そういえば、まだ自己紹介してなかったね。俺はコウ」
「コウ……じゃあコウ君で」
「よれしくな」
「私は、私はアスナ」
これが、彼女との最初の出会いだった
『私は茅場晶彦、このゲームの製作者にしてゲームマスターだ。突然だか君達に贈り物がある確認してほしい』
今思えばこの時だ、この時
俺の歯車は動いたのだ。大神 仁が…
『このゲームでの死は現在での死と同様、現在数名のプレイヤーが亡くなった。これを見てほしい。君達の家族や知り合いだ』
先ほど贈り物のにより現在の姿になったプレイヤー達、茅場晶彦が写した映像には泣き崩れる家族、恋人、友達が映し出されていた。だがそんなのどうでもよかった
一点その一点をコウは見ていた。恐怖、悪寒、寒いと思った。その映像には
自分自身である大神 仁が居るのだから
「コウ、君?」
アスナも気づいた。隣に居る者が今、現在に居ると映像に映って居るのだから
「ッ!」
気づいたら走っていた。止めるアスナを振り切り、無我夢中で走っていた。なんでだ?思考の中はそればかりだった。
ドン
何かにぶつかったはわかった。
「ん?いやこれは失礼。立てるかい」
プレイヤーだった。男は手を差し伸べた
「気持ちはわかる。こんな世界に閉じ込められた「分かってたまるか‼︎」……話ぐらいは聴こう」
その後全部話した。自分のこと、自分が今何者なのかを全部
「ふん……なるほど、………残酷な話だが、多分君の思っていることはあっているよ。ナーヴギアはエラーが起こった場合、強制終了する。なら君だれとゆう問いだが、現実に君の本体がある。だが本体自身が動いているなら、君は誰なんだい?」
分かっていた。なんとなく嫌な感じはしていた。だがそれを口にしたら自分(コウ)が自分(仁)で無くなる。だから
「君はデータだ」
言わなかったんだ。何かが崩れた。砕けた。何もかもがだ。もお死にたい。いや
消えたかった
「どこに行くんだ?君は死ぬつもりか?なら、止めはしない。だが死ぬなら始まりの街。その協会の地下がある。そこなら静かに死ねるだろう
それが私のせめてもだ」
ふらふらと気力、覇気、何もかもがだ消えて、崩れ、まさに中身のない空っぽのデータ人形だった。コウはその足取りで始まりの街へと歩いた
残された男はただコウを見つめていた。
「団長!ヒースクリフ団長!人数揃いました」
「ああ、今必要なのは結束力だ。選りすぐりの者を集めギルドを建ち上げる。演説の準備を」
「はい!」
「………イレギュラー君。君はこのままどうなるか楽しみだよ。いや、君が死んでも問題は無いがね」
コウが居るのは始まりの街の協会。協会に入った時点で協会の真ん中には地下へつづく階段があった。まるでコウを向い入れるかのように、死に場所を探すコウにとっては好都合だった。階段を一段一段とゆっくり、ゆったりと降りる。今のコウからしたらとても長く感じた。
やっとのこと階段をおり、目の前の扉を開いた。
真っ白。何もなかっな。広い空間が無限にあり、ゴールなど存在しないことを錯覚させる。
『おいおいおいおい、なんだ?なんでプレイヤーごときがこの空間に入ってんだ?ぁぁ?』
モンスター?なら好都合だ
真っ白の空間に霧のような白い何かが居る
「殺せ」
『ぁぁ?なっだてめー?頭イカれてんのか?いや、はー、てめーなんだデータか。このSAOの中のちっぽけなデータちゃんかよ。プレイヤーかと思ったぜ』
「殺せ」
『てめーそれしか言えねぇのか?つまんねぇヤツだな』
白い何かはまるでオモチャを見るようにコウを見る。そしてつまらなさそうに
「俺は何かない空っぽだ。自分がデータのくせに人間だと勘違いした愚か者だ」
『だから殺せ、か。なるほどなるほど、OK食ってやるデータちゃんありがたく思え。この俺様がちっぽけデータちゃんを食べてやるよ』
ぁぁ、これでも終わる。コウは死ぬ。でも仁は生きてる。それで十分だ
白い何かは口らしきものを開け、コウを丸呑みした
「え?俺、生きてる?」
『なるほどなー大神 仁ちゃんかぁ、まだ大学生じゃん。ちゃんと美味しいもん食べなよ。うんうん』
コウは生きていた。確かに食われた、はず?
「お前!俺は、俺はなんで生きてんだよ!」
『データちゃんよぉ、データは食った。だからてめーのことは枝毛1本から足の指のアカまでわかんだよ。よってパンパカパーン♪てめーは俺の下部になりました。ようこそウイルスの世界へ』
「ウ、ウイルス?」
つづく
つづく?か?