「紹介するわね。これが私の妹、フランドールよ」
「お姉様が格好つけてるからお邪魔させてもらったわ。まさか男ができるなんて」
「そういう相手じゃないのよ」
「…妖怪の姉妹って似てないなぁ」
「他にも見たことがあるの?」
「ないけど」
しかし似ているのは口調だ。これはまあ、名家なら似るものなんだろう。ほら、同じ家庭教師的な。なんか適当に名家だと思ったけど…名家だよね?こんな屋敷建てるんだから。違ったら…イヤでもこれで名家じゃない方が悪い。フランドールさんはどうやら僕をつれてきたレミリアさんが面白いらしい。腹を抱えて唇を閉じていた。あとなんかずっとこっちを見てる。何かあったの?面白ついでに吸われる?
「じゃ、いただきま」
「やめなさいフラン」
「うわっ」
いつのまにか背後に回ったフランドールの更に背後に回ったレミリアさんが、僕の肩に捕まろうとしていたフランドールを蹴り飛ばしてしまった。吸血鬼の身体能力って、こんなにすごいのか。素直に感心してしまった。次にレミリアさんはその上空を維持したまま僕を掴んで揺さぶる。何故?よくわからない。とにかく、そう揺らされていてはダメなので、座る。紅茶を一口。おかしいな、俺がきた時にはすでに出されていた紅茶が何故かまだ暖かい。
「魔法よ。貴方もやってみる?幻想郷において自衛は大切よ」
「魔法かぁ…何が出来るんですか?」
「魔法次第、ね。私の知り合い曰く魔法はイメージの世界らしいのよ。出来ると思えば出来る。そうでなければできないって。」
「面白そう」
「そういうと思って、ウチの司書から一つ本を借りてきたわ。どう?興味ある?」
差し出された本に書かれていた言語が読めず、結果的に読めないものはどうしようもないため、残念ながら見送った。良い本となって帰ってくるんだよ。レミリアさんは何やら驚いた顔をして、更にまじまじと僕を見てきた。何?また吸われるの僕?いつのまにか消えたフランドールさんを思い出し、戦慄。しかし不意にレミリアさんは視線を外し、何かを考え込んだ。
「…貴方、何してきたの?」
「ん?えっとね…神様とご飯食べて、そのあとは日没までずーっと待ってた」
「…じゃ、貴方が無意識下で何かをしているのね」
何やら難しい説明が始まった。レミリアさん曰く、ここ幻想郷で名を挙げている奴は大概が能力持ちらしい。しかも自己申告制。だからあまりアテにならない奴もいる。そんでレミリアさんの能力というのが、運命を操る程度の能力。なるほど、それなら。本やら紅茶やら、受け取る前提で動いていたことに合点が行く。がしかし、僕が本を受け取らなかったことで疑問が出たようだ。
「貴方の運命が見えない以上、無闇に操るのは愚かと言えるのよ。でもね、確かについさっきまでは見えたのよ。なんで急に…」
「さぁ…」
「お嬢様、こちらを」
「ん、ありがとう」
「お客様も」
「あ、はい」
唐突に現れた十六夜さんから受け取った物は、何やら丸い…五つ星みたいになっている変な模様がついた良くわからない物だった。十六夜さんの説明では、これはマジックアイテムというらしく、これは親機と子機のセットで使うものらしい。僕の持っている物は子機の方で、親から魔力を受けとる機能があるらしい。電話みたいな物だ。
「私の場合は妖力だけど、ね」
「うわっ…なんか入ってる?」
「感じ取られたら、その次。自分の体の中でその感覚を思い出しながらなんとか作ってみてください」
「えっと…」
もしかして十六夜さん主導の魔法講演会が始まった?でも言われた通りに感覚を作ってみると、どうやら言ってたことは本当だと言いたい気分だ。さっきよりも何か入ってる感じがする。これが魔法か、すごい。そう思って聞いたら、これは魔力だとか。知ってますよ、へっ。この魔力を使えば空だって飛べてしまう…らしい。この館にいる動かない司書も浮いているらしい。
「とは言え、本日はここまで。次からは司書の方に聞いてください。お嬢様も。それでは」
「…消えた」
「名前の紹介は済んでるはずよね?咲夜の能力は時を止める程度の能力。瞬間移動もなんでもござれな便利な能力よ」
「へぇ」
「…やっぱり。見えたと思った運命が全然当てにならないわね。貴方だけは」
「僕何もしてないんですけどね」
「でしょうね。それにどうやら、あの子も貴方のことを気に入ったみたいだし。そろそろお開きにしましょうか」
「え?」
振り返れば、フランドールさん。僕に近付き、自分の気持ちを隠そうとするのかしないのかわからない態度で叫んできた。曰く、僕と出会った時は何かに夢中になったくらいでレミリアさんの蹴りをモロに喰らうわけがない、と。知らないのである。そう言ったら腹を抱えて今度は前屈みになった。男なら意味がわかるが、少なくとも相手は妖怪。外見女。早苗ちゃんに見つかればなんて言われるか。
「…原因を本人も知らないなんてね」
「意外と恋でもしたんじゃないの?フランは乙女チックなところがあるからねぇ」
「お姉様ほどじゃないわ。」
「だからそういう相手じゃないのよ」
「これどうやって帰ればいいんですか?」
「…どうって…招待状を開けば良いんじゃないの?」
「帰る場所の座標登録してるの?多分だけどパチュリーはそういうこと何もしないよ」
「…連れて帰るってこと?」
「残念だけど咲夜はもう寝たよ」
「…夜明けまでには帰ってみせるわ」
「頑張って、夜明けまで大体あと一時間だから」
その頃守矢では、打たれる神奈子と打つ早苗とそれを見てケラケラ笑う諏訪子がいた。