黒蝕竜現る   作:ヒゲホモ男爵

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リュシアだめでした



【2-7】でたらめチャーハン、宙に舞う

 

 アストラ・ヤオとは、手のかかるお姫様である。

 

 TOPSがスポンサーを務める帝高エンターテインメントグループが誇る歌姫である彼女には、あらゆる行動の際に複数人の護衛が帯同する。

 ライブや収録、ファンイベント等の外出先はもちろんのこと、自室やトイレに至るまで全ての経路に人の目が光っている。

 にも関わらず彼女は、どうやってか"抜け出す"のだ。

 

 そうしてふらりとポート・エルピスに向かったかと思えば釣りをしたり、ルミナスクエアでゲリラライブを開いたり、目的地も定めず地下鉄を乗り継いでみたり。

 自由奔放に逃げ回る彼女を、護衛達はいつも必死になって探すのだ。

 そうして最後には、決まっていたように一番の護衛であるイヴリン・シェヴァリエが彼女を連れ戻す。

 そんなやり取りが良くも悪くも日常となっていた。

 

 彼女の価値を知る者であればこそ、彼女を手放したくがないために彼女を舞台への赤絨毯に縛り付けたがる。彼女の逃避行はそれに対する子供じみた反抗だと、1人を除いて誰もが思っていた。

 まさか帝光に、ましてTOPSに、本気でNOを突きつけられる人間などいないのだから。

 

 

 そんな彼女、アストラには特に困ったクセがある。

 これが起こってしまった日には、あのイヴリンでさえもいつもの澄まし顔をかなぐり捨ててアストラを探す、そんなクセが。

 

 

 ──それが、ホロウ探索。

 

 

「急げ急げ急げ! 歌姫がいなくなった! 至急衣装棚のチェックだ、最悪は──」

「黒い衣装がありませんッ!!」

「あ"あ"っ!!」

 

 今日もまた、帝光の下で激が飛ぶ。

 イヴリンを含め、護衛の中での共通認識。

『黒衣装の脱走は、最悪』

 

 アストラはホロウへ潜るとき、なかでも特に最悪な『黒蝕竜探し』をする時、決まって黒い衣装を身につけて脱走するのだ。

 それを何故かと問いただした時には、「だって、あの時の私は黒い服を着ていたんだもの、こうしたらわかるでしょう?」と、子供のような無邪気な顔で答える彼女は、事実として子供の頃に黒蝕竜と遭遇している。

 だからその時と同じ色の服を着ていれば、黒蝕竜が自分を分かってくれると本気で考えて、何度連れ戻されようが脱走を繰り返すのだ

 まったく正気の沙汰ではない。

 

 他の脱走なんてこれに比べれば遊びのようなもの。行き先がホロウというのが最悪具合に拍車をかけている。

 まず、まず誤解がないようにいえば、ホロウとは『入る=死』が直喩になる場所である。

 特別に講習と訓練を受けた調査員や防衛軍であっても毎年殉職者がでる、天然の生命投棄場がホロウである。

 

 そんな場所に、アストラはただの衣装を身につけて入る。普通なら専用の耐侵食装備と抗侵食剤、それに遺書をしっかり用意してから入るような場所に、アストラはヒールを駆け足にして飛び込んでしまうのだ。

 いくらアストラ個人が特別高いエーテル適性の持ち主で、ホロウの中で長時間の行動が可能だといっても、無限に行動できる有機構造体は存在しない。

 ホロウに入るというのは自殺行為も同然なのだ。

 なのにアストラは、一切の躊躇なく、それでいて想い人に駆ける乙女のように苛烈に、ホロウヘ身を投げる。

 

 

 これを幾度となく、黒い衣装の消失という形で察してきた護衛達にはある種の訓練が施されたと言っても差支えはないであろう。

 今日もまた、護衛達は駆け走る。

 

「装備と抗侵食剤を持ってこい!!」

「ホロウに入れる奴はついてこい! それ以外は情報統制だ、競合にこんな失態、悟らせるなよ!」

「あのお姫様って裂け目に進んで飛びこんで行くんだろぉ…黒蝕竜が神出鬼没だからって真似してよぉ……生きた心地しねぇよォ……」

「うわぁ男の壁尻がたくさん!? 嬉しくねぇッ!!」

 

 けれどこの日は、どれだけホロウを駆けずり回っても、アストラを見つけることが出来なかった。

 ついぞイヴリンの顔から血の気が引いた頃に1本の電話が届き、この日の脱走騒動は幕引きとなった。

 

 

『あ、もしもしー。こちらH.A.N.D.本部迷子センターなんですが、保護者のイヴリン様でいらっしゃいますか? アストラさんをお預かりしておりまして……』

『イヴ〜♪』

 

 

 イヴリンは激怒した。

 

 

 

 ▽▽▽

 

 

 

 アストラ付きの護衛達が今日この日に限ってアストラを見つけられなかったのには、見えない所でイヴリンが汗を滝のように流してもアストラを見つけられなかったのには、もちろん理由がある。

 そもそもアストラが、ホロウに入らなかったからだ。

 

 脱走当初、アストラはホロウに入り黒蝕竜を探すべく、帝光の建物から路地裏に繋がる小窓に体を押し込み、窮屈な思いをしながらも建物から出るというファーストステップを終えたのだが、そこにこんな声と音が聞こえてくる。

 

 

「はいたーっち♪」

「やめっ」ドゴォッ

「お前もはいたーっち♪」

「ちょっ待っ」ドゴン

「そぉれはいたーっち♪」

「許しっ」ガォン

「あははっ、はいたーっち♪」

「死にたくなっ」メ"ゴン

「さぁいごっ、はいたーっち♪」

「来世は、鳥になりた」バゴンッ

 

 

 これを耳にして、全く無視を貫ける人間が居るだろうか。いや、いない。

 異常を察して遠ざかるか、様子だけでも伺おうと忍び寄るかの2択、アストラは後者を選んだ。

 足音を殺して音の出処の方へ近づき、ついに最後の角まで来たところで、今度は子供が叫ぶ声が聞こえた。

 

「ぼ、ぼくも殴るのか!? こここ、こわくなんかないぞっ! お菓子を隠れて食べたのがバレた時の姉ちゃんの方がよっぽど怖いんだ! そこの男達が僕をさら──ひぃぃやっぱり怖いぃぃ!!」

 

 ──事件性のある悲鳴だった。

 

 

※※※

 

 

「ほんとうに大きくなったなぁ」

「うん、うん……!」

「ちゃんとご飯食べてるなぁ、えらいぞぉ」

「あぅ…」

「…なんで泣いているんだ? ここに怖いものはいないぞ、私がいるからな」

「ちがう、ちがうの…ズビ、えへ、えへへ」

 

 

 ──今回、およそ全ての事柄がサラの企てによるものであった。

 ゴア・マガラという存在の暴露。

『ゴア・マガラのお披露目パーティ』というでっち上げた噂を真に帝光へ触手を伸ばし、尚且つ参加客を限られた上流階級に絞るために不祥事(誘拐事件)を近場で起こす。

 その両方を、自らの手を汚す事なく行ったのだ。

 

 ゴア・マガラという存在を暗に認知し、利用しようと考えている勢力は多く、またその誰もが権利と利権に鼻先を伸ばした上層の人間である。それがこれまではH.A.N.D.六課という猛犬の小屋中にあったことで誰も手を出そうとはしなかった。

 誰だって虚狩りと星見家を敵に回したくはないのだ。

 讃頌会も同様である。

 

 けれどそれでは後で困る。

 サラが後に考えているミアズマを利用した計画の場に、『エーテルを消滅させる』なんてものを叩き込まれたりしたら計画がパァなのだ。

 だからいざという時に処分しやすいよう脚光の下に引きずり出す。そうでなくても身重になってもらうためにパーティをセッティングし、上層の人間のお眼鏡にかなってもらう。

 "ホロウを消せる救世主"には簡単に栄誉と名声が集まるだろう、現に1つホロウを消した話をインターノットで吹聴しただけで既に報道社が動いている。

 けれど栄誉と名声には責任が伴い、責任には強者をルールに縛る絶対的な民意が宿る。星見雅と同様に許可がなければ牙を剥けぬところに収まってもらうのがサラの目的だった。

 

 手の届かない猛犬小屋から、いつでも手の届く棚の上で、ドレスを着飾った人形でいてもらうために。

 

 

 そのために利用された姉弟の、特に弟は全体的に被害者である。

 ホロウ災害で両親を失って以来、幼い自分を養うために身を粉にして働く姉にはせめて迷惑をかけないよう、澄輝坪で1人寂しくとも努めて勤勉に過ごしていたというのに誘拐されて、目が覚めたら男の尻が壁に5個も並ぶ光景を見せられて、姉が自分を人質に脅されていたなんて話を聞かされたかと思えば、自分も自分を助けたシリオンも迷子だと分かって頭が痛くなって、

 

 極めつけに今、歌姫アストラが子供みたいに泣きじゃくって、件のシリオンに頭を撫でられて泣きながら笑う…そんな光景を見せられていた。

 もう頭がどうにかなりそうだった。

 子供の自身でさえテレビの向こうで歌うアストラ・ヤオのことは素敵だと思っていたのに、凛々しくも可憐で、それでいて確固たる芯のある歌を歌う彼女に憧れを抱いていたのに。

 今はそれと同じ顔が涙と鼻水にまみれて、なのに心底幸せそうな顔をしてシリオンのお腹に顔をうずめているのだ。

 もう頭がどうにかなっているのかもしれない。

 

(……うん、これは幻覚だな、誘拐という極限的なストレス下に置かれた事による幻覚症状に違いない、こんな所に都合よくアストラさんが現れるわけないんだから)

 

 現在地が帝光のお膝元であることを知らない少年は現実から逃避する。

 路地の小さな空を見上げて、そっと耳を塞いだ。

 

 

 少年からしてみれば分からない。

 自分が誘拐された理由だって分からないのだ。

 眼前で感動の再会の様相を呈している歌姫とシリオンが何年も前に異なる形で出会っていた事なんて、10代前半に見えるシリオンが歌姫を見て大きくなったと言えるほど小さい頃を知っている訳なんて。

 言ってくれなきゃ分からないじゃないか。

 でも言われたって分からない。

 

 何故ならアストラ以外には分からない事だから。

 10年以上も前にアストラを助けて亡くなった救助隊員とそっくりな顔も。その後にエーテリアスに襲われて彼女自身もエーテリアスになってホロウに囚われる筈だったのを、人のまま終わらせた竜と同じ翼も、尻尾も。

 その2つを有していて、アストラに「大きくなった」と破顔して言葉をかけられる唯一の存在も。

 アストラにしか分からないのだ。

 その一言が決まり手だったのだ。

 

 

「あぁっ、会いたかった、ずっと……!」

 

 

 話したい事がいっぱいあった。

 伝えたい言葉がいっぱいあった。

 聞きたいことなんて、両手で数えても足りない。

 …どうして姿が変わっているの、どうしてあの人とそっくりな顔なの、どうしてここにいるの。

 どれから言葉にするかも選べないままに、心に突き動かされるままに少女になった竜の胸に飛び込んだ。

 ──受け止められたことが、嬉しかった。

 

 自分はあの日よりもずっと背が高くなって、貴方はあの日よりも小さくなってしまったけれど、見紛うはずがない翼、尻尾。何より今にも微かに翼からこぼれている、あの日に満ちていたものと同じ黒紫色の粉。

 それだけが、探し()の特徴だったのだから。

 ようやく、あの日のあの場所で泣いていた子供()が、進む事ができた瞬間だった。

 

「それとも、撫でられるのは嫌か?」

「えっ! いやっ! そんなことはないわ!!!」

「うぉぅ、今日1番大きな声だな」

 

 アストラは跳ね起きて否定した。

 再会に感極まった涙を、撫でられるのが嫌で泣いているのだと勘違いされたらしい。全くそんな事はない。

 それでも自分の振る舞いが、自分の涙がかえって無用な心配を招き、不安にさせてしまった事がアストラ自身許し難い事だった。

 

 まして困らせるなんて、あってはならない。

 自分が貴方に向ける感情を一つだって誤解されたくない。その一心で、アストラは心惜しくも少女から身を離し、乱れた顔と髪とを整える。

 私は貴方に会えて嬉しいんだと、自信いっぱいの笑顔をみせるために。

 

「嫌だなんて、そんな事ない、絶対ないの。私は貴方に会えてすごくすごく、すごく嬉しいの。──!」

「そうか、そうか」

 

 途切れ途切れで嗚咽混じり、一通り泣きはらしたあとの喉はつっかえが酷くて、きっと目元も何もぐちゃぐちゃで、思い描いていた再会には程遠い。

 それでもようやく、アストラの10年あまりの時間が報われたのだ。

 

 それはゴア・マガラには分からない事だけれど、竜はこの時初めて、人が悲しみ以外で泣く事を知った。初めて自分に会えて嬉しいなんて言葉を受け取った。

 あの日すれ違った小さな命は怯えて泣いていたのに、今は自分よりも大きくなって温かい涙を流している。

 その"成長"を確かめる事が、竜が人となる前よりあった、けれど竜ではない者が竜に託した願いに対する答えだった。

 

 [あぁ……よかった……]

(そうか、満足したか)

 

 ゴア・マガラの中で、形のないものが消えていく。

 それは人となった竜の中にあって、ただ1人の少女のために自我を残し続けたもの。

 竜という埒外の神秘の中にあってこそ存在できた、ある種の執着。それが今に満足そうにして消えていく。

 

(だが待て、勝手にいくな)

 

 ゴア・マガラはそれをふん捕まえて、引き留めた。

 情緒? 流れ? 雰囲気? そんな事をソレが言葉なしに訴えかけてくるが、知ったこっちゃない。

 勝手に人の中に居座っておいて、最後は一人勝手に満足して消えようなどと虫が良すぎる。

 竜に人の都合が通用すると思ったら大間違いなのだ。

 

(どうせいくなら、半端でいくな)

 

 ゴア・マガラはアストラを右の腕で抱き寄せ、少し離れたところで呆けていた少年を尻尾で巻き寄せてから左の腕でこれも抱き、翼を開く。

 アストラはこれに心臓が跳ねるほど驚いたが、息が触れるほどの距離にあってゴア・マガラからかけられた言葉に、()()()()()()()()()に、不思議と心が落ち着いた。

 

 [「貴方の名前を、貴方の口から、聞かせてくれる?」]

「…アストラ、アストラ・ヤオよ、素敵な貴方……!」

「私の名前はゴア・マガラだ、ようやくはじめましてだな、小さかった子供よ」

 

 ゴア・マガラ、ゴア・マガラ、ゴア・マガラ……

 ようやく知れたその名前。アストラは何度も何度も心内で反芻し、2秒3秒と経たないうちに記憶の宝箱へその名を刻む。

 夢にまで見た至極のひと時。

 なのにアストラの耳には、それを邪魔する無粋な足音が聞こえてしまった。大股で駆ける革靴の音、アストラがよく知る護衛の音だった。

 

 護衛がこの場に来てしまったら、この時間は続けられない。自分は連れ戻されて、今度こそ自由に出られなくなるかもしれない。

 それは何よりも嫌な事だ。

 ならばいっそ自分から帝光に戻れば、少しは自由が残るかもしれないと考えた。希望的な考えでも、路地の袋小路にあってアストラには選択肢がない。

 こうして考えている間にも足音が近付いてくる。

 

「ご、ごめんなさいっ、今度偉い人に限ったパーティに招待されているの、そこに私から招待するから、そこでお話しましょう? だからごめんなさい、今日はもうお別れしないと……っ!」

 

 咄嗟に思いついたにしては、悪くないと思った。

 アストラの手元には今、確かに歌姫ではなく賓客として招かれているパーティがある。であれば個室や個人の時間は確実に確保できるのだ。

 用件は確か…そう、アストラと竜が出会うきっかけにもなったホロウの解放を祝したもの。他にどんな人が招待されているかはまだ知らないけれど、1人足すくらいなら問題ないはずだ。

 そこにイヴリンや主催に頼み込んで、ゴア・マガラを招く。一度出会えて縁ができたのだから、今日に話したい事を全部話す必要はないのだ。

 時間をかけてじっくりと、ぽっかりあいた10年を埋めていけばいい。

 自分の本当の気持ちを曲げていることを除けば、とても合理的な判断だったはずなのだ。

 

 だがしかし、生憎とアストラの正面にいるのは話が通じるものではなく、まして合理などに従うものでもなかったのだ。

 

「嫌だ」

「…えっ、いや、でも、あの、ほんとに人に見つかったら困る事になっちゃって、二度と会えないかもしれないの、私そんなの──」

 [「私は今、歌が聞きたい」]

「えっ、えっ、えぇっ……//」

 

 その声色で言われると、アストラは拒めなかった。

 むしろ言い知れぬ多幸感にまで包まれて、言うなれば使命感まで湧き上がってきてしまう。

 腰に回された腕もより強くなって、抜け出す事もできなくなってしまった。

 

 アストラ自身、歌えるなら歌いたい。

 話せるなら次の朝までだって話したい。

 それでも周りがそれを許してくれないのだ。嫌でもなんでも、アストラが帝光の歌姫であるがために。窮屈な鳥籠に収まることを望まれているがために。

 鳥は、空を羽ばたくものなのに。

 

「なら空へいこう」

「…………えっ?」

 

 心の中を言い当てられたようだった。

 狭い路地から見上げられる空は限りがあって、まさに鳥籠から見る外の世界とよく似ている。

 でもそんな小さくて近い空にも、アストラは飛んでいく翼を持っていない。

 

 未だ足りぬ自分の弱さに下を向くアストラの目に、しかし大きな暗幕が映った。

 それに気づいて、アストラは顔を上げた。

 そこには自信に満ちた(答え)があったのだ。

 

 

 ……あぁどうして見えていなかったのだろう。

 目の前に、こんなにも立派な翼があるのに。

 

「つれていって、ゴア・マガラ!」

 [「今度は一緒に歌おう、アストラ」]

 

 2人……いや、不思議なことに3()()の歌声が重なって、ララ音が満ちていく。

 歌詞も演奏もない、けれど何より特別な歌。

 それはあの日一緒に歌えなかった心残り。

 それはあの日耳にした小さな歌声の続き。

 

 それがアストラの携帯していたマイク型エーテル調律機『ヘミオラ』をひとりでに起動させ、空へと上がる少女達の後を追う。

 ゴア・マガラは翼をはばたかせ、高く高く、邪魔の入らない特等席へと上がっていく。

 そこから漏れ出る鱗粉を『ヘミオラ』から放たれるエーテル周波が受け止め、打ち消し、空に少女達だけのステージが形成される。

 

 

 それから3人は気が済むまで歌い続けた。

 風が吹いてもお構いなし。

 雨が降ったらむしろ空で踊って。

 何にも縛られず、何をも縛らず。

 誰の計画にもない舞台の外で、自分たちだけの壁も天井もないステージで、ずっとずっと自由に歌い続けた。

 

 ずっとずぅっと、日が落ちるまで。

 歌声が1つ、消えてしまうその時まで。

 

 

 





少年「('、3_ヽ)_スヤァ」
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