ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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第零、ニ話 英雄闇に堕ちる時2

【アレックス 機体内部】

 

ヒート・ロッドがアレックスの腕部に絡みつき、高圧電流が流れ込む。

 

座席ごしに全身へと痺れるような痛みが走るが――アムロ・レイは目を閉じ、ただ耐えていた。

 

(……目の前のこいつは……俺を“殺す”気だ)

 

それは明白だった。

 

――だが、抵抗すればどうなる?

 

妻が、シイコが。

 

彼女がいる場所に潜む特殊部隊が即座に動くのは目に見えていた。

 

(シイコ……シイコ……)

 

心の中で何度も名を呼ぶ。

 

もし自分がここで反撃に転じれば――最愛の人を失う。

 

そして、三歳の息子から、母親という存在を奪ってしまう。

 

そんなことだけは、絶対にさせたくなかった。

 

――分かっている。

 

目の前のこの強化人間を殺すしかない。

 

そしてシイコが戦いに勝ち、自分が駆けつけるまで生き残る。

 

その僅かな可能性に賭けるしかなかった。

 

あるいは、このまま無抵抗で両方助かるというあり得ない奇跡に縋るか。

 

アムロが決断しようとしたその時

 

「……っ!?」

 

アムロの全身が、別の衝撃に包まれた。

 

頭の中に、直接響いてきた“声”があった。

 

『――ごめんね、アムロ。ぼうやのこと……お願いね。』

 

その声は、優しく。

――けれど、あまりにも儚く。

 

アムロの全身から血の気が引いていった。

 

「シイコ……」

 

その一言が、掠れた声で漏れた。

 

悟った。

 

間に合わなかった。

 

最愛の人は――もう。

 

そこにいたはずの、温かな存在は――もう、この世界にいない。

 

胸の奥に、燃え上がるような黒い感情が噴き出した。

 

(お前たちが……)

 

目の前の強化人間。

 

そしてその背後で糸を引いているであろう、ザビ家の気配。

 

怒り。

憎しみ。

 

それらが、次々とアムロの中に流れ込み、怒涛の奔流となった。

 

抑えていた理性が――崩壊する。

 

【アレックス・機体内部 サイコフレーム 反応開始】

 

――緑色の光が、アレックス内部に走った。

 

希望として組み込まれたはずのサイコフレームが、

今や怒りと憎しみを媒介として暴走的な輝きを発していた。

 

アムロが操縦桿に触れぬまま。

 

背部のビームサーベルラックが、ひとりでに作動する。

 

1本目のビームサーベルが抜刀され――絡みついたヒートロードを一瞬で断ち切った。

 

次いで、2本目のビームサーベルが、自律的に旋回。

 

ギュネイ・ガスの機体の腕部を――鮮やかに切り落とした。

 

「なっ……!? 貴様っ……!」

 

ギュネイ・ガスの動揺した声が通信越しに響く。

 

しかし、その叫びにアムロは冷ややかに言った。

 

「好きにしろ。

――もう、彼女はいない。」

 

その声音には、凄絶な静けさがあった。

 

まるで死の底から這い上がってきたかのような、感情の淵から絞り出すような声。

 

ギュネイ・ガスは、一瞬絶句し――だが狂気を帯びた笑いに変わった。

 

「そうか、哀れだな!

ってことは殺したのは、お前の親父の作ったガンダムじゃないか!

 

お前ら親子の天才的な力が……お前の妻を殺したってわけだ!

 

ククク……アーハッハハハハハハハ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒート・ロッドが断ち切られた瞬間、ギュネイ・ガスの機体は両腕を失っていた。

 

「っ……ビットだ!全機ビット展開!撃てぇぇぇ!!」

 

ギュネイは狂乱気味に叫んだ。

機体の周囲に漂っていた6基のビットが一斉に射出され、青白い光線がアレックスへと殺到する。

 

だが。

 

アムロのアレックスは微動だにしなかった。

 

動いたのは――宙に浮かぶ“武装”たちだった。

 

機体の両脇に固定されていたビーム・サーベルが自らの意志を持つかのように滑り出し、ビーム刃を纏って旋回。

同時に腰のマウントラックに収められていたビーム・ライフルとシールドがふわりと機体の周囲に舞い上がる。

 

ビットのビームは――

 

ビーム・サーベルが切り裂き、ライフルが撃ち落とし、シールドが弾き返した。

 

ひとつ、ふたつ――7機。

連携もままならない残りの9機のビット付きモビルスーツは、恐怖と混乱の中、散開し始めていた。

 

そこへ――

 

フィン・ファンネルが、ホワイトベースJr.の格納庫から飛翔してきた。

光の尾を引きながら、まるで意志を持った使徒のようにアレックスの周囲に整列。

 

フィン・ファンネル・バリア展開。

純白の光の盾が形成され、そこから再び灼熱のビームが襲撃者たちを貫いた。

 

「こ、こいつは……!」

 

逃げ惑う強化人間たち。

一方的な蹂躙だった。

 

その中で唯一、まだ戦意を保っているのは――ギュネイ・ガスだけだった。

 

「ありえないっ……!1対16だぞ!?

こっちはビット持ちのモビルスーツで、パイロットは全員強化人間だぞ!?

それとも……そんなにも差があるのか!?

本物のニュータイプと……俺たち紛い物の間には……っ!!」

 

叫ぶギュネイに、アムロの声が返った。

 

『本物だの紛い物だのに囚われるから弱い。

そのどちらでもなく――強い人を、俺は知っている。

お前より遥かに強い人をな。』

 

「……ニュータイプでも、強化人間でもないのに……俺より強いだと!?

そんな存在――いるわけ――」

 

『気にする必要はない。お前がその人に会うことはない。』

 

アレックスの右腕がゆっくりと振り上げられた。

その動きに呼応するように――宙に漂っていたビーム・サーベルが翻り、鋭くギュネイの機体を狙う。

 

「アムロ・レイィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!」

 

ギュネイ・ガスの断末魔の叫び。

 

次の瞬間――

 

閃光一閃。

コクピットと動力部を貫いたビーム・サーベルが、ギュネイの機体を内部から爆裂させた。

 

爆炎が宇宙に咲き、ギュネイ・ガスの命は一瞬にして消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ジオン軍 特殊監視艦・艦橋】

※サイド6外縁宙域、僚艦から少し離れた位置に潜伏中

 

艦橋のモニターが、赤く染まっていた。

 

「……っ!?」

 

キシリア・ザビは、戦慄していた。

 

モニターに映っているのは――

 

アムロ・レイのアレックス。

 

たった一機で、16機ものビット搭載型ニュータイプ用モビルスーツを殲滅した。

続けて4隻の巡洋艦・戦艦を、次々に爆砕。

 

その所作は冷徹、容赦なく、一切の躊躇がなかった。

 

「……な、なんだあの力は……っ!」

 

キシリアの指が、肘掛けをぎゅっと握る。

 

「赤い彗星……シャア・アズナブルこそが、最強のニュータイプだったはず……!

だが――あの力は……シャアなど比べ物にならん……!」

 

キシリアの全身を、冷たい汗が流れた。

 

(私は……虎の尾を踏んだ……否、竜の逆鱗を……。

アムロ・レイから……シイコ・レイを奪っては……いけなかった。)

 

だが、その理解すら――遅すぎた。

 

「艦長!」

 

通信士が叫んだ。

 

「監視艦カメラからの映像です!アレックスがこちらに――っ!」

 

リアルタイム映像に、真紅の光を纏ったアレックスが映る。

背部のフィン・ファンネルが光の帯を描き、船の方向へと滑るように迫っていた。

 

「――ま、まずい……っ!!」

 

キシリアは思わず立ち上がった。

(私はここにはいない……ここにはいない……!)

そう理解しているはずなのに――

 

まるで今にも、この場所で殺されるかのような恐怖が、骨の髄まで突き刺さった。

 

それほどまでに、今のアムロ・レイは恐ろしい存在だった。

 

「全砲門で迎撃を――」

 

「だめです!すべて破壊されました!」

 

アレックスが、艦の武装を一瞬で破壊。

やがてゆっくりと――艦の表面に手を触れた。

 

その瞬間――

 

《……お前が今回の黒幕か。》

 

――声が響いた。

 

キシリアの目が見開かれる。

 

「ば、馬鹿な……!? 声が届く……!? 一体、何が――!?」

 

これはただの音声通信ではない。

サイコフレームを媒介に――アムロ・レイの「意志」そのものが届いてきている。

 

《やはり――ザビ家か。》

 

その疑問ではない、断定の声に、キシリアは戦慄した。

 

(まずい……! このままでは……私の謀略が……!

連邦との全面衝突は避けられなくなる……

命すら危うい……!)

 

「待て!!

確かに……私はお前の妻をダシにして、ガンダムを奪うよう命じた!

だが――殺せなどとは命じていない!!

あれはギュネイが勝手にやったことだ!!」

 

そう叫ぶキシリア。

 

だが――返ってきた声は、冷たい宣告だった。

 

《そうか。……だが、俺は弁明を聞きたいわけじゃない。

ただ――宣告するだけだ。

お前らザビ家を、この宇宙から消す。》

 

その言葉が届いた瞬間、キシリアの額から大粒の汗が滴った。

 

(――まずい。想定していたものと……違う。

この男はもう、“理性の枠”を超えている……!)

 

艦橋の空気が凍りついていた

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