東風谷さんと僕   作:覚め

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おっす
受験前なのになぁ。
早苗さんは僕を満たしてくれるだろうけど、僕は早苗さんを満たせない。そして、幻想郷は早苗さんを満たせる。そんな気持ちで作りました


願う

「…いない、か」

 

東風谷早苗。その名前を探しに、近くの神社へと来た。一時期は大きく賑わった、それこそ大きな神社。初詣にも来ていたような神社だが、今は廃れたかのようだ。つい先日まで廃れていなかったのに。神社の中を歩き回り、失礼ながら住居スペースにも。とは言え園児の時には東風谷さんと楽しく過ごした場所だ。と、思ったが…どうにも、アルバムもない。それどころか私物が一切。誰かに食い捨てられたような感じ。

 

「墓はまだ早いよなぁ…。」

 

鈴を鳴らす場所で手を叩く。賽銭箱もないところで俺は何を捧げれば良いのやら。そんで、何を願うべきなのか。東風谷さんに会って何が話したいか?何もない。また昔みたいに話したいだけだ。別々になった時の中学の話でも良い。高校で再会して、また話すようになって。結果、急に消えた。学校では元からいなかったかのように椅子も机もなく。僕がある日突然、東風谷さんのいない世界に来たようなのだ。

 

「神様祟様現人神様。どうか私を東風谷さんと会わせてください」

 

だから願った。有り得んことには有り得んことで対抗する。存在しない人間と会わせろ、と神に願う。供物は…スーパーで買った野菜で良いか。目を瞑って二礼二拍手一礼。…何分だろうか。後ろから足音が聞こえて目を開ける。すると目の前には立派な神社が建っていた。先ほどとは違う神社。足跡に向かって振り返ると、足音の正体はどこかへと消えたのか、生き物の代わりに太陽が昇っていた。

 

「…ぇ、ここどこ、山!?」

 

「あや…や?」

 

「うわっ…人が空飛んでる…」

 

「貴方…ここの人ですか?」

 

「違うけど…いやぁ、廃れた神社でお願いしたらさ、ここに来ちゃって」

 

「ほほう…外来人でしたか」

 

どうやら僕は渡来人の末裔、外来人らしい。頭にハテナを浮かべながらも、話をほんほん聞いてみる。ここは幻想郷。魑魅魍魎が闊歩する場所で、外から来た人間は食べられる…つまり渡来人の末裔である俺は、それこそ食われると言うことだ。この神社の関係者なら話は別だが、どうにも僕は関係ない。どうやら僕はここで食われるらしい。

 

「…えー…」

 

「わかりましたか?貴方はここで私に食べられるんです」

 

「ちなみにおすすめの食べ方はある?」

 

「やはり怯えきった人間のお腹を裂いて、痛みを感じさせるように内臓から食べていくことですかね。女性は甲高くて嫌になるんですけど、男性は心地が良いんです」

 

不味いな。食の好みどストレートじゃないか。とはいえ、俺もここで死にたくないのは事実。先ほどの話から推測すると、この神社の人は妖怪に対してある程度の…抑止力かな?があるようだ。その人が来るまで耐える。でも多分、日の出と共に行ったなら…日の入りくらいに帰ってくるだろう。つまり俺は結局死ぬってことだ。神様に願ったのは良いとしても、やはり東風谷さんに会わず死ぬと言うのは気分が悪い。

 

「東風谷さんって、わかる?」

 

「コチヤ?…知らないですね。」

 

「その人に会いに来たんだけどな…こりゃ困った。見たところアンタ速そうだし」

 

「ええ、とても自信があります」

 

「…どーしよ。話し相手になってくれなさそう」

 

「しますよ?食事前の楽しみでもありますから」

 

…らしい。クソが。神様に願ってここにいるから、神様にまた願うのは無理だろう。困った時の神頼りは無理そうだ。そして食事である僕を逃す気もなさそうだ。詰んだな、これ。久しいな、諦めたのは…高校受験の問題か。全然最近じゃん。あの時は流石に鉛筆転がしたわ。しかも間違ってたし。どーしてこうなったんだかね。僕にはわからんから、とりあえず話すか。

 

「その方を好きだったと?」

 

「そうかも。中学三年間過ぎて高校入ったら変わりまくりよ。もはや誰か気づかなかったね」

 

「お相手は?」

 

「一目見てすぐ。その時はもう…僕が知ってる以上に僕のこと覚えてるんだなって。びっくりしたもん」

 

「…なるほど。それではそろそろ」

 

目の前の女が立ち上がる。ミニスカ、シャツ、頭の変な奴、翼。聞けばこの人は天狗らしい。鼻も短い下駄も低い。その上で天狗だ。カメラも持ってる。しかしすかさず俺は誰かに抱きつかれた。目の前の天狗はいる。頭を打って思わず目を瞑ってしまったが、それはそれとして覆い被さる圧力から逃げる。抱きついてきた者の正体は東風谷早苗だった。東風谷さんが、なぜ僕に抱きついて来るのか不思議でたまらない。

 

「かー君じゃないですか!幻想入りしたんですか!?」

 

「東風谷さんじゃん。…僕今からこいつに食われるらしいんだよね」

 

「なっ」

 

「は?」

 

「まあまあ怒らず逃げましょうねぇ」

 

「待っててくださいね。私、これでもここの巫女ですから。幻想郷というものの説明もしてあげます!」

 

「あ、や、ちょっと!?」

 

東風谷さんはどうやら人間をやめたらしい。東風谷さんはその巫女服のまま空を舞い、自称天狗を一方的に撃退した。そんな東風谷さんを見て、幻想郷ってこんなところなんだと感じ取った。それ以上に、幼い頃の東風谷さんも思い出した。高校で再会した時はかなり落ち着いていたが、小学校くらいまではあんな感じだった。何かを知ろうとすると、いつでも僕を引っ張っていた東風谷さん。今でもその欲はあるのだろうか?

 

「かー君も来るなら言ってくれたら良かったのに…」

 

「あ、ごめん…」

 

「そうだ!かー君もここで暮らしましょう!」

 

「…え?」




かー君…かー君。本名はかずき。
東風谷早苗…かー君とは昔から一緒。中学で別れるとなった時はかなり駄々を捏ねた。
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