紅魔館にいると、何やら変なことを思い出す。フランドールさんに喰われそうになったり、その次の訪問では魔法を教えてもらったり、魔法を教わったのならニヤつかれるし。なんだったんだろうね、あれは。僕は今フランドールさんとレミリアさんと同じ部屋にいる。安楽椅子でゆらゆら揺れながら。二人とも何もせず、僕と同じように時間が流れるのを待っているらしい。僕にはそう見える。
「かずき」
「なんでしょう」
「散歩でもどう?」
「フランドールさんは?」
「私は良いわ。今日はよく動いたから」
レミリアさんに誘われ散歩に。日傘はレミリアさん待ち。僕が持とうかと聞いたのだが、客人に気を遣わせないと言う理由で断られた。しかしこれで早苗ちゃんは元に戻るのか。戻らないのであれば、僕はおそらくここに定住することになるだろう。そうなるはずである。と言うよりも、そうならなかったら命蓮寺の門を叩くことになる。僕は制限された生活というのはかなり苦手なのだ。
「良い天気よね」
「吸血鬼が散歩するには良い天気ですよ」
「雨が降ったらそれもダメだけどね。私は」
「…そういえば門番さんは?」
「今?咲夜が折檻してるはずよ」
「折檻するんだ」
「もともと働きが悪いからねぇ。寝てたり素通りだったりで。当然と言えば当然。」
「もとからなんだ」
てっきり顔見知りだけを通してるのかと。館の周りをぐるりと一周して館に戻る。元の部屋に戻り、安楽椅子に座ると僕の上にレミリアさんが座る。そのまま幾らかの時間を流し、僕の頭が安楽椅子とは違う揺れ方をし始めたところでパチュリーさんが出てきた。眠い頭で聴くのも失礼だが、ここにいるのなら聞かないわけにもいかない。頭を振って多少の眠気を飛ばして聴く。
「…結論から言うわ。あの巫女の感情は確かにあの天邪鬼のせいよ。でも、解除するにはとある小槌が必要で、その小槌によって力を増して調子に乗った結果が今回の異変ね」
「…つまり、力が強くなれば良いの?」
「そうよ。来る?」
「行く〜」
「わっ…あれ、寝てたわ…」
図書館に行き、拘束されてる天邪鬼のもとへ。レジスタンスならここで死んでも悔いはないだろうと思うのだがどうだろうか。解除させるためにフランドールさんが子機を渡し、僕が親機を持つ。魔力を流し始めると天邪鬼もそれを感じ取ったのか、驚いた顔をしていた。どれくらい必要なのかも分からないが、今の僕の半分くらいの量で足りるのではないだろうか。
「はっ!ありがとよ!能力の解除にいちいち魔力なんかいらねえんだよ!ここの好感度もぎゃくでっ」
「パチュリー、もう脳みそに寄生虫で良いんじゃない?」
「頭を弄った方が早そうね」
「わ、分かった…解除するから…」
どうやら本当に要らなかったらしい。イライラするやつだ。そうして僕はレミリアさん達に礼を言い、荷物をまとめて紅魔館を走り去る。目指すは守矢神社。僕の愛しの早苗ちゃんが待っているはずなんだ。妖怪の山を土塊の階段で登って行き、身体強化の魔法を重ね、最高速度で守矢に着く。神奈子様と諏訪子様はいない。恐らくは社の中だろう。早苗ちゃんもいない。社の中を走り回る。
「早苗ちゃーん!」
「…ぁあ、かー君」
「早苗ちゃん!?」
日数にして2日ほどだろうか。それくらい離れていて、2日ぶりに見た早苗ちゃんは何かくたびれていた。服はいつものパジャマなのに、何故くたびれているのだろう?早苗ちゃんの顔がよく見えない。とりあえず荷物を部屋に押し込もうと部屋を訪ねたところ、何やら凄まじく荒れている。喧嘩か何かがあったのかと思うような荒れ具合で、神奈子様と諏訪子様を探してしまったほどだ。
「かー君」
「わっ」
「かー君…ごめんなさい」
「早苗ちゃん…?」
「ごめんなさい…本当に…」
「どうしたの?なんでそんなにくたびれてるの??」
「実は…かー君が出て行った後から食欲が湧かなくなって…」
つまりは、栄養失調ということだ。僕は早苗ちゃんを連れて居間へ。早苗ちゃんの体は、今までになく弱々しかった。力が込められていないわけではないが、その力が弱すぎる。早苗ちゃんの体の所々に謎の傷が。栄養失調に加えて睡眠不足でもあったのか、早苗ちゃんは立つと力なくふらふらと横へ揺れる。僕の膝の上に乗せて、抱き抱える。早苗ちゃんはすぐに眠ってしまった。そこに神奈子様と諏訪子様が。
「…すまない」
「まさか異変だとは…」
「いえ、御二方も早苗ちゃんも悪くないですよ」
「そう言ってもらえると助かる。それでだが…」
「早苗との結婚、いつにする?」
「諏訪子?」
「僕はいつでも良いですよ。早苗ちゃんの暇な時にでも。」
「あれ、冗談のつもりだったんだけど」
「諏訪子…お前なぁ、一応恋愛結婚をした身だろ?気遣いとかないのか?」
「いやぁ、冗談だったのに…」
「僕も早苗ちゃんのことは好きですから。ずっと」
早苗ちゃんを部屋に運び寝かせる。神奈子様曰く、早苗ちゃんは僕が出て行った後に複雑な感情の顔をして、僕の部屋を荒らしたらしい。なるほどアレは早苗ちゃんが荒らした後なのか。僕は納得して茶を啜る。僕の精神状態は大丈夫になった。何せ早苗ちゃんに嫌われなくなったから。天邪鬼は紅魔館に好きに扱わせている。僕はそれらを神奈子様に伝えて異変の終結を話した。
「…なるほどな」
「式は和が良い?洋?」
「諏訪子…」
「早苗ちゃんの好きにさせてくださいな。」
「あいよ〜」
「…その、まあ、なんだ。早苗のことは今後ともよろしく頼む」
「はい!」
次回、最終回
天邪鬼「色々あったけど結婚おめでとう」
レミリア「心の底から祝福するわ」
フランドール「式には行かないけど、貴方の結婚は嬉しく思ってます」
聖白蓮「私が親枠?そんな…え、違う?…そんな…」