ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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今日の連続投稿はここまでです。





明日のイベント終わりまでにgジェネEで溜まりに溜まったイベントのボス挑戦チケットを使い切らなくては!


幕間: アスナ・エルマリート6 母と父と

ホワイトベースJr.の艦長室には、重たい沈黙が流れていた。ヤハギは椅子に腰掛けたまま、机の上に広げられた書類を見つめていた。

その横で、ブライト・ノア艦長は静かに息をつくと、口を開いた。

 

「私としても、君が訓練生たちを守るために、命懸けで殿を務めた男だと聞いている。

アルマリート親子がサイド3から逃げるようにして地球に来たことも、確認済みだ。」

 

その目に責め立てる色はなかった。むしろ、問いかけるような静けさがあった。

 

「……出来れば、知っていることを話してくれないか?」

 

ヤハギは、視線を落としたまましばらく黙っていた。

やがて小さく息を吐き、搾り出すように口を開いた。

 

「……ハルカの夫は……“優良種交配実験”なんて、狂ったテーマで研究をしていた科学者でした。」

 

その言葉に、ブライトの眉がぴくりと動いた。

 

「その男は……自分の研究の一環として、妻であるハルカにまで、それを強要したんです。実験だと称して、彼女の体を――」

 

ヤハギの拳が、膝の上でかすかに震えていた。

 

「……彼女は、それに耐えきれなかった。傷つき、壊れかけていて……俺に縋ってきた。

俺は……それを一度だけ、受け入れました。

……おそらく、アスナは……その時にできた子供です。」

 

重苦しい沈黙。

そして、ブライトが感情を抑えきれずに言った。

 

「……本当に、ジオンの科学者どもは!」

 

その拳が、机の上で小さく震えた。

続く言葉は、怒りと共に、静かな誠意を宿していた。

 

「そういう事情であれば……君を誤解していたことを謝ろう。すまなかった。」

 

「いえ……」

「……俺が、悪いんです。」

 

そう言いながらも、その声には苦悩と責任の色があった。

ブライトは短くうなずき、しかしどこか迷いを抱えた表情を浮かべる。

 

「……事情が複雑すぎて、どうしていいか分からん。

だが、君の意思はどうなんだ?

訓練生・アスナは……君の娘なんだろう? 本人は、まだ知らないようだが。」

 

ヤハギは、長い沈黙のあと、ゆっくりと首を横に振った。

 

「……俺は……まだ、分かりません。」

 

「そうか……」

 

ブライトは一度、頭を抱え込むように手を額に当てたあと、姿勢を正して続けた。

 

「分かった。この件で君を咎めるつもりはない。

ハルカ・エルマリートは、訓練校の近くに住んでいたはずだな。

……親子三人で、話し合って決めてくれ。」

 

「……はい。」

 

その時、ヤハギはようやく息をつけた気がした。

だが、すぐに口を開く。

 

「アスナは……母親を残してはいきたくないと言っています。

ジオン出身ということで、地球では冷たい視線を受けていたらしく……」

 

ブライトは静かにうなずいた。

 

「……分かった。話し合いの結果がどうなるかは分からんが、

ハルカ・エルマリート本人が希望するなら、ジャブローでの職も用意してもらうよう、伝えよう。」

 

ヤハギは、初めて小さく頭を下げた。

 

「ありがとうございます。……艦長。」

 

艦長室に差し込む光が、ふたりの間の空気をようやくわずかに和らげた。

 

 

 

 

 

 

 

【アスナ視点】

 

あの襲撃事件から、数日。

ようやく転属に関する書類が一段落ついたところで、ヤハギ教官が不意に口を開いた。

 

「……お前の母親についてだがな。もし本人が望むなら、ジャブローに一緒に連れて行けることになった。

仕事も……あちらで用意してくれるそうだ。」

 

「ほんとうですか……!?」

 

私は思わず声を上げてしまった。

嬉しさが込み上げてくるのを抑えきれなかった。

これでようやく――ようやく、母と一緒にいられる。

あの人のことを置いていかずに済む……!

 

ヤハギ教官は、そんな私の反応を見ても特に表情を変えず、手元の端末を閉じて立ち上がった。

 

「だから今から行くぞ。……母親のところへ。」

 

「い、今から!?」

 

私は思わず後ずさった。

てっきり後日、改めて訪ねるものだと思っていたのに。

 

「そうだ。俺が送ってやる。話さなきゃならんことがある。」

 

そう言いながら、教官は私の肩をぽん、と軽く叩いた。

その手に、妙な緊張感がある気がした。

 

私が戸惑っている間に、教官はすでに基地の車両を手配していたようで、

私は半ば押し出されるようにして車に乗せられた。

 

車が静かに基地のゲートを抜けていく。

訓練校を背に、夕日に染まりかけた北米の空が広がっていた。

 

「あの……教官?」

 

後部座席でシートベルトを締めながら、私はおそるおそる口を開いた。

 

「書類だけ……いただければ、私ひとりで母に渡せますけど……?」

 

だがヤハギ教官は、前を見たまま小さく頭を振った。

 

「書類だけじゃねえ。……大事な話があるんだよ。」

 

その声に、どこか重たい響きがあった。

私は、黙ったまま教官の横顔を見つめた。

 

……なぜだろう。

今の言い方。

まるで、母と――そして私と――ずっと何かを抱えていたような、そんな感じがした。

 

それ以上、聞けなかった。

ただ私は、静かに車窓に目を向ける。

揺れる景色の先に、母の姿がある。

 

――まさかこの日の帰り道が、ただの引っ越しの相談だけで終わらないとは、このときの私はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車の窓から見慣れた景色が見えてくる。私は前に座るヤハギ教官に声をかけた。

 

「……あの、この角を左に入ってすぐの駐車場に停めてください。そこが一番近いです。」

 

「ふむ、あそこか……」

ヤハギ教官が車をスムーズに駐車スペースに入れると、外を見てぽつりとつぶやいた。

 

「あれが……お前たちの家か?」

 

「はい。私が訓練校に入ったあと、ほんの少しだけ母がいい仕事を見つけられて……それで、少し広めのところに引っ越せたんです。」

 

アパートは特別綺麗というわけではなかったが、外壁は定期的に手入れされているようで、屋根も無駄に傾いているところはなかった。

裕福とは言えない。でも、住むには十分な――小さな安定がある場所だった。

 

私は玄関の鍵を開け、先にドアを開けて中へ入る。

 

「ただいま、母さん。お客さん、というか、ちょっと大事な話がある人を連れてきたの。」

 

部屋の奥から、エプロン姿の母――ハルカ・アルマリートが現れた。

そしてヤハギ教官の顔を見た瞬間、母の瞳に驚きが走った。

 

「……あなた……ヤハギ……くん?」

 

「……ああ。久しぶりだな、ハルカ。」

 

母が教官の名前を知っていた――それが意外だった。

私が「紹介しよう」と思っていたよりもずっと早く、2人は知った顔同士の空気を漂わせていた。

 

教官がまっすぐ母を見て言う。

 

「お前はアスナと一緒に、ジャブローに行けるようになった。希望すれば、向こうで仕事も世話してくれる。安全も確保されるだろう。」

 

母は目を少し見開いてから、すぐに口元に柔らかな笑みを浮かべた。

 

「そうなの?……それは、ありがたい話ね。でも……」

 

そこまで言ったところで、教官が私の方を向いた。

 

「アスナ。」

 

「はい?」

 

「ジャブローに行くにしても、準備に必要なものがあるだろう。服やら、身の回りのもの。今のうちに買ってこい。」

 

「え、今からですか?」

 

私は驚いた。もう夕方になっていて、店も閉まりかけているところが多い。何も急がなくても……。

 

「そうだ。俺が金を出す。これで足りるはずだ。」

 

そう言って、教官が封筒を渡してきた。中には、それなりの現金が入っている。少なくとも生活用品や衣服を買うには充分すぎる額だ。

 

母も横から微笑む。

 

「お願いできる? アスナ。ついでに調味料も買ってきてもらえると助かるわ。」

 

私は一瞬迷ったが、頷くことにした。

 

「……分かった。でも、何か隠し事してるなら後でちゃんと教えてね。」

 

そう言って玄関に向かうと、背中でヤハギ教官が「気をつけてな」と声をかけてきた。

ドアが閉まる寸前、部屋の中で何かが沈んだような空気になったのを、私はかすかに感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

【ヤハギ視点】

 

アスナが出て行って、ドアが静かに閉じたのを確認してから、ヤハギは深く息を吐いた。

 

リビングに座ると、目の前のハルカもソファに腰を下ろした。長く張り詰めた沈黙の後、ヤハギは口を開いた。

 

「……まず、伝えておかないといけないことがある。アスナは、あのフォルマってやつに――強化措置を少しだが受けてしまっていた。薬物と暗示を使った、連邦の非公認のやり口だ。」

 

ハルカの顔色がすっと変わった。ヤハギは続ける。

 

「ジャブローでは、その調査と治療を受けさせる。あそこには専門家がいる。……で、それだけじゃない。」

 

ヤハギはソファの背にもたれ、天井を仰ぐようにして言った。

 

「……検査の中に、遺伝子検査があってな。俺も例の件で一緒に検査を受けさせられたんだが……それでわかった。アスナと、俺の関係が……」

 

ヤハギは静かに、だが確実にその言葉を絞り出した。

 

「――アスナの父親は、俺だったんだな?」

 

ハルカは微かに目を伏せ、そして小さく頷いた。

 

「そう……知っちゃったのね。」

 

「……何故言ってくれなかったんだ?」

 

ヤハギの声には、責める気持ちよりも、寂しさと戸惑いが滲んでいた。

 

ハルカは言葉を選ぶようにゆっくりと答えた。

 

「ごめんなさい。あなたに……迷惑をかけたくなかった。あの頃の私は、もうどうかしてたの。夫からの圧力に潰れそうで……あなたにすがるような気持ちで、あんなこと……」

 

ヤハギは俯いた。唇を噛み、こみ上げるものを抑えながら、言葉を絞り出した。

 

「お前がどうかしてようが、関係ない。俺は……本気だったんだ。お前のことも、アスナのことも……。なのに、お前は全部、ひとりで抱えて……」

 

ハルカは目を伏せ、何も言わずにいた。

 

ヤハギは拳を握りしめていたが、やがてそれを解き、息を整えて言った。

 

「……すまん。責めたいわけじゃない。俺が話したいのは、“これから”のことだ。アスナに、俺が父親だと伝えるつもりだ。」

 

「それは……でも、あなたに迷惑が……」

ハルカは戸惑いと、どこか自分を責めるような目で言った。

 

だがヤハギは首を振った。

 

「そんなこと言ってる場合じゃない。俺も知った以上、責任がある。しかも、あのフォルマは俺とアスナの関係を知っていた節がある。……隠して、知らないフリをして生きていくなんてもう無理だ。」

 

彼は少し目を細め、かつての記憶を思い返すように呟いた。

 

「俺はジオン時代、サイコミュ試験用ザクに乗ってた。技術資料も、実戦記録も、まだ脳裏に残ってる。……それを伝えれば、俺にもジャブローへの異動の口はあるだろう。だから……」

 

ヤハギはしっかりとハルカを見つめた。

 

「――お前たちを、俺に守らせてくれ。」

 

ハルカは息を呑み、しばらく沈黙した。

彼女の目には、長年誰にも見せなかった涙が浮かびかけていた。

 

その空気の中で、部屋の外を行き交う人の気配が遠く響いていた。だが、ヤハギの決意だけは、静かに、重くそこに残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

【アスナ視点】

 

ジャブローに行く準備のために買い出しに出ていたアスナは、紙袋を両手に抱えながら小さく息をついた。

 

「お母さんに頼まれた調味料と、ジャブローに行くんなら必要そうなものも一通り買えた。重いものは明日届けてもらえるように手配したし……これで、終わりかな。」

 

夕暮れの街並みは静かで、風が髪をふわりと揺らした。

 

家のドアを開けると、リビングにヤハギ教官と母――ハルカが並んで座っていた。

 

まるで、自分を待っていたかのように。

 

「……ただいま。お母さん、教官、買ってきたよ――」

 

そのとき、ヤハギが静かに口を開いた。

 

「アスナ。お前の父親は……俺だ。」

 

――頭の中が真っ白になった。

 

「え……?」

 

言葉の意味が、理解できなかった。

 

父親なんて――私にはいない。そう思っていた。物心がついた頃から、母と二人きりだった。

それに私の父親は……研究室に籠もりきりで、私の意思なんて無視して訓練を課してきた、あの冷たいジオンの科学者だと思っていた。

 

ヤハギ教官が? ――そんなはず、ない。

 

「……嘘、だよね?」

 

震える声で問いかけると、母が静かに頷いた。

 

「本当のことよ。今まで……言えなくて、ごめんなさい。」

 

胸の奥が、ぐちゃぐちゃになった。

 

信じたくない。信じられない。でも――目の前の2人が、どこか切なそうに寄り添って座っている様子を見て、私は気付いた。

 

あのとき、戦場で目覚めた感覚――言葉じゃない、“何か”を感じ取るあの感覚が、告げていた。

 

目の前の2人は、嘘をついていない。

むしろ……ずっと苦しんできたんだ。

 

愛し合っていたこと。

別れることしかできなかったこと。

そして今、ようやく何かを取り戻そうとしていること。

 

私は――

 

「……分かりました。」

 

言葉を選びながら、でも精一杯の声で続けた。

 

「お母さんのこと、お願いします。教官。」

 

ヤハギが少し目を見開き、それから真剣な眼差しで頷いた。

 

「ああ。俺もジャブローに行けるように話をつけるつもりだ。だから……お前のことも――」

 

「……私は。」

 

言葉が詰まる。喉の奥が熱くて、言いたくないのに、でも、言わずにはいられなかった。

 

「私は……ごめんなさい。教官のことは尊敬しています。でも、私……“父親”って存在が……どうしても、怖いんです。」

 

ヤハギは何も言わなかった。けれど、その目が、どこか悲しげで、それでも優しかった。

 

無理に近づこうとはしない。ただ、静かに、私を見守ってくれていた。

 

――そうだ。時間が必要なんだ。

 

私も、教官も、そして母も。きっとこの先、少しずつ、ゆっくりと進んでいくしかない。

 

だから、今はこれで――精一杯だ。

 

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