坂東武者のヒーローアカデミア   作:ヴィルヘルム星の大魔王

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小噺
全国行脚と初恋キラー(中学1年生編:前編)


 

 終業式を終え、中学生として初めての夏休みに突入した武瑠は、一佳と共に帰路に就く。

 

 「明日から夏休みだなー」

 

 「夏祭り!海!花火!幕営!花火大会!」

 

 長期間の休みに武瑠は、気分が盛り上がっていた。

 一佳は、小学生みたいなテンションの幼馴染に苦笑する。

 

 「はしゃぎ過ぎ。少しは落ち着きな」

 

 「退屈で億劫になる授業から解放され、宿題を早めに終わらせば、そこに楽園が待っている!」

 

 「大げさだな。まぁ、気持ちは分からなくもないけどさ」

 

 くるりと回転していた武瑠は、立ち止まる。

 そして、意味深な言葉を呟いた。

 

 「いや、楽園はここにあった」

 

 「何を言って⋯は?」

 

 

 一佳が疑問を浮かべた瞬間、武瑠の右腕が一佳のスカートをめくり上げた。人が居ない時間帯を見計らい行っている為、確信犯である。犯人である馬鹿は、勝ち誇った顔を浮かべていた。

 

 一佳は、捲られたスカートを即座に押さえる。

 幸いにも周囲に人はいなかったが、小学生と同レベルのイタズラを行う幼馴染と反応出来なかった自分に怒りが湧き上がる。

 

 

 「ふむ、薄緑色か。淡い色味が中々」

 

 「武瑠〜少し屈んでくれないか?ニゲルナヨ?逃げたら殴る」

  

 「あ、はい」

 

 背後に般若の幻影を見せる一佳は、目の前にいる現行犯に制裁を下すべく、屈むよう促した。武瑠が屈むと一佳の膝が武瑠の腹部を的確に捉え、重い一撃を与えた。

 

 「ふんっ!」

 

 一佳の膝蹴りを受けた武瑠は、呻き声を挙げ、地面に跪いた。逃げない様に武瑠の背中を靴を脱いだ足で踏み付け、拘束する。靴を履いた状態で踏み付けない所に彼女の真面目さが表れる。ちなみに、靴下はニーソックスである。

 

 

 「だから、セクハラすな!」

 

 「ず、ずびばせんでした」

 

 武瑠は、一佳の顔を見て謝ろうとする謝罪の気持ちと顔を見上げたら、スカートの中が見えるだろうという下心が混ざり、面を上げようとする。

 

 「見たら2発踵落としするからな」

 

 「⋯アイアイサー」

 

 これが、後に植蘭中学が誇る頭の良い馬鹿と優等生の何気ない日常である。

 

 

 

 

 

 家に着いた武瑠は、一佳と別れ、家の中に入る。

 

 

 夕食時、父の義武から夏休みの予定を聞かれ、夏祭りの日以外は何もないことを伝えると全国行脚の修行を宣言された。

 

 「せっかくの夏休みが全国修行第一弾かよ。中学生の夏休みは貴重だぞ。でも、日本各地を旅すると思えばいいのか?」

  

 ぶつくさと文句を言いながらも、東坂流空間術で生み出した亜空間に荷物を入れる。

 

 

 

 夏休み五日目の朝、東坂家の門前には、母親の千鶴と一佳が見送りに来ていた。

 

 

 キャンピングカーで全国行脚に行くことになった。

 武瑠は、雑誌でしか見たことがないキャンピングカーを見てワクワクしていた。

 

 「寝泊まり専用の鉄車とかすげ~!」

 

 「安価で売ってくれる中古車屋と馴染みでな、最近入荷された車を買ったんだぞ」

 

 千鶴は、武瑠と義武の道中安全を願い、火打石で切り火を行う。武瑠は、その様子を見て、前世の戦を思い出す。

 

 (戦前も光達が切り火してくれたっけな)

 

 前世に思い馳せていると母親が話しかけてきた。

  

 「武瑠、道中気を付けるのよ。お父さんの言うことをちゃんと聞きなさいね」

 

 「そんな子供じゃないって、一佳の前でやめてくれよ。恥ずかしい」

 

 「お土産楽しみにしてるからな〜」

 

 「おう、一佳の部屋の半分がお土産で埋まるくらい買ってきてやるよ」

  

 「いや、そんなにいらないから」

 

 武瑠は、半分冗談で言ったが、一佳にガチでやらかすと思われたようだ。

 

 車に乗り、高速道路で茨城へと向かう。車内に流れている曲は、超常黎明期より前の時代に流行ったアニソン『プランA』と『鎌倉STYLE』である。初めて聴く曲だが、武瑠は何故か懐かしさを感じた。

 

 (逃若党の皆で蹴鞠をしたい気分だ。もう会えないかもしれないが)

 

 

 「先ずは、茨城にある結城さんのお宅に行くぞ」

 

 「結城か〜。ゆ、結城!?」

 

 義武から“結城”という単語を聞いた武瑠は、前世で関わった彼らを思い出し、これからの旅に不安を感じた。

 

 

 

 

 茨城県結城市にある結城宅に着いた武瑠達。周囲には、家が少なく、田畑に囲まれた和風家屋である。

 武瑠達を出迎えたのは、無害な顔をした初老の男性だ。

 

 「本日からお世話になります。東坂義武と倅の武瑠です」

 

 義武が会釈するのを見て、慌てて会釈する武瑠。

 初老の男性は、朗らかに挨拶をするが、武瑠は内心ドン引きしていた。なぜなら、彼の手には熊の首があるからだ。

 

 

 「こんにちは!私は結城広宗です。好きなことは殺すこと!一切合切ぶち殺します!」

 

 熊の首片手に意気揚揚と恐ろしい自己紹介をする広宗。武瑠が手元を見ていることに気付いた広宗は、敷いてあるブルーシートの上に熊の首を置き、説明を始めた。

 

 

 「驚かせてしまいましたか。我が結城家は、屠殺場と肉屋の経営。副業で猟師をやっております。先程まで、市街地に出た暴れ熊を駆除して参りました。」

 

 「はぁ、成る程」

 

 「今では、このような仕事もヒーローが行うのですが、軟弱な人達なのか対処しませんでした。ですので仕方無く私が駆除した⋯という訳なのです」

 

 「あ、偶に強盗や指名手配の敵の他に家畜を狙う変質者が我が家に来ますが全て返り討ちにしています。まだ警察にはバレてませんがね。宜しければ見ますか?敵の死体」

 

 「いえ、結構です!」

 

 「そうですか⋯それは残念です」

 

 武瑠の返事に少し悲しんだ広宗は、近くにある納屋から【七度凌遅】を取り出す。武瑠は、その武器が使用された場面を知っている為、苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

 「これは、我が御先祖の結城宗広公が愛用していた武器【七度凌遅】。解体はお手の物です。では、一度ご覧ください」

 

 広宗は、吊るしてある熊の胴体に七度凌遅を斬り込む。熊の肉体の切り口から血が噴き出す。熊の血を浴びた広宗に点のような瞳が生じた。今まで、白目を剥いていたことが判る。

 

 

 「やはり血は良いですな!美しい朱殷色!鼻腔の奥を擽らせる鉄の香り!肉を切り裂く時の爽快感!臓物がぶち撒かれる時の迫力!まさに血肉湧き踊る⋯とでも言いましょうか!嗚呼、いつか死体の山に埋まりたい!」

 

 高揚する広宗は、七支刀【七度凌遅】で駆除した熊と行方不明手配犯の敵の死体を解体する。血を浴びる毎に七支刀を振るう速度が増す。スプラッター映画よりスプラッターな光景に思わず吐き気を抑える。

 

 「血液感染すると危ないから、下がっていなさい」

 

 「親父。あの人⋯本当に大丈夫なのか?」

 

 「安心しろ。広宗殿は癖以外は温厚な方だ」

 

 「その癖が安心できないんだよ!」

 

 小学生の頃に、家庭科の授業で見た屠殺の映像と比べて凄惨な屠殺現場を見た影響で、その日の夜に饗された焼肉を余り食べれなかった武瑠であった。

 

 二日目、結城家の道場で試合を行う。相手は七支刀型の木刀であり、武瑠は普通の木刀だ。広宗目掛けて斬り掛かるが、枝刃で絡め取られ、呆気なく敗北を味わう。試合後は、牛肉の血抜きや切り分け方を教わった武瑠であった。

 

 

 三日目の朝、東北を目指す旨を伝え、結城宅を後にする。

 

 三日間、結城家にお世話になった武瑠達は、北関東を越え、東北を目指す。仙台で伊達家と交流し、仙台牛の牛タンとずんだ餅を食べた。翌日、秋田の三剣一当流を営む道場へ赴き、交流試合を果たす。五撃内に師範代を倒し、師範との剣術勝負では引き分けとなった。

 

 剣術交流を終え、秋田に在住している父の友人の元へ行く。車に揺られながら、秋田の田園風景を眺める。風に揺られる青田には、緑豊かな夏を感じる。

 

 

 (顕家卿ならば、歌を詠んでいただろう)

 

 派手好きな公家を脳の片隅に思い浮かべながら、頬杖をついた。

 

 田舎道を抜け、二人が着いたのは、一般的な住宅地。義武は、扉近くのインターホンを鳴らす。

 一分後、扉から出迎えたのは、眼鏡を掛けた男性だ。

 

 「ようこそ、どうぞ中にお入りください」

 

 「お客さん?こんにちは!波動ねじれといいます!」

  

 「あ、東坂武瑠です。⋯近い」

 

 武瑠は、ねじれの距離感にタジタジになる。

 

 「ははは!元気の良い娘さんだ!」

 

 「あはは、元気があり過ぎて困り物ですがね」

 

 天真爛漫な性格のねじれを褒める義武と苦笑いする波動父。波動母は、武瑠とねじれを見て、2人で過ごすように提案する。

 

 「良かったら、何処かお出かけしたら?」

 

 波動母は、ねじれの方に向く。

 

 「ねじれ、ずっと受験勉強で頑張っているから、偶にはパーっと息抜きも必要よ」

 

 「はーい!武瑠君、公園でお話しない?」

 

 

 武瑠は、ねじれの案内で近くの公園へ散歩に行った。秋田の夏は暑く、雪の個性を持つサラリーマンが少し溶けていた。

 

 木陰下のベンチに座り、ねじれからのマシンガントークに耳を傾けていた。個性のことを聞かれ、無個性であることを答えると、彼女はデリカシーが無かったと謝った。武瑠は、ねじれの反応に驚いた。無個性と答えれば、周囲は、必ず憐れみや嘲笑うなどの反応を見せるからだ。

 

 ねじれは、彼の事が気になった。初対面であるが、一目見た時から武瑠の魅力にどこか惹かれている。

 武瑠もねじれの濁りのない純粋な心に安らぎを感じていた。幼馴染である一佳は、無個性である武瑠に気兼ねなく接してくれる。彼にとって、唯一の心の拠り所であった。

 

 (一佳以外にも個性の有無関係なく、人として接してくれる人がいるんだな)

 

 無個性に生まれた者の中には、輝かしい人生を諦め、ひっそりと生きる者と個性社会の圧や無個性差別から自ら命を絶つ者に分かれているのが現状だ。個性社会による差別問題の事例は後を絶たない。

 

 人種差別から個性差別に変化しただけで、根本的な問題は解決しない。愚昧な輩が誹謗中傷を行うのは世の常である。

 

 

 

 「自分で言うのもあれなんですが、無個性の中では、割と強い方だと自負しているんです。武士には、強い者としての相応の義務と責任がある⋯と親から教わったので」

 

 武瑠は、ねじれの顔を見て、はっきりと言う。

 

 「俺、無個性というだけで、イジメられっぱなしなので⋯幼馴染以外とは話したことがありませんでしたが、ねじれさんと話していると楽しいです」

 

 イジメられっぱなしなのは嘘である。東坂武瑠は、無個性ゆえに嫌がらせをうけるが、持ち前の身体能力と閻魔手帳で弱みを握り、話し合いをすることで牽制している。

 

 

 一方、強固性である『波動』を持つねじれは、天真爛漫で好奇心旺盛な性格が災いし、何時しか嫉妬したクラスメイトから謂れの無い言葉や言いがかりを受け、クラスで煙たがられていた。

 

 ねじれの話を聞いた武瑠は、自身も似たような境遇だからか、ねじれに共感している。 

 

 人間は、パーソナルスペースを侵されることに強い嫌悪感を抱く習性を持ち、弱者を自分の意に沿わない存在として猿と揶揄することもある。しかし、誹謗中傷を行う人間など侮蔑表現として扱われる猿以下でしかない。

 

 

 (不思議⋯皆嫌がるのに彼は嫌がらない。)

 

 ねじれは、心が温かくなるような感覚に包まれた。

 

 公園から戻った武瑠は、客間でのんびりしていた。

 すると、浴衣を着たねじれが現れた。

 

 「武瑠君。どう?似合う?」

 

 武瑠は、浴衣姿のねじれを褒める。

 

 「かわいいですね。似合ってます。」

  

 「ふふっありがとう」

 

 ねじれは、褒められたことで気分が良くなる。

 波動母は、二人に向かって、近くで夏祭りが行われることを伝えた。

 

 「竿燈祭りに行っておいで。南部伯父さんも来るわよ」

 

 

 「南部伯父さんが来るの!?」

 

 武瑠は、南部という言葉に疑問符を浮かべるが、庭から聞こえる車の音を聞いた途端、ねじれが玄関へと駆け出す。

 

 

 「南部伯父さん!言乃さん!」

 

 「おふっ!?」

 

 玄関先に駆け出したねじれは、クチャクチャと草を噛んでいる男に抱きつく。南部と呼ばれた男は、ねじれの突撃を受け止め、笑い飛ばす。南部の隣にいた綺麗な女性は、武瑠に気付き、挨拶を交わす。

 

 「はじめまして、彼の通訳を務めています。秘書の言乃と申します」

 

 「あ、ご丁寧にどうも。東坂武瑠です」

 

 「(ねじれ!男を捕まえるとはやるじゃねえか!あの小さかったねじれがな!)」

 

 「東北訛りで揶揄わないでよ!恥ずかしい!」

 

 (俺には全く聞き取れない)

 

 武瑠は、東北訛りに困惑していた。すると、南部は武瑠の方にズカズカと歩み、目の前に止まった。

 

 「(俺は南部諸行だ。お前さんが東坂の倅か。ま、よろしくな)」

 

 「南部諸行です。よろしく⋯とのこと」

 

 「よ、よろしくお願いします。南部殿」

 

 ぐだぐだな雰囲気の中、四人で竿燈祭りへと向かった。南部諸行は、車の中でも草を噛みながら、運転していた。どうやら、昔からの癖らしい。

 

 (前世に縁のある人達の子孫は、当事者達と余り変わらないな。結城家のみならず、南部家もまた然り)

 

 竿燈祭りに着いた一行は、竹竿と提灯の迫力に舌を巻く。

 南部諸行と言乃さんと別れたねじれ達は、かき氷わ、焼きそば、射的に輪投げなど縁日屋台を満喫していた。

 

 武瑠がイカ焼きを買いに並んでいる時、ねじれの側にジャラジャラしたネックレスを付けたチャラい男二人組が近付いてきた。

 

 「君、かわいいじゃん。俺らと遊ぼうや」

 

 「そこのお嬢ちゃん。俺らと一緒に回らない?」

 

 

 「ナンパ?ごめんね。お友達と来ているから無理です」 

  

 下心見え見えなナンパを断るねじれ。しかし、ナンパ二人組は、諦めなかった。逃げようにも執拗にナンパする二人組に流石のねじれも困り果てる。断るにも諦めの悪いナンパ二人組。そこに、ねじれを探していた武瑠と合流する。

 

 「ねじれさん、こんな所にいましたか。良かった見つかって」

 

 「あ!武瑠君!」 

 

 「何じゃお前は?おい、小僧。その姉ちゃん置いてとっとと去れや」

 

 「お前みたいなガキより、俺らのほうがこの娘を喜ばせることが出来るぜ。ガキは帰ってママのミルクでも飲んでな」

 

 「黙れ三下。嫌がる女子を無理やり引き留め、しつこく追いかける。その性根、誠に気に食わん。去るのは、そちらの方だ。このままでは、祭りを楽しむ者達の邪魔になる。それでも止めないのならば⋯手加減はせぬぞ?」

 

 武瑠は、少しの殺気を二人に向けて放つ。ナンパ二人組は、武瑠の殺気が体現した鎧武者に首を斬られる幻覚を見て、膝を震わせ、退散した。

 

 「ッ!引くぞ!次だ次!」

 

 「お、おう」

 

 

 その後、懲りずにナンパを続けた二人組は、南部諸行の通訳である言乃をナンパし、近くに居た諸行に方言で罵られながらコテンパンに吹き飛ばされ、警察の厄介となった。

 

 「(くたばれクソ野郎!)」

 

 「おくたばり下さい。ガッデム」

 

 

 人混みから抜け出した武瑠達は、芝生に座り、ラムネを飲んだ。

 

 「武瑠君。さっきは助けてくれてありがとう」

 

 ねじれは、助けてくれた御礼に抱き着く。ねじれの身体は、発育が良く、胸部はたわわに実っていた。

 自分の身体の良さを知らない無邪気さも相まって、武瑠は狼狽した。ねじれは、そんな武瑠の後頭部を押さえ込む。顔面に伝わるねじれの甘い香りと柔らかさに、武瑠は力が抜けそうになる。

 

 「ちょ、苦し」

 

 「あれれ〜?顔が赤いよ〜?なんでなんで〜?不思議〜」

 

 ねじれは、武瑠の顔が赤くなっている理由を知らず、武瑠に聞こうとするもはぐらかされる為、四方八方から質問攻めをしていた。

 

 

 

 

 「なんか、武瑠が女の人といる気がする」

 

 「一佳、お風呂出たら知らせてね〜」

 

 

 同時刻、浴槽に体操座りで入浴していた一佳は、全国を巡っている幼馴染に女の気配を感じ、一人でモヤモヤしていた。

 

 




プチ版 キャラ紹介 ※武瑠の雄英高校入学時
①東坂義武 東坂家現当主 年齢39歳
 個性『再現』
 雄英高校サポート科OB

②東坂千鶴 義武の妻   年齢38歳
 個性『折紙』 
 プロヒーロー センカク
 旧姓:紙原千鶴
 

敵連合襲撃における最初の武器

  • 日本刀
  • 薙刀
  • 双節棍
  • 人間バット
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