魔力量が全ての剣の道に絶望した少年は弓の道を極めるようです。   作:とろろうどん温玉

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織機代の下

魔剣士に弓で勝利するのは難しい、なぜなら威力が不足しやすいのだ。

 

魔剣士もとい一定以上の魔力量を有するものは、武器に魔力を流し強化することができる。当然弓も魔力流せば強化できる、そしてなにより弓は主に植物由来の素材で作られる為、鉱物由来の素材で作られる剣や槍、斧などよりかは比較的高い魔力伝導率を持つ。

 

これだけ聞くと近接武器より弓の方が優れているように思えるが、忘れてはならないのは魔力によって肉体も強化できると言うこと、つまり魔剣士が剣を振るう時(剣にかかる強化)+(肉体にかかる強化)の2つの強化を使って対象にダメージを与えられるのに対し弓は、弓にかかる強化のみを使って対象にダメージを与えなければならず近接武器のように手軽に高威力の攻撃をしずらいデメリットがありこれが弓の威力不足の理由だ。

 

弓で高威力を実現しようとすれば莫大な魔力量が必要となりそれだけの魔力量があるなら近接武器を使えばより簡単に威力ある攻撃ができる為、たとえ弓の才能が持っていても弓を魔剣士との戦いで使うものは極々稀なのである。

 

しかし、あのじいさんが行った不射の射には、俺が全力で弓に魔力を込めて矢を放っても届くかわからない程遠くの鳥を射った時、魔力を微塵も感じなかった。どのようにして魔力を使わずそれだけ矢を遠くに飛ばす力を得ることができたのか、それについて尋ねると。

 

「わしは魔力なんてものは使っておらんよ、人間の利用することのできる力は魔力だけではないんじゃよ」

 

この返答を聞いて俺はこの人の弟子になることを決めた。

 

 

———————そして俺は今、機織台の下にいる。

 

 

 

 

状況を整理しよう。

 

あの後、じいさんに弟子いれてくれるよう頼むと意外にもあっさり弟子に取ってもらえた。俺は一度家に戻り、家を離れて修行に出ることを伝え、早くて4年遅くとも5年経過したら修行の進捗度合いに関係なく魔剣士学園入学して必ず卒業することを条件に許可をもらった。

 

こうして俺は、じいさんの住む山家へ向かった。じいさんの住む山はかなり標高が高く道も険しく山家に着いたら頃にはもう日が暮れかけていた。

 

「や、やっとついた…」

 

「このくらいで息が上がるようではまだまだじゃな」

 

へとへとになっている俺は対照的にじいさんは息の一つも乱れない。

 

「おかえりなさいませ老師様、その隣の少年は?」

 

山家の玄関に入って俺とじいさんをでむかえたのは、黒褐色の着物を着た絹のように艶やかな黒髪をした女性だった。

 

「俺はイチイ・バウこのじいさんのとこで修行させてもらいにきた」

 

「———弟子?」

 

「狩の途中で出会ってな弟子にとることにした、詳しい話はあとするでな」

 

「分かりました老師様がそうおっしゃるなら」

 

「イチイさん、私はツムギ、老師様の養子です」

 

「さて修行は明日の朝からじゃ今日は、飯を食って明日に備えて早く寝るといい」

 

もう日が暮れておりその日はじいさんの獲った鳥をツムギさんが調理した鍋料理を食べて自分に当てがわれた部屋でさっさと寝た。

 

次の日の朝、日の出と共にじいさんに起こされた俺は、山家周辺の山道をじいさんと周回する事になった。

 

「はぁ、はぁ、」

(昨日もそうだったが、この山かなり空気が薄い、走り込みは前々から行っていたけどそれでもすぐに息が上がってくる。なのに)

 

「ほれほれ若いもんがそんなもんではいかんぞ、これくらい素の体力で走りきれんと強くはならんぞ、それもう一周じゃ」

 

(魔力以外の力とかなしでこの体力とかじいさんの体どうなってんだよ?!)

 

その後さらに追加でもう一周した俺は、息も絶え絶えになりながらも走りきった後ようやく朝食にありつけた。

朝食を終えた後じいさんから修行の説明をされた。

 

「まず瞬きを止めるところから始めるぞ、ついてこい」

 

そう言われて連れてこられたのは山家の一室、部屋の中には機織台がありツムギさんが布を織っていた。

 

「その機織台の下に潜り込んでそこにこに仰向けにひっくり返り機躡を瞬きすることなく見つめ続けるんじゃ、ツムギが昼食作りに行ったら休憩して昼食後は体力作り夕食と風呂を済ませて寝る時間までの間は織機台に入ってもらう、そして朝になったら今朝のように体力作りだいたいこんな内容で毎日修行してもらう」

 

体力作りはまだ理解できるがこんなことが修行になるのかと思ったが、自分から弟子にしてくれと頼んだ手前、素直に従う事にした。

 

こうして俺は機織台の下で仰向けになる修行をすることとなった。

 

そして俺が仰向けになっている横で機織りをしているツムギさんは、同時に修行の監視役であり瞬きしてしまうと。

 

「イテテテ!、耳! “俺の手で“引っ張らせるのやめてぇ」

 

「では瞬きをしないようにと何度も言っております」

 

こんな風に謎の力で俺の腕を動かして耳を引っ張らせてくる、恐らくこれも魔力以外の力によるものなのだろう。

 

(魔力以外の力、じいさんはそれで俺が弓に全力で魔力を込めて飛ばせる矢の距離よりも遠くの鳥を射抜いて見せた。もし——その力の強さが、生まれもったもので決まる様なものではなく積み重ねた努力によって決まるものなら、必ずものにして見せる)

要するにイチイは、努力すれば凡人の域を超えられるそんな力があることに一つの希望を見い出していた。これはイチイ自身にとって大きな心の支えとなる。

 

「そろそろ昼食の支度に入ります、午前の修行お疲れ様でした」

 

「やっと終わった、、」

ずっと目を開けようとしたため目がショボショボするし、結局あの後20回以上耳を引っ張らせられたせいでで耳、特に付け根あたりがジンジンする、またこの後の修行で更に30回ほど引っ張らせられてイチイはこの修行を終えるころには耳がなくなっているのではないかと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————————イチイが山家に来た日の夜

 

山家の一室にいる老師は部屋からの窓から見える月を魚に月見酒をしている、その隣でツムギは酌に立っていた。

 

「老師様、良いのですか連中との約束で弟子を取ることを禁止させられていたはずでは?」

 

「連中とした約束は去年で期限が切れておるあっちが更新を持ちかけん限り問題無いわい」

 

「そうゆうことでしたか、では何故あの少年を弟子に?約束のある無しに関わらず老師様は積極的に弟子を作る方ではありません」

 

「————イチイから弟子にしてくれと頼まれた時、試しにあやつの心の中を見た、心の中には強くなりたい、誰にも負けたく無いただそれだけがあったそれが—」

 

「それが、かつての老師様と近いもの感じたということですか」

 

「"今も"じゃよおまえを養子にとる時も言ったじゃろう、

こんなどうしようもないろくでなしじゃが、それでも良いか?

とな」

 

 




修行パートはあと一話くらいで終わらせたい。
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