東風谷さんと僕   作:覚め

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早苗さんはね。
どこかおかしくないと早苗さんじゃないからね。


巫女

部屋に篭って数分。何やら大きな音が響いてきた。地響きではないから地震ではない。上の方から響いてきてるけど。僕もそこまで落ち着いていられないので、外に出てみる。やはり音の正体は上空。うわ全員空飛ぶ女性だ。下着とかそういうのは大丈夫なんだろうか?しかし速いな。走るより速いぞ。賽銭箱近くに座って上空を見てると…早苗ちゃんがいない。喜んで参戦しそうだけどな…

 

「かー君」

 

「うわっ…どうしたのその傷!?」

 

「実は空飛んでたら落とされちゃいまして」

 

「だったら骨とか」

 

「骨折がないのは奇跡ですね…」

 

「ちなみに、あれ誰?神奈子様と…」

 

「博麗の巫女だそうです。私の同業他社ですね」

 

「へぇ」

 

「目移りしないでくださいね?」

 

早苗ちゃんの目が怖い。そんなことを思いながら、神様の落ちる姿を見る。いや見てちゃダメでしょ。早苗ちゃんに呼びかけて、落下地点に行く。あ、でも待てよ。あの人の背中のしめ縄ってどれくらい重いんだ?後ろのよくわからない柱も、相当重そう…これで助かればそれこそ奇跡、なんだろうな。早苗ちゃんいるからなんとかなるとは思うけど。いやでも怖いわ。諏訪子様あたりも出てきて欲しいんだけどなぁ。

 

「ん゛ゔっ」

 

「よいしょ!」

 

「…なんで男の方から苦しそうな声が聞こえるのよ」

 

「うわ博麗の巫女」

 

「アンタ…空も飛べなさそうね。そこの巫女。巫女家業は譲らないから」

 

「あ、はい」

 

「そこの外来人も。帰りたかったらウチで「は?」…何?」

 

「かー君は帰りません。」

 

「えっ」

 

「だから、博麗神社を訪ねることもありません。」

 

「早苗ちゃん?」

 

「そうですよね?神様に願ってまで私に会いに来たんですから、帰るなんて言い出しませんよね?」

 

怖い。先ほどまで強気な態度だった博麗の巫女でさえもどこか気圧されるほどに、今の早苗ちゃんは怖い。主に目が。その目でこっちを見ないで欲しいのが僕の本音である。早苗ちゃんの意見に一応肯定して、早苗ちゃんを落ち着かせる。あー怖かった。ほんと恐ろしい。そんなこんなで博麗の巫女を見送り、振り返ると鼻の先に早苗ちゃんの鼻が。怖っ!?一歩下がる。一歩詰められる。今から殺しますと言われるかのような威圧感がある。

 

「な、何?」

 

「あの巫女を見てどう思いましたか?」

 

「…よくわからんけど、強い、のかな?」

 

「綺麗だと思いますか?」

 

「ぇ…」

 

間髪入れずに詰められる。早苗ちゃんの顔が、今後一生涯でここまで近づくことはないだろうと思えるほどに近い。早苗ちゃんの手が肩に置かれていたが、目の迫力に比べてあまりにも軽い感覚だった。早苗ちゃんの顔が下がったかと思えば、なぜか僕の胸元に。本当によくわからない。早苗ちゃんを宥めて、その場に二人で座り込む。さて、どうしたものか…こんなに弱った早苗ちゃんは見たことないぞ。

 

「かー君はもう、どこかに行ったりしないですよね」

 

肩に置かれた手にも、胸元にある頭からも力は感じないのに、何故か縋られているような気分になる。さて神様はと見渡して見ると、キスしろと言わんばかりの顔をこちらに見せてきやがった。僕にそんな度胸はない。というか僕がどこかに行く程度で早苗ちゃんが変わるとも思えない。中学三年間があるんだから、多少は良いだろうに。背中を撫でて、今日はもう寝ようと言って寝かせた。

 

「…僕って、本当にここにいていいんですか?」

 

「ダメだと言ったらお前は消えるのか?」

 

「今すぐは無理ですね。神奈子様からすればいたらダメでしょ?」

 

「いや、そういうのは諏訪子の領分だ」

 

「えっ」

 

「…ま、良いでしょ。中学生の時よりは楽しそうだし」

 

「えー…そうですか?」

 

「見てきた私が言うんだから、間違いないよ」

 

…要はこの二人、早苗ちゃんが言うなら別に良いよと言っている。そして早苗ちゃんはそんなことを発言するつもりはない。僕も、出る出ない以前に出たら死ぬので。つまりはここが住処となったわけだ。何か手伝ったほうが良いだろうか。流石に神様二人と巫女一人の家に割って入って何もせずにいられるほど、僕の精神は図太くない。早苗ちゃんが良くても僕の心労がそれを良しとしない。

 

「なるほど…ま、頑張れ」

 

「えっ」

 

「出来ることはあるからな。くれぐれも早苗を唆して変な方向を向かせるんじゃないよ」

 

「その時は神様二人が敵になると思え」

 

「…もっと肩身狭くなったじゃないですか」

 

「それだけ大切に思ってるってことさ。何せ私たちからすれば子供みたいなものだからね」

 

「年齢で言えば玄孫も良いところですよね?」

 

怖い顔された。怖い。そして今日、初めて幻想郷の夜空を見た。綺麗な星空だった。孤児院では空なんて眺めるより早く寝ていたものだから、かなり久しぶりになる。月がひとつぽつんとあるのもおかしくていいが、やはり夜空は大量の星に塗れていなければ。そんな感傷に浸っていると、神様から風呂について言われた。そして着替えがないことも思い出した。…どう、します…?

 

「男物の服なんて持ってきてないよ!?」

 

「さ、探して来る!」

 

「里に行けばよかったですね」

 

「後の祭りだよ…」

 

「そうですね。ワハハ」

 

「お前の服は今日からこのしめ縄だ。感謝するんだな」

 

「えっ!?なんで、なんで!?」

 

そうして翌日。少し臭うだろうから、と言って無理やり風呂に入り服をもう一度着て人里へ。山の上から見えてはいたんだ。とても距離の掴めなかったが。そこにはなんと明治維新の前後のような服ばかり。あ、ヤクザ映画で見たことあるスーツだ。とまあ、そんな感じに。任侠映画とヤクザ映画を反復横跳びしていると、早苗ちゃんが似合うとか言いながら服を見繕ってくれた。ゆったりとした和服だ。サイズは少し大きめだったが、着れる範囲。

 

「じゃあ、これを後三着ほど買いましょうか。」

 

「服装は変えなくても良いしなぁ。標高も高いから暑さは気にならんし」

 

「ですです!」




中学上がる時にかー君と学区が違うことを知った早苗さん「学区変えて!かーえーてー!」
かー君「ガック?」
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