「かー君のこんな服装、見たことがないので嬉しいです」
「そう?」
「ええ。外の世界だと、かー君はずっと制服か洋服だったので」
「今どき和服の方が珍しいと思うけどね」
そう言って見るが、その時ハッとする。違うよ僕今着替えてるんだよ。なんで早苗ちゃんここにいるの?あぶな、ズボンに手かけてた。追い出して着替える。着たことはないけどね、着方はわかるんだよ。店でも教えてもらったし。よし着れた。特に割くことのない記憶領域は今回仕事を果たしてくれた。着てから少し動き回って見るが、崩れたりはしない。それこそ走ったりしたら別だろうけど。
「着替え終わったよー」
「じゃあ朝ごはんにしましょう」
「はーい」
食卓に座って食べ始める。神様も一緒に。正直言ってこの食事の時間、気まずくてしょうがない。神様と同じご飯を食べてるところとかが。朝ごはんを食べた後、早苗ちゃんは午後から行く宗教勧誘の準備をしていた。週一で行くらしい。博麗の巫女から譲らないとは言われているけど、そんなもんは無視ということだ。僕としては譲らないと言っただけで、別に巫女やるのは認めてるんじゃないのかと思ってる。ツンデレ?
「んーっ…かー君、お話ししましょう!」
「唐突だね」
「お題はズバリ、かー君の近況!主に中学時代!」
「…荒れてた、くらいしか」
「知ってる範囲ですね…どうか、その先!私たちでしか知り得ないことを!」
「あ、でもそうだ。一回告白されたよ」
「知らない」
「なんて?」
「…モテてたの?」
「多分違うよ。罰ゲームとかじゃない?」
「…そうかもしれませんね」
そこは納得しないで欲しかった。そんなこんなで、早苗ちゃんとの話は弾んで昼間まで続いた。神奈子様と諏訪子様と共に僕も見送る。僕も人里に行きたいなぁなんて思ってたけど、案外広いことから迷子になるかもよと言われてやめた。流石にこの歳で迷子は嫌だ。恥ずかしいよりも悲しい。神社待機だ。とは言ってもなぁ…僕自身、神社ですることもなく。ただぐーたらするだけ。本当に肩身が狭くなってんの?
「こんにちは!清く正しく射命丸です!」
「うわ誰だお前!?」
「ええっ!?ほら、貴方のこと食べようとした天狗ですよ!」
「私たちの神社で人喰いしたのか?」
「ひぃっ!?」
射命丸さんはどうにも取材をしに来たらしい。変な人だ。いや、変な天狗か。そんな形で射命丸さんの取材に応じる。が、そもそも僕はこの神社の人間ではないので何も答えられない。何やらつまらなさそうな顔をされたが、本当に知らないのだ。妖怪も信仰したら?とは思っても、口には出さない。妖怪と神様って対になってそうだから。大体、妖怪が作った記事って誰が読むの?同じ妖怪?
「はい!妖怪の山を中心に紅魔館や博麗神社。果ては人里の寺子屋まで。届けた後の感想は『よく燃えた』や、『窓拭きとして優秀』と…」
「うわ酷い…」
「そうでしょう!?我ながら良い記事を書けてると思うのですが、どうも芽が出ないのが現状でして…」
「でも妖怪だから良いか」
「貴方色々と図太い人間ですね?」
「いやいや、神様二人と巫女の家に住むのは肩身が狭くて」
「いや、あの、一応私その気になれば貴方のこと食べて終わりですよ?」
「怖っ」
早苗ちゃんが作ったお守りを持ってはいるけど、効力としてはどれくらいなのか。一回近づけて見るか。うりうり。射命丸さんの反応から、どうやら効力はあるらしい。めちゃくちゃ嫌な顔をしていた。と言うか顔についた時に払い除けてたから、痛かったか僕が汚かったかのどちらかだ。肌が少し傷ついていたので前者だろう。僕としてはそうだと思い込みたい。後者だったら風呂場に篭るね。一時間くらい。
「天敵を顔に擦り付けます?普通」
「天敵なんだ」
「博麗の御守りよりも容赦がないですよ。良かったですね」
「嫌味言うならストレートに言おうよ」
「ここの巫女は悪魔ですよ!あ、ちょっ!?肌が焼けてるじゃないですか!?」
「がんばれ!」
「もう…妖怪とはいえ、再生するのに時間はかかるんですからね?」
「あっはは」
「貴方やっぱり図太いですよね…まあ、良いですよ。貴方の名前は知れましたし。ね、
「えっ?」
僕の本名?なんで?早苗ちゃんだってずっとかー君呼びだったはずだ。神奈子様も諏訪子様も、名前を呼ぶことはない。あってもふざけ気味にかー君と呼ぶ程度。僕の名前なんて、それこそアルバムを探さない限りは…え?知れたってことは、ぐーたらしてる時に探し出せたの?え…何それ、怖い。神社の中に忍び込んだの?早苗ちゃんいたのに?困惑していたら射命丸さんがにっこりと笑ってきた。
「別に名前が知られたからどう、なんてことはありませんよ。取材するのにあだ名では格好がつかないと思っただけです。」
「ああ、でも許されないよね??」
「知らないですねぇ…まあ、それはそれとして私はそろそろ行かせてもらいます。後ろの方にはご自身からの説明を!」
「逃がすと思います?」
「早苗ちゃん!?」
「純粋なかー君に取り入ろうとした貴女を、私が?」
「ひぃっ!?」
そのまま早苗ちゃんは物凄い速さで射命丸さんを追いかけた。後ろから話しかけられてる間、僕はずっと固まっていた。絶対今の早苗ちゃんは目が怖い。と思ったら落ちていく射命丸さんを背景に、早苗ちゃんが戻ってきた。一体いつから早苗ちゃんは人外に片足を突っ込んだのか。僕にはこれがわからない。無言で近づく早苗ちゃんに気圧されるも今度は一歩も後退らない僕は褒められるだろう。
「かー君は、あんな天狗よりも私の方が好きですよね?」
「うん」
「良かったぁ…じゃあお夕飯食べましょうか!」
諏訪子「志望校変えてでも同じ高校になるくらいには執着してるもんなぁ」
神奈子「そこは諏訪子譲りだな」