よくよく考えたら、純孤がよくわからなかった。
「早苗ちゃん」
「ただいまです。途中神奈子様と諏訪子様が混じってきて…恥ずかしかったんですからね!」
「す、すまん…」
「ごめんって…」
早苗ちゃんに抱きつく。つい先ほど萃香さんを追い払ったばかりで、正真正銘の無人となった神社で一人待ちぼうけをしていたのだ。寂しかったんだ。早苗ちゃんがとても喜びの声をあげていて、少しうるさい。早苗ちゃんの少し高い体温で体が安らぐ。守矢神社に入り、四人で机を囲む。お昼ご飯だ。実を言うと先ほど鬼に食べさせられた謎の餅が腹に溜まっている。なんなんだろうか、あれは。
「かー君が素直に甘えてきてくれるなんて…嬉しいです」
「意外とストレートだよな」
「早苗も早苗だけど、かずき君もかずき君だよねぇ」
「似た物同士ってことだな。」
「早苗ちゃん、今日はもう何もないの?」
「はい。異変があれば休業になるので」
「へぇ」
「ですからこの後、迷惑料を持ってくる人がいるはずですよ」
なんだろうか、自分から首を突っ込んだ挙句に迷惑料って…やってること反社みたい。そんなこと思いながらも、僕は早苗ちゃんが差し出してくる食べ物を食べている。うん、美味しい。餅が腹の中で存在感を示さなければ、僕としては文句のない一日だったろう。餅さえなければ。そう考えたのを察したのか、神奈子様が僕を凝視してきた。と言うか僕のお腹を。妖怪の差し出した餅はやはり神様からすれば呪いになるのかな。
「…お前のその警戒心のなさは…なんというか。一度会った相手なら無条件に信頼してないか?」
「どう言うことですか神奈子様」
「かずきのお腹の中に、異物があるんだよね?」
「ああ。タチの悪いことに食べ物として入ってる。取り出すのに苦労するぞ、これは」
「かー君」
「何?」
「私がいないときにご飯を食べたんですか?」
「理不尽だよ、それは。」
しかし思っていることは本当らしく。僕の目を捉えて離さない。その上怖い。必死に弁明する。無理やり食べさせられたの、僕は食べようと思って食べてないの。頼む伝わってくれ。それだけを伝えると早苗ちゃんは神奈子様と諏訪子様に何やら耳打ちをした。なんだろうか、疑問に思っていると神奈子様が僕のお腹に手を当ててきた。神様パワーによる取り出しなのかな?と思えば。
「っ」
「っゔぇ!?」
腹を思いっきり押された。腹というか鳩尾か。いやどちらでも同じだ。腹部の痛みに耐えられずノックダウン。僕は途方のない痛みの中、迫り上がる吐き気に耐えていた。すると次の瞬間、早苗ちゃんがお祓い棒を鳩尾に。嫌な予感がして体をどうにか逃がそうとするも、早苗ちゃんが馬乗りになって鳩尾を押す。吐き気が我慢できなくなり、トイレはおろか水場にすら行けず、その場で吐いてしまった。
「ゔぅ…」
「神奈子様」
「ないな。まだ腹の中だ」
その後、僕が餅を吐くまでそれは続いた。終わった後、ぼくは早苗ちゃんに抱きついて喉の痛みやら何やらを抑えようとした。無理だった。萃香さんはもう許さない、絶対に。口の中にまだ異物があるような感覚が。早苗ちゃんに水を飲ませてもらい、息も絶え絶えな僕は部屋に篭りたくなった。それが萃香さんを殴りに。しかしお昼ご飯の最中であることに変わりはなく。早苗ちゃんに言って僕の食事だけを片付けてもらった。
「…」
「かー君が悪いんですよ。妖怪の食べ物を、私のいないところで食べるんですから。食べる時も寝る時も同じ、かー君もそれが良いですよね?」
「早苗ちゃん、今喉痛いからあんまり話したくない」
「では意思を汲み取ります…そうですか、それが良いですもんね」
本当に読み取られた。僕の意見としてはそれでも良いよである。寝る時も同じなのは驚いたが、嬉しいし。外だと早苗ちゃん以外に隣で寝てくれる人いないからね、仕方ないよね。まあ僕は早苗ちゃんに依存していると言っても良いほどではある。早苗ちゃんが好きだからね。でも僕からすれば好きな人で恩人なわけだ。後断られた時が怖い。だから何もしないし、今のこの関係性が一番好きだ。
「それじゃあかー君、寝ましょうか」
「…なんで?」
「寝ると体調が良くなったりしますから。ね?」
「…わかった」
「神奈子」
「合意なしに一線を越えたら流石に…」
「お二方、御安心を」
「ま、まあ、早苗はそんなことしないと思ってるよ」
「だろう?」
「はい、相思相愛ですから」
「…一体どんな思考を…」
「かー君も私のことが好きですもんね〜」
否定も肯定もせずに布団に入る。どうやら本当に寝るつもりらしく、早苗ちゃんが目の前で服を着替え始めた。顔の向きを変え、目を瞑る。しばらくすると早苗ちゃんが布団に入る音が聞こえる。目を開けて向き直して、ようやく理解した。ここ、僕の部屋じゃない。早苗ちゃんの部屋だ。てっきり僕の部屋だと思ってた…早苗ちゃんの部屋は和風と言うより洋風な物が多かった。起き上がって周りをジロジロ見渡す。
「かー君、こっち見てください」
「ん?」
「よし。また新しく一枚手に入れました」
「…カメラ?幻想郷にもあるんだ」
「…覚えていないんですか?私が初めてかー君を撮ってあげたカメラですよ。ほら、保育園で折り紙で作ったじゃないですか」
思い出す。確かに、早苗ちゃんは折り紙が上手だった。そんな早苗ちゃんが何回目かの折り紙でカメラを折って僕を撮ってくれたのだった。でもあれは折り紙だったはず。じゃあ今手元にあるカメラは?尋ねてみるとどうやらこの山に機械に強い妖怪がいるらしく、その妖怪に作ってもらったらしい。まあそれは良くて。僕としてはそれよりも聞きたいことがあったのだ。新しく手に入れたって?
「…あっ」
早苗ちゃんが机の前を陣取る。なるほど机に…近付く。早苗ちゃんが必死に止めてくるも、寝転がるように倒す。僕が押し倒されるようにはなったが、早苗ちゃんが意識を机に戻す前に机に辿り着き、引き出しを開ける。すると出てきたのは僕の写真。小さい頃の僕、小学校の入学式で早苗ちゃんと共に校門に並ぶ僕。卒業式。中には早苗ちゃんの撮ることのできない写真。中学校の入学式の写真。僕が住んでいた孤児院。
「…え」
「えーっ…と…」
早苗ちゃん(地元の神社の娘さんだから人探しも楽々)、大好き