坂東武者のヒーローアカデミア   作:ヴィルヘルム星の大魔王

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短編2本立てです。


幕間①

 

 【武瑠と一佳の休日】

 

 季節は夏。千葉の最高気温が37℃を記録した。

 中学二年生の夏休みの初め、夏休みの宿題に取り掛かる一佳と武瑠の二人は、武瑠の部屋でひたすら五教科のドリルを攻略していた。

 英語と理科が苦手な武瑠は、一佳から教わり、古文や歴史は、代わりに武瑠が教えている。

 

 勉強もある程度進み、小休憩に入る。

 

 

 「暑い〜」

 

 「一佳よ。暑いとはいえ、その格好は、些かだらしないのでは?」

 

 一佳は白いTシャツにショートパンツ姿で、扇風機の風を浴びていた。 対照的に、武瑠は甚平姿である。

 

 武瑠は、一佳の薄く透けた服に視線を向けつつ、壁にもたれて『鉄槌伝』を読んでいた。

 『鉄槌伝』とは、平安時代の官能小説であるが、学校で漢文を余り習ってない一佳には、気付かれずにいる。バレれば、女子が居る場所で破廉恥な書物を読む変人と思われ、いつもの制裁を受ける。

 部屋でダラダラと過ごしていると、襖の外から誰かが声を掛けてきた。

 

 「失礼します」

 

 現れたのは、住み込みのお手伝いさんであるトメさん。彼女は、麦茶入りの水差しと西瓜を乗せたお盆を持ち、部屋に入ってきた。

 

 「若様、一佳ちゃん。西瓜を準備致しましたので、どうぞお召し上がり下さい」

 

 トメさんは、机の上に西瓜を置く。

 武瑠と一佳は、机の前に座り、手を合わせる。

 

 「いただきます」

 

 「いただきまする」

 

 「お塩は、そこに置いてありますからね。では、ごゆっくり」

 

 トメさんは、ニコニコと微笑みながら、襖を閉めた。武瑠と一佳は、西瓜を食し、種を取り除きながら、

 

 「一佳、我が家の別荘がある山の沢へ水浴びに行かないか?」

 

 「沢で水浴び?いつ行くんだ?」

 

 「明日の朝を予定している。心配は要らぬ。護衛⋯連れがいるからな」

 

 「そっか。じゃあ、行こうかな」

 

 「先ずは、出発の時間を決めねばな」

 

 「9時30分ならどう?それなら、お互いに余裕があるだろ」

 

 「良いな。そうするか!」

 

 早速、護衛に適した人物をチャットアプリで呼び寄せる。

 

 武瑠は、自分専用の書院造の応接間にて、上座の茣蓙に胡座で座る。

 下座の板張りには、二人の男が正座で座っていた。

 

 「猛暑の中、招集に応じて頂き、感謝する。楽な姿勢で座ってくれ」

 

 『ははっ!』

 

 男達は、正座から胡座に組み替え、武瑠の話を聞く為に耳に力を入れる。

 

 「鹿場、鎌井。一佳と法螺山(ほらやま)にある避暑地へ涼みに行きたくてな。それ故、二人には、保護責任者として護衛を頼みたい。法螺山へ行くのは、明日の九時半を予定している」

 

 武瑠は、東坂家の使用人として仕えている鹿場伊佐々と鎌井大地に指示を下す。彼等は、東坂家の臣下として代々仕える家柄であり、現在は、東坂家の専属警備員として働いている。ちなみに、手取りは26万円である。鹿場と鎌井は、武瑠の指示に快く応じる。

 

 「若殿の頼みならば、いつでも引き受けます」

 

 「車の手配は、お任せ下され」

 

 「ありがとう。勘定会計役に夏季手当ての申請書は、出しておくように」

 

 『承知致しました!では、失礼いたします!』

 

 二人が応接間から退出する。一人になった武瑠は、ある人物を呼び出した。

 

 「小夏」

 

 「はい、お呼びしましたか?若様」

 

 応接間の天井から現れたのは、時代錯誤の忍装束に身を包む少女小夏。飛騨忍びの出である彼女は、武瑠に仕えている忍びの一人だ。

 

 「明日に一佳と沢に行くのだが、男所帯に女一人では息も詰まるだろう。小夏には、一佳と同伴してもらいたい。無論、休日手当は出す。」

 

 「わ、私もお供してよろしいのですか!?」

 

 小夏は、吃驚する。忍びとして、主の命は絶対である。今の時代、忍びの仕事は情報収集が主だ。

 はわぁと驚いている小夏を見て、小さく笑う。

 

 「その為に呼んだのだ。では、支度をしておけ。出発は、九時半だ」

 

 小夏は、出発時刻を聞くと、音も立てずにその場から姿を消した。その後、二人から話を聞いた近習の忠井正勝が現れ、護衛に加わりたいと懇願してくる。武瑠が快く受け入れたことで、正勝も面子に加わった。

 

 

 翌朝、武瑠達は、鹿場が運転するミニバンに乗り込み、東坂家が所有する法螺山へと移動する。整備された山道を抜け、法螺山にある別荘に着き、トランクに積んだ荷物を大広間に移す。

 

 

 「鎌井、鹿場。炭酸飲料と軽いつまみの差し入れだ。少しの間だが、英気を養ってくれ」

 

 「若殿が自ら!?では、お言葉に甘えて」

 

 「有り難く頂戴いたします!」

 

 鹿場達は、別荘管理の者達と連携し、お昼の手配に取り掛かる。武瑠は、正勝と共に男子更衣室へ入る。

 

 「正勝。早速、水着を着るぞ」

 

 「若の御身、この正勝がお守り致す」

 

 「ははっ、ただの水遊びだ。滑らないように気をつければ良い」

 

 

 一方、女性用更衣室では、一佳と小夏が水着に着替えていた。一佳は、上着の裾に手を掛け、勢い良く脱ぐ。中学生にしては、発育の良い胸が揺れる。

  

 「小夏さん⋯だっけ?私だけじゃ心細かったから、一緒にいてくれてありがとう」

 

 「いえ!私は、若様のご命令で⋯」

 

 小夏の身体は、一佳と比べるとスレンダーな印象だ。本人は、自身の一部と一佳の一部を見比べて、落ち込んだ。

 

 武瑠の案内で沢に着いた一行は、鏡水沢の浅瀬の風景を見て感嘆する。透き通るほどの清水に緑豊かな苔草。

 

 「武瑠。どうよ、私達の水着は」

 

 武瑠は、二人の水着を見て、目を見開く。

 一佳の水着は、橙色の三角ビキニとパレオを巻いていた。小夏の水着は、紺色のハイウエストタイプの水着だった。二人の美少女の水着姿を見た武瑠は、親指を立て、御満悦な表情を浮かべた。

 

 「二人とも、可愛い。最高!」

  

 「可愛っ!?うるさいバカ!」

 

 一佳は、慣れない褒め言葉に恥ずかしくなり、大拳を発動させ、武瑠に水を掛けた。

 

 小波が武瑠に襲い掛かり、かなりの水量を頭から被る。武瑠は、負けじと仕返しをする。近くで観戦していた小夏にも掛かり、そこからは、三人の水掛け合い合戦が始まった。

 

 遊泳用の赤褌を締めた正勝は、青春を側で見守っていた。

 

 昼食の時間では、鹿場と鎌井が釣り上げた山女魚と鮎の塩焼き、野菜と肉のバーベキュー、お握りなど豪華に振る舞われていた。

 

 「沢山食って強くなるぞ!正勝!」

 

 「はい!若様!」

 

 健啖家な武瑠に負けじと、正勝もかなりの量を食べた。腹が膨れて降参した正勝。正勝と同じ量を食べたにも関わらず、武瑠のお腹は微動だにしない。その異常な胃袋に、小夏は密かに戦慄した。

 

 

 昼食のバーベキューを楽しんだ後は、スイカ割りをして、ひと時を過ごす。

 

 「右!右だよ」

 

 「いや、左でございまする!」

 

 「あと少しでございますぞ!」

 

 目隠しをした武瑠は、西瓜がありそうな場所に狙いを定め、棒を振り翳した。

 

 ーーカツンッ!

 

 棒は、西瓜を外し、無情にも地面に当たった。武瑠が外したことで、皆は交代の準備を始めた。その刹那、地面が約三メートルにわたって、真っ二つに裂けた。

 

 武瑠は、目隠しを外すと頬を掻いて苦笑いをした。

 

 「やべっ。やらかした」

 

 気を取り直して、行われたスイカ割りは、一佳の番となる。一佳は、見事スイカを割り、皆で仲良く食べた。

 

 夜の十八時、太陽が沈みかけ、空が薄暗くなる。

 帰路に着く武瑠一行は、運転主の鎌井と助手席にいる鹿場以外は、遊び疲れから寝ていた。

 

 こうして、武瑠たちの夏休みにまた一つ、鮮やかな思い出が刻まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【変身少女と縁結び武士】

 

 武瑠の体は、返り血に塗れていた。

 

 「ハァハァ、手こずらせやがって」

 

 現在、彼は、埼玉県某市にある予備敵団体【血染めの腓蛇】のアジト制圧に赴いていた。この制圧は、奴らによって被害を受けた被害者の遺族達からの依頼である。その中で、【血染めの腓蛇】のメンバーにいる政治家の息子が権威を傘に悪事を働いていた事を確認し、半殺しにした上で捕縛している。

 

 (今頃、親父達が地元警察と手を組んで、逮捕に乗り移っているだろう。まぁ、今はそんな事いいや)

 

 

 彼の周りには、鼻血を流しながら立っている者、攻撃を受け、地に伏す者など、辺りは死屍累々としていた。

 

 「この野郎!ぐべっ!?」

 

 男の顔に武瑠の拳が深々と突き刺さり、悪化した鼻血に涙目で倒れる男。武瑠は、血で汚れた拳を男の服で拭う。

 

 任務を終え、警察に通報して帰ろうとした瞬間、バタンと何かが倒れる音が聞こえた。

 

 刀を抜刀した武瑠は、残党の場合を想定し、物音が聞こえる場所に警戒しながら近付く。

 

 「ヒッ!」

 

 音の正体は、二つのお団子ヘアーをした少女だった。少女は、口に手を当て、興奮と涙で頬を赤らめていた。

 

 「⋯⋯何をしている。此処は女子が来る場ではないぞ」

 

 「こ、殺さないでください⋯」

 

 怯える少女を見た武瑠は、溜息をつき、刀を鞘に納刀する。

 

 「殺しはしない。俺の名は、武瑠だ。それで、其方の名は?」

 

 「わ、私は、渡我⋯渡我被身子」

 

 渡我被身子ことトガヒミコは、武瑠に震えながらも自己紹介をする。武器を持った相手に名乗るあたり、意外と胆力がある。

  

 「そうか、渡我と申すか。では、渡我殿に問おう。何故、お主はこの場にいる」

 

 「血ィ、血の匂いに釣られて」

 

 武瑠は、トガの言葉を聞き、思考力を働かせる。

 常人ならば、この場所に来た時点で失禁するか、逃げ出しているだろう。しかし、彼女は、この場には不似合いな恍惚とした表情で制圧現場を眺めている。

 

 「血の匂い?もしや、個性関連か?」

 

 武瑠の回答にトガは、コクリと小さく頷く。そして、自身の個性とここに来た理由を話し始めた。

 

 「私の個性は、『変身』。対象の血を摂取することで、対象者に変身する事ができます。

 幼い頃から吸血衝動に駆られ、雀や生魚の血などを摂取していました。その行動に異常を感じた両親には、厳しく矯正されて、今まで大人しく過ごしてきましたが、個性の副影響か。段々と吸血衝動が抑えられなくなり、苦痛の日々でした」

 

 トガは、一度、深呼吸を行い、会話を続けた。

 

 「我慢の限界を迎え、最終学年の年に誰かを襲おうと考えた矢先、嗅覚が血の匂いを捉え、匂いが発生する場を探し求めたら⋯」

 

 「此処に辿り着いたって訳か?」

 

 彼女は、武瑠の言葉に頷く。武瑠は、トガから身体ごと逸らし、頭を抱える。

 

 (完っ全に俺の失態じゃねえか!くそ!誰かを見張りとして連れていけば良かった!)

 

 武瑠は、トガヒミコを落ち着かせるべく、慰める。

 

 

 「なぁに、心配するな!俺の知っている限り、人殺しが好きで一日に十人は殺す奴(結城宗広)や|愛馬を亡くしたショックで生きた馬を生で食す奴《今川範満》もいた。其奴らに比べれば、君はマシだ!」

 

 「私が言うのもアレですが、ヤバい人達ですね」

 

 「君はまだ罪を犯していない。それに、人を襲って敵になるより、輸血パックを使えば良い。確か、赫赫十字が三日前から血液系個性向けの輸血パック支援を始めたんだ」

 

 「し、知らなかったです」

 

 トガは、政府による血液系個性の支援制度に吃驚する。

 

 「まぁ、ニュースであまり話題にならなかったのもある。その情報も公式サイトや厚生労働省サイトにしか出回ってないからな。たまにプロヒーローのブラドキングも使用しているらしいよ。まぁ、献血による物だから値段はそれ相応だけど。対象者なら国が八割負担してくれる」

 

 

 「だから、吸血衝動を抑える為に申請しよう。心配は要らねえさ。ここで会ったのも何かの縁だ。俺も協力する」

 

 ニカッと笑う武瑠を見て、トガは震え出した。 

 お人好し過ぎるからだ。この個性を聞いた人達は、皆、離れていく。彼女は、常に孤独だった。

 

 「何故ですか?会って間もない赤の他人に対して、どうして⋯どうして、そんなに優しくできるのですか!私に対する同情心ですか!?」

 

 「はっ!憐れみによる手助けと思われたのか!それは心外だな!困っている民に手を差し伸べるのが武士だ!武士とは、民を守るべき存在だ!それ以外の理由なんざ他にねえ!助けるのに理由がいるか?」

 

 武瑠の言葉を聞いたトガは、自分の世界に光が入るのを感じた。

 

 「ずっと⋯」

 

 トガの目に浮かぶ溜め涙がポロポロと流れ落ちる。

 武瑠は、トガの言葉を静かに聴いた。

 

 「ずっと、私にとって、この社会は生き辛かったです。皆と同じ模範的な行動、社会的ルールに束縛された社会は生き辛かった!誰かに私の事を理解して貰いたかった!苦しかった!お父さんとお母さんに普通の子として、愛してもらいたかった!」

 

 彼女は、自分の胸に溜めていた本心を曝け出し、噦り上げて泣いた。武瑠は、優しくトガを抱き締める。

 まるで、泣いている子供をあやす父親のように。

 

 「大丈夫だ。俺が君の理解者になる。そして、君のことを守る。我慢出来なかったら、俺の血を吸えば良いさ。蚊に吸われるより、君みたいな美少女に吸われたほうが嬉しい」

 

 武瑠は、続けざまに言葉を放つ。

 

 「俺達はまだ子供だ。でもな、頼りになる大人を俺はちゃんと知ってる。だから、我慢なんかしなくていいんだ」

 

 「うん⋯うん」

 

 トガヒミコは、自分を理解し、恋を教えてくれたその人の温もりを感じる為に、強く抱き締めた。

 

 第三者から見れば、荒唐無稽に思われる出会いが一つの縁を結んだ。

 

 「東坂君〜」

 

 後日、武瑠の背中から抱きつくトガヒミコ。

 彼女の両親と東坂家で話し合いが進み、現在、東坂家に居候の身として生活している。

 個性関連のカウンセリングを受けている彼女は、輸血パック支援の効果もあってか、過剰な吸血衝動が鳴りを潜めている。

 

 「今日は吸血日か。分かった。吸え」

 

 「はい!では、吸わせていただきます!ちゅうちゅう」 

 

 しかし、新たな吸血衝動として、武瑠に対する愛の吸血が発作した。どうやら、吸血の際、牙の先端には鎮痛成分と止血 効果のある成分が含まれているらしい。また、吸血量は、採血一本分の為、武瑠の体に悪影響はない。

 

 

 一佳は、当初、トガヒミコの行動に戸惑ったが、武瑠が事の詳細を話し、一佳自身の姉御肌な性格も相まって、二人で話をするにつれて、お互い仲良くなり、気付けば、一佳と話すことが多くなるヒミコであった。

 

 

 




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登場してほしい武器、ヒーローネームを募集します。

⋯ハーメルンの規約に引っ掛かりませんよね?

敵連合襲撃における最初の武器

  • 日本刀
  • 薙刀
  • 双節棍
  • 人間バット
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