ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
何とかgジェネの溜め込んだボス挑戦チケットも消費し終わったんで今日も投稿します。
明日も0時頃に投稿します。
ホワイトベースJr.、艦長室。
ヤハギ・フランジバックは真っすぐに立ち、目前のブライト・ノア艦長を見据えていた。
その隣には、腕を組み静かに佇むゼロ・ムラサメ中尉の姿もあった。
「さて、ヤハギ教官」
デスク越しにブライトが視線を上げる。「あの話の決着は、ついたのか?」
ヤハギは短く深呼吸してから頷いた。
「はい。アスナには俺が父親だと、すべて伝えました。再婚など、今すぐには考えていませんが……母子2人を、今後は俺が守っていくつもりです。」
「そうか。それは……よかったな。おふたりも、ようやく安心できるだろう。」
「その件で、お願いがあります。」
ヤハギは直立の姿勢を崩さず、深々と頭を下げた。
「俺も、ジャブローへ行かせてください。――俺は、かつてジオンで“サイコミュ試験型ザク”に乗っていました。アムロ・レイ大尉やゼロ・ムラサメ中尉ほどの才能はないでしょうが、サイコミュの扱いには一定の自信があります。さらに、当時の試験データや仕様、運用方法の記憶もあります。きっと役に立てます。どうか、お願いします。」
ブライトの眉が跳ね上がる。
「……待て待て。ジオンでサイコミュ試験型に? 聞いてないぞ。」
「やはり、そうなりますか。」
ヤハギは自嘲気味に笑い、肩をすくめた。
「一応、連邦に入る時にすべて申告しました。ですが……おそらく、あの校長が隠蔽したんでしょう。」
「……ああ、あの校長か。」
「奴はフォルマに“弱みを握られていた”と聞いたが……つまり、君のことだったのか。」
「恐らくは。」
「俺の“経歴”を取引材料にしようとしたんでしょう。時期を見て、サイコミュの知識を活かして自分の成果にするつもりだった……そう考えるのが自然です。」
「……まったく、頭が痛くなる情報ばかりだ。」
ブライトはこめかみを押さえながらも、真面目な口調で続けた。
「しかし、それだけの技術と背景があるなら、君のジャブロー行きはおそらく確定だろう。――確認しておくが、君は“元ジオン”だ。今もジオンから連絡があれば、心が揺らぐことはないか?」
ヤハギは即答した。
「ありません。俺が守りたいのは、アスナと……彼女の母、ハルカ。二人とも、地球にいるんです。もしもジオンがこの地を再び脅かすのなら、俺は迷わず戦います。二人を守るためなら、命を懸ける覚悟もあります。」
その言葉に、ブライトは静かに目を閉じ、息を吐いた。
「分かった。ゴップ提督に君の希望を伝えよう。――それで、君が“ゼロに同席して欲しい”と言った理由は?」
視線がゼロ・ムラサメに移る。
ヤハギも、ようやくゼロの方に視線を向けた。
その眼差しには、敬意と、覚悟があった。
「はい。ゼロ・ムラサメ中尉――貴方に、伝えておかなければならないことがあります。」
ヤハギの声には、これから語ることへの緊張がにじんでいた。
ゼロは静かに頷いた。
「……聞こうか、ヤハギ教官。」
ホワイトベースJr.の艦長室には、静かな緊張感が漂っていた。
ヤハギ・フランジバックは一歩前に出て、ゼロ・ムラサメの方をしっかりと見据えて言った。
「俺の生徒の1人、エリシア・ノクトンについてです。」
ゼロはすぐに反応した。眉をわずかに動かし、記憶を引き出すように目を細めた。
「……あの時の軽キャノンの彼女か。あの状況でも的確に状況報告していたな。主席なのも納得だ。」
ヤハギは頷くが、口元は硬い。
「それが、問題なんです。あいつはトップの座にいることでしか自分を保てない……そういうやつなんです。努力家ですが、どこか脆い。今回の件で“強化人間”の入り口に立ち、さらに――貴方の戦いを見た。」
ゼロの表情が、少しだけ固くなる。
「……まさか」
ヤハギは静かに言った。
「おそらくエリシアは、ジャブローに着いたら“治療”ではなく、“強化人間の手術”を望みます。」
その言葉に、ゼロは一瞬目を見開き、首を横に振った。
「……それは無理だ。もう連邦では、強化人間は“作らない”。それは決まっている。どれだけ望まれても、俺にも、博士にも――無理だ。」
だがヤハギは、その希望がどれほど危ういかを知っていた。
「……あいつはやります。何でもする。自分が“トップであり続ける”ためなら。」
ヤハギの声には、教育者としての危機感がにじんでいた。
「そのためなら、実家の力――ノクトン社のコネすら使うでしょう。」
「……ノクトン社か。」
ブライトが苦々しそうに呟いた。
「軍需メーカーのご令嬢だったな?だが……いくらなんでも、“娘を強化人間にしてくれ”と親が頼みに来るとは考えにくいが。」
「親ではありません。」ヤハギは即答した。「自分の意志です。親の名前は使いますが、頼るのはあくまで“力”。もし軍がそれを拒否したら――おそらく彼女は、“自分は未承諾のまま違法な強化人間の処置を施された”と公表すると脅してくるでしょう。」
ゼロの表情が曇った。
その手口は、言われてみればあり得る。ましてやフォルマの事件の直後で、訓練生のひとりが被害者として名乗り出れば――世論は確実に混乱する。
「……扱いを間違えれば、軍全体の信頼が揺らぐ。」
ヤハギは、肩をすくめるように続けた。
「本当なら、俺が抑えられればいいんですが……あいつはもう俺の手には余るかもしれません。――だから、中尉。貴方に警告しておきたかった。」
ゼロは静かに頷いた。
「了解した。……君の生徒のこと、軽くは扱えないな。」
ヤハギは目を伏せた。
「ええ。あいつは才能がある。だからこそ、脆いんです。」
ホワイトベースJr.の格納庫では、モビルスーツの整備音が遠く響いていた。私たちを乗せた艦は、今まさに南米ジャブローに向かって進んでいる。
母も一緒だ。信じられないけど、ブライト艦長の取り計らいで、母には向こうでの仕事まで用意してもらえたらしい。ヤハギ教官がいろいろ動いてくれたのだと思う。……あの人が、私の父親。
まだ正直、気持ちの整理はつかない。でも、母が安心しているなら、それでいい気もしていた。
その一方で、私たちは“訓練中”だった。
「よし、アスナ、そこだ!斜線!甘い!」
「くっ……!」
ヤハギ教官が厳しい声を飛ばす。横を見ると、同じシミュレーターブースでエミルも同じように扱かれていた。
「今の回避パターンは読まれてるぞ、エミル!」
「わかってます!わかってますけど、動きが良すぎて体がついてこれないんですよ!、このネモは!」
画面越しに汗を拭うエミルの表情は必死そのものだった。軽キャノンとは違い、ネモの反応は段違いに鋭い。そのせいで、機体の動きにまだ慣れていないらしい。
……でも、この感じ、北米の訓練校時代と変わらない。結局は不器用ながら、全力で食らいつこうとしてるエミルの姿に、私は少しだけ笑ってしまった。
でも、ひとつだけ――いや、一人だけ、変わっていた。
エリシア・ノクトン。
彼女は私たちとは別のシミュレーター席に座り、その向かいには――ゼロ・ムラサメ中尉がいた。
中尉は、ヤハギ教官と一度だけ目を合わせて、それから静かに頷いて席についた。特に言葉を交わさず、それでも何かが通じたような気配だった。
そして、エリシアさんは、今――連戦連敗中だった。
モニター越しに見ても、動きの差は明らかだ。ゼロ中尉は無駄のない操作で、エリシアの攻撃をすべて先読みしている。軽くかわして、無駄な反撃もせず、ただ差を見せるように。
だけど――エリシアさんの顔は、負けているのに、不思議なほど明るかった。
「……また負け、か。でも今のは……ほんの少し、読まれなかった。」
エリシアは口元を引き締めて、すぐに再起動の準備をしていた。その目は、これまでの訓練校で見た彼女のどんな時よりも、熱を帯びていた。
“負けているのに、楽しそう”――今までの彼女には絶対にない姿だった。
(すごいな、エリシアさん……)
私の胸の中に、ほんの少しだけ、羨望のような気持ちが芽生えていた。
誰かに届くために、全力を出すって、こういうことなんだろうか。
70:90さん誤字報告ありがとうございます!