お前を助けるのは昨日以外を知らない神のみだ。
「んっ…早苗ちゃん?」
「今日は守矢神社も布教もお休み!一日寝過ごしましょう」
「神奈子様?」
「うぇっ!?」
「肥えるぞ」
「…はい」
こうして二人とも仲良く起きて朝の支度を済ませ、二人して賽銭箱の前に立つ。うん。分かってはいたけど、規則正しい生活というものなのだろう。しかし、今まであんなふうに早苗ちゃんと寝ていたのか…なんだか少し恥ずかしいな。恥ずかしさを紛らわす為に魔法で遊ぶか。土塊を足場に歩く。足が離れた瞬間土塊は消え、次の足場に。スケートレースみたいに出来るんじゃないかな、これ。
「歩行式エスカレーターの上を歩いてる人みたい」
「うえっ」
「…でも今日はなんだか変なのが多い日ですね」
「変なの?」
「神霊です。神の霊。それがなんだかふよふよ漂ってるんです。妙なんですよね」
「異変ってやつ?」
「ですよねぇ…信仰のために出なければ…はぁ…かー君との一日を奪った首謀者さんに会ってきます」
「ばいばーい」
そのまま早苗ちゃんは行った。今回ばかりは、僕も一応神霊が見えるが、船とかじゃないし。船なら心ワクワクだったけどね。じゃあそのうちに、土塊の上でどれくらいスピードを出せるか試すか。徐々にスピードを上げないと恐らく足を踏み外すかもしれないので、最初はゆっくり。段々、段々とスピードを上げる。曲がってみたり、天狗と並走したりもしたいな。
「あや!?」
「わっ!?」
「…あ、あぶない…ですね」
「あと少しでキスでしたね。射命丸さんは何してたんですか?」
「私は取材、まあ新聞のネタ探しです。今日のネタはターボ外来人について、ですね。」
「ぼく?」
「はい、貴方です」
なんだかそういうことらしい。ターボ外来人ってなんだよと思ったが、なんだよ。意味わかんない。立ち止まって話を聞いてみると、なんと射命丸さんは新聞を作っているらしい。広報って奴だな。一旦守矢に帰って話を聞くべきかな?守矢から離れすぎてはいるが帰り道に話を聞けば良いだろうし。尤も相手がそれを良しとするかは知らない。僕ならその場で聞く。面倒が嫌だからね。
「まず!外来人とのことですが、そもそも貴方は外ではどのような人間だったのですか?」
「泣き虫かな。後早苗ちゃんと一緒にいた」
「…なるほど。早苗さんとはどの頃から付き合いがあるのですか?」
「幼稚園だから…四歳くらいの時にはもう。多分初日からだったとは思うけど、早苗ちゃんと遊んだりし始めたのは四歳から」
「なるほどなるほど。では…ズバリ、早苗さんとのご関係は?既に付き合っている?それとも婚約を?」
「友達」
「なんと、勿体無い。それでは…早苗さんのことはどう思っていますか?」
「僕にとっては恩人だよ。多分早苗ちゃんいなかったら死んでたし。」
「あや?好きとかは?」
「…内緒だよ、誰にも言わないでね。新聞にも書かないで」
そう念押しして本心を伝える。すると射命丸さんは急に笑顔になり、良い気分だからとついでで僕を守矢まで送ろうと言ってきた。残念ながら僕は射命丸さんの背中に乗ると早苗ちゃんが怖いのでやめておく。確実にいないだろうって場所なら良いけど、今回の異変がいつ終わるのかもわからないし。お断りさせていただき、土塊を踏みながら帰る。さっきの話で思い出したが、早苗ちゃんのお母さんはやたらと僕にご飯を食べさせた覚えがある。何故だったんだろう?
「…んぅ。ネタとして弱いですね」
「その辺は多分早苗ちゃんの方が知ってるよ。早苗ちゃんに聞けば?」
「流石に私も死にたくはないです」
「良いじゃん。死に時だよ」
「ダメです。私のことを待って眠っている特大なネタがあるかもしれませんし」
「よく言うよ。」
守矢神社が見えてきたあたりで解散。手を振って守矢神社に降りると、何故だろうか。人のいる気配がない。一切ないのだ。神奈子様や諏訪子様が話してる声が聞こえない日もたまにあるが…まさか、もしや。またお二人の喧嘩?それとも二人とも寝ている?わからないけど、入ってみる。居間を覗いてみるとそこにいたのは萃香さん。あれ?と思い廊下を見る。誰もいない。もしや早苗ちゃんに着いて行った?
「あの…ここにいた二人は?」
「あ?ああ、あの神か。風祝のことを言ってやったらすぐにでも飛び出して行ったよ。よっぽど心配なんだろうな」
「へぇ…で、貴女は何故ここに?」
「伝えたらどっかに行ってな。私はそのままここに居座ってるってだけだ」
「…ふーん。ま、信じますけど」
「信じろ信じろ、鬼は嘘を言わない」
「勇儀さんに僕のこと話してくれたおかげで地底でどーたらこーたら言われましたからね」
「それこそ私の知らない話だ。話した相手がどう行動するかなんて私は知らないからな」
「えいっ」
「っ…腕はないだろ、腕は」
お酒を勧められて退避。僕の部屋へ。今更な話だが、僕の部屋にあるのはここに来た日に持っていた服と鞄だけ。小銭も少々と言った具合。僕は、まあ孤児院出身と言うにはあまりに短い期間ではあるが、孤児院の出なので高価なスマホはない。というよりも色々と物が少ないのだ。この部屋を見ると改めて自分という人間の空虚さを感じる。叩くと大きな音が出そうな人生だ。
「それで?勇儀はどうだった?」
「おかげさまで服も買い替えたし胸の傷跡には湯が染みた」
「…そうかい。そりゃ申し訳なかった」
「だから今度同じこと仕返ししてやろうと思うんだ。」
「お前…遊戯が好きなタイプだぞ、それ」
かずき「おんぶ!」
早苗母「あ、あら…わかったわ(軽っ!?)早苗ちゃんはだっこ?」
早苗「抱っこ」
早苗母「(かずき君のご両親ちゃんと食べさせてるの…?)」
という経緯で食べさせてた。