「トレーナーさん、此方へ」
肩までかかる黒鹿毛色のボブヘアー、エイシンフラッシュはぽんぽん、と己の膝を叩いていた。彼女の右手にはふわふわとした白色の梵天が付いている耳かき棒。ソファーに腰を下ろしており、正面の机にはウェットティッシュと乾いたティッシュの二つが置かれている。
今日のフラッシュは黒色のワンピースを着ており、彼女の叩いている部分は黒い布で覆われていた。俺が踏み出せずにいると彼女は不思議そうに首を傾げては
「どうされました?」
と。
そう言われてもここはトレーナー室ではなく、俺の自室、つまり自宅に彼女は来ているのだ。そんな状況で彼女は家主に対して膝枕をしようとしていた。
何故こんな状況に?と頭の中で思案していく。
そう、あれは─────────────
****
数日前、トレーナー室で書類関係の署名や見直し、申請、そしてレース関連のレポートの記載が終わっては体を伸ばしては解していく。
ぐぐぐっ、と腕を天井に届かせるように伸ばしてはゆっくりと弛緩。ふと、壁に掛けてある時計に視線を移すとまだ15時だった。
「…意外と時間があるな…」
フラッシュはまだ授業の時間である。トレーニングまで時間はまだ先であり、珍しく手持ち無沙汰になってしまった。さて、こういった時にレースやトレーニングの論文、はたまた本を読んで知見を増やすことが大概であったが、その思考を邪魔するように大きく欠伸をしてしまう。
ここ最近は夜遅くまで残っては書類仕事をしていたものだ。だが、それらが終わってはどうやら気が緩んでしまったようで。
「…フラッシュが来るまで仮眠でも取ろうかな…」
昨日会った時には「隈が酷いですよ。ご無理をなさらないでください」と彼女に心配されてしまった所だ。本来はあまり良くない事ではあるも、最近頑張った自分へのご褒美、ということにしていざソファーの上へ。
ソファーの上に腰を下ろしては片手に持っている携帯。イヤホンを繋いでは自分の耳に装着をして、動画サイトを漁り始めた。
実のところ、仕事で疲れた体で自宅に帰り、そして寝ようと思っても寝付けない事が多々あった。寝よう寝ようと思えば余計に目が覚めてしまう負のスパイラル。
そんな状況で俺を救ってくれたのが動画サイトにアップされていたASMRというものだ。マッサージにヘアカット、シャンプーに爪切りといった様々なものを見ていたが一番のお気に入りがあった。
「お…今日はこれかな…」
そう、耳かきである。一番これが自分にとって合っており、聞いてしまえばすぐに夢の世界へ落ちてしまう。その選んだものを再生しては、肘掛けに腕を立たせ、そして頭をそこに乗せては簡易枕。
自分の耳元で響くざりざり、という音。それを聞いてしまえば自分の意識が消えていき、直ぐに夢の世界へと落ちてしまった。
その夢の世界に落ちては1時間と少々。俺の担当であるフラッシュが起こしてくれたのだ。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
「…ふわぁ…おはよ……よく眠れたよ…」
彼女は俺の肩を揺さぶっては起こしてくれ、顔を覗き込むようにして様子を伺っていた。口元に手を当ててはその欠伸を見せないようにしていく。
起きて脳が覚醒して来ればなんだか左耳の圧迫感が無い。右耳に手を伸ばすとイヤホンが付いていたが、左耳は外れていた。寝ているときに外れてしまったのだろうか、と思ってはイヤホンのコードを探していく。
そのコードは地面に逆らうように上に伸びており、そして辿り着くは彼女、フラッシュの手元だった。
「…こういったものが嗜好なんですね、トレーナーさんは」
「………いや…その、ね?」
フラッシュは笑顔を浮かべているが、なんだかその表情に圧を感じてしまう。まるでいけない事をしていたことがバレてしまったかのように、背中に嫌な汗が伝っていく。
なんとか弁解をしようと口を開く前に彼女は言葉を続けていく。
「これ、ASMR、というものですよね?」
「…え、知ってるの?」
「はい、多少ですが聞いたことはあります」
彼女の口からその単語が出てきたことが少し驚きであった。もしかして、なんて考えていたがどうやらそれは要らぬ心配だったようだ。既に動画は最後まで流れており、停止状態。ちらり、と彼女の顔色を窺うようにしては俺は尋ねていく。
「フラッシュも聞くのか?」
「いえ、聞きませんよ」
ばっさりと切られてしまう。
彼女は携帯の画面に映った動画と俺が先ほどまで付けていたイヤホンに視線を何度も行き来を繰り返している。
「
フラッシュが小さな声で何かを呟いたのが聞こえた。それは日本語ではなく、彼女が時折呟くドイツ語だということは分かった。しかし、その内容までは不明であった。
「えぇっと…フラッシュ?」
俺の声に反応することなく、そのまま手に持ったイヤホンを見つめている。少しした後に此方に視線を向けては何かを決心したような目つきだった。
「トレーナーさん、最近お疲れでしたよね?」
「まぁ…そうだね…やっと落ち着いた感じだよ」
「…では、私が癒して差し上げますね」
「──────────はい?」
彼女はそのイヤホンを俺に手渡しては、胸を張りながらとんっ、と自信満々に叩いては言葉を続けていく。
「私であればもっとトレーナーさんを夢の世界へ連れていけると自負しています。ですから、今度の休日はお家にお邪魔致しますね」
「な…何故…?」
フラッシュにそう告げても彼女は理由を教えてくれる事は無かった。そうしてあれよあれよと誤魔化されては時間が経ち、数日が経った。
彼女は本当に俺の家に訪れては、早速と言わんばかりに部屋の中へと脚を踏み入れ、そうして準備を進めていく。
そしてソファーに座っては
「トレーナーさん、此方へ」
あの光景へ繋がるのだった。
****
机に並べられたティッシュ達、そして彼女が手に持っている耳かき棒を見ては思わず「マジか」と呟いてしまった。その言葉に反応するように彼女も「マジ、です」と返してくる。
聞こえているとは思っておらず、反応を返されると少しだけ頬が赤くなるのを感じた。
確かにこの誘いは魅力的ではある。とはいえ、教え子にそう言われて飛びつくのはそれはそれで良くない話なのだ。俺が中々踏み出せずにいると彼女のウマ耳が垂れ下がっていくのが見えた。
「もしかして…遠慮、されていますか?」
「遠慮というよりだね…」
遠慮、ではなく後ろめたさが勝っている。
じーっ、とフラッシュに見つめられてしまえば俺は気まずそうに視線を逸らしていた。そうして埒が明かなくなったのか、彼女は1つ溜め息を吐いていく。
今度は膝ではなく、ソファーの上をぽんぽんっ、と彼女が叩いては
「では、此方ならいかがですか?」
と告げてくる。
膝枕ではなく、隣同士で座って耳かきをして貰う、というもの。膝枕云々というより、そもそも担当の子に耳かきをして貰うこと自体がどうなのか、と思ってしまうが今日の彼女は頑固だった。
きっとこれは彼女のスケジュールの中に入っているのだろう。そうなれば話は平行線を辿るのみ。
フラッシュは一度決めた予定はしっかりとこなしていくのは誰よりも知っているのだから。
俺は観念をして彼女の隣に座っていく。彼女との距離は体一個分離れている。これ以上自ら近づいていくのは憚られるからだ。
隣に座っては俺はフラッシュに視線を向ける。
彼女は一度頷いた後に「失礼しますね」と言っては俺の両肩を掴んでは、そのまま倒されて半ば無理矢理膝枕状態にされてしまった。
「……今日はやけに強引だね?」
「ふふっ、捕まえました。こうでもしないときっと寝て下さらないので」
俺の頭は彼女の太腿に乗っており、そして離れないで欲しい、という意図を伝えるかのように彼女は尻尾を俺の膝周辺に巻き付かせてきた。
ここまでされて逃げようものならフラッシュの事を嫌ってると思われても仕方ない。そっちの方が俺にとっては望ましくない。観念したように少しだけ眉を下げていく。
「…スケジュールに入ってる?」
「勿論です」
「なら…仕方ないね…」
ゆっくりと体を動かしては彼女の腹部とは逆方向に顔を向けていく。ここは自室であり、誰かに見られることも無いだろう。ならば彼女にスケジュールに付き合おうと思い、俺は自分の右耳を無防備に晒していく。
俺が動き終えれば、フラッシュは早速と言わんばかりにテーブルに置いてあるウェットティッシュに手を伸ばし、一枚取り出した。
「まずは耳を濡らしていきますね。少々冷たいですよ」
その言葉が聞こえた数秒後に右耳に触れる冷たい感覚。耳の外側を拭かれ、でこぼこ部分の狭い所は彼女の指でそのウェットティッシュ越しに拭かれていく。
半分程使用した後に、今度は耳の裏側。撫でるようにしてはごしごし、と拭かれると少しだけくすぐったく俺は身震いをしてしまう。
「トレーナーさん、余程大変だったんですね」
「……結構汚い?」
「はい、取りがいがありますね」
俺の右耳に彼女のくすり、と笑う声。そうして拭かれたウェットティッシュは、机の上に置かれていく。それには自分の仕事の忙しさを物語るように茶色くなっている部分があった。
「もしかしてシャワーばかりでした?」
「そう、だね。忙しくてお風呂にゆっくり浸かる気も起きなくてさ」
「駄目ですよ。シャワーだけでは汚れも溜まるばかりです。本日はお風呂に入ってくださいね」
「はい…そうします」
フラッシュの口調は柔らかく、叱責というよりは心からの心配のようだった。
今度は耳たぶやでこぼこ部分を彼女の手でぐにぐに、とマッサージをされていく。彼女の両手で耳の形を変えられていき、時折、耳の周辺をぐぐぐっ、と指で押されていくのを感じた。
「耳の周りにはツボがありますので…まずはマッサージで血行を促進いたしますね」
耳全体を彼女の手で変形され、そして周囲を指で押されるこの感覚。妙に心地よく、自然と瞼が降りてきてしまう。そういえば最近こんな風にゆっくりすることが無かったな、なんて思ってしまった。
その耳のマッサージを享受しては、今度は耳の上側が引っ張られる感触。耳の穴が広げられ、どうやらフラッシュは中を覗いているようだった。
「次は耳かき、ですよ。動くと危ないですから、じっとしてて下さいね」
彼女の言葉に俺は頷かずに、一言「んっ」と短い発音をして返していく。その反応が返ると同時に耳の中に入ってくる硬い棒状の感触。
耳壁に当てられてはざりっ、ざりっ、と自分の脳内に響いていては何かを掻き出されていく音。
魔法にかけられたかのように脳内はふわふわ、と宙を舞っていた。
いつも聞いているASMRの疑似的な音ではなく、本物の音。それが直接響くように聞こえ、そして耳の中から垢を掻き出される感触はとても言い難いほど心地よかった。
かりかりっ、ざりっ
音を立てながら耳から垢が掻き出される感触が何度も繰り返されていく。自然と自分の視界は微睡み始めており、瞼も力を無くしては下がり始めている。手に力は無くなっており、体はソファーとフラッシュの膝枕に体重を預けているほど脱力していた。
「気持ちよいですか?」
「……とても」
「ふふっ、お気に召されたようで。オノマトペ、も併せていかがでしょうか?」
フラッシュから更なる癒しの提案。その提案が余りにも今の自分にとっては魅力的であり、そしてとても甘い蜜だった。そんな彼女の提案に俺は逆らうことが出来ずに
「…お願い、するよ」
と小さな声で返答していく。「分かりました」と彼女は返してくれては、一度耳かき棒が引き抜かれていく感触。視線の先では、耳かき棒のヘラに付いた耳垢をティッシュの上に落としていくのが見えた。
「取れたね…」
「まだまだありますから。そのままじっとしていて下さいね」
彼女は俺の耳をまた広げていき、そして耳かき棒を入れていく。耳壁に当てられ、耳垢をヘラで引っ掻くように取ろうとしていた。
「かりかり…、さりさりっ…」
フラッシュの声、その声はいつもよりも柔らかで、でも何処かいつもよりも低く、まるで幼子を寝かしつけるような声だった。その声と耳かき棒の掃除。二つが合わさることで余計に俺の意識は夢の世界へ飛んでしまいそうになる。
彼女はもっと癒せる、と言っていたがその言葉があながち嘘ではない事を証明してくれた。
「…あ、これは…
彼女の声はより真剣さを帯びており、自分の耳の中で何かが当たっている感覚。それが耳かき棒なのは分かったがもう一つの正体については理解するまでに時間がかかってしまった。
「トレーナーさん。今から大物に取り掛かりますので…動かないで下さいね」
その声が聞こえると、ざりっ、がさがさっ、と耳の中で響く音。既に脳内は彼女の耳かき所作とそして彼女の声で蕩けてしまっている。この気持ちよさを少しでも享受したい、受け入れたい、という一心で何と瞼を開けてはいるも、限界を迎え始めていた。
「もう少しで……」
耳かき棒を奥に入れては、ヘラで引き上げるようにしていく。その動きでまた身震いをしてしまった。
「…こう、して…」
フラッシュは何度も試行を繰り返していく。
そしてついには何かが耳の中からばりばりっ、と音を立てながら剥がされていき、自分の耳から引き出されていく感覚。
「ふぅ…これは強敵でした。取れましたよ、トレーナーさん」
フラッシュの声が聞こえているも返事をする力は無くなっており、俺は「ん」と短い単語だけを返していく。
フラッシュはその耳かき棒のヘラに付いた大きな垢をティッシュにとんとんっ、と叩いて落としていくのが見えた。
「…あー……これは恥ずかしい…」
「頑張った証拠ですよ」
自分の体内からその大きなモノが取れたという事が何だか気恥ずかしさを感じてしまう。しかし、その気恥ずかしさ以上に俺は彼女が取ってくれたという満足感の方が勝っていた。
フラッシュは一度、ヘラに付いた細かい耳垢をウェットティッシュで拭いていく。そうして綺麗になった耳かき棒をまた俺の右耳に近づけては、先程とは違い、ふわふわとした感触。
「最後に梵天です。仕上げをしていきますね」
その柔らかな毛先が耳の中へと入っていき、がさがさっ、ざざざっ、と音を立てては残った耳垢を掻き出すように何度も繰り返していく。動画サイトで聞いていた音とは違い、より鮮明に、そして耳の中を綺麗にされる感覚。
音だけでは得られないこの快楽はあまりにも自分にとって甘美なものだった。先ほどまで耳の中に溜まっていたものが全て外に出されては、妙に清々しさを感じてしまう。
そしてそれと同時に既に自分の全身は完全に脱力しきっており、まるで人形のようだった。
「ふわふわ…っと…これで完了ですね」
耳から抜かれていく梵天。既に眠気によって歪み始めている視界の中でフラッシュがウェットティッシュを一枚、新しく手に取っていくのが見えた。
あぁ、これで終わりなのか、と寂しさを感じている中で右耳に新たな感覚が伝わってくる。
「ふぅぅぅ……。はい、綺麗にしますからね」
彼女の吐息、それが右耳に当たればまたぶるりっ、と体を震わせてしまう。耳かきの定番ではあるも、実際にやられるのはなんだかくすぐったい。
もし自分に彼女達のようにウマ耳があれば、きっとぺたんっ、と地面と平行になるほど横に倒れている事だろう。
その吐く息を感じた後にウェットティッシュで最初の時と同じように耳の穴周りを拭かれていく。耳かきをされていたせいか、自分の耳自体に熱を持っており、そのウェットティッシュの冷たさは気持ちよかった。
「右耳完了です、トレーナーさん。次は反対側を向いて下さい」
「…ん…」
俺はフラッシュの言葉をそのまま受け入れては、既に力の無い体でなんとか反対方向を向いていく。視界に映るは彼女の黒いワンピース。本来であればこの状況で驚いたり、それこそ体を起こそうとするのが普通なのかもしれない。
だけどそんな考えが過ぎらないほどに、フラッシュから与えられた耳かきという一連の快楽に逆らえなくなっていた。
フラッシュに耳かきをされるという癒しにハマってしまいそうなほど、それ程までに溶かされていた。
机に背中を向けており、フラッシュが何かしらをしようとしているのが、太腿から伝わる動きで理解は出来たが、それが何をしようとしているかさえも分からない。
数秒後には左耳に当たるウェットティッシュ。フラッシュが俺に何かを呟いているも、その言葉も既に俺にとっては睡魔を誘う魔の言葉。
そして耳かき棒が左耳の中に入ってくるのを感じては、俺は夢の世界へと誘われてしまった。
□■□■□■□■
「寝ちゃい…ましたね」
私はトレーナーさんの耳をウェットティッシュで拭きながら独り言を呟いていく。耳かきの最中に彼に何度か話しかけたが返ってくるのは無言か、妙に甘ったるい返事のみ。耳かき棒で掻き出すのを終えた際に彼の顔を覗けば、赤子のように口を少し開き、気持ちよさそうに寝ていました。
彼が起きないようにゆっくりとウェットティッシュで耳全体を拭いていく。ときおり、ぴくりっ、と反応するように体が動いていますが、直ぐに寝息を立ててしまいました。
普段は彼は大人びており、それこそ私の前でここまで無防備な姿を晒すのは初めてだといっても良いでしょう。そんな彼がこのような姿を見せてくれるのは特別感を感じてしまいます。
優越感、ともいえるでしょう。
彼が癒しを求めて、私以外のモノを頼るのは特に構いませんでした。ですが、何故か私は彼が聞いていたあの動画に思わず
思っていたより私は嫉妬深いのでしょう。彼と共に歩むうちに私は私自身すら気づかない感情に気づくようになっている。
彼が聞いていたものが環境音や音楽であったらここまで嫉妬することは無かった。これが
時刻15時。
私はスケジュール帳を取り出してはその内容を確認していく。
15時まで、トレーナーさんを癒す。
15時以降、寝てしまったトレーナーさんとゆっくり過ごす。
その予定を確認しては、ぱたん、と手帳を閉じていく。予定通りにスケジュールが進んでいる。
耳かき棒を机の上に置いては、空いてしまった両手。片手は彼の手に自分の手を重ねては、指を絡ませていく。寝ている彼の手は暖かく、よりその体温を求めてしまうように私は力を強めていく。
もう片手、これは彼の頭へと伸ばしていく。私と同じ黒い頭髪。触ると私のとは違うごわごわとした感触。掌から伝わるトレーナーさんの感触が気持ちよく、私は何度も撫でるようにして髪を触っていく。
「…ふふっ」
自然と頬が緩んでしまいました。このなんでもない時間が、なんてことのない日常が私にとっての一番の
彼の時間は今は私だけのもの。
「言ったでしょう。私の方が癒せると自負していますって」
そう呟くとまるで彼が答えるかのように少しだけ身動ぎをしていく。ただの偶然だったのかもしれない。その偶然ですら、私にとっては必然に思えてしまった。
夢の世界にいるトレーナーさん。
その夢の世界でも私が癒せてあげたいと思ってしまうのは傲慢でしょうか。
でも一度思ってしまえば止めることは出来ませんでした。彼の夢の中にエイシンフラッシュという存在が出てくることを祈って、彼の耳元で囁いた。
「おやすみなさい。私、エイシンフラッシュの良い夢を見てくださいね」