魔力量が全ての剣の道に絶望した少年は弓の道を極めるようです。   作:とろろうどん温玉

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魔力以外の力

イチイの予想に反して半年もしないうちに瞬きする回数は半分程になり、一年経つ頃には、耳を引っ張らせられることも無くなりこの頃になると慌しく往来する牽挺が目の前を掠めても瞬くことは無い、更に三ヶ月が経つとイチイの瞼はもはや閉じるべき筋肉の使用法を忘れたかのように夜、熟睡している時でさえ目を見開くことができた。また目はずっと見開いていても乾いてショボショボすることは無くなり、目の疲れも感じなかった。

 

ある朝、起きた時に寝ている間にまつ毛の間に蜘蛛の巣が張られておりその姿を見たじいさんは、よし、と言い修行は次の段階に進む事になった。

 

「イチイ先ずは第一の修行、よく耐えて見せた、正直この修行で投げ出してしまう者は少なくない、そんなおまえなら次の修行も耐えられるはずじゃ、では次の修行について説明しよう」

 

そう言うとじいさんは、懐から一本の髪の毛を取り出し、イチイの部屋の南向きにある窓に懸けた。

 

「じいさん、それ髪の毛だよね?」

 

「いや、下の先っちょの方をよ〜く見てみぃ」

 

そう言われて窓に懸けられた髪の毛の先端を見てみると非常に小さな粒の様なものが繋がれていた。

 

「虱?」

 

「正解じゃ、おまえにはこれからこの虱を馬ほどの大きさになるまで見続けてもらう、これが第二の修行じゃ」

 

「まじ?」

 

「大マジじゃ」

 

そうして、かれこれ2、3時間経っても虱は虱、大きくなど全く見えてこない、しかし第一の修行を終えて、一見すると意味がよく分からない修行も続ければ意味が分かるようになる成功体験を得ていたイチイは根気強く毎日、虱を見続けた。

 

10日程経った時、気のせいか虱が昨日よりも微かに大きく見えた、三ヶ月経つと明らかに蚕程の大きさに見えた。

 

虱を吊るした窓の風景は次第に移り変わる。陽気な春は、いつしか烈しい暑さの夏となり、澄んだ秋空を高く鳥が渡って行ったと思うと、寒々とした冬の空から雪が降り始め、早くも三年の月日が経った。

 

ある日ふと気が付くと、窓の虱が馬のような大きさに見えていた。

 

占めた、とイチイは膝をうち、このことを老師に伝えに行った。

 

「イチイ、この四年間よくぞやり遂げた。ではこれより魔力以外の力、"気"について教えよう」

 

「気?」

 

それは聞き馴染みの無い概念で、この四年間イチイが正体を掴めなかったのも当然であった。

 

「おまえが知らんのも無理は無い、気を操る者は数えられる程しかおらん」

 

「遥か昔、人間が扱える力は気だけじゃった。しかしある時、この世界に魔力という力が入ってきて、人間は魔力という力を使えるようになった。魔力と気を比べた時、魔力の破壊力は圧倒的じゃった、気でも同等の破壊力を生み出すことはできるが、それには長い修練が不可欠で、魔力は生まれついてすぐに多大な破壊力ある技を繰り出せた。さらに魔力でしか傷を負わない魔獣が出没し始めたことも合わさり気は魔力を持たない一部の部族が使っていた程度じゃった。」

 

「しかし気は決して魔力の完全な下位互換ではない、気には、気の良い所がある、まず気は魔力よりも破壊力が低いと言ったがそれは、悪いことだけでは無い、力が強い魔力は体内で練ると暴走を起こし良くて肉塊となり死に至り悪ければ体が爆発四散する。じゃが気であれば体内でどれだけ練っても暴走することはない、修練を重ねれば魔剣士を破壊力を上回る程の気を練れる様になる。

また気はあらゆる生命が有しており、生命の魂から湧き出る生命の源じゃ、つまり魔力よりも傷や疲れを癒す事に向いておる、おまえが目を開け続けても瞼の筋肉が疲れず目が潤ったままなのはそう言う仕掛けじゃ」

 

「俺は、もう気を使えるようになってたのか」

 

「使えるだけでは無いぞ、もうある程度自在に操れる様にもなっておる、それは虱が馬程の大きさに見えるようになったのが関係しておる」

 

「では虱が馬程の大きさに見えた仕組みを説明すると、体内の気を操作し精神を身体外に出してそれを虱の前まで運ぶ、まぁ半ば幽霊のような状態になったと思え、そうして虱の目の前まで行くと今度は気を操作し精神の大きさを縮小し虱が馬程の大きさに見えるくらい小さくなったのじゃ、これを応用することでどれだけ遠くに離れていようが小さい物だろうがまたまた密室の中だろうが、自分の真後ろであって見ることが出来る。これを我々は千里眼と呼んでおる。」

 

「第一の修行では瞼を気であけさせ気を使える様にし、第二の修行で気の操作を行える様にする、この二つの修行は気を身につける上での基礎を鍛えるのにうってつけの修行なんじゃ。」

 

「——じいさん、感動したよ俺、あんたの弟子になれてよかった」

 

イチイはこの四年間の成果が実り、今までの努力が報われ、この先の未来が開けたことに感動していた。

 

「感動するのは、まだ早いぞ、これから様々な技をおまえ伝授するからのう、ついてこれるかの」

 

「ああ、やってみせる」

 

その後、イチイは老師か弓術、気功、徒手空拳など様々な技を習得した。あっという間に一年が経ち、約束の5年目がやってきた、不射の射などの上位の技は習得にさらなる時間を要する為、魔剣士学園を卒業した後となった。

 

 

 

 

——————こうして舞台は王都ミドガルへ移る

 

 

 




急ぎ足すぎて雑になってしまいましたがとにかく今回で修行パート終わりです。

これでようやく陰実キャラが出せる。
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