「かー君、おはようですね」
「ん、おはよう」
「ご飯出来てますから、着替えたら早くきてくださいねー!」
「はーい…寝よ」
「二度寝ですか?」
「しません」
着替えてから食卓に着く。最近ではよく話をする神奈子様と諏訪子様が両脇に、真向かいに早苗ちゃん。なにやら少し険悪な雰囲気があるだろうか?三者三様の箸の進み方をしている。いつもなら多少の会話があるし、なくても箸の進みはある程度統一されているのに。なんだろ、喧嘩したのかな。気のせいかも知れないが箸と食器がぶつかる音も大きい。いや本当に大きい。僕は居た堪れずにご飯をさっさと食べ終えた。
「かー君」
「…何?早苗ちゃん」
「かー君は私の味方ですよね?」
「そうだ、けど…」
「良かったぁ…神奈子様と諏訪子様が私の奇跡を頼って電子機器を直させようとしてくるんですよ!」
「悪かったって早苗!」
「もうこの話はやめようよ早苗!」
「いいえ限界です!大体中学生の時からですよね!」
「ダメな親ってやつだ」
早苗ちゃんに叱られている二人の神様を横目に、なんだそんなことだったのかと胸を撫で下ろす。ピリついた雰囲気は苦手だ。昔の家族を思い出すから。今でもまだトラウマなのか、思い出すだけで気が滅入る。無言で寝る父、淡々と箸を進める母。食べ物を探している僕。あの時の僕にかける言葉があるなら、早く早苗ちゃんを頼れとしか言えない。僕の小学校卒業と同時に消えた親だ、急に消えても問題はなかったはずだ。
「…あーあ、思い出した」
「久しぶりに思い出したねぇ」
「ぅわっ!?」
「え!?かー君がどうかしたんですか!?」
「うんにゃ、どうもしてないよ。早苗は参拝客来るから前行ってな?」
「あ、はい!」
「…さて」
神奈子様は僕が座っていた場所の隣にどっしり(勢いの比喩であって重さの比喩ではない。)と構え、僕をまっすぐ見据えた。諏訪子様はどこかに消えて、とにかくこの場には僕と神奈子様のみ。僕も座り、神奈子様と対面する構図。起きてばかりであんなものを思い出して、中学を終えて思い出さなかったアレを思い出したことを何故わかったのか。神様って考えてることがわかるのか。知りたい。
「…いや、何。諏訪子の奴も私も、お前に信仰されてるからな。信仰に揺らぎがあればそれも伝わる。数多くの人間は無理だがな」
「近いから?」
「その通りだ。早苗もお前も、帰る時間になると願っただろう?『まだ帰りたくない』って。早苗とお前で理由が違ったからな。こっそりとだ」
つまりはこっそり僕の家を見られていたと言うわけだ。じゃあなんで僕のこと忘れてたの?幻想郷で意外と忙しかったから?ああそう…。神奈子様は咳払いをして、真剣な顔になる。肩身が狭くなる。一体僕は何を言われるんだろうか?よくわからないが…多分何かあるんだろう。雰囲気的に。…しかし、いくら待っても話が出てこない。神奈子様の頭の動きを見るに、かなり迷っている様子。
「…どうしました?」
「いや…早苗は嫌がるだろうが…この幻想郷を見て回るつもりはないか?」
「…え、喰われろと?」
「流石にそこまでは言ってない。その、私たち…特に私だけど、どうだ?」
「嫌です」
「嫌か」
「人里以外の場所なんて妖怪が巣食うんでしょ。肩身狭すぎです」
「偏った知識だなぁ」
全部あの天狗に聞いたことだ。新聞を作るなんて尊敬しちゃうなーと言ったら鼻を高くして意気揚々と話してくれたよ。他にもコーマカンとか、西行寺とか、永遠亭?もある。字が合ってるかは知らないけど。他にもいろいろ聞いたけど、まあ別に何もわからないから仕方ない。射命丸さんの新聞を見れば色々と幻想郷の情報を知れるのだろうか?とか思ってたら目の前に新聞が。文々。新聞だそうだ。
「新聞だ」
「小さい頃からの娯楽か」
「そうっすねぇ…あ、なんか変な妖精がいるらしいですよ」
「どれどれ…霧の湖、か。行ってみるか?」
「肩身が狭いです」
「そう言うな。神様のご加護のもと、遊びに行けるんだから。諏訪子ー!私達は少し出かけるぞー!」
そうして空を飛んで行く。あまりの怖さから神奈子様にしがみつく。高所恐怖症にこれはきつい。しかも飛び方が豪快。親の荒れた運転と比較すれば、こっちの方が上だ。かなり風が強い。怖い。手汗で手が滑りそうで、ああ恐ろしい。神奈子様に抱えられているとは言え、浮遊感と疾走感はとんでもなく恐ろしい。怯えながら神奈子様にしがみついていると、一気に周りが湿っぽく。そこから落下している感覚。怖い怖い怖い
「もう着いたぞ」
「本当ですか!?信じますよ!?」
「そんなに信じられないか?」
足をつける。何回か飛んで、ああ地面だと安心する。この霧の濃さでは3メートル離れたらもう神奈子様も見えないだろう。怖っ!神奈子様の手にしがみついて辺りを見渡す。やっぱり何も見えない。何ここやっぱり怖いんだけど。僕があの新聞で霧の湖なんか見なければ…
「やいお前!あたいのナワバリで何やってんの!」
「ぅわっ」
「おいおい待ってやってくれ。こいつはこの通り人間でな。私か?私は神だが?」
「カミだかなんだか知らないけど、ここはサイキョーたるあたいの場所だよ。ここに入るなら事前予約が必要だ!」
「その予約を申し込みに来た。」
「え?」
「訪問日時は今日。今からだ。これで予約は取れたな?」
「あの、神奈子様。面白い妖精って多分この子じゃないですか?」
「…本当だ」
「あたいのナワバリであたいのナワバリに入る予約を…?」でも予約は取ったから良いのかな?」
「ほう、これはなかなかに面白いな」
チルノはバカです。と言いたいですが、そもそも妖精は全員バカで、二次創作で見る大妖精の方が異端なのかも知れません。