早苗さんは可愛いです。
クッソみたいな夢を見た。朝起きてみたら、いつもよりふかふかのベッド。隣に早苗さん。おそらく寝る前の、僕を担いで図書館を出たはずのフランドールさんはベッドの横で本を読んでいた。起きてたら、スッと水を差し出され、フランドールさんはどこかへといった。水を飲んで、どうにか今の状況を確認する。横にいる早苗さんは巫女装束だ。どうやら一夜の過ちとかそういう話ではないらしい。
「かー君」
「何?」
「大好きですよ。ずーっと」
「…何?僕何かした?」
「最近はずーっと鬼とか吸血鬼とか、果てには寺の住職でしょう?私の好きも伝えとこうかな、と」
そういうことらしい。前提として一つ言っておくことがあるのだが、僕は早苗ちゃんが好きだ。可愛いとか、大きいとかそういうのは放っておいて、ただ好きだということは伝えておく。そんでもって早苗ちゃんは僕が好きだという。相思相愛と言うやつだ。この幻想郷で、今まで通りのことができるか不安だから僕は早苗ちゃんと付き合ったりはしない。あとなんかこっち来てからたまに目が怖い。
「かー君、かー君は私のことどう思ってるんですか?」
「んーとね…恩人」
「えぇ!?あんなに心をひけらかしたんですよ!?好き嫌いくらい言いましょうよ!?」
「やだよ〜」
「もう…」
そんなことを話しているとレミリアさんが部屋に入ってきた。開けた扉を素早く閉め、今度はゆっくりと。とても焦りやら何やらを表した顔をしながら。第一声が何をしているのか尋ねる言葉なことからも、それが伺えた。僕からすれば君の方が何してるの??と言う話だ。早苗ちゃんが得意げに何やら言っていたが、僕は何も聞いていない。知らない。ま、朝帰りにはなるが守矢に帰ろう。
「またいつか、ね」
「次、あんなことがあった場合には祓いますからね。妹さんにも伝えておいてください」
「貴女はもう来なくていいから。かずきだけよ、用事があるのは。貴女のせいで話せやしない」
「門番さーん。おーい」
「…ぐぅ」
「美鈴はなんで寝てるのかしら!!」
門番さんは蹴っ飛ばされた。僕は土塊に乗り、早苗ちゃんは空を飛び、守矢へと…あ、バイクみたいにする魔法あるか聞けばよかったじゃん。おのれ萃香め…。擬似ハンドルを握る手が強くなる。あぶね、崩れるかと思った。最も僕がやりたいような魔法が作れるかどうかは知らないが。魔法ってイメージの世界なんだし、どうにかならんもんかな。守矢に着いて地に足をつけ、二人して神様の顔色を伺う。
「か、神奈子様…」
「諏訪子様〜…」
「その声色、私たちの今の感情がよくわかるみたいだねぇ」
「神奈子、そりゃかわいそうだよ。で、何をして朝帰りだったのかな?私たちに、正直に話してみたら?」
「あうっ」
「そ、その、紅魔館に行っていました…」
「あの吸血鬼のか…早苗はわかる。かずき、お前は?」
「聖白蓮のところで空飛ぶ魔法以外が欲しくなって」
「それであそこか…いや、まあ、わかるが…」
神奈子様が言い淀む。なんだろうか。もしかして、見られてた?見られてたならごめんなさい。僕が寝てから早苗ちゃんが隣で寝るまでの間何が起こったのか教えてもらいたいです。あ、そう言うことではない?わかりました。じゃあなんで言い淀むんですか。早苗ちゃんを見る。早苗ちゃんの目が怖い。なんだ、何か地雷踏んだのか?…あったかな、地雷なんか。
「…まさか」
「ああ、そのまさかだ。早苗、お前何をした?」
「…何もしてませんよ。私の起こせる奇跡は幸か不幸かもわかりませんから。そのことはお二人も知っていますよね?」
「はぁ…」
「神様を欺けると思ってるの?早苗」
「欺くつもりはありません。諏訪子様、神奈子様。お二方が見落とす偶然を拾うつもりです」
「早苗ちゃん、もしかして昨晩僕に何かやったの?」
「なにもしてませんよ?」
「嘘だぞ」
「えっ」
え、嘘なの。神奈子様が言うには、フランドールさんに抱えられとりあえずベッドに放られた僕の横に早苗ちゃんが辿り着き、そのまま…というところまで話した後、神奈子様の口を早苗ちゃんが閉じたため続きを聞けなかった。だがなんとなく察した。起きた時にあった首元の赤い腫れのようなもの。キスマークだ。これが口紅ならまだしも、ガチのキスマークだったから、紅魔館で鏡を見た時は驚いた。
「…そんなに好きならさ。さっさと結婚しちゃえばいいじゃん」
「なっ」
「諏訪子…」
「かー君」
「…何も言わないよ」
「はぁ…この現状です。幻想郷にきてまだ日も浅いですから。」
「言い訳だね」
「言い訳…」
早苗ちゃんから目を逸らす。と、早苗ちゃんに押し倒される。地面に。起き上がれないと思いきや、早苗ちゃんが僕の身体を起こした。そのまま僕は僕の部屋に入れられる。何やら三人で話したいことがあるらしい。僕にはよくわからないが。そんなわけで寝転がりながら昨日を振り返る。そういえばレーヴァテインの魔導書…どこやったんだ?形を変えた後、確か図書館の机の上にポイと…
「図書館の机の上だ…でもレーヴァテインは手元にある…」
手元のレーヴァテインをチラリ。手元といっても、無理やり曲げられたレーヴァテインが手首に巻きついてるだけなのだが。僕としては再び作るのに魔導書が必要な以上、取りに行くまではこれのほうが助かる。
「かー君、おおよその今後が決まりました」
「何するの?」
「一先ずかー君は攻撃魔法を覚えるの禁止だそうです」
「なんで?」
「調子に乗られてどこかに行って汚されるのが嫌ですから。」
早苗ちゃんからすれば助けた一人にすらならないが、かずき君からすれば助けてくれた一人なんよな。
千手観音