重要なのは願っているではなく願っていたの部分
「早苗ちゃん、結婚しよう!」
「ぇ…?」
朝食の最中にそう言う。諏訪子様も神奈子様も席を外しており、恐らくはどこかからニヤニヤ見つめているのだろうが。指輪も何もない僕が唯一出せるものと言えば、幻想郷に来る前に廃れた神社で見つけた、タイムカプセルの箱。私物は一切合切なかったのだが、多分だけど早苗ちゃんはこの中身だけを持ってここに来たんだろう。僕の記憶が正しければ、この箱の中に僕は早苗ちゃんと写ってた写真を入れていたはずだ。
「…そこは指輪持ってきましょうよ」
「幻想郷じゃあ結構高いんだから」
「…来てたんですね、洩矢神社に」
「うん」
「…私、ずーっと、ここに来るって決めた時からずっと、かー君が気になってて」
「僕も。再開してすぐにいなくなっちゃったからね、気になるよ」
「ここに来てくれて、嬉しかったんです」
箱を抱きしめたまま早苗ちゃんは立ち上がり、自分の部屋へと走って行った。手にはカメラと写真の束が入った箱。いつぞやの早苗ちゃんの机を思い出す。僕の写真がびっしりと詰まっていて驚いたものだ。しかしその箱の中には、僕と早苗ちゃんが二人で写っている写真だけだった。僕の見た目からして小学生五年生くらいか。おそらく撮ったのは早苗ちゃんのお母さんだ。カメラに向かってどっちも笑顔でいる。
「このカメラ、お母さんの物なんです。流石にこっちじゃ印刷も現像も出来ませんけど…」
「わ、これ七五三の奴だ」
「かー君!これで私たちの式を撮りましょう!」
「良いけど…誰呼ぶの?」
「…神奈子様と諏訪子様、紅魔館の方々、命蓮寺の方々、後は…霊夢さんに司会をやってもらって、天邪鬼をケーキ入刀みたいにこう」
「式でやることじゃないね」
しかし話を聞く限り和風の結婚式が良いらしい。色々と計画が始まった。祝い事が好きだからと言って博麗の巫女さんも乗り気。式の準備はほとんどなく、精々ご飯くらいな物だった。何せそう言う用意は元から備え付けみたいな物だからね。僕は式の招待状を書き上げて送っていた。天狗に頼ると良いことがないと言われたので、自分の足で。紅魔館では美鈴さんに全員分を。命蓮寺は星さんに全員分を渡した。
「他渡す人いたっけ」
「…さぁ…私も積極的に関わってたわけではありませんから。魔理沙さんとかでしょうか?」
そうして人数も決まり。ご飯の量も決まり。僕は式当日を待つことに。新郎の和服を目の前に、今までを振り返ってみる。全然まともじゃないし振り返っても悲しいだけなのでやめた。そんなこんなで迎えた結婚式当日。参加者は呼んだ方全員来ており、なんなら誘ってない人もいたりした。なんでいるんだろう…天狗とかも。設営を手伝ってくれた河童達はわかるけどね。
「よっ、早苗ー!」
「魔理沙さんうるさいです」
「随分と綺麗なの捕まえたじゃーん!」
「村紗…ここはあんな良い女でしょ」
「どちらとも、結婚式での野次は控えなさい」
「別に良いっすよ、僕としてもこう言うのは好きなので」
「…ちょい、新郎新婦は早くこっち来てよ」
「司会の霊夢がめんどくさそうだぞ」
「ちゃんと3ヶ月分のお米は渡したはずなのに…」
そうして始まった結婚式。身体を清めるのだが、霊夢さんが早苗ちゃんを清めた後に僕の清めをやろうとしたら全力で拒否して、新婦に清められる新郎の図が完成した。命蓮寺の奴ら全員笑ってる。紅魔館の人たちは…パチュリーさんが笑ってた。珍しい。僕たち二人でお酒を飲む…と聞いていたのだが、早苗ちゃんが口移しで3回飲ませてきた。こう言うのも悪くはないのかもしれない。
「次、指輪の交換ね。指輪は…えっと…ちょっと、なんで諏訪子の方が持ってくるのよ」
「神奈子が泣きすぎて何も出来ないって」
「まあ、実の娘みたいなもんだからかしらね。さ、交換なさい」
「はい!」
早苗ちゃんの声と共に渡された指輪を交換する。その場で指にはめてみて、空にかぶせる。僕の指輪は早苗ちゃんが作ってくれた物だった。原材料?よく知らないね。僕が早苗ちゃんに贈ったのは人里で作ってもらった指輪だった。原材料は龍珠。河童に頼んだら貰えた物だった。綺麗でありながら劣化せず、かなり頑丈とのことだった。太陽にかざすと綺麗に色を分けるところも気に入った。
「…さて。ここまではきっちりやったけど…そうね。キスした後は自由に動き回りなさい。そのまま一夜明かしても良いけど」
「霊夢さん!!」
「流石に…」
「引っ込め司会者ー!」
「下品だぞー!」
「やはり私の寺で私が司会をやるべきでしたね」
「聖様!?」
「…そうですね。皆さんにもこの祝い事を楽しんでもらいたいので…私たちがキスしたら自由に盛り上がりましょう!」
そう早苗ちゃんが言ったのを皮切りにかなりの歓声が沸く。そうして次の瞬間には顔を合わされキス。舌も入れるディープなキスを喰らった僕は、どうも状況を理解しきれない。周りの歓声が嘘のように聞こえなくなる。そのまま口を離した早苗ちゃんがとびきりの笑顔で自由にどうぞと叫んだ。先ほどの声を大きく変える歓声が聞こえた。ちなみにこの後は僕たちによる天邪鬼虐待ショーがあるのは誰も知らない。
「やっぱり祝い事なら弾幕ごっこだよな!一番派手で綺麗に祝えるやつが優勝な!」
「あ、魔理沙。ちょっと待ちなさい。えーっと…ここで、新郎新婦の結婚の後押しをした立役者さんからのお話があります」
「…神奈子か?」
「誰ですかね。パチュリー様ですか?」
「レミィじゃないの?」
「…違うわよ。ちなみにフランも違う」
「前回の異変の黒幕です。」
「うわ天邪鬼だ」
「何故ここに…?」
「っほん。私は幻想郷一の反逆者たる鬼人正邪だ!この度はこいつらの結婚をめでたく思えるか!感情逆さにしてやったのに!!」
「ああ」
天邪鬼の挨拶が終わった後、天邪鬼は会場から鬼の如き速さで逃げていった。それを霊夢さんが追いかけた。つまりは司会者は消えたのだ。これにて完全に自由。フランドールさんが新郎の友人として出てきたり、レミリアさんが新婦の友人として出てきたり。そんなに仲良かったんだ。命蓮寺の皆んなもわいわいと盛り上がっている。魔理沙さんは河童や天狗を巻き込んで盛り上がっている。
「かー君!」
「何?」
「これからもずっと、一緒ですよ!」
「…うん!」
かずき君と早苗ちゃんの一番の願いは二人の結婚であるというね。
これにて最終回