魔力量が全ての剣の道に絶望した少年は弓の道を極めるようです。 作:とろろうどん温玉
昔、少しだけ憧れていた人がいた。
そいつの剣は、はっきり言って凡人の剣だったが普通くらいの魔力量を剣技で補って格上の魔力量の多い魔剣士相手にも勝利して、剣技を極めれば魔力量の差を覆し凡人の剣の域からも抜け出し天才の剣にだって勝つことができる。そう言った凡人の剣の可能性を示してみせた。
私も可能性を信じて鍛錬すれば姉様と並び立てる様な魔剣士になれるという希望をもたらしてくれた。
けれど、結局はそいつの剣も凡人の域を出なかった。
私が9歳の頃、アイリス姉様の御前試合にそいつはきた、御前試合では国中の有力な少年少女の魔剣士たち数名招待されアイリス姉様との試合が行われた。圧倒的な天才の剣で招待された剣士を薙ぎ倒す姉様だったが、そんな中そいつは最も姉様を追い詰めてみせたが試合が長引き元々の魔力量が少なかったため、徐々に劣勢となり最後には姉様の豪剣で敗北してしまった。
それでもそいつは諦めなかった、その後、姉様を相手に善戦したことが認められ、そいつは御前試合にほぼ毎回呼ばれるようになった。再戦する毎にそいつの剣技や間合いの取り方は巧みになりより洗練されていった。
でも、それでも、姉様には敵わない。
決定的だったのは私が10歳の時のブシン祭の決勝、この時そいつは魔力量の不利を考えて温存を考えず自身の全魔力を40秒間身体強化に集中させて速攻で勝負を着ける作戦だったが、姉様は今までの戦いから速攻を仕掛ける事を予想していた為、防御に徹し魔力切れになるのを待っていた。
そのためあと一歩のところまで追い詰めて止めをさすところで魔力切れで敗北した、そして極め付けは試合後のそいつにかけたあの言葉。
「あなたの剣はとても美しい剣です」
そいつの剣がどれほどの努力によって成り立っているのかなんて豆が潰れては治ってを繰り返したかのようなゴツゴツとした手を見れば分かる。
その剣を前にしてなお美しいと思える余裕が姉様にはあった。
この時、努力では決して超えることの出来無い壁がある事を知った。
その日以降、そいつは御前試合にも来なくなった。きっとあの言葉で心が折れてしまったのだろう、かくいう私は剣の鍛錬に全く身が入らなくなった。心のどこかでは薄々感じ始めていたが、いざ努力が必ず報われることなど無い現実を突きつけられて無気力になってしまった。
そうして半年がたった頃ある話を聞いた、そいつが試合に来なくなった理由は修行をしに言ったからというものだった。
その話を聞いた私は、はっとしてすぐに外にでて剣の素振りを始めた。
剣の鍛錬にも今までよりも力を入れる様にした、誰かに凡人の剣だの馬鹿がた理想だと陰口を叩かれても気にはならなかった。
なぜならそんな馬鹿げた理想を信じている者は私一人ではないことを知っていたからだ、いつかきっと修行でより剣技を磨いて今度こそ天才の剣に打ち勝って見せる、だからこそ私もこんな所で止まってられない。